どこにでもあるようなガハマさんとヒッキーのお話   作:凍傷(ぜろくろ)

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きっと、比企谷小町に糖分は要らない

-_-/比企谷八幡

 

 完全に止んだと思っていた雨がもう一度やってきて、濡れ鼠になる前に足早に家に辿り着くと、俺と小町はただいまを。

 少し遅れて結衣がお邪魔しますを口にしようとしたんだけど、小町がそれに待ったをかけて言う。

 

「結衣さん? どうせあと二ヶ月程度の話なんですから、もうほら、ね?」

「二ヶ月……はうっ!?《ボッ!》」

 

 二ヶ月と聞いて、結衣の顔が一気に赤くなる。

 瞬間沸騰なんてゲームや漫画の中だけの話だろとか思っていたかつての俺……結衣と付き合う前だったら、きっといつまででもキミを信じていられた。

 「でも」とか「あの」とか、胸の前で人差し指をつんつんこねこねしている恋人が可愛くて仕方ない今の俺、なんとかフォローくらいしなさい。

 

「じゃあ……その。ヒッキー?」

「はひゅん!? ~……ぬなっ、ななななんだ?」

 

 慌てそうになる心を深呼吸で押さえて、なんとか普通の声色で対応。

 よし大丈夫、俺冷静。冷静冷静超冷静。言っとくけどアレだよ? はひゅんとか、とある部族の鼓舞の合図だからきっと絶対たぶんそうだといいよねメイビー。

 そうだよな、ただまだ他人の家のここだけど、そこに入って“ただいま”を言うくらい───

 

「ヒッキーがあたしの家に入る時、おんなじようにただいまって……言ってくれる?」

 

 はい無理ィイイイ!!

 “ただ”だの“だけ”だの言ったの誰だよ責任取って結衣を幸せにしろ俺でしたごめんなさい!

 せっ……責任か……! いや、もちろん結衣に関する自分が関係した出来事なら、全部責任を取りたいって思ってるっていうか取る。

 だったら答えはYES以外にないじゃないか。躊躇はいらないだろこれ。よし落ち着いた。

 

「だひょっ……大丈夫、ちゃんと言う」

「お兄ちゃん……そこで噛まなきゃ問題もなかったのに……」

「小町ちゃん? そうやってお兄ちゃんの失敗をわざわざ掬い取って指摘するのほんとやめて? お兄ちゃん恥ずかしさで泣いちゃうから」

 

 “大丈夫だ、問題ない”なんて、そう上手くはいかないものだ。

 大丈夫でも問題は残るのが現実ってもんですし。

 多くの場合は“大丈夫”が強がりで、目の前に君臨するのが“問題”だよね。

 ほんと、人生って容易くない。

 そんな大慌てで混乱中の俺をよそに、一歩を踏み出した結衣が

 

「……ただいまっ」

 

 上目遣いで俺を見上げ、どこか怯えと遠慮を混ぜた顔で言うもんだから、もう、すぐに抱き締めた。

 ひゃあ、なんて可愛い悲鳴を上げる彼女を、まるで自分の子供を溺愛する親のように愛でる。

 

「はーいはいはい、家に入るだけで恋愛スイッチ入れてないで。小町お風呂の掃除とかしてくるから、お兄ちゃんは結衣さん案内したげて」

「……たまに思うけど、なんで“してあげて”が“したげて”になるんだろうな」

「そんなゴドムとソドラが重箱の隅をつつくような疑問はいいからさ、早く」

「お、おう」

 

 疑問を口にしたところで、“知らねーよ”としか返ってきそうになかった。

 結構好きなんだけどね、ゴドムとソドラのあの空気。

 ともあれ案内……といっても勝手知ったるなんとやらだよな。

 一度や二度じゃないし。特に俺の部屋は。

 

「じゃあ……」

「……うん」

 

 小町が投げて渡したタオルを結衣の頭にバサッと被せて、俺の分も受け取る過程。顔を赤くして、俯き合って、二人して階段を上がってゆく。

 自室前に着くとそのまま開けて、中へ。

 掃除とかは普段からマメにしている。何故って、いつ来てもいいように。

 いかがわしいもの、誤解されるようなものは一切、重要なことだからもう一度言うが、一切置いていない。

 重いと思われようが、この身、この心は結衣に捧げた。某プロファイルゲームのベリナスさんが神にいろいろ捧げているように、俺も結衣に。

 元々そういうつもりだったんだ、当たり前だろう。

 最後に信じてみようってつもりで踏み込んだ自分だ、裏切られるまで裏切らないって気持ちを前提に、馬鹿なくらい正直に結衣に想いを捧げている。

 これでダメならもう無理だと、あの病室で決めたんだから。

 あ、もちろん結衣が引かない程度に抑えております。鬱陶しいくらい押し付けたら、それこそ引かれるってわかってるし。もう散々経験したことだ、こればっかりは仕方ない。

 

「っと、いつも通りだけど、好きなところに座ってくれていいから」

 

 いつも通りと言った通り、机に鞄を置きながら言うと、結衣も「じゃあ」って机にリュックを置いて、にこーっと笑って俺の腕に抱き着いてくる。

 リュックはいっつも机の手前の床に置こうとしていたのだが、何度も机の上でいいと言ったお蔭かようやく置いてくれるようになった。

 そんなどうでもいいことを考えている内に結衣に引っ張られて、ベッドへ───といきたいようだったが、やっぱり少しとはいえ濡れているのが気になったのか、途中でぴたりと止まった。

 少し悩んだ末に俺の胸に抱き着いてきて、ぐりぐり~っと顔をこすりつけてくる。

 俺も、誰も見ている人が居ないのをいいことに、思うさま背中に腕を回して、ぎゅーっと抱き締めた。

 

「好きだ」

「うん」

「好きだ」

「うんっ」

「~……好きだ~……!」

「んんぅう~~~……!」

 

 数秒、破壊衝動にも似た、相手をめちゃくちゃにしたい欲求が溢れてくる。

 それを抱き締め撫で回しキスを降らすことで落ち着かせて……いや、これもう落ち着いてないでしょ。

 ああもうやばい、好きだ、大好きだ。

 雨で少し濡れた水分が体温で軽く蒸発すると、それと一緒に結衣の香りが届き、それがまた衝動を強くして、それを押さえるように相手を求める。

 理性で抑え込もうとしても、抑え込んでこれである。

 正直土曜の雨の日とか一緒にベッドで抱き合っている、なんて時は、常に理性様が欲望とバトルしている。

 もちろん毎度理性様が勝っている。

 何故って、無防備に信頼を置いてくれる恋人を傷つけたくないって、心が深く意識すると、欲望が“せやな”って去っていくからだ。

 すごいネ、人体。欲望までもが結衣を大事にしてるって、それはもうすごいことですヨ?

 ……だってな、やっぱり嬉しいって思う。あの日、初めて俺に身体を預けたまま眠った結衣を見た時、溢れ出した感情と同じだ。

 嬉しいんだ、そんな信頼が。だから、欲望には勝てる。

 

「結衣……」

「ヒッキー……」

 

 少し水を吸った黒い髪を指で梳いて、被りっぱなしのタオルでやさしく撫でる。

 結衣は気持ちよさそうに頭を委ねてきて、安心しきって閉じた目に、俺も心やすらぐのを感じる。

 きゅうっと胸に抱き着き、顔だけで俺を見上げる結衣は、ほにゃりと顔を緩ませた笑顔。

 俺は両手でやさしくタオルを動かして、少しずつ水滴を拭う。

 しかし口は空いているわけで、少し動いてはちゅっ、ちゅっとキスをした。

 好きが溢れると好きを口にして、抑えきれなくなるとまたぎゅうーっと抱き締めて撫でまわして。

 また髪を梳いて、撫でて、キスをして。

 たっぷり時間をかけて髪を乾かす頃には、好きすぎて熱くなっていた体温で水滴は乾いていて。

 寒いどころか熱くなっていた俺達に、小町から「お風呂沸いたよー!」とのお報せ。

 さすがに一緒に入るほどの勇気はなく、どこかどころかしっかりと名残惜しさを残し、おずおずと離れる結衣を俺も手放して、いっておいでとばかりに送り出す。

 

「………」

 

 見送ってからしばらくして、喉がカラカラだったことに気づいて、水を飲みに階下へ。

 冷蔵庫を開けてミネラルウォーターのボトルを開けると、普段は使わない大き目のグラスに注いでガバガバと飲み干した。

 …………おぉお……冷えていく。いろいろと。

 

「おろ? お兄ちゃんも降りてきてたんだ。あ、小町にも水一杯ちょーだい?」

「おう」

 

 小町には普通のサイズ。

 俺はもう一杯デカいのに注ぐと、それをガヴォガヴォと飲み干す。

 

「雨に濡れたってのに熱そうだねぇ」

 

 そんな俺を見て、にししと笑うこの妹は本当に小悪魔系でいい性格をしていると思う。

 くぴくぴと小さなグラスで水を飲む妹をよそに、頭の中は結衣でいっぱい。

 深呼吸を繰り返すと、“風呂に入っている恋人”という文字からようやく思考を引き剥がせた。

 

「なんか、お兄ちゃんと結衣さん見てると、恋人同士っていいなぁ~って思えるよ。小町もいつか、そういう恋とかしてみたいなーって」

「ん? なに、候補とか居るの?」

「居ない居ない、今時のオトコノコなんてさ、み~んな格好いいとこ見せよう~とか、俺すげぇだろとかそういうこと考えてる人ば~っかだよ。それがだめだっていうんじゃないけどさ、いきすぎると鬱陶しいっていうか。ほら、なんての? 相手が強く出られない状況だと、あからさまに見下して見る人とか、居るでしょ? そーゆーのが多いんだよね。小町はそういう人とは合わないのです」

「まあ、嫌だよな、それは。じゃあ小町的にはどういう相手がいいんだ?」

「んー……そうだなぁ。まず好きでいてくれることは大前提で」

「うん」

「そう思ったらちゃんと言ってくれて」

「うん───あ、おう」

「大事にしてくれてー……」

「おう」

「誕生日とか記念日はちゃ~んと覚えててくれて」

「ふむふむ」

「抱き締めてほしい時とかはなんとな~く察して抱き締めてくれたりとか」

「……いきなり難度上がってない?」

「甘えたい時とかは黙って甘えさせてくれたり」

「………」

「努力したいって思ったら、手を繋いで一緒に歩いてくれるような……」

「……すげぇなそれ。ハードル高いっつーか理想高すぎじゃね?」

「…………」

「?」

「結衣さんは幸せ者だね」

「そ、そうか? いや、俺もまだまだ頑張らないとって部分があってな……。じゃないとまだまだ足りないっつーか……」

「あと追加。相手のことを知る努力をやめないところがあると嬉しい」

「男大変だなそれ……」

 

 小町、恋人とか出来るのかしら。

 さすがにかなり心配になった。いや、俺が言えたもんじゃないとは思う。

 俺だって結衣と出会えなければ、誰かと恋仲とか無理だったんじゃないでしょーか。

 ……無理だったろうなぁ。

 相当特殊な状況下じゃなけりゃ、そもそも俺が女性と“知り合う”ことさえなかっただろう。知り合う。ここ重要。

 俺だけが一方的に知った状況は、常に失敗してきた。だから重要。

 “知り合える”ってのはとても大事なことだ。

 相手が俺を知ろうとしてくれるなんてマジ奇跡な。

 だから俺は結衣を知って、俺のことを知ってほしい。

 その努力を、ずっとやめたくない。

 

「お兄ちゃん、なんか結衣さん用に飲み物とか用意してあげなよ」

「だな。あんまり冷たすぎるのもよくないだろうし……」

 

 よく眠れるように、とホットミルクを用意。

 あとは温めるだけの簡単な作業です。

 そうしてしばらく小町と話して、そろそろかな、といった時間に温めを開始。

 結衣用パジャマさえ常備してある比企谷家に隙はない。

 風呂から出て、しっかりパジャマ姿な結衣がやってくるのを確認すると、こしこしとタオルで頭を撫でる中、用意したホットミルクを差し出す。

 

「ぁ……ぁりがと……」

 

 ぽむ、と既に風呂の熱で赤かった顔がさらに赤くなる。

 ソッとマグカップを受け取った結衣をソファに案内すると、座らせていつも通りに髪のケア。

 これも慣れたもので、しっかりと水分を吸収するところから、ドライヤーでのキューティクルケアまでしっかり終えると、既に風呂に入っている小町が上がってくるまではふたりきり。

 そのこともあって、ちょっぴり大胆にホットミルクを含んだままキスをしたりだとか、たまに思い出して思いついたみたいにレモンドリンクを口に含んで、ファーストキスはレモン味をやってみたり。……ファーストどころじゃないけどね、うん。

 結衣が抱き着きたがってもじもじするけど、俺がまだ風呂に入ってないからそれはだめと押しとどめる。

 毎度、この時の結衣の寂しそうな顔には弱い。弱すぎる。しかし耐える。

 代わりに、抱き合わないままキスをする。

 ちゅっ、ちゅむ、ちゅるちゅく、と。

 その流れで、とろんと……高熱の風邪でも引いたんじゃってくらい真っ赤でうつろげな顔の結衣が、そっと俺へ腕を伸ばしてくるんだけど、それをはっしと掴んで却下。

 途端にとろんとした顔が捨てられた子犬に変貌するから困る。

 ちょ、だからやめなさい、俺まだ風呂に入ってないんだってば……!

 べつに汚いとか言うわけじゃないけど、なんか嫌だろ、片方が風呂入ったのにまだ入ってないうちに抱き合うとか。

 え? 匂いが消える? ……我慢なさい!

 ソファに座る結衣の髪を、後ろから乾かしていただけあって、結衣が俺に抱き着くにはソファを越えるか俺を引き寄せるかしなければいけない。

 そのために伸びてくる手を掴んでは、キスを降らせて欲求を逸らしてゆく…………つもりだったんだが、腕を伸ばす要因にしかなってませんでした。

 キスが増えるたびにうーうーと小さく唸られて、涙を滲ませた上目遣いで睨まれて、終いには勢いよく抱き着かれてしまい、首をかぷかぷ噛まれた。

 ここまでされたらさすがに、というもので。

 背中と頭を抱き寄せると、噛まれた首がぺろぺろと舐められ、ぎゅううと抱き締められた。

 その姿を丁度上がってきた小町に見られて赤面。

 慌てることこそしなかったものの、意識しまくりのまま離れて、用意しておいた着替えを手に風呂場へ向かった。

 

 

───……。

 

 

……。

 

 湯船で十分に温まって、なにかの知恵袋で見たからと、指先に冷水をかけてから出る。代謝がどうとかだったっけ? いまいち思い出せない。

 タオルで水滴を拭って、着る物も着れば、あとは脱衣所を出て……部屋に戻ろうと思ったが、水分補給のためにリビングに戻ると、その隅っこにある冷蔵庫から再びミネラルウォーター。

 ……この冷蔵庫も、もうちょいキッチンの傍にあってもいいんじゃないのかね。

 

「結衣と小町は……居ないか」

 

 電気点いてたから居るかと思った。

 となるとトイレ……って考えは無粋なので、水を飲んでドライヤーで髪を乾かしてからきっちりと電気を消して、自室へと移動。

 部屋の前に辿り着くと、小町の部屋から話し声が聞こえたから、それで納得。ちょっとした用事で小町が部屋に招いたんだろう。

 安心して部屋に入ると、電気をつけて───……枕を抱いて、ベッドの上に女の子座りをしている恋人を発見した。

 

「───」

 

 …………へっ!? あれっ!? 小町の部屋に居るの誰!? 幽霊!? 大志だったら血祭りに───あげたら姉にひどい目に遭わされそう。

 とか思ったら、結衣は枕と一緒にケータイ掴んでた。

 ……すぐ近くなのになんで電話で話してるんでしょうかこの人たち。

 疑問はあっても、恋人が自分の部屋で自分を待ってくれてるのって、なんだか嬉しい。

 疑問なんかそっちのけで、えーと……こういう時ってどう言って近づくのがいいんでしょうか。それとも近づかないのが正解なんですか? わからない! 八幡わからないよ!

 視線を彷徨わせて、机の椅子を発見すると、心が砂漠のオアシスを見つけたかのようにふわりと軽くなって───……それに気づいた結衣が、自分の隣をぽすぽすと叩いた。

 ……ハイ、隣に来てほしいそうです。

 いやまあいつものことだからわかってたんですけどね? でもさ、なんかさ、こっぱずかしいでしょこういうの。

 顔が熱くなるのを感じながら、不自然にならないように努めて歩き、その隣に。

 自分のベッドなのに、なんだってこうも自然に近づけないのか。

 恋人がそこに居るってだけで、まるで自分のものではないかのような……抵抗ではなく、神聖な場所に近づく時の妙な見えない壁があるような……!

 ……結局座るんだけどね。うん。

 そうしてベッドの端に腰を下ろすと、待ってましたとばかりに、もう文句はないだろうとばかりに、結衣が抱きついてくる。

 もちろん俺も受け止めて、背中に腕を回して存分に。

 

「~……♪ ひっきぃい~……♪」

 

 これが猫ならゴロゴロ喉を鳴らしているところだろう。

 犬だったなら、尻尾なんて振り回しまくりだ。

 狐ならどうなのだろうか。……とりあえず喜びを体全体で届けることにする。ようするに抱き締めて、背中と頭を撫でて、ぽすんとベッドに倒れたら、あとはもう思う存分に抱き締め合ったままごろごろ。

 少しの隙間があるのも嫌ってくらい抱き合って、時にキスをして、唾液の交換をして。

 布団を被るとその中で密着し合って、時に首をかぷかぷされて、お返しとばかりに首に吸い付いてみたりして。

 

「あ……キスマーク……」

 

 で、ぽしょりと熱い吐息と一緒にささやかれた言葉にドキリと動揺。

 そのつもりはなかったけど、確かにこれ、痕残るかも……と思って口を離したが、べつに赤くもなっていない。

 結構強く、長く吸わないと出来ないのかもしれない。

 そのことを“安心してくれ”って意味で言ってみると、むしろ逆だった。

 

「ゃ……あの、ね? ヒッキー……あたし……つけてほしいな、って……」

「───」

 

 この人はあれなんだろうか。

 俺の脳を熱でどうにかさせたいんだろうか。

 それでも───不思議なことに、といっていいのやら。不思議でもなんでもないのかもしれないが、好きな人に、大事な人に自分と接した痕を、っていう行為に心臓が高鳴った。

 大きな罪悪感と、奇妙な期待。

 罪悪感は、まるで所有物に対する名前付けみたいな行為なんじゃ、って思ったこと。

 けれどその罪悪感は、所有されたいっていう昼あたりの結衣の言葉を思い出したことでブチ壊されてしまい、奇妙な期待へ変わる。

 ああ、もう、本当に。

 この大事な人は、人をこんなに混乱させて、どうしたいっていうのか。

 

「………」

「………」

 

 それからは無言。

 交わす言葉もなく、抱き合ったまま、首をかぷかぷされたり、首に吸い付いたり。

 一回で痕を残すんじゃなく、一回やったら離して、舐めて、また吸ってと時間をかけて。

 もちろんと言ったらアレなんだけど、その間にごろごろ位置を変えたりじゃれ合ったりして、誰かが見たら角砂糖吐きそうな密度で傍に居る人の温かさを感じ合った。

 それも時間を忘れるくらい続くと、やがて結衣の動きが鈍くなってくる。

 かぷり、と首にもたれかかったまま動かない時間が続いて、少しすると寝息が耳に届く。

 仰向け状態の俺に乗っかりながら眠ってしまうとは……ああ、もう、本当に。どれだけ無防備なのかこの人は。

 捻くれない普通の自分で心配するくらい、結衣は無防備だと思う。

 ぶっきらぼうな口調さえ忘れてしまうくらい、真っ直ぐに心配する自分も自分だけどさ……ああもう。

 

「………」

 

 俺も男なんだから。

 そう言いたい気持ちはあっても、不安にさせたくないから言わない。

 無防備なら無防備で、俺が守ればそれでいい。

 だから、間違っても襲う側になっちゃいけない。

 

「…………《さら……》……んぅ……」

 

 髪の毛をやさしく撫でると、くすぐったそうに身じろぎする。やだ可愛い。

 ……この三年間、こうして抱き締めて寝かせてきた。

 それを今さら崩す気なんてないのだ。

 せめて、結衣がそういうことを意識して距離を取るまでは、あくまで草食・草飲系男子で居よう。

 青汁の味とか思い出せば煩悩も裸足で逃げていくよね。

 うん、ぶっきらぼうな心は追い出して、そんなことさえ恐れ多いって思えてたあの頃の自分で。

 そうそう、踏み込めば拒絶されるって考えるんだ。

 俺は枕。俺はベッド。ただ大事な人に、穏やかに眠ってもらいたいだけなんだ。

 大好きだ。

 隣に居てくれてありがとう。

 こんな俺を好きになってくれてありがとう。

 

「………」

 

 やさしい気持ちはすぐに心を満たしてくれた。

 欲望なんて入り込む余地もないくらい。

 自分の上で無防備に眠る彼女の頭を撫でて、そっと横に下ろす。

 そうしてから改めて、ごろごろした所為でシワだらけになっていた掛け布団をピンと伸ばして、結衣と自分にかけてゆく。

 

「……誕生日、おめでとう。おやすみ、結衣」

 

 やっぱり無防備に眠る結衣の寝顔を見て、電気を消してから隣に寝転がる。

 結衣の方を体ごと向いたまま、顔にかかった髪の毛をさらりと掬って。

 

「~~……」

 

 欲望は我慢する。

 でも。

 もぞりと動いて、結衣を抱き締めた。

 手は出さないから、せめて抱き締めたまま。

 息を吸って吐くと、妙に心が落ち着いて、意識もすぐに沈んでゆく。

 とりあえずアレだね、ここで襲おうとかちっとも思えない限りは、自分でも安心なんじゃないかな、なんて思いながら───「んんぅ……ひっきぃ……」───寝言で呼ばれながら、ぎゅーっと抱き締められたあたりで理性様がブヂブヂと引き千切れかけましたことをここに謝罪します。

 知りなさい八幡。慈しむのです。愛を以て欲求を滅ぼすのです。

 あなたなら出来ます。

 出来ないのであれば、八幡大菩薩の名が泣きますよ。泣くというか大号泣。

 もうHEEEEEYYYとか叫ぶくらい。

 

「………」

 

 アホみたいなおかしなことを考えて、欲求の向きを逸らした。

 次いで沸き出したのはやっぱり愛しさで。

 穏やかに眠る彼女の頭をさらりさらりと撫でながら、やがて俺も穏やかな心のままに眠りについた。

 

 

───……。

 

 

……。

 

 で。

 

「…………にへへー……♪」

 

 翌日の彼女は、朝からにこにこだった。

 いつものえへへーどころでは間に合わないくらい、口角が持ち上がってしまって大変らしい。

 何故かっていうと……まあ、その、誕生日プレゼントが思いの外嬉しかったらしく、そういえばって朝起きてから開けたんだよ。え? 朝? 俺が先に目覚めたから、好きって言葉で目を覚ましてもらったわけで。……いつも通りと言えばいつも通りだが、ともかくその後がいつもと違った。

 これまでサブレ用首輪とか、結衣にチョーカーとか腕時計とかプレゼントして、今年はネックレス型アミュレット。

 誕生石とお守りの7色を混ぜた特殊なもので、いろいろと大変だったけど……なんとか買えた。こそっとバイトとかしたりして。

 パールとかムーンストーンとか、宝石言葉がまたよくて。

 純粋無垢、健康、長寿、愛の予感、純粋な愛とか……頑張るでしょ。これ頑張るしかないでしょ。だって贈りたいし。

 貰ってすぐにパールとムーンストーンの宝石言葉をケータイで調べて、それからずうっとこの笑顔。

 まあ、宝石もさ、そんな大きいものじゃないけど……それでもとても嬉しかったらしく……。

 将来、もっと大きいの贈れるようになりたい。

 

「……とか思ってますよどーせ。うちの兄のことですから」

「……ヒッキー?」

「こまっ……!? ちょっ……!!」

 

 最大の敵が身内に居た!

 ななななんでそういうこと言っちゃうかなぁもう!

 そういうのを言われちゃうのって、男ってのは大変嫌がるものでしてね!?

 身近なキョーダイが密告者っていう状況はこれだから───!

 

「あ、あのー……結衣? あのさ、確かにその……」

「……大きさじゃ、ないんだよ? ヒッキー。お守りとか、誕生石とか……ちゃんと相手のことを想ってくれたことが、すごくすっごく嬉しいの。……ありがと、ヒッキー。あたし、ほんとに……本当に嬉しい……」

「………《きゅん》」

 

 妹、マジグッジョブ。

 狼狽えるあまり口調が戻っていた自分に対し、やさしい言葉がありがたい。

 

「それで結衣さん。今日はどうします? 家帰るにしても、今日もまた見事な土砂降りですから」

「う、うん……《ちらちら》」

 

 そうなのだ。

 現在外は、昨日の雨が予兆だったと言わんばかりの土砂降り状態。遠くの景色とか見えませんよのスコールカーテン状態だ。

 日曜ってこともあって当然学校は休みだが、どちらにしても外に出るって選択肢は一切ない。

 そして、先ほどから結衣が熱い視線を物凄い頻度で向けてきているわけで。

 さすがにわからないわけもなく、俺は……

 

「あ、雨……上がるまで…………その。部屋…………来る?」

「《ぱあぁっ……!》」

 

 はい、笑顔いただきました。

 

「じゃあちゃちゃっと朝、食べちゃいましょうね。お兄ちゃん、今日どうする? あ、どっちが作るかって意味で」

「俺がやる。むしろ悪かった、起きるのいつもより遅くなって」

「いや~……そこは理解のある小町ですから? 事情はなんとな~く悟ってたりするわけですよ? 若いんだもんねっ、男の子だもんねっ」

「おい。言っておくけど手出しとか一切してないからな……?」

「お兄ちゃんっていろんな意味でKENZENだよね。まあいきなり“あなたならどうする? 最高だった”とか語られたって困るけどさ。少ぉしくらい踏み込んでもいいんじゃないかなーって小町は思うよ?」

「俺がもうちょっと、人間的に成長できたらな。“失敗を恐れてちゃ”とか、“最初から成功出来るやつなんかいない”とか、いろいろ言い訳は言えるんだろうけど、免罪符があろうがなかろうが、出来るだけ失敗なんかしたくないんだよ」

「考えすぎじゃないかなぁそれ。結衣さんなら絶対、失敗も一緒に乗り越えていきたいとか言うと思うよ?」

「……それも知ってる」

 

 だったら、って詰め寄る妹の頭を強めにわっしゃりわっしゃり撫でまわす。

 「ぬわーーーっ!」とか言い出したけど、構わず撫で回してから離すと、もじもじそわそわと俺を見つつ、ソファに座ればいいのにダイニングテーブルの椅子にピシィーンと座って緊張しまくりだった結衣へ、おいでおいでと手招きする。

 するとどうでしょう、主人大好きのお犬様のように、ぴうと小走りにやってくると、なんでか頭を突き出してきた。

 …………撫でろと? いや、一緒に料理しないかって意味での手招きだったんだが。

 ああ、うん、どうやら少し羨ましかったみたいです。

 なのでやさしく撫で……たら、頭をぐいぐい押し付けてくる。

 ……あ、あー! なるほどー! 強く撫でろと! 小町にやったみたいにぐりぐりやれと!

 まあその、犬もさ、たまに“そんな撫で方では足りん”とばかりに頭押し付けてくる時、あるよね。うん、気持ちは受け取った。ならば。

 ぐりぐりわしわしと、押し返すように撫でてみると、結衣は笑顔になりながらさらに頭を押し付けてきた。

 そうして、ぐりぐりぐいぐいと押しては押されてを繰り返して数分。

 

「お兄ちゃん。結衣さん」

「お、おう」

「う、うん」

 

 じとーっと見ていた我が妹、小町さんに怒られた。

 咳払いをひとつ、気を取り直して調理を開始。

 朝ってことで食べやすさ主体でGOだな。

 

「じゃあ結衣、作るものだけど───」

「あ、うん。それならあたしにも───」

 

 エプロン装着。キッチンに二人、並んで立って調理開始。

 知っての通りラノベから知ってもらい、翔や彩加、隼人や大志にも馴染んでもらった俺達。

 そこから派生してアニメやら漫画にも興味を持ってもらったからには、料理漫画とかに出るレシピに挑戦したこともある。

 最近で言うなら甘々と稲妻とか。いいよね、あれ。特に彩加の感情移入っぷりがすごい。

 似たような経験があるのかといったらそういう意味でもなく、しかし親からの接し方っていうのか、それがおとさんがつむぎちゃんにするものによく似ていたのだとか。

 彩加以外の生徒会奉仕部全員が、しんみりと納得したのは秘密だ。子供の頃から可愛かったんだろうなって。

 ともかくそういうこともあって、俺達は料理等にも結構積極的だ。

 作る時は楽しく、食べてくれる相手を想って。味見は絶対にすることと 失敗しても次に生かすこと。これ厳守。

 なお、料理入門編として“ヴァンプ将軍のさっと一品”から入ったのもいい思い出だ。

 何度かお料理教室も開いたし、その際に“こんな材料で……”とか言ってた雪ノ下が、味の良さに驚いていたのも懐かしい。ヴァンプ様すげぇ。

 もちろん基礎を覚えた上でって話になるけど……やっぱり料理って、なんでも試してみるところから経験していくべきだと思うの、私。

 などとヴァンプ様やってないで。

 

「結衣、これどうだ?」

「うん…………んっ、おいしい」

「そ、そかっ」

 

 サラダ用のドレッシングにスティック状に刻んだ野菜をつけて、味見をしてもらう。

 お返しとばかりに味噌を入れ途中の味噌汁の味見をお願いされて、小皿に少し取った味噌汁を口に含むと、やさしい味が口内に広がる。

 朝から好きな人の味噌汁を飲めるとか…………なんか、幸せ。

 毎日俺のために味噌汁を作ってくれって言う人の気持ち、解るなぁ……」

 

「《ぴたり。》…………………………《かぁあああ……!!》」

「? ゆぃ………ぅぉおぁぁ………《かぁあああ……!!》」

 

 突然結衣が手を止めて、真っ赤になって俯いた。両手はエプロンをぎゅーって握り締めて、俯いていても見える目は潤んでいる。

 そんな彼女に声を掛けようとして、思っていたことが口に出ていたことを自覚。同じく顔に熱という熱を集中させたかのように煮立たせ、俺もまた手を止めた。

 しばらくしておずおずと伸びてきた手が俺の服を抓むまで、ずうっと停止。

 抓まれてからは、俺もその手に手を重ね、優しく握り、繋ぎ、俯かせていた視線を持ち上げ、微笑み合って……「……はい。あたしでよかったら、作らせてください」……返事をもらい、抱き締めた。

 

「………」

 

 小町はじーっと見ていたけれど、気を利かせてかカマクラを手招きすると、よいしょと持ち上げて視線を逸らしてくれた。

 そうして俺は、幸せな気持ちのままにキスをして、飽きることなく「好きです」を届け、「はい。あたしも……大好きです」と、やる気をみなぎらせた結衣とともに朝食の準備を続けたのでした。

 

……。

 

 張り切った朝食は、小町に一言「多い」と言われた。

 仕方ないでしょ、張り切っちゃったんだから。

 

「小町もういろんな意味でお腹いっぱいなのに……」

「間食でもしたのか? 運動してる身としては、あんまりおすすめしないぞ?」

「しょーがないでしょ強制的だったんだから! まったくこの兄はー……!」

 

 なにをそんなに食べたんだろうかと首を傾げる中、隣に座った結衣が顔を真っ赤にしておりました。

 そんな、ほのぼのな朝の始まりに心を温めた。やだ可愛い。

 

「……そして味は素晴らしいって。うーん、この短期間であっさり追いつかれるとか、なんか納得いかないよ小町的には」

「だってお前、お料理会には毎度参加しないだろ」

「だってさ、なんかお邪魔じゃないかなーって。珍しくもって言ったらアレだけどさ、お兄ちゃんが1から構築していったお友達との関係にさ? 妹だから~って理由だけで小町が参加するのってちょっとね」

「同じ生徒会奉仕部だろ。まあ、その妙な疎外感とか超わかるけど」

「そこはもう忘れていいんだってばお兄ちゃんは。せっかく前向きな考えばっかりになったんだから、お兄ちゃんはもっと踏み込んでいいの。結衣さんとのことは特に」

「踏み込んだら踏み込んだで、どーのこーの言って止めてくるだろお前」

「それはお兄ちゃんと結衣さんが時と場所を弁えないからでしょーが! そりゃ小町だってそういうことに興味がないわけじゃなかったけど、実際に兄と恋人とのあんなラブラブっぷりを目の前でされたら、さすがに止めたくもなるよ! な~んで純情で奥手なくせに、人前ではキスとか出来ちゃうかなぁ二人とも!」

「いや、それは…………結衣しか見えなくなるっていうか」

「う、うん……あたしも……。ヒッキーしか見えなくなっちゃって……その……」

「……似た者夫婦《ぽしょり》」

「ほっとけ!」

「…………ぁぅ」

 

 鋭くツッコんでみれば、なんでか小町は結衣を見てニヤニヤ。

 結衣も結衣でやっぱり真っ赤になって、隣の俺の服をきゅーって抓んできて、ゆらゆら揺らすように引っ張る。

 

「結衣?」

「否定しないんだー? お兄ちゃんってばだいたーん♪」

「へ? 否定…………ぶっは!? い、いやっ、夫婦ってのはっ……!」

「うんうん、そのまま捻くれずに素直なお兄ちゃんのままでいてね。その方が小町的にも嬉しいし、からかい甲斐もあるから」

「おぉおおぉぉぉお……!!」

 

 前略、両親サマ。

 妹の性格が、どんどんといろんな意味で恐ろしい方向に曲がっていっている気がします。

 結衣にかまけてあまり接してあげられなかったからでしょうか?

 そうじゃなかったとしても、もし結衣と一緒にならなかったらと仮定をつけたならば、俺は頭に“究極”をつけても差し支えがないくらいに鬱陶しいシスコンになっていたと思うのです。

 今の方がある意味バランスの取れた良きシスコンだと思うんだけどなぁ……っとと、口調口調。

 ……いや、なんかもう結衣が望む通りでいいかなぁ。

 俺だって、無意味にやさぐれたっぽい口調とかにしたいわけでもない。

 ただただ男らしくないとか思われたくないのと、他の男に甘くみられたくないのと、“そういう態度と口調”さえあれば、必要以上に近づく輩は居ないだろうってだけだったわけで。

 

「、」

「……」

「…………」

「…………」

 

 ふと目が合って、顔を赤くして、けれど目は逸らしたくないから見つめ合い、にこーと微笑まれて、胸がきゅんとなって。

 さっき言われたばっかりなのに結衣以外が見えなくなって、

 

「すっ……好きです、俺と付き合ってください……!」

「はい……! あたしでよければ、喜んで……っ!」

 

 告白して、受け入れられて。

 手を繋いで、二人の世界で幸福を味わった。

 お互いに相手のことしか意識しなくなれば、恋人同士っていうのは本当に強く、他人からしてみれば厄介極まりない。

 これものちに小町にツッコまれたことだけど、“兄をつつくとしたら、恋人関係になる前の、もたもたしている時に限る”だそうで。

 “そもそも内側の人には激烈甘いお兄ちゃんが、恋人に対してデレデレの甘々にならないわけがなかった”と溜め息は吐いたものの、嬉しそうな顔で言ってくれたから、俺も特に返す言葉も探さず、感謝だけを心に秘めた。

 どうのこうの言っても、絶対からかってくるのは目に見えてるし。

 けど、まあその、ほら……な。

 ……見守ってくれるのは、ほんと……あー……あ、ありがと、な。

 口に出して言えやしないけど、感謝はいつだってしてる。サンキュ。

 




 /予告……? いやこれは! これはぁああ! ……な、なんだろ?


         (静かな日って……考え事、増えるよな)


 「ご、ごめんねヒッキー……あの、あとで洗って……ね?」


  「……ご、ご褒美終了! お昼っ、食べよっ!?」


             「……俺は、さ。人が……怖いよ」


 やろうと思って動いたことを、最後まで貫けるのは素晴らしいことだ





次回、お互いが好きすぎる男女のお話/第五話:『彼の弱さ、求める強さ』

 比企谷少年がイチャイチャするぞ!

  ……いつものことでした。

 比企谷少年が思い悩むぞ!

  ……いつものことでした。

 緑谷少年がムキムキになるぞ!

  そもそも出ませんが!?



 凍傷はオールマイトが大好きです。
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