どこにでもあるようなガハマさんとヒッキーのお話   作:凍傷(ぜろくろ)

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なんかいろいろ混ざってます。
SS全部設定をほぼごちゃ混ぜたものです。
もちろんクロス系も混ざってるのでカオスです。
ただのお遊びなので、続く予定はありません。


ごちゃ混ぜた結果①

 秩序の消えた混沌の町、千葉県千葉市美浜区腐眼通り。

 刺激を求める少年たちに安息はなかった。

 『愚者(フール)』とはそういった暴徒たちのことである。

 徒党を組み、組織化されたチームどうしで日々争いを繰り返していた。

 街に住む裕福な者たちにとって、愚者という存在はただの厄介者でしかなく、チームをたばねるボスたちの首に多額の賞金をかけ、楽しむ者すらあった。

 だが、自分の首にかけられた賞金の額など、彼らにとってはただのステータスシンボルでしかなかったのかもしれない。

 

  カオスな街である。

 

「オラオラ子供ォさっさと出さンかいクラッ!」

「その若さで墓石入りとうなかろうがオォ!?」

「俺たちゃ親切で言ってンだよ! ……どっちみち盗られンならよォ……ケガする前のがよかねぇか? ン?」

 

 カタッ……ポシュッ。

 

「そうそう、それでいンだよボケが…」

「ホッホォ~、持っとるのォォォォ」

 

 

───……。

 

……。

 

 

 

「パパー! あさりがしっかり砂吐いたよー!」

「これであとは海水から出して、濡れ布巾をかぶせてしっかりとコハク酸を出させることで完璧に仕上がる……! あさりの処理もしっかり完璧……これぞジャスティス」

 

 ドーモ初めまして、ニンジャヒキガヤーです。

 本日は晴天、ところによりはるちん。

 今日も元気な比企谷絆がお送りします、ヒューマンドラマの始まりです。

 ええまあただの一日ではあるんですけど。

 

「あのな……なんなんだよさっきのやり取り。なに? キャンディなの? バド・ワイザーなの?」

「たまにはハメを外したくなる時だってあるのです。さぁさそれよりパパ! 開店準備かんりょー!」

「どこからでもかかってきなさい……!《グッ……!》」

「美鳩、お客をターちゃんポーズで待ち構えるのはやめなさい。それより和香(のどか)(みどり)は?」

「和香ならお手拭きタオル取りにいっておるですよ? そしてこの絆は客を迎え討つ準備のため、呼吸法にて腹筋と、さらにその奥のインナーマッスルを刺激中! ……熱くなってきたぜぇ……!」

「ちなみに翆はお冷の準備中。そして美鳩はゴルフでいうプリショットルーティーンのように、お決まりの姿勢を取ることで肉体を活性化。なお、ルーティーンとはルーチンともルーティンとも言い、ルーティーンは主にスポーツ全般で呼ばれるものであるが故に、動作という意味で美鳩はルーティーンと呼ばせてもらう。喝!《クワッ!》……動作だけで既に熱き我が肉体、とてもジャスティス」

「……無理に熱くならんでよろしい。で、お前たちは? 肉体の準備はまあある意味スポーツ並みに動くから納得だが、開店準備の方は?」

「サー! 貝を見守っておりました! ちょいと脅せばゴハァと砂を吐き出す姿はお笑いだったぜ!」

「ゴハァと砂を吐く様を見届け、今はコハク酸をじっくり出させているところ。ちなみにお手拭きとお冷が揃えば準備は完璧。実にジャスティス」

「まあ、今日の日替わりはあさり使うから、準備って意味ではまちがってないわけだが。二人で見守るほど重要でもねぇだろ」

「ガマの油ですよパパ! 見つめることで緊張を高めさせ、呼吸を行なわせるついでに砂を吐かせるのです! あとはホラ、オラオラ子供ォとか脅すことで、より一層の緊張を」

「そして今は窒息させることでコハク酸。美味になるよう手段を用いられた食材は本当に美味しく尊い。美鳩はそれらの食材と、その技法を発見した先人に敬意を抱きます。表しませんが」

「そこは表してやりなさい」

 

 喫茶ぬるま湯。

 それなりに広い街の一角にぽつんと……っていうのはなんか嫌だから違うと言うけど、ともかく存在している喫茶店。

 そこがわたしたち比企谷家の住居であり仕事場だ。

 両親に比企谷八幡、比企谷結衣、子供にわたしこと比企谷絆と双子の美鳩、その妹として和香が居て、パパの妹として比企谷小町。……は、一緒に住んでないけど。

 わたしたちの関係は結構複雑……なのかな。

 じゃあちょっくらまとめダイジェスト。ざっくりと軽く、されどややこしい回想入ります。

 

 

 

-_-/回想みたいなややこしいダイジェストチックななにか

 

 えーと、そもそもパパとママの出会いは幼い頃まで遡り、とあるパパの誕生日の翌日にまで飛ぶ。

 

「はっぴばーすでー、つーゆー♪」

 

 親からの扱いが酷かったパパは家出まがいの冒険をして、とある公園でママと出会い、家族の代わりに祝ってくれたママにハートキャッチ。

 

「……えと、はーくん?」

「おう! 結衣にはそう呼ばれてる! 比企谷八幡だからはーくんだ! よろしくな! えーと、ゆきゆき?」

「それはやめて」

「お、おう」

 

 以来、幼馴染として一緒に過ごし、途中で雪乃ママや隼人さんを加えた、4人の幼馴染として仲良く過ごす。

 

「ありがとう。もう少しで俺は、幼馴染を見捨てるような男に成り下がるところだった……」

「なりさがるとか難しい言葉知ってるなぁ……べつにいいだろそんなの。誰かを悪者にしなくちゃ人の幸せを認められないような世界で笑ったって、きっと心の底から笑えないだろうし」

「……そうだな。えーっと…………そういえば君、名前なんだっけ。俺は葉山隼人だ」

「比企谷八幡だ」

「そっか。よかったら友達にならないか? ていうかこの学校の生徒じゃないんだよな? どこに住んでるんだ?」

「……《ぽしょり》」

「キミこんな時間にここでなにやってるんだ!?」

「幼馴染を助けに来た! 文句あるか!!」

 

 パパとママが恋仲になったのはそれこそ幼稚園か小学の時で、幼い日にママが欲しそうにしていた縁日の指輪を贈っての告白から深い仲に。

 

「おっちゃん、その指輪、これ全部と交換してくれ!」

「用意がいいなおい……どうしたんだよこれ」

「祭りだからトレード出来ないかって持ってきた!」

「……お前さん、さっきの嬢ちゃんの友達かなんかか?」

「お、おうっ! あいつに贈りたいから頼む! てか早く! 気づかれたら恥ずかしいだろ!」

「かっかっか! おうおうおう青春じゃねぇか! いいぜ? ただしそれ全部とだ」

「全部かよ! ……いいけど」

「作ったのが俺の兄貴なんだ、嬢ちゃんが成長してつけられなくなったら、この番号に連絡しな。中井出って言やぁわかるからよ」

「なかいで……な。よし覚えた!」

「んで? いつ渡すんだ? 今すぐか? ン?」

「け、結婚するまでには渡してやらぁ!」

「だっははは! そうかいそうかい!」

 

 や、その前にとんでもないことが起こったりもしたらしいんだけどね? そのとんでもないこと、っていうのが本当にとんでもないくせに、実際にあったことだから困る。ま、それは一旦置いといて。

 

「結衣、その……大丈夫か?」

「ん、へーき。もう、その質問もう5回目だよ?」

「だだだだってな……! そういう人が居たって話はあっても、実際に結衣がそうなると……!」

「大丈夫、ちゃんと産むよ。この日のために頑張って体力もつけたんだし。それに、こういうのがちゃんとかたちになるって……嬉しいから」

「くそ……なにか出来ねぇかなぁ俺……! なにか……!」

「大丈夫だよ、はーくん。はーくんはこれから先、あたしを何度も救ってくれるから。あたしはそんなはーくんだから、もっともっと好きになれたんだし、もっともっと好きになっていくんだ」

「なんだよそれ……まるでもう絶対に起こること、みたいに言って」

「ん、ぜ~ったい助けてくれるから、安心出来てるんだ。これは絶対。だから、また……あたしを助けてね?」

「助けるし守るし幸せにする! だから今出来ることが欲しいんだって!」

「じゃあ……隣に居て?」

「~~……ああもう! それしか出来ないのかよぉお……!」

 

 二人の仲があんまりにもいいからと親同士も意気投合、13で子供が欲しい、なんて話になって、実際にわたしと美鳩が産まれた。え? パパとママ? 今年で29歳ですよ?

 

「そう、ちゃんと結衣は双子ちゃんを産めたのね?」

「ああ。安産だったそうだ。……お前も、頑張ってくれてありがとう」

「さすがにちょっと疲れちゃったわねー……でも……うふふ、かわいい男の子。どんな子に育ってくれるかしら~♪」

「13も離れていると、結衣も戸惑いそうだな」

「今じゃ陽乃ちゃんも娘みたいなものだし……なんだか急に大家族になっちゃったわね」

「それでも支えるさ。これからも、支えさせてくれ」

「あらあらあら、それは私の台詞よ? ふふふっ」

 

 ちなみにその時、ママのママ、おばあちゃん……って言うほど歳とってるようには全然見えないんだけど、関係上はお婆ちゃんなママのママ、愛称マママも妊娠。わたしたちからすれば叔父となる男の子を産んだ。

 

「にーちゃんねーちゃん! みはとのことしらない!?」

「ん? 今はママのんのところじゃないか? あの人美鳩のこと好きすぎだから」

「それより庵~? 外から来たら手を洗う、でしょー?」

「ねーちゃんだってあらわないとき、あるくせにー」

「うぐっ……あ、揚げ足とらないの!」

 

 それが由比ヶ浜庵という男の子。同い年だけど叔父様だ。美鳩のことが好きらしい。相手にされてないけど。

 ……っとと、お客さんきた。ダイジェスト思考もいいけど、仕事もしなきゃだね。

 

「おっとお客様一号だ。おっし、元気になー」

「らじゃーですパパ! いらっしゃいませイカ野郎!!」

「だからバラティエ接待はやめろというのに……」

 

 いらっしゃったのはある日に助けた不良クンだった。

 名前なんていったっけ。えー……つ、つー……ああそうそう、都築さんと同じ苗字だったね。都築槻侍(つづきつきじ)クン。同い年。

 

「あ……よ、よっす」

「よく来たなコノヤロー! こちらの席へどうぞ! 注文があるなら言うがいい! 手遅れになっても知らんぞーーーっ!!」

「急かすなよ! えっ……と……ぶっ……ブルーマウンテンとティラミスセット、たにょむ」

「ブルマをチラ見ですね!? ヘボイモ恐れ入ります! あと噛んだことはあえて無視するものとする! ざまぁありません!」

「わざと!? ねぇお前わざと言ってんの!?」

 

 知り合いや常連、付きまとう粘着度の高い相手には、結構遠慮はしない。

 接待は楽じゃないのです。

 え? こやつ? なんかわたしの行動を逐一観察してきてるから、きっとどこぞのスナイパーに違いない。油断ならぬ存在よ。だがこの比企谷絆、その程度の監視で動揺するほど愚かではないわグオッフォフォ……!!

 

「パパー、ブルチラだってー!」

「───《モシャアッ!!》」

「うぉおおおいい!? マスター殺意の波動放ってるからマジやめて!? 本気で殺されかねねぇだろうが!」

 

 ちなみに。パパは世界的に、は違うかもだけど、千葉市にその人ありと謳われた伝説の超人、ニンジャヒキガヤーである。いきなりなんば言いよっとかとか思うかもだけど、とにかく普通じゃないのだ。あ、手ぇ空いたしまたダイジェスト回想いこうか。

 

「一人でレベル4800とか……やだ、ユニークすぎて笑えない……! 茅場って馬鹿なの? ねぇ馬鹿なの?」

 

 とある出来事がきっかけで超人的な能力を手に入れた、とかで、えーと……レベル4800? がどうとか。

 

「孤独であればあるほど強くなる、ねぇ……。結衣も雪乃も隼人も居ねぇし、他のやつらからも誘われるわけでもねぇし……いや、ソロの方が気楽でいいんだけどね。つかなんなのいきなり、気がつけばゲーム世界とか。異世界転移でぼっちとか笑えねぇよほんと……」

 

 水の上も走れるし、本気で拳を天に振るえば雨雲が吹き飛ぶところなんか、どこの地上最強のヨメだとザイモクザン先生がツッコんでた。まあそのつまり、一旦置いておいたとんでもないこと、っていうのがこれだ。

 

「たった一人で、この第100層までたどり着いただと……!?」

「あんたが茅場か。とりあえずお前ハイスラでボコるわ」

「ほう? 随分とまた余裕なものだ。たった一人で」

「せいやーーーっ!!」

「うぬっ!?《ガキゴシャアンッ!!》なっ……盾が!? シールドブレイカーか! だがすぐにストックを」

「せいやーーーっ!!」

「ぬおっ!?《ガッシャアンッ!》っ……アーマーキラー! まさか君は、すべてのLAやレアアイテムを」

「せいやーーーっ!!」

「ちょ待《ゴガシャァンッ!!》ブ、ブレイクブレイド!? 待て! 待ちたまえ! そ」

「せいやぁあああっ!!」

「《ザゴォンッ!!》っ……かはっ……!!」

「……、あれれー? おかしいぞー? HPバーがレッドにならないぞー?」

「~~っ……ぐっ……す、すまな───」

「イカサマ、チートには罰を。運営がそれやっちゃあいけないよな? じゃあ……とりあえずお前、リアル裏蓮華の刑な?」

「ままま待て! 待ちたまえ! 私の負けだと《ドゴゴシャバゴボゴガンゴンガン!!》ギャアアアアアアアアア!!」

 

 異世界転移、なんてものを本当に体験してデスゲームをクリア、そこで得た経験がそのまま身体能力として染み込んじゃってて、そんなことを何回か繰り返したとか。

 

「あー……これ、お前の方だと何回目だ?」

「5回目……かな」

「そか。俺はまだ二回目なんだけどな……」

「はーくんはどうして、毎回あたしを助けてくれるの?」

「お前のその背格好、小学五年あたり……だよな。まあ、もうちょいだろうから待っとけ。俺の方から告白するだろうから」

「えっ……《ポッ》」

 

 しかもその繰り返した数だけママを助けるに至り、平行世界がどうとかじゃなく全部同じママだったからさあ大変。子供の頃のママを助けてくれたのが青年のパパで、そんなパパに守ってもらってたママはパパに憧れ、面影がある元の世界の子供のパパが当然気になる。

 

「~~……《ちらちら、ちら?》」

「……なぁ雪乃。最近、結衣が俺のことちらちら見てくるんだけど……もしかして、バレてる?」

「だとするなら、早く告白することね。いつまでも渡さないままじゃ、指輪がもったいないわよ」

「わわわわかってらぁ!」

 

 さらに言えばそのあとも異世界転移を繰り返して、そのたびにパパに助けられてれば……そりゃ告白される前から好きになってるよね。あ、でもどのみちパパのことは好きだったみたい。それこそ、子供の頃から。だからまあ、結果はより一層好きになった、ってことくらいだ。

 

「で、今度は雪乃も居るわけね……それとも毎回居たのか?」

「あなたは……はーくん? 随分と背が高いけれど……」

「おう、今年で二十歳のはーくんだよ。そっちは中学になったばっかか?」

「え、ええ……ところで、その……この世界は、いったい……?」

「モンスターハンターの世界へようこそ、だ。しかも無印だ。封龍剣が栄えるな」

「あ、ゆきのーん! ゆきのんもこっち来てたんだ!」

「あっ……ゆーちゃん……!」

 

 雪乃ママも似たような経験をして、パパやママほどじゃないけど不思議な力を持ってる。あ、パパは傷とかも癒せたりしちゃうから、一時期は救助活動もやってたそう。

 あ、その似たような経験には隼人さんも巻き込まれることになったみたいで、話してくれた時は苦笑いから表情が変わることが無かった。苦労したんだろうなぁ。

 

「俺ももっと経験を積んで、八幡のように武器を振るえるようになりたいな……」

「私としては、ゆーちゃんのように素早く動けるようになりたいわ」

「んー……あたしの場合、えっと、SAO? の世界で、はーくんに手伝ってもらっておまけで100レベルになっただけだから……」

「大剣を二刀流とか、八幡は規格外だな……」

「アイテムストレージに武器も入れられるから、あれはあれで楽なんだけどね。ところでやっくんはこれが初めて?」

「ああ、うん。急に知らない景色だったから驚いた」

「はーくんはモンスターハンターG、とか言っていたわね」

「しかしあの武器は強いな……! モノブロスがあんなにも嫌がっている……!」

「あれ、もう切れ味レッドゲージの大剣だから、鈍器でしかないんだけどね……あ、角折れた」

「そういえば、真紅の角を欲しがっていたわね……。はぁ、あとは惨殺ショーかしら」

 

 救助隊の人は続けてほしかったらしいけど、パパはやりたいことがあるからってそれを拒否。たまに道行く人を助けることはあっても、千葉を護るヒーローになりたいわけじゃないって、今は喫茶店のマスターだ。

 

「ちっくしょう! 村が……! アミィ! アミィーーーッ!」

「父さん! 母さーーーん!!」

「隼人! 村人の避難は!?」

「完了してる! そっちの方はどうだ!?」

「アドネード親子はしっかり救助した! けどまずい! ペンダントが既に敵の手に渡ったらしい!」

「ペンダントって……あのペンダントか!」

「あの……っ! あなた達はあのペンダントがなんなのか知ってるんですか!? いや、それよりも父さんと母さんは無事で───!?」

「アミィは!?」

「だ、だいじょぶ! へーきだから落ち着いて!?」

「今は森の方へ避難してもらっているわ。それよりも……ペンダントが奪われたのは痛いわね……。ダオスにも母星を救うという目的があるとはいえ、話をするだけで納得してもらえるとも思えないし」

「やっぱ過去へ飛んで、ユニコーンロッドでユグドラシルにバリアーかけるしかない、か……」

「ユニコーン……あの、清き乙女の前にしか現れないという……」

「~~……《かぁああ……!》」

「……私が行くしかないのね」

「ゆゆゆゆゆゆきのん!? 今べつにそれ言わなくてよかったよね!? よかったよねぇ!?」

「13で子供とは、俺も驚いたよ。早く帰ってやらないとな、八幡? 絆ちゃんと美鳩ちゃんのためにも。君が今何歳なのかはわからないが」

「ほっとけ」

 

 ともかく。結構複雑な関係なのだ、比企谷家と由比ヶ浜家と雪ノ下家と葉山家は。

 

「いいから……僕に構うな! 今さら、どのツラを下げて戻れっていうんだ! それに、僕が裏切ったと知られれば、マリアンは……!」

「え? マリアンさん? もう救ったから平気だよ?」

「ヘ?」

「あいつらが油断するのをずーっと待ってたんだよ。だから、リオン……いや、エミリオ・カトレット。お前がここで死ぬ理由も、裏切りがどうとか悩む必要も一切無し。ほれ、行くぞ」

「え、あ、いや……だとしても! 今さらっ……!」

「じゃあ謝れ。悪いことをしたって思うなら、許してもらえるまで、罪悪感が消えるまで何度だって。死んだ方が楽ってのは無しだ。ていうか早く。さすがに洞窟ごと崩れたら、俺でも出られるかわからない」

「~~……僕はっ……!」

「過去なんて断ち切っちまえ。そんで、姉とか友人とか仲間に心許して、きちんと笑える自分になりゃいいだろ」

「僕はっ……!!」

「生きたいか生きたくないか!」

「いっ……生きたい! 僕はっ……あいつらを、信じてみたい!! だから……だから! 僕を救ってくれ! 頼む!!」

「……! はーくん!」

「よし! 昇降装置を追うぞ! 結衣! リオン! 俺に掴まれ! ていうか結衣はべつに残らなくても……!」

「だって! ……危ない目にあって、もし死んじゃうんだとしたら……一緒にって、思うもん……!」

「……~……《かぁああ……!》う、嬉しいけどな……! 娘たちのことも考えてくれな、ほんと……!」

「それ言ったらはーくんもだよ!」

「ゴメンナサイ」

「こんな時にまで夫婦喧嘩はやめろ!」

「うるさいわ! 元はと言えばお前がごねるから悪いんだろうが! ……よしっ! んじゃあ昇降装置目掛けて~~……!!」

「おいっ! 水が来たぞ!」

「超・跳躍!!《どごぉんっ!!》」

「うわぁああっ!?」

「~~っ……」

「そして昇降装置に蹴り!!《がしゃあんっ!! ……スタッ!》───よし! 急ぐぞ! あんま遅いと置いていかれる!」

「ああ! 早く僕を下ろせ! すぐに走《ギャオ!》うわぁああっ!?」

「喋るな舌噛むぞ!」

「どっ……どういう速度しているんだお前は!!」

「よし着いた! ……こんな速度だが?」

「───リオン!?」

「リオン!」

「ぅ、あっ…………スタン……、姉さ……ルーティ……」

「じゃ、行こう」

「うぇええっ!? ちょ、はーくん!? 感動の再会は!?」

「いやいやなに言ってんのちょっと、そんなのは船の中でやろう? じゃないと潰れるよ? いやマジで」

 

 幼馴染だった四人だけど、一度高校でぶつかり合ったことがあって、でもそれを奉仕部って部活の関係を通して和解、解決に到るやより一層に深い絆を認め合って、現在の仲に到ってる。

 

「本物が欲しい……ね。今ならわかるわ、その言葉の意味が。狎れ合いでは足りないものが確かにあった。私たちは、それに気づくことが出来なかった」

「うん……だからこうしてぶつかって、言い合って、ぶつかり合って、重ならない気持ちを重なるかたちに変えてくんだ。……はーくんだけが悪者になったってだめ。誰かを蹴落とさなきゃ幸せになれないなんて、そんな幸福、あたしは欲しくないよ……」

「そうだな……俺達はまちがってしまったけど、こうして顔を向き合わせて、伝え合い、手を繋ぐことができたから。今度はそうして出来たこの関係を、崩さないように支え合っていこう」

「つーかな、隼人。元々お前のグループのやつらがだな」

「いや、それを言うならお前が」

「二人とも。……言いたいことがあるのなら、全部をここに吐き出しなさい。全てまとめて、解決してしまうから」

「そうそうっ、今さら外の誰かの言葉で、あたしたちが迷う必要なんてないんだしさ、くっだらないことも楽しいことも、全部まとめてあたしたちで解決しちゃお? あたしたちだけでダメなら、陽乃さんメンバーで解決すればいいんだし!」

「まあ、彩加は外見はアレでも妙に頼りになるところとかあるしな」

「そこで真っ先にさいちゃんなんだね……」

「陽乃さんか。俺達の高校卒業に向けて、いろいろと練っているらしいから、これから忙しくなるだろうけど……頑張っていこう、八幡。俺達が手を組めば、出来ないことなんてそんなにないさ」

「まったくない、って言いきらないところがさすがだなおい」

 

 その過程、ってよりは高校一年の時に中学生だったいろはママとパパが本屋で出会って、中々賑やかな関係になってる。っとと、また客だガッデム、いやいいことなんだけど。

 

「……っしゃぁせー、っさぬるぁーゆよーそー……」

「やっ……やる気が微塵にも感じられない!! 友達が来たってのにこの扱いはないでしょちょっとー! 絆!? 絆ー!!」

 

 やってきたのはわたしの友人でした。適当に案内しましょう。

 




……うん、翆は絆たちと同年代の方が扱いやすいと思いますじゃ。
うーん失敗した。

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