どこにでもあるようなガハマさんとヒッキーのお話   作:凍傷(ぜろくろ)

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選択肢12~15

12/誰かが来る(知り合い等)

 

 がらぁっ!

 

「いやまじでさぁ! っべーんだってぇ! 相談乗ってくれってぇヒキタニくぅん! いやヒキタニさん!」

「そうか帰れ」

 

 がらぴしゃあん!

 悪は去った。

 

 

 

13/しっとりと、愛(18禁)

 

 雪ノ下が来られないことを知ると、二人きりという状況の中、ふっ、と……空気が変わった気がした。

 ついさっきまでは隣で弾むように歩いていた少女が、まるで大人の女性になったかのような色気を孕む。

 いや、それは言いすぎか。よくて同棲中の女の子。いや、その手前。

 顔を赤くして俯き、手は膝の上でぎゅううと握り、おそるおそるこちらを見ては、目が合うとパッと逸らす。

 

  結衣と付き合うようになってから大分経つ。

 

 しかしいつまで経っても初々しく、また、そんな感情が嫌じゃない。

 軽く笑ってみせると、ほわっと柔らかく安堵したような笑みを浮かべ、そそっと近づいてきて……ちょこんと俺の足の間に座る。

 すぐに俺の服の袖をちょいちょいと引っ張ってくるあたり、抱き締めてほしいらしい。

 もちろんそうするつもりだったから、そっと後ろから抱きしめると、きゅう、と可愛い声が漏れた。

 

「あたしの部屋かヒッキーの部屋以外で……こういうことするの、初めて……だよね?」

「公園とかカラオケボックスとかでも割としてる気がするけどな」

「あぅ……そうだった……《くし……》あ……えへへぇ……♪」

 

 恥ずかしそうに俯く結衣の、お団子をくしりと撫でる。

 嬉しいのか、ひょいと持ち上げ振り返った顔は笑顔だ。

 

「お団子作るの、随分慣れてくれたよね」

「お前が指を骨折して以来だったか。治ってくれてよかった」

「うん……ありがと、ヒッキー」

「気にすんな。したとしても、迷惑かけたとかそっちの思考は回転させなくていい。……そうなったから、俺もお前もこうしてるんだから」

「うん」

 

 結衣が引き戸に指を挟んで骨折して、送り迎えを俺がするようになってしばらく。

 世話を焼いている内にすっかり結衣の世話をするのが好きになってしまった俺と、そんな俺に甘えまくるのが好きな結衣との関係は、それはもうバカップルそのものと言えた。

 なにせ俺が世話焼きで、三浦もそれを認めていて、三浦が認めるってことはカーストトップの許可が下りてるってことで、教室でもいちゃいちゃし放題。

 あんなことがもうないようにと引き戸は俺が開けてるし、体も柔らかい方がいいだろうってことで柔軟体操なども一緒にやって、時間がある時はジョギングとかにも一緒に行ったりしている。

 甘えまくって、どこまでやってくれるか試してみたかったんだろう。歯、磨いてーなんて言ってきた結衣の歯を、実際に磨いたこともある。顔真っ赤にして、あわあわと目を回しているうちに終わらせた。

 それ以来なにかがぷっつり切れてしまったのか、この娘の密着具合がいろいろすごい。あ、でも歯を磨いてとかは言わなくなった。でも密着具合がすごい。

 

「んー……んんー、んー……♪」

 

 鼻歌ではないのだが、なにかを確かめるようにもぞもぞしては、んーと言って、にこー。

 少しすると俺の制服の上着を少し肌蹴させ、シャツにすりすりと頬擦りしてくる。ちなみに座り方はとっくに調整済みだ。

 横座りのような格好で俺を見上げる結衣を、やさしく支えるように手を回す。

 するとその手が片方捕まって、自分の頬へと導き、すりすり。のちに、にこー。

 ……うん、これはまいった。恋人が可愛い。

 しかもこんだけ密着して、柔らかいところとかがふにふにとなれば、こちらも反応してしまうわけで。

 

「ふえ? あれ? ………………あ」

「……不可抗力だ」

 

 お尻に当たる固いアレに気づいたらしい。顔を赤くする結衣だけど、離れようとはしない。

 

「う、ううん……恥ずかしいけど……驚いたけど……えと。ちゃんと、あたし……そういうふうに見られてるんだなーって。ほら、なんてのかな、その。最近、ただ……うー……自分で言っちゃうとアレなんだけど、ただ、可愛いものを愛でてる、みたいな、そんな接し方に思えてたから……それに甘えてたあたしもあたしなんだけど」

 

 だって実際可愛いし、仕方ないだろそれ。え? 愛でちゃだめなの? いいだろ、いいでしょ、はい、いいってことで。

 とりあえず抱き締めた。小さな体が俺の腕の中にすっぽり。

 きゃう、と小さく驚いた彼女だったが、すぐに力を抜いてすりすりしてきた。

 見上げられ、見下ろし、自然と近づき、ちゅ、ちゅ、とキスをする。

 名前の知らない温かさが胸に湧くと、その頭を抱くようにして二度三度。

 次第に密着する時間が増えて、口を開き、舌で唇をつつき、舐め、舌を絡ませ、一層に密着してゆく。

 

「一緒ってあったかいね……」

「……そっか。そうだな。そんなもんで……いいんだな」

 

 名前の解らないものに名前をつけたがるのは男の悪い癖だと思う。

 知らないなら知らないで、“温かいね”でいいのだろう。

 口にしてみればすとんと胸に納得を刻み、またキスをする。

 歯を舐め、歯茎をくすぐり、舌を絡め合わせ、離れる際にもう一度唇だけで吸い合い、橋を作らずに離れる。

 鮮明になった表情はとろんととろけていて、力を抜いて身を委ねているようだ。

 そんな綺麗な顔にキスを降らせていくと、やぅう……と恥ずかしそうに身を捩った。

 お返しとばかりにシャツの下から侵入してきた彼女の手が、俺の体をくすぐると、お返しとばかりに彼女の首に顔を埋める。

 鎖骨のラインを舐めてみれば、ぴくんと跳ねるその姿に興奮した。

 

「ひっきぃ……んぅっ……」

 

 物事は積み重ねとよく言う。

 俺と結衣がこんな風に互いを求めるようになるまで、時間はそれなりにかかった。

 どっちがどう踏み出したから、なんてことはなく、ほぼ同時だったのだ。

 もっとお互いの深いところまで知りたいと。

 唇から離れ、首を甘噛みし、互いに印を残した。

 行為はどんどんとエスカレートしていき、やがて……

 

「……ひっきぃ」

「……ゆい」

 

 結衣の手が俺の手を掴んで、そっと導く。

 今までけっして触れようとはしなかったところ。

 導かれるだけでも抵抗があるくせに、触れたいと強く願うのは男としての本能なのか。

 やがて俺はその二つのふくらみへ手を───

 

 

 

 

   このあとのおはなしはふたりだけのむつみごとなので、ざんねんながらみられないよ!

 

 

 

 

14/青春してみる(あなたの思い描く青春)

 

 青春。それは。

 

「きみが~みた光~♪」

「いやそれ青雲だから」

 

 青春についてを話してみようってことになった。

 どうしてそんなことになったのかは解らん。由比ヶ浜しか知らん。

 

「で? なんだっていきなり青春の話になったんだよ」

「え? だって青春ってさ、“高校生~!”って感じ、しない?」

「……まあ、言いたいことは解る」

「その青春がもう半分以上終わっちゃってるんだよ? “なんか損した気分だ! 青春返せー!”って」

「ほーん……? じゃあたった今からでも青春すりゃいいんじゃねぇの? なに? これからマルガリータして野球部にでも入る? それともサッカー部入って葉山達と国立(笑)目指す?」

「そんなの目指さないってば。もう。女の子の青春っていったら……さ? ほら、あるじゃん? もっとおっきくて大事なのが」

「?」

 

 なにそれ八幡わかんない。

 

「ち、ちなみにさ? ヒッキーはさ、もしそのえとー……け、結婚して、さ? 奥さんとか子供とか出来たら、どんな自分になってると思う?」

「……そうな。とりあえずライバーやめて、子供が“お前の父ちゃんラブライバー”とかからかわれないように努めるわ。道端でガチでそれやられてる子供見た時、さすがに泣きそうになった……」

「え? な、なに? らぶ……?」

「知らなくていい。アレ自分がやられたらと思うと本気で泣ける。熱中するなとは言わねぇけど、時と場所は弁えねぇとだよな……マジで」

「えと……つまり立派なお父さんになりたいってこと……なのかな」

「そだな。がっかりさせない程度には強い夫でいたいよな。専業主夫だろうと立派に子供の舌を唸らせ飽きさせない存在を、俺は目指す」

「あ、専業主夫は無しで」

「なんでだよ……あぁまあ想像でいいならそれもアリなんだろうな」

 

 俺が妻を持った夫だったら。

 子供は何人がいいだろう。ふたり? 双子とかいいんじゃない?

 娘……は、嫁に出す時暴れそうだな俺。

 じゃあ息子……いや、なんか腹立つ。嫁に抱きかかえられてるとかなんか嫉妬しそう。

 ……うわぁ、俺、壊滅的に親に向いてねぇ。

 

「子供は二人。娘がいいな。双子で」

「ふたっ……は、初めてで双子っ……あぅう……だいじょぶかなぁ……」

「由比ヶ浜?」

「ひゃあっ!? ななっ、なんでもないなんでもっ、あはっ、あははは……」

 

 ぱたぱた手を振ったりお団子をくしくしやったりと忙しい。

 しかしこほんとわざとらしく咳ばらいをすると、

 

「と、ところで……さ? お嫁さんにするなら……どんな人? あ、養ってくれるーとかはなし」

「わーってるよ。ん、そだな……まず俺にやさしくて」

「うんうん」

「料理が上手で」

「はぐぅっ……が、がんばろ……うん……」

「綺麗っつーか可愛い感じで」

「《どきっ》……う、うん」

「で、八重歯がキュートで」

「……あれ?」

「アホ毛が生えてる」

「それ小町ちゃんじゃん!」

「あ? だから理想だろ。俺のことよく知ってて、その上で無理矢理にでも離れないなんて今時珍しいだろ」

「…………ここにも、いるのに……《ぽしょり》」

「……? すまん、聞こえなかった、もっかい言ってくれ」

「え、あ、なななんでもない! もうっ、ほんっとヒッキーは……!」

 

 ……ふむ。

 俺、このパターンってあまり好きじゃないんだよな。

 きちんと聞こうとしてるのに、なんでもないって言われて怒る。

 これってラノベとかでもよくあるが、相手悪くないだろ。なにせちゃんと聞く耳を持とうとしている。

 聞き洩らしてしまったから聞きたいのに、相手はそれを誤魔化して、なのに聞かなかった相手が悪いってことになる。

 他の会話にしたって、相手が恥ずかしがってきちんと話さないのが悪いってのに、赤くなって逃げ出しておいて、あとでどーのこーのと文句をつけて殴りかかるラノベとかよくあるよな。

 ISとか特に。あれ、いつか一夏くん死ぬんじゃなかろうか。

 なんか言ったか、と訊かれたなら耳に届いて、意味が染み込むまで意地でも話してやりゃいいのにな。それさえせずに“よし殺そう”とかもうヤバいだろ。

 

「……あ、の……ヒッキー、怒った……?」

「聞かれたくない言葉ならそもそも口にするなとは言いたいな。気にするなってんならそれでいい。お前は、それでいいんだよな?」

「え……あ、の……それは……」

「いや、なんでそこで詰まるんだよ。お前がここでそれでいいって言やぁ、それに関連するなんもかんもに俺が口を出すこととか無くなるんだから、頷いときゃいーだろ」

「なんもかんもに……え───や、やだ!」

「ホワイ!?」

 

 今まさにナンデ!? なんで詰まるどころか今度は完全拒否!?

 

「や、お前、なんでもないって言っただろ……聞く耳持った相手を“ほんとヒッキーは”とまで言って」

「だ、だって……でも……だけど…………!」

「はぁ、もういいよ、言い方が悪かった。もう口出さねぇから、ぼっちはぼっちらしく黙ってるから、由比ヶ浜。お前ももう気にすんな。ほれ、これで終わりな」

「───!!」

 

 これで終わり。

 その言葉に、由比ヶ浜が異常ともとれるほどショックを受けた。

 顔を見れば解るほど、その動揺がこっちにまで伝わるほど。

 え、ちょ……やだなにその反応。俺べつに間違ったことやってないよな?

 え、えー……? すごく当たり前の反応したと思うんだが……?

 

「さて、んじゃあ小説の続きを《クンッ》……あの、なに?」

「………」

 

 いざ小説をと思ったら袖を引っ張られた。

 馬鹿な……あの距離をこの一瞬で……! などと馬鹿やってないで。……いったい何事なのか。

 

「話すから……」

「ん?」

「話すから……これで終わり、とか……言わないでよ……」

「いや、だって───ああいや、これこそ野暮だな。わかった、聞く……じゃないな、聞かせてくれ」

「う、うん……」

 

 ここで“だってお前、なんでもないって言ったじゃん”とか話を蒸し返すのは外道の所業だ。自分がやられて腹立つことは出来るだけやらない。

 あと“わかった、聞く”とか何様だ。落ち着けよ俺、COOLになれ。

 

「………」

「………」

「………」

「………」

 

 ……。

 うん。

 …………あれー?

 それで、いつになったら話してくれるんでしょう。

 たしかにそもそも聞いてほしくなかった言葉だから濁したんだろうが、……ああやばい、これそもそも俺が聞こえなかったフリしてりゃあなんの問題にもならなかった。むしろ謝りたくなってきた。

 じゃあそれを伝えて終わり───というわけにはいかないらしい。

 今ようやく俯かせていた顔を持ち上げた由比ヶ浜が、真っ直ぐに俺の目を見たからだ。

 

「ヒッキー……あたし、これから青春する。たぶん、これ以上はいらないっていう、叶ったら泣いちゃうくらいの青春だ」

「青春? それって───」

 

 その話、まだ続いてたのか。

 暢気にそんなことを考える俺に対し、由比ヶ浜は真剣な眼差しで俺を見つめていた。

 だから自然と俺も背筋を伸ばして、真っ直ぐに由比ヶ浜を見た。

 

「あたしね、あたしとゆきのんとヒッキー……3人でいるこの奉仕部が好き」

「……お、おう」

「あたし、ずっと……ずうっと、誰かが踏み出しちゃえば、そんな関係は崩れちゃうんだろなって思ってた。だって……あたしが思った通りの関係がここにあるなら、それって……続けていくのがすっごく辛いと思う。あたしじゃ、きっと泣いちゃうから」

「由比ヶ浜……?」

「決めるのはきっとヒッキーで、でも……ヒッキーもきっとあたしと同じなんだ。壊しちゃうくらいなら、選ばないことを選ぶ。その時が来て、選ばなかったことをヒッキーだけの所為にして、あたしもゆきのんも泣いちゃうんだ」

「おい、いったいなんの話を───」

「…………ほんとに、わかんない?」

「っ───」

 

 ドッ、と。

 心臓が、跳ねた。

 今までいつも通りだった景色が途端に色を変えてしまったような、“今まで通り”が不意に重くのしかかるような、そんな気持ち悪さに襲われる。

 

「ずるい子だって、自分を悪者にしてなにかを解消するのは楽だよね。ただのお礼って言って、自分の気持ちを無しにしちゃうのだって、あとでたくさん泣くだけで解決するんだ」

「………」

「でも───選んでほしい。あたしかゆきのんか、いろはちゃんや……他の誰か。女の子に興味がないっていうなら、仕方ないのかもしんないけど……それでもきっと振り向かせるから。今は───」

「由比ヶ浜、俺は───」

「言ったよね、自分から行くんだって。だから。───比企谷八幡くん。あたし、由比ヶ浜結衣は……あなたのことが、ずっとずっと好きでした。そして、今も……前より、もっと好きです。……あたしと、付き合ってください。あたしの……彼氏になってください」

「───」

 

 ずどんと来た。

 そりゃそうだ、真っ直ぐな言葉だった。

 疑う余地もない、本当に、その想いを大事にしているって表情で……幸せそうな顔で、告白してくれたのだ。

 

「………」

 

 その言葉を受け取り、目を閉じて考えてみる。

 俺達の始まりは、そもそも犬を助けたあの日から。

 雪ノ下にしたって由比ヶ浜にしたってそうだ。

 きっかけはそこにあり、繋がりもまたそこから。

 いろんなことがあった。

 くだらないことから難しくも面倒くさいことまで。

 作りたくもない人との繋がりが次第に出来ていくことに歯噛みし、馴れ馴れしい知り合いが増えていくと、鬱陶しいとさえ思ったものだ。

 なのに───

 

「………」

 

 目の前の彼女は、ずっとそこに居た。

 再会は最低。

 お礼をしたい相手にこそビッチだの殺すぞだの言われ、作ったものを不味いと言われて。

 なのにそれでも自分なりに頑張った。

 俺はどうだろう。

 人からのやさしさなど要らないものと断じて、やさしい人は嫌いと意識して、時に泣かせ、時に傷つけ、時に……

 

(なのに、なんで───)

 

 傷つけられても、泣いても、それでも好きだと言ってくれた。こんな、これが自分の大切な想いですって顔で。

 

「───《とくんっ》」

 

 応えたい。

 こんな幸せそうな表情で自分との関係を伝えてくれるこいつに、俺が与えられるのであれば、彼女が喜んでくれる全てを。

 でも、じゃあどうしたらいい。

 与えたいからじゃあ恋人にっていうのは違うと思う。

 そもそもまだ俺の中で気持ちが固まっていない。

 人を好きになった自分が好きって誤解してた中学の頃とは違って、気持ちが追いついてくれていない。

 けど。このまま何も伝えず帰らせたくない。傍に居てほしい。もっと欲を言えば、俺は───

 

「───……」

 

 ……なんだ。答え、出てるじゃねぇの。

 

「由比ヶ浜」

「《びくっ》はっ……はいっ……」

 

 言葉を返そう。

 きっとどん引きだろうが、それでも沸いた思いは本物だ。

 

「正直、まだ好きかどうかってのは解らない。いきなりだったってのもあるが、それ以上に気持ちが追いついてない」

「う、うん……そっ……そだよね、あははっ……あー……あたし───」

「けどだ。待て、待ってくれ。……その。お前が別の誰かのところに行くとか、考えたくねぇ。傍に居てほしいし、居てくれるなら笑顔で居てほしい。……今、物凄く自覚してて恥ずかしいし頭が痛いんだけどな。どうにも俺、嫉妬深いらしい」

「うん知ってる。小町ちゃんのことで」

「……返す言葉が見つからねぇ」

「でもその……えと。ヒッキー?」

「おう」

「それって……あたしに傍に居てほしいって……そのままの意味でいいんだよね?」

「……すまん。本当に、好きかどうかは解ってないんだ。中学の時に持った、妙な感覚はある。似たようななにかではあるんだけどな。結局それを恋心だと思って突っ走って、全部失敗して言い触らされた。この妙な感情がある限り、踏み込むなんて出来ねぇんだろうけど───」

「けど……?」

 

 困ったことに。

 ああ、実に困ったことにだ。

 

「お前と青春、してみたいって思っちまった。青臭い? 結構じゃねぇか。だから、ひとつお願いがある。たぶん、お前にしか出来ない。つか、してほしくない」

「あたしにしか……ヒッキーに……う、うんっ! 言って!? 頑張るからっ!」

「ああ、頼む。……その。俺に、好きとか恋ってのを……教えてほしい。俺の中で由比ヶ浜結衣って存在は相当デカくなってるんだ。それは確かなんだ。もう傷つけたくねぇし、泣かせるなんてごめんだ。大事だって思うし傍に居てほしいって思う。けど、俺には散々馬鹿やって失敗した経験があって…………もう、どんなのが恋なのか、なんて解らねぇんだ」

「ヒッキー……」

「だから……頼む」

 

 俺を見ては顔を赤くしていたこいつだ。

 きっと、恋って感情には強いのだと勝手に信じた。

 だからどうか、俺をそんな感情が解る場所まで───

 

「やり方は任せてくれるの?」

「お、おう。全部任せる。お前が真っ直ぐに打ち明けてくれたなら、俺ももう捻くれがどうとかいつまでも馬鹿やってらんねぇだろ。好きなようにやっちまってくれぃ」

 

 どんと構えて真っ直ぐに見る。

 と、由比ヶ浜がふっ……と笑って、俺の膝に手を置いてくる。

 

「お、おい、由比ヶ浜?」

「じゃあ……教えたげる。あたしが毎日、ヒッキーを見てどんだけどきどきしてるか」

「え───」

 

 手はそのまま。

 顎をクイ、と持ち上げた由比ヶ浜が、俺の戸惑いなんざ完っ璧に無視して、俺の唇に自分の唇を押し付けた。

 

「………………」

 

 音にするなら、ぐっぼぉんって感じだろう。

 顔が沸騰するってくらい熱くなるのを感じて、なのに由比ヶ浜は離れず、いわゆるキスを続けた。

 息を止めてしまい、息苦しくなって、思わず膝に立てられた由比ヶ浜の腕を掴んでしまう。ぴくり、と反応するも、由比ヶ浜はそのままキスを続けた。

 

  嫌なら押しのければいいじゃねぇか

 

 心の奥底の冷静な自分がそう言う。

 押しのける? 俺が?

 ……そうか、押しのければいいのか。そうすれば息が吸える。自由になる。

 だったらそうすればいい。なんの心配もない。

 

  手に力が籠る。

 

 グイと押せば、由比ヶ浜は抵抗もなく離れてくれるだろう。

 そうして、俺は───

 

「───」

 

 押しのけるどころか。

 膝に立てた腕から手を離し、肩を抱き、引き寄せた。

 

「ヒッ……ぷあっ!?」

 

 頭が焼ける。ちりちりする。

 恥ずかしさとかじゃない、興奮からくる熱だろう。

 我慢なんて言葉が思い浮かばない。他の言葉も。

 ただ、酷く醜い感情が沸き出してくる。

 こいつは俺のものだ、もっと傍に、そして、そして───

 

「…………」

 

 ……そして。笑っていてほしい。

 

「………」

 

 荒ぶっていた感情が一気に落ち着いた。

 次いで、温かななにかが胸に満ちてゆく。

 強くキツく抱き締めていた肩からも力を抜き、やさしく、撫でるようにしてキスを続ける。

 息継ぎのために離れてしまうには惜しくて、ずっと繋がっていたくて、舌を使って密着し、開いた口から息をする。

 由比ヶ浜の体が震えたが、お前からしてきたんだからと言い訳を作ってしまえば、引く理由なんてなく。

 俺達はお互い、満足するまで密着し合い、キスし合い、その距離にこそ安心するように、お互いを求めていった。

 

  ……脳が焼ける。

 

 ジリジリと頭の奥が熱を持って、息も荒くなり、それでも離れず、お互いを求める。

 舌と舌がこすれ合うと、痺れるような気持ちよさが全身を駆け巡り、やがて脳に溜まり、それが熱となってグラグラと煮えたぎっているような感覚。

 もっと近くに、もっと傍に。

 キスだけじゃ足りなくて、もどかしくて、由比ヶ浜が膝の上に乗り、強く強く抱き着いてくる。

 俺も由比ヶ浜を膝に乗せながら背に腕を回して思い切り抱き締め、口を斜めに密着させながら舌を舐め、時に吸い、蹂躙する。

 興奮で頭が馬鹿になり、やがて痺れるような感覚が頭の奥に溜まりきった頃、俺達はなにを言っているのかもわからない悲鳴をあげ、唇を離し、ただただお互いを強く抱き締め合った。

 弾け、震える体を手繰り寄せ、がたがたと痙攣を繰り返し、強張る体をそのままに互いを抱き、泣きそうになるほどのなにかを互いを抱き締めることで落ち着かせてゆく。

 

「……、~~~…………んぁああぅう……!! ひっきぃ、ひっきぃい……!」

 

 口を開けばかちかちと顎が震え、歯がぶつかり合って。

 それほど震えているのに、腕はあくまで互いを離さない。

 なにが起こったのかも理解しようとしない震える頭で、それでも互いだけは離したくないと動き、探り、またキスをする。

 今度はお互いを慈しむような、やさしく、つつくようなキス。

 ちゅ、ちゅ、とついばむように動いては、頭から体に降りてきた痺れを逃がすように。

 涙も流し、口も唾液でべとべと。

 それでもそんなことさえ気にならないくらいに相手のことしか考えられず、二人でそうして、しばらく抱き合っていた。

 

……。

 

 完全下校時刻のチャイムでようやく抱擁を解いた俺達は、けれどそのまま離れるのが名残惜しいどころか嫌で、手は繋いだままだった。

 随分冷静に思考が回るようになっても、体が、心が、離れたくないと思ってしまっている。

 まいった、自分にこんな感情があるだなんて知らなかった。

 幼稚な独占欲とは違う、相手のことを強く意識して、幸せにしたいと自然に想えるような、そんな───……

 

(……ああ、うん。これ無理だわ)

 

 たぶんこれが恋ってもの。

 気づいた時にはもう遅い。

 気づけばとっくに好きすぎて、もう意地でも幸せにしてやりたくなっていた。

 傍に居てほしくて、傍に居たくて、離れたくなくて、離したくなくて。

 

(まじか……うわー……まじかぁ……!)

 

 そんな感情は我が儘なガキっぽい野郎だけの感情だと思っていたのに、まさか自分がこんな有様とは。

 しかも女の子からキスされなきゃ自覚出来なかったとか、どんだけヘタレなの俺。

 

「………」

 

 由比ヶ浜は、選ぶのは俺だって言った。

 けど、改めて振り返ってみても、俺が雪ノ下を、とかそういう未来は描けない。

 そもそもあいつが俺を見る目はそういうのではなく、俺もまた───そういうものに近かった。

 時に憧れ、時に勝手に落胆し、時に……頼られている、と感じて。

 けれどあいつのそれは頼るとしても、自分で道を決めるのを恐れただけだろう。

 自分では正解にたどり着けない、自分に持ってないものを持っている誰かが羨ましい、だから選ぶことをやめた。

 結果として甘え、頼っているように見えるアレは、愛だ恋だなんてものよりも程遠い、男が誤解すれば残酷なものにしか至らない感情になった。

 あれは、そういうものでは断じてない。

 だから、手を伸ばせばいつかは……いや、伸ばし方を間違えた時点で壊れてしまうから。

 

「………」

 

 選ぶことはするのだろう。

 由比ヶ浜も雪ノ下も、そもそも手の伸ばし方からしてまちがっていた。

 だから、俺が選ぶのは手の伸ばし方のみであり、雪ノ下の手を握るのは……由比ヶ浜の役目だ。俺じゃあない。

 俺が伸ばすとしたら、そのあとなのだろうから。

 

「……帰るか。いつまでもここに居てもしょうがないだろ」

「……ひっきぃ……」

 

 ぎゅう、と……手を繋いだまま、俺の腕に抱き着いてくる。

 そんな由比ヶ浜の頭をさらりと撫でて、自分でも驚くくらい穏やかに笑ってみせる。

 

「あー、あと、あれだ。えぇと…………好きとか恋ってのの気持ち、自覚出来たわ。だから、その……だな。今さらなのかもだけどな。えっとだな」

 

 やたらと“な”を連発してしまい、恥ずかしさを噛みしめつつ、それでも伝える。

 由比ヶ浜は、ぎうー……! と俺の腕を期待の分だけ強く抱き締め、そのままの格好で俺を見上げてきている。ちくしょう可愛いなこんにゃろめ。

 

「お前が好きだ。その……俺と付き合ってほ」

「うんっ!」

「いや……最後まで言わせなさいよちょ」

「ひっきぃ! ひっきー! んんんぅう~~~……ひっきぃーーーっ!」

「っ……て、だから」

 

 笑顔がこぼれた。腕を離して胸に抱き着いてきた小さな体を受け止めて、背に手を回し、遠慮もなしに強く抱く。

 ぐりぐりと胸にこすりつけられる顔の感触がくすぐったくて、けれど離したくないから、頭と背に手を添えるようにして抱き締めた。

 

  ……こうして、俺と由比ヶ浜はいわゆる恋人関係になった。

 

 翌日に、勇気を以てそのことを雪ノ下に話した由比ヶ浜は、雪ノ下に笑われた。

 結構ショックを受けていたが……まあ、そりゃそうだろ、いけて精々友人だ。その友人にだって、恐らくは依頼達成度の勝負で勝って、ようやく“有り得ない”から“なってあげてもいいわ”くらいになる程度なんだろうし。

 あーほら、そのー……あれだ。オタリアの長谷川翠?

 

「? なにかしら」

 

 ……なんか、こいつを目の前にしてそれを考えること自体、間違ってる気がする。

 オタリアってば上手くいきすぎでしょ。

 

「まあ、これでそこのゾンビが真っ当に生きてくれるのなら、それは大変喜ばしいことね。これであなたを更生するという平塚先生の依頼も終わりかしら」

「いろいろ引っかかるが、一応そうなるのかね」

「え? それが終わったらどうなるの?」

「俺が奉仕部に居る理由がほぼ無くなる」

「ひっきぃ……」

「《ぎゅうう……!》いや理由なんていっぱいあるなむしろ続けるべきだろべきだなべきしかないまである」

「あら。それを良しとするのは部長の私であってあなたではないわよ、比企谷くん」

「お前たまには空気読まない? この流れでダメとか鬼かよお前……」

「鬼っ……!? ~~……確かに空気を読めなかったことは何度かあったかもしれないけれど、あなたにそこまで言われる筋合いは……!」

「人を散々妙なあだ名で呼びつつ罵倒文句並べといて、それ本気か……?」

「ぐっ…………そ、そうね。たしかに、それは…………はぁ。そもそも入部はしているのだから、退部するにしても平塚先生の許可が必要だし、どうせ平塚先生は今さらあなたの退部なんて認めないでしょう?」

 

 入部の仕方がアレだったもんなぁ……。

 いつ思い返しても横暴すぎる先生である。

 

「こほんっ! ところで、その……比企谷くん? 由比ヶ浜さん? あなたたち、いくらなんでもその……近すぎではないかしら。さすがに目に余るのだけれど」

「あぅ……」

「まあ、そうだよな……。ほれ、由比ヶ浜、少し離れよう」

「うー……うん……」

 

 ……かしょん。

 椅子がハンバーガー4個分くらい離れた。I'm lovin' it.!

 直後に雪ノ下の溜め息。まあ、解る。

 しかし俺も離れたくないと思ってしまっているあたり、なんとか妥協案が欲しいところで───

 

「なぁ雪ノ下、目に余るんだよな?」

「え? え、えぇ……そう、だけれど」

「じゃあこうしよう」

 

 かしょんかしょんと椅子を運び、着席。

 雪ノ下を真ん中に、俺と由比ヶ浜がその左右に。

 

「……まあ、これなら……」

 

 言って、小説を読み始める雪ノ下だが───

 

「…………《ちら?》」

「…………《ちら? そわそわ……》」

「…………《ぺらり》」

「………《そわそわ》」

「………《ちらちら……ちら? ちらちら……》」

「いい加減にして頂戴」

 

 5分もしないでギブアップだった。

 

「おいおい部長、もうちょっと頑張れよ……」

「こんな時ばかり部長呼ばわりはしないでもらえるかしら……!」

「だ、だめならしょうがないよねっ? じゃあ、じゃあっ、ひっきー、ここ、ここっ」

 

 眩しく無邪気な笑顔で、由比ヶ浜が自分の隣の空間をほらほらと促してくる。ああもう可愛いなちくしょう。

 その隣で、はぁ……と溜め息を吐く雪ノ下の顔には、諦めという文字が大きく描かれているようだった。

 

「あなたたち……それだけ近くて、なぜ未だに苗字呼びなのかしら……」

「いや、だって、部室でそこまでいちゃついたらさすがにお前が嫌だろ……」

「気の使い方が壊滅的に間違っているわ。むしろもう呼んでいるのならそうしなさい……!」

 

 なんだか怒られてしまった。

 ちらりと由比ヶ浜───結衣を見れば、期待に胸を膨らませてにっこにこ笑顔だ。

 

「じゃあ……結衣」

「ひっきー……」

「結衣……」

「ひっきぃ……」

「……おうちかえりたい」

 

 雪ノ下の呟きに悪いとは思いつつ、二人でくっつき、じゃれ合った。

 雪ノ下曰く、ずっとそうしていればいずれ飽きるでしょう、とのこと。

 依頼者からのノックがあれば当然離れたが、それ以外は大体くっついていた。

 

 

 

 ……え? 結局飽きる日が来たのかって?

 

 喫茶店構えて経営して、子供が出来た今でもいちゃいちゃ状態ですが?

 

 これはそんな、とある青春の物語である。

 

 

 

15/自由枠(むしろ最初からこれ書いておけばよかったのでは)

 

 がらぁっ!

 

「だっ……! だからさぁ! いやほんと! マジお願いってばさぁヒキタニさぁん!!」

「そうか帰れ」

 

 がらガシィッ!!

 

「今回は俺もマジだからっ……! すぐ閉めるとかさせねぇっしょぉお……!!」

「こ、こんにゃろっ……! 由比ヶ浜っ! 手伝ってくれ! どうせまた面倒な依頼だ!」

「え、で、でもさヒッキー、話くらい聞いたげても……」

「結衣! お願いだ! お前を頼らせてくれ!」

「わかった任せてヒッキー!」

「ちょぉっ!? 結衣!? そりゃねぇっしょー!!《ゴシャーン!!》つぶつぶーーーっ!?《コキコキ……♪》」

 

 由比ヶ浜と一緒に閉めた引き戸にゴシャーンと顔を挟んだ戸部が、妙な音を立てつつどしゃあと倒れ込んできた。

 てか、つぶつぶーってなんだよ。

 

「あの……まじ話だけでも……。ほんと困ってんだわ俺ってばさぁ……」

「平塚先生にでも言ってくれ。手に余る」

「まだなにも言ってないのにひどくねっ!?」

「あー、あととべっち、あたしのこと名前で呼ぶの、もうやめてね? みんなが呼んでるならってヒッキーが呼びやすくなってくれたらなって思ってたけど、呼んでくれたから」

「お、おー……それで話聞いてくれんならばっちこいだべ」

「ん、じゃああたしは聞く」

「……入られたんじゃもう聞くしかねぇか。で? どしたのお前」

「あぁ……それがさー……」

 

 それから戸部は話した。

 なにやら相模の友人ぽい女子に急に告白され、どうしようか迷っていると。

 

「いやほらさぁ、俺ー……奉仕部とかさー、俺の依頼でいろいろあったべ? だってのに海老名さんがダメだから他に、とか……いいんかなー……って。今思えばヒキタニくんのあの告白って、あれ……ああいう意味だったんだろ? なんか俺今さら罪悪感ひどくって……」

「そうかじゃあ帰れ」

「いやこれで帰れってひどくね!? 確かに聞くだけとは言ったけどひどくね!?」

「ごほんっ。……そうね。それはあなたの考え次第でしょう? 結局またあなたが告白するか否かの問題に奉仕部を巻き込むというのなら、こちらにも考えがあるわ」

「そうだよとべっち。告白するのに誰かの手を借りるとか巻き込むとか、ダメ。もうグループの問題でもないんだから、ちゃんと自分で答え、出さなきゃ。あとヒッキー、ゆきのんの真似やめて、キモい」

 

 言いつつ、さっきから俺の隣に座った由比ヶ浜が俺の袖をくいくい引っ張りまくってくる。

 名前呼びと、頼られたのが殊の外嬉しかったらしい。やだやめて、くすぐったくて仕方ない。

 あとキモくないからね? べつにキモくなかったよね? …………キモいか。

 

「そっかー……まあ、これは奉仕部に言われたらしゃーないわなぁ……。おしっ、んじゃあいっちょやってみるべ! 海老名さんのこと好きだし、やっぱ愛は一途っしょぉ! お互いがんばっしょ、ヒキタニくん!」

「あ? なんで俺───」

「だってさっき、由比ヶ浜のこと名前で呼んでたべ? つまりそういう関係っしょ?」

「へっ!? あ、いやあれは《クイィイ……!》…………ああそうだよそういう関係だよ」

 

 袖、めっちゃ引っ張られてる。やめて伸びちゃう千切れちゃう。

 

「おーし! んじゃあ俺これからいろいろ片づけてくるわー! 邪魔してごめんなー!」

 

 そうして、戸部は元気に去っていった。

 のちに、戸部をめぐっての相模グループと葉山グループの熱い抗争が始まったり始まらなかったりなんだが、俺には関係ないのでスルー。

 俺はといえば、由比ヶ浜を頼って以来、やたらと由比ヶ浜が踏み込んでくるようになり、やがてその勢いに負ける形で付き合うことになり、今では完全に心まで溶かされている。

 いや……だってやばいんですよこのお団子さん。

 キモいとか言ってた時代が懐かしいってくらい尽くしてくれて、なんか返してやりたいと思って行動すれば、それにまで全力で尽くしてくれて。

 溶かされるなってのが無理だろこれ……なんかもう好きすぎて、可愛すぎでやばい。

 そうしてお互いがお互いに尽くす関係に到り、現在……自他ともに認めるバカップルをやっている。

 

 あ、ちなみに戸部は相も変わらず海老名さんを追っかけ、そんな戸部を女子Aがおっかけ、を続けているらしい。

 結婚式にまで追っかけて来た時は悲鳴が漏れかけた。

 さっさと決着つけてあげて、戸部。

 

「いやぁ! 俺ちゃんと断ってるんだぜー!? っべーとかふざける暇もなく真面目に! むしろ助けてくださいヒキタニさん!」

「人の結婚式に問題持ち込むなって言ってるんだよ……頼む、マジで」

「あー……それなー、それほんとごめんなー……」

「やー、でもヒッキー? とべっちだって悪気があったわけじゃ───」

「ちなみに結婚式に問題を持ち込まれた新郎新婦が喧嘩別れする確率って、割と高いらしいぞ」

「とべっちひどい!」

「ほんとごめん!!」

 

 実際、ほんとに高いらしいから笑えない。

 こっちに直接関係ないからって、相手の友人のトラブルを持ち込んだーとか親が言いだせば、その時点でもう問題なのだ。

 幸い、女子Aはすぐに捕らえられたし、それで終わらせるほどお互いの両親が冷めた性格してなかった。

 結婚式は大いに盛り上がり、俺と結衣は今日も青春の先を幸せなままに歩いている。

 

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