どこにでもあるようなガハマさんとヒッキーのお話   作:凍傷(ぜろくろ)

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奉仕部活動日誌

 それからというもの、二人の距離はもっと近くなったといえる。

 部活も同じもの。

 登下校も一緒、

 あ、ちなみにクラスは俺も結衣も雪乃も一緒だ。

 隼人だけが隣のクラスで、三浦優美子って子と、お調子者の戸部翔ってやつと……一歩離れた位置で全体を見てる印象のある……海老名さん、だっけ? と仲良くしているらしい。

 あと二人居た気がするけど、思い出せない。

 

「しかしさぁ隼人」

「ん? なんだよ八幡」

「友達出来たんなら、無理に俺達と帰ること、ないんじゃないか?」

「幼馴染に向かって随分だな……いいんだよ。俺は徒党を組んでNOをYESに捻じ曲げる集団じゃなくて、俺が信じたい仲間と居たい。幼馴染で、友達で、仲間だからな」

「……そか。裏切ったら大変そうだよな」

 

 真面目な隼人に、おどけるように言ってみる。

 

「裏切るのか?」

 

 すると隼人も笑いながら返してくる。

 俺は「まさか」と返して、帰路を歩んだ。

 ……両隣を、幼馴染に囲まれた状態で。

 

「そういえばさ、はーくんにやっくん、いつの間に名前で呼び合うようになったの?」

「あー……その。えーとだな」

 

 やっくん。葉山のやから取って、やっくん。“は”から取るのはややこしいからダメ、と却下だった。

 ……どこぞの薬丸さんみたいで抵抗があるな、とは隼人談。

 

「そうね。おそらくはゆーちゃん、あなたがはーくんに告白されて、受け入れられた瞬間だと思うわ」

「ぐっ……! なんでわかるんだよ……!」

「相談されていたと聞いていたもの。……というか、私に相談してくれてもよかったのに」

「お前は逆に、結衣に相談されてると思ったんだよ。ていうか女の子にそんな恥ずかしい相談できるか」

 

 なんだかんだで頼りになるし、結衣も頼りにしてるし。……逆に雪乃も結衣を頼りにしているみたいだが。

 

「それで……その指のが八幡がくれたっていう?」

「……ぇへ…………うん……えへへ……~~……えへー……♪」

「ゆーちゃん、顔。緩みすぎているわ」

 

 はぁ、と溜め息を吐いて淡々と感想と注意を届ける雪乃に、結衣はほにゃほにゃと緩みきった顔で応え、俺の腕にぎゅーっと抱き着いてくる。

 

「結婚かぁ……そういえば、もう16なんだもんな。あと二年もすれば法律的にも平気なのか。なんだか、早いよな」

「だな。告白しておいてなんだけど、あまり実感が沸かないもんだよな」

「~♪」

「約一名、頭の中で将来を妄想している娘も居るようだけれどね」

 

 不思議と、俺達の関係は壊れなかった。

 あの日に感じた恐怖を現実のものにしないためにも、こいつらとの関係は大切にしていこうとつくづく思った。

 

……。

 

 言い忘れていたが、俺達幼馴染メンバーは、サッカー部に入った隼人を除き、奉仕部という部活に所属している。

 平塚先生が設立、顧問を務める特殊な部活だ。

 主に生徒のお悩み相談室的なアレ。

 「生徒に生徒の悩みを解決しろとか馬鹿なのですか先生は」と言った雪乃を褒めた俺は悪くない。

 だって、実際ヘンだって思うもんな。そもそも俺も結衣も部活なんてやりたくなかったんだが、二人で帰っている時に捕まり、帰宅部とは青春をナメているのかと、半ば強引に入部させられた。そこに雪乃が混ざったかたちで三人の部活、始動。

 しかしそうなれば、三人寄らば文殊のなんとやら。

 案外解決方法が見つかったりするから性質が悪い。

 ……ああ、第一依頼者は、雪乃だったりしたんだが。

 

「最近、はーくんとゆーちゃんの付き合いが悪い気がするわ。なんとかしてちょうだい」

 

 どうしろと。

 雪乃は……まあその、比企谷家に来てからというもの、借りて来た猫といえばいいのか、大人しいものだった。

 成長していく段階で、なんでかやたらと俺の真似をするようになった時期もあったりして。

 いつか、陽乃さんに“私、雪乃ちゃんの対象から外れたみたいだから。頑張ってねー? は~ぁくんっ♪”なんて言われたことを思い返すと、それまでは陽乃さんが真似られていたっぽい。

 そんなわけで、中二病の片鱗は俺に原因があったりもしたのだが。

 牛乳を飲む時、腰に手を当てて飲んでいると、それを慌てて真似るように、牛乳を注いでグイッと飲んだり。

 ゴミ箱にゴミを捨てる時、わざと遠くから投げるのを真似たり。(見事に入った時、俺の服を引っ張ってにこにこしてた)

 運動とかしているとどこからともなく現れて真似をする、とか。

 最初は体力がなくて大変だったジョギングも今では慣れて、スポーツ全般めっちゃ強くなってる。

 逆に結衣は、真似というよりは俺の隣に居たい、といった感じであり、なにをするにも隣に居たがった。

 むしろそれは俺の方がバッチコイだったので問題はない。

 うん、ともかく。

 そういうこともあって、雪乃は割とべったりだったりする。べったりって言うと近すぎるイメージが湧くけど、そこまでじゃないっていうか……うーん。

 猫ってきまぐれだけど、気を許した相手にはついて回るだろ? あんな感じ。

 

「暇だな」

「暇だねー……」

「暇ね……」

 

 そんなわけで奉仕部部室。

 ぐでーっと長机の上に上体を寝かせるようにしてだらけて見せる。

 と、雪乃は俺と自分の両手とを見比べて、同じ姿勢を目指して“ぐで~っ”と上体を寝かせてだらけてみせた。

 結衣はすでにやっている。

 ……ん? ケータイ? いや、ケータイいじるよりも俺と話してたほうが楽しいからって、そういうことはやってない。

 

「んん……なんかやって暇潰すか」

「なんか、とは?」

「あー…………むぉっほん! ……えー、新入部員の雪乃さん。この部活を選んだ理由は?」

「えっ───あ、その。はーくんとゆーちゃんが居るからですっ《クワッ!》」

「そうですか。ではこの部活でどんなことをしたいですか?」

「困っている人をどうこう、というよりは、二人と一緒に考えて悩める時間が……あの、大好きです」

『…………《きゅんっ》』

 

 俺と結衣、二人できゅんとした。

 やだこの娘ったら可愛い……! 俺達以外の前じゃ全力でコミュ障なのがアレだけど、それでも。

 一人で生きていこうとしていたら、もっと強い子だったのかしら。いえまあその、素直で、時々猫みたいに気まぐれなこいつも良いものですが。ってなに言ってんだ俺。

 ……なんてことを思っていたあの頃を見下ろしております。あぁ恥ずい。

 けど、こっからだったな。

 平塚先生経由で依頼が来るようになって、上手く解決出来るように駆けずり回って。

 楽しかった。本当に。

 

「んじゃ、今日も頑張りますか。まずは依頼者が来るまでの暇を乗り切ることから誓おう! ボリショーーーイ!!」

『パビエーダァッ!!』

 

 合言葉もどきも随分とヘンテコなものが増えた。

 まあほんと、楽しければいいのである。

 そんなわけで───

 

「失礼するぞ奉仕部とやらぁ! ……我、参上!」

 

 第二依頼者、材木座義輝。

 依頼内容:小説の感想をください。

 

「小説かぁ……まあ、ラノベも好きだから結構いけると思うけど」

「ええ、楽しみね」

「昔のあたしだったら、文字だらけ~とか嫌だっただろうなー……」

「ん? そうなのか? いっつも俺の隣で本読もうとするから、好きなのかと思ってた」

「ふえっ!? あ、や、やー……その……えと」

「鈍いわね、はーくん。苦手を克服してまで、あなたと一緒に居たかったのよ、ゆーちゃんは」

「ゆきのーーーん!? なんで言っちゃうのぉおおっ!!?

「お、おう……そっか……」

 

 いやいやまさか、と言おうとしたら、結衣が自爆したので言えなかった。むしろありがとうございます。

 

「くっ……まさか依頼をしに来た場所でリア充に遭遇するとは……! 人気の少ない教室で女二人に男一人……! ば、爆発しちゃえばいいんじゃないかなっ!?《ポッ》」

「いや怖ぇえしキモいよ。初対面の人に爆発しろとかやめろ。ぶっ殺すぞ」

「我のほうがキモいとか殺すとか相当ひどいこと言われてるんですが!?」

 

 ともあれ読む。

 ……読む。

 …………読む。

 

「なぁ。これ、いつ話が進むんだ? 敵と戦うところから始まって、主人公の説明に入ってからちっとも進まないんだが」

「ふふんむ! 読んでいればわかる! 展開が気になるのはわかるが、気を急くでないぞリア充よ!」

「………」

 

 ……読む。

 …………。

 

「……ねぇはーくん。ここ、なんで服が脱げたの?」

「すまん、俺もわからない」

「この文字でなぜこのルビが……それにこの主人公、なぜ最初から本気を出さないのかしら。戦いというものを舐めているとしか思えないわ。戦士失格ね」

「あー……相手をナメた所為で誰かが死んだとかあるよなー。龍の球のGTはさっさとキメてれば主人公が死ななくて済んだから、あれは心底ないわって思ったなぁ……」

「戦ってる最中なのに、腕より舌を動かすのに忙しいのね……命のやり取りをしている自覚、あるのかしら。あら、こちらでは主人公が女は殴らんとか言って放置した所為で、その女に仲間が殺されたわ。……戦場に立っている自覚と、一人で戦っているわけじゃないという自覚がないのかしら。…………この主人公はアレね。子供だから女性だから老人だからと殺せないで、途端にその子供か女性か老人が銃を構えて殺しに来ても、なんの役にも立たないのでしょうね」

「ぶっ……ぶ、ぶひっ……!《ぐさぐさぐさぐさぐさ》……い、いや、そこには主人公の美学が……!」

「主人公の美学のためなら味方がどれほど死んでもいいと? あなたね、主人公だけを目立たせたいのであれば、最初から主人公だけが強い作品でも書いていなさい。主人公を信頼して背中を預けて戦ったというのに、挙句が女性だから殺せないと主人公に見逃された女が、主人公を信じていた仲間を背中から殺すなんて、論外よ」

「……すまん。この主人公は好きになれん。いや、ぼっちならまだわかる。けど背中預けてくれる仲間を持ってるのにこれはないだろ……」

「はぽ……ぽっほ……!」

 

 ただ読むだけでは辛く苦しい。辛苦をそのまま語るように、いつしか三人そろってあーでもないこーでもない。

 少しすると、えーと……財津くん、だったっけ? の顔色が悪くなって、はぽはぽ言い出して、

 

「総評を言い渡します。面白いつまらない以前に腹立たしいわ。目を通すことが苦痛以外のなにものでもないレベル。壊滅的。言い回しがくどい。反語を使いすぎ。何度説明を上書きするように否否否否書けば気が済むの。なによりこんな殺し合いを舐めた存在が主人公な時点で論外。仲間になってしまったパーティに心底同情するわ。けれど三人で話し合えたことには感謝します。以上」

「…………《ドザァ》」

 

 きっぱりと言った雪乃の言葉に、財津くんがザムゥ~と床に倒れた。

 容赦ないなぁ……しかも三人で、って言葉を汲み込むことで、嘘なんぞこれっぽっちも混ざってないことを表現してみせた。

 

「ぐふっ……! なんという凄まじい力を持った言霊か……! 我の魂ごとこの身を貫き、立つ力さえ奪うとは……! だが…………感謝しよう部長殿。我は───」

「? なにを言っているのかしら。部長は彼よ?」

「へ?」

「あ、あー……ハイ、部長の比企谷八幡です」

「…………部長で可愛い部員独り占めとかっ! 爆発すべきである!! そうであろう!?」

「いや知らねぇよ……そういうのは平塚先生に言え。勝手に部長にしたの、平塚先生だし」

「あはは、ていうかゆきのんが断らなければ、ゆきのんが部長だったよね」

「部長なんてごめんだわ。そんなものになったら、人と話す機会が普通より増えるじゃない」

「……お前、そんなんだからクラスで俺達以外友達居ないんじゃねぇの……? 俺もだけど」

「うん、あたしも」

『…………にへー♪』

 

 どこまでも幼馴染だった。

 三人とも、この二人が居ればいいって感じでやっていっている。

 今さら人が増えたって、関係がグラつくだけだってわかってるんだ。

 そういうことを、経験済みだから。

 隼人は別だとしても、あいつにはもうあいつの仲間が居るし、付き合いがあるのだから。

 

「くっ……我とて幼馴染さえ……幼馴染さえ居ればっ……! ……あ、それはそうとまた読んでくれる? また書いてくるから」

「いきなり素に戻るなよ……まあその、ちゃんと改善してくれるならな。せめて完結したもの持ってきてくれ。あと説明長い」

「むぐっ……言ってくれるなリア充……いや、八幡といったか」

「《───ぎろり》その名前を呼んでいいのは特別な人だけよ。慎みなさい、財津くん」

「ぶひっ!?《びくぅっ!》……い、いやあの、我、材木座……」

「? その言い方だと、やっくんって特別なのかな」

「……さあ。誰かに言われるまで、泣いている人よりその場の調和を優先された身としては、どう言ったものか悩むところだけれど」

「あ……そだね」

 

 きゃいきゃい楽し気に話す幼馴染を前に、財津くんがこちらをちらりと見る。

 

「…………あの。部長さん? 爆発しません? いやマジで」

「……なんかすまん。でも悪気はないんだよ、ほんと」

「充実した目をしおって……これで目が腐っているとかならば、まだ手と手を取れたのやもしれんが……“持っている者”というのは、居るものなのだな……我泣きそう」

 

 ……依頼達成。

 のちに、三人で平塚先生にきっちりと仕返しした。

 自分がめんどいからって人にあんなの任せないでくれ、と。

 視線を逸らしながらあたふたと言い訳を述べる平塚先生に、じゃあこれ読んでくださいと言ったら頭を下げて“すまなかった”って謝られた。そこまで嫌か。俺も嫌だけど。

 

  第三依頼:テニス部強化作戦

 

 平塚先生からの紹介で、同じクラスの戸塚くんが奉仕部にやってきた。

 相変わらず女子のような背格好である。言わないけど。

 

「あれ? 比企谷くんに由比ヶ浜さん、それに雪ノ下さん? えっと、ここって奉仕部って場所でいいんだよね?」

「おう、合ってる。まあまあどうぞどうぞ」

「お茶よ。飲みなさい」

「本とか読む? お菓子食べる?」

「え? え? え?」

 

 あまりに暇だったので、次来た人を盛大にもてなす作戦……相手を戸惑わせるだけに終わった。

 ともあれ依頼内容を訊いてみれば、テニス部が弱いしだらけきってるから、自分が上手くなってみんなを引っ張りたいという。

 

「だめね。まずはそのだらけきった部員の性根を叩き割ることから始めましょう」

「そ、そんなことしたら辞める人が出ちゃうよ! あくまで自主的に、“じゃあ自分も頑張ろう”って立ち上がってくれるのを期待して、まず僕が……!」

「だめだめ、そーゆーのよくないよ、戸塚くんっ」

「みんながやるなら俺も、なんて、それこそ簡単に投げ出すヤツの考えだろ。相手が我が儘放題ダラケてるなら、今度はお前の我が儘ぶつけてやりゃいいだろ。んじゃとりあえず体力作りからだな」

「死ぬまで努力コースね。ええ、腕が鳴るわ」

「ゆきのん……それはそれとしても、ちゃんと他の人がついてこれるペースでやろうね……。みんなやめちゃったら、依頼達成できずに廃部になっちゃうし」

「……それもそうね、わかったわ」

「マジでやるつもりだったのかよ……」

 

 テニス部強化作戦、開始。

 まず部員に部活をさせることから始まった。

 まあ、これは奉仕部メンバーがマネージャーをするってことであっさり叶った。

 みんな欲望に忠実ね、死んでしまえ。

 

「マネージャーさーん。テニス部手伝うってんなら、それなりの服に着替えるべきだと思いまーす」

「黙りなさい下郎」

「下郎!?」

「あら。下郎では足りなかったかしら。そんな煩悩まみれで過ごしているから部活というものにも身が入らないのでしょう? あなた、なんのためにこの部活に入ったの? なにがしたくて? その手にあるラケットは誰が買ってくれたのかしら?」

「え、う……こ、これは……~~……あ、あんたには関係ねぇだろ!」

「では無駄口はそこまでにしなさい。私にも、あなたの趣味や煩悩なんて関係ないのだから」

「ぐっ……!」

 

 一人、性義の味方が居たが、あっさりと心折られた。

 いやほんと、なんでテニス部入ったのキミ。

 ラケット買ってくれた人が泣くよ? 安くないんだからね、まじで。

 ともあれ練習開始。地獄の強化訓練の始まりである。

 

「まずはスタミナ作りからな。ほれ走れ走れー」

「くっそ……! なんで部外者が仕切ってんだよ……!」

「部活だからだよ。文句なら平塚先生に言ってくれ」

「あはは、あたしたちはもう、これくらいなら慣れてるけどねー」

「………」

「今結衣の胸見たヤツ。十週追加」

『はぁああ!?』

「~……ぁぅ……」

 

 胸を守るようにして両肩を竦める結衣を背に隠し、とっとと走れーと背中から追いかけ続ける。

 おーおーナマってることナマってること。

 

「よし。んじゃあ次ストレッチな」

「あぁっ……!? はぁっ、はっ……走る前っ……やった、だろうがっ……!」

「それでもやる。いーからまずは言う通りにやってくれ」

「ったく……! なんでこんなことに……! あーくそ! 体固いヤツイジメて楽しいかよ! だから嫌なんだよ柔軟なんて!」

「だいじょぶ? 背中、押そっか?」

「エッ……あ、あの…………ハハハイ! お願いシマス!」

「結衣、いい、俺が押すから」

「え? でも」

「お前は無防備すぎなんだよ……! はらはらするからやめろ……!」

「…………」

「……なんだよ」

「えと。今のって……独占欲?」

「っ───!!《ぼっ!!》」

「《わしゃわしゃわしゃわしゃ!》ひゃわわわわ!? はーく、わぷっ! はーくん!? やめてやめてぇえ!!」

 

 図星を突かれて、結衣の頭を盛大にワシャった。

 まあそんなこんなやって、テニス部のレベルアップを計り、音を上げそうになれば戸塚くんが上目遣いで「やめちゃうの……?」と言って、部員達は根性でこれを続行。

 しばらくするとトレーニングのスケジュールも把握したのか、俺達が居なくても行動するようになり、テニス部は勢いに乗っていった。

 一応戸塚くんからも正式にありがとうと感謝を頂いたわけだし、依頼達成ということで終了。

 

「どこまで強くなるか、楽しみだったのにな」

「でも、メニュー通りのを続ければだいじょぶなんだよね?」

「それは保証するわ。きちんと効果のあるプロテインも紹介したし、下手をすればサッカー部よりも頑強になるかもしれないほどよ」

「それはそれで怖ぇえよ」

 

 あの綺麗な美少年が数ヶ月後には筋肉ゴリモリで見る影も無くなるとか、どこの半田くん? いや、この場合は筒井あかねくんか。

 まあ……それはさすがに部員が止めるだろう。

 依頼終了。よかった。

 

「案外なんとかなるもんだな……人のためになってんのかね、これで」

「あはは……ちょっと強引かもだけどね」

「多少強引にいかなければ、話も聞かない人ばかりでしょう? 最初に理解されないのはこの際折り込んだ上でぶつかりましょう」

「……やっぱお前が部長やらない?」

「嫌よ」

 

 即答であった。

 

……。

 

 そうして五月中は平和に過ごせるかな~……なんて思っていたら、やってきました依頼者。

 なんでも、隣のクラスの隼人のグループを中心に、メンバーの悪口が書かれたメールが出回っているらしい。

 それを解決……って、だから先生……! こういうのを生徒に任せるとか、なにやってんですかもう……!

 

「悪い、八幡。忙しくなかったか?」

「いや、べつにいーよ。で、これが噂のメールか……」

 

 メールは隼人の悪口ではなく、そのグループに居る戸部、大岡、大和の三人を狙ったものだった。

 悪口、噂の大きさも案外適当。調べてみればわかりそうなものばかりだった。

 それを見て不愉快そうに顔をしかめるのは雪乃だ。

 

「協力するわ。恩には恩を返さないと気が済まないもの。一応、過去に私の問題で味方をしてくれたわけだし。……その。いいかしら、はーくん」

「格好よくキメたんだから、最後まで貫こうな……。なんでそこで俺に訊くんだよ」

「そうそう。じゃあ宣誓!」

「おう」

「ええ」

「はは、久しぶりだな……」

「じゃ、えーと……んっ! 我々は部活動シップにのっとり、こんなくっだらないメールを無理矢理飛ばしてくる犯人を黙らせることを、ここに誓います! イェア・ゲッドラァック! ライク・ファイクミー!」

『Sir! YesSir!!』

「……頼むからわかる合図でやってくれないか。ていうか今のはなんなんだ?」

「軍隊式っぽくやったらそれっぽいかもって、子供の頃にどこぞのにーちゃんが教えてくれたものだ。当然意味なんてありゃしない」

「ほんと、叫ぶことが出来ればなんでもいいんだな……」

「ふふっ……ええ、そういうことよ」

 

 自分の主張はもちろんあって、意見も行動もきちんと言えるし実行できる。

 けど、そこに俺の同意があれば百人力、なのが雪乃らしい。

 かつては陽乃さんに対してそういう……ええっと、なに? 真似っつーかトレースっつーか、そういうのをしていたらしい。

 けれど家から離れ、姉から離れ、習い事からも離れを行なったのち、残ったのは頼りになった人のあとを追いかける、といったものだった。

 そこに愛や恋はなく、人によっちゃあ“俺のことが好きなのかも”と告白して、大後悔する流れだ。

 頼ってくれるし寄りかかってもくれる。信じてくれるし心も許してくれている。

 けど、恋じゃない。

 それは親愛ってものなんだろう。

 どっちかっつーとほら、家族に求めても得られなかったものを、他人に求めているって言葉が一番近い。

 俺もそうだったから、よくわかる。

 わかるからこそ一層、俺とこいつはどこまでも気を許せても、“好き”や“恋”には至らない。

 

「んじゃあメールだけど……片っ端から調べるか」

「そうね。調べた上で、掲示板あたりにでもデカデカと結果を張り付けてあげましょう」

「張りつけちゃうんだ!? え、えー……? それはちょっとやりすぎじゃ───」

「ゆーちゃん。私たちは貴重な時間を依頼解決のために潰すのよ。手間をかけられた分、返してもらう名目で鬱憤のひとつでも晴らさなければ割に合わないでしょう? どれだけ頑張っても奉仕活動で、顧問は私たちに丸投げ。ならばどんな解決方法を取ろうが、それは丸投げした顧問の選択なのよ」

「あー……たしかに、最近なんでもかんでも奉仕部に回し過ぎだよねー……」

「むしろゆーちゃんはもっと怒るかと思っていたわ」

「へ? なんで?」

「はーくんと恋仲になったというのに、これの所為で余計な仕事が増えたでしょう。両想いになったというのに、まだデートさえしていないのではないかしら」

「───」

 

 ぴしり。

 空気が凍った気がした。

 

……。

 

 のちに、メール情報は全て嘘っぱちであることが確定。

 掲示板に調査内容を書き出したものをバァンと張り付けて、メールなんざ気にせず笑い飛ばせばいいと思い知らせた。

 しかしそうなればすぐに別のチェーンメールを用意するのは当然ってもので、とりあえず平和的に解決方法を掲示板にどかーんと張り付ける。

 

  親愛なるチェーンメールの犯人様へ。

 

  これ以上しつこいことをするのであれば、メール発信元を雪ノ下の名の下に調べ、この場に曝します。捨てアカウントの登録内容も曝します。

 

  このままやめないようであれば、社会の波という死神様が、必ずあなたを殺しにうかがいますゆえ。

 

 そんな張り紙をすること数日。

 チェーンメール事件は解決した。




 /アテにならない次回予告


    「ローーーレーーーーンス!!」



         「はーくん・ごーほーむ!」



   「嫌よ。私は将来、専業主婦になるんだもの」



「キミは───スカラシップを知っているか!?」



   「え───なんなのそれ! え!? お姉ちゃんちょっと意味わからない!」



「~~……やめっ……やめてちょうだいぃい……!! やめてぇえ……!!」



 「ゆきのん助けて!」



            「全力で叩き潰すわ」




次回、夢と現実の僕らの距離/第六話:『奉仕していると言えるかはわからない部活』

 見てくんなきゃ、暴れちゃうぞ!

「大変ですよ元太くん! 見ないと灰原さんが暴れるらしいです!」
「うンまァアア~~~~ぃいっ!! これはー! このうな重はァアーーーっ!!」
「懐かしいな……ぐれえとで子供役で出たっけ……」
「元太くんうな重から離れてください! 歩美ちゃんはなに言ってるんですか!?」
「壺こすりにも磨きがかかるわい」
「阿笠博士が壊れました! もー! こんな時にどこに行ったんですかコナンくん!!」
「へへっ……呼んだかい?」
「あっ……その声は!」
「なべやきコンブ! 料理人さ!」
「誰だよ!!」
「子供料理漫画で、料理で人を殺した最強の料理少年だっぜィ!」
「味見してる時点でよく死にませんでしたよね」
「おいやめろ」


 ◆pixivキャプション劇場
 よう見とくんやでライムゥ! これが浪速の商人の生き様やぁ!!【花形美剣】

 久しぶりにセイバーJを見ると、たまぁに花ちゃんの声がリゼロのロズワール様に聞こえます。
 まあ声優同じですしね。だぁよぉ? とか語尾が伸びてる時とか、特に。
ところでロズワール様の名前。L・メイザースとかついてると、アディリシアさん思い出しません?
 で、アディリシアさんといえばクリスマス回で穂波さんと向き合ってる時の構えが龍虎にちなんでリョウ・サカザキとロバート・ガルシアのポーズで細かいなオイ! とツッコンだ記憶があるわけでして、つまりなにが言いたいかというと

  覇王翔吼拳を使わざるをえない!

 おかしいな、花形の話をしていたはずなのに。
 あ、花形といえばおったるくんだよね。
 セイバーJの主人公、間宮小樽をおったるくんと呼ぶのは知ってる人ならよく覚えておられると思います。
 ……ダンまちの猛者オッタルの名前を見た時、異常に“くん”を付けて呼びたくなったのって僕だけですかね。

  プログラムされた生き方に流されない君が好き。

 ラノベに詳しいゆきのんだったら、材木座の小説って必要以上にダメ出しするんじゃないかな。
 そうは思っても、似たようなことを直々に言われたら、僕だったらきっとしばらく折れます。そんなお話。

 ◆あとがき
 congratulations……! congratulations……!
 おめでとう……! あけましておめでとう……!
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