どこにでもあるようなガハマさんとヒッキーのお話 作:凍傷(ぜろくろ)
え? 言われんでもわかってる? ソ、ソーリー。
では通常の注意事項をどうぞ。
*どうしようかなぁ……いやほんと、どうしようかなぁ……と悩みつつ、結局UP。
こちら、俺ガイルキャラを掴むために一番最初に書き始めて……ええはい、強気の愛を、の前に書き始めたものになります。
そこから今まで、ぼちぼちと書き足してきたものですね。
ところどころで雑なのは見逃してくださいまし(^^;
【!注意!】ヒッキーの両親、ガハパパが結構ひどいです。
“夢と現実の僕らの距離”の比企谷父の行動が、より一層、みたいな状態です。
普通は八幡のことを基本放置で、誕生日にはケーキ代込みで一万くれる、ぼっちにとってみればありがたい父ですが。
反原作を書きたいわけではありませんが、一応アンチ、と書いておきます。
いえ、最初にちょいと出るくらいで、あとは登場さえしないのですが。
原作大好きですし、苦手なキャラは居ても嫌いなキャラなどおりません。
ただ、そのキャラらしからぬ行動を積極的にすることがアンチということなので、いきすぎた行動はしているとは思います。なのでアンチを。
これはタグにアンチ・ヘイトをつけるべきレベルだ! と思いましたらばご報告を。
ヒッキーがしそうにない行動、と言ってしまえば、今まで書いたSSのほぼがアンチ・ヘイトになってしまうんですが。
それ以外は、ヒッキーの口調がトゲトゲしているかもというくらいで、いつも通りのノリだとは思います。
習作として、このキャラはこう、このキャラは……と原作をめくりながら書いたので、妙にお堅いところもつたないところもあるかもですが(^^;
「あれ!? こういう場合ってどうするんだ!?」って状況になると、想像で書くしかないんですよね……なので、これ違くね? と思っても「ホッホッホ、まだまだ未熟よのう」と笑って読んでやってください。
プロトタイプなので、今まで書いたものと似たネタがあります。
カベ・ドゥーンとか。
エロォスな18禁も書きましたが……UPするかはその時の気分で。
エロス初心者が書いたエロスなんて、きっとギャグよ! くらいの気持ちで書いたので、正直めっちゃ恥ずかしいです。
……そして、結構前に書いただけあって、その頃にSSでよく見たメガネをかける八幡なので、それが嫌いな人にも向かないかもです。
そして、比企谷八幡は無意識に正しくあろうとする①
なにかのプロローグのように、サンタクロース云々から語れるほど、暢気な生活を送ってはこれなかった。
たまたまつけたTVから流れる主人公らしい男の声は、実に平凡なものだった。
俺もそうであれたなら、なんて考えたもんだ。今はそうでもない。
ところで、幼馴染ってものの定理について、皆様はどうお考えであろうか。
幼馴染。幼い頃に馴染みのある者ののことを言う。
ガキの頃からいろいろなものに絶望して、ただ一つを除いた様々を省いたエリートぼっちな俺から言わせてもらえば、幼馴染、なんてものは面倒事のひとつに過ぎない。
それが男ならまだしも、女なら余計だ。……いや、男である場合でもイケメンだったら切ない。超切ない。馬鹿でスケベな友人だったらまだいいが、それがサワヤカ笑顔がよく似合う、いわゆる“良い人”であった場合は俺が裏世界でひっそりと幕を閉じるまである。俺の人生が閉じちゃうのかよ。調子に乗ってもいないのに。
しかしながら人生ってのはそんなものだ。そしてこんな話し方をしたからには“言いたいこと”ってのは“そういうこと”であり、幼馴染は女でしかも相当に整った顔立ちをしていた。
しかもスタイルまでいいし人当たりも悪くない。空気を読むことを優先するため、いつも返答が後手に回ることさえ除けば相当に人気のある人物と言えるだろう。人によっては風見鶏とも八方美人とも取れ、嫌われる要素にもなる。
ん? 俺? そーだな。俺は───ああ、いや。その、アレだ。
語るなら、まず随分とガキの頃から話す必要がある。
俺とそいつは幼馴染で、困ったことに産まれた病院も同じであれば、家も隣同士。
俺はそいつと二ヶ月程度の差で産まれ、歳も近けりゃ家も近く、親も仲が良いってんで赤子の頃から交流があった。
今思えばその頃だけが唯一、人への暖かみを覚えた日々だと言えるな。
今じゃエリートぼっちな俺が、まだまだぬるい性格だった頃の…………ぶっちゃけちまえば、人を信じていた頃の話だ。
しかしながらそれを大切にするつもりはない。以前は確かにあったそれも、今では心の奥に隠れちまった。だがそれはそれでいいのだろう。“本当”や“大切”なんて怖いものでしかない。
無くなったらそれまでだし、取り返しがつかないものほど恐ろしいものなどそうそうないだろう。
かけがえのないもの、なんてものには手を出さないのが一番なのだ。
人との関係など───容易く切れて、誰も傷つかないくらいの軽いものこそが一番だ。
俺はそう考えて生きている。
だからこそ、ずっと自分の奥底でこじらせている何かを、今も表に出さずに育んでいるのだろう。
× × ×
さて、そんな話題に出た幼馴染だが。
初顔合わせは、お互い大した意識もない頃だと教えてもらった。
誰にって? 幼馴染の母親にだよ。エリートぼっちである俺に、んなこと教えてくれる親が居るもんですか。居ないのかよ。居ないんだよ。
まあいい、覚えてもいない頃のことなんて話しても無駄だろう。話を幼稚園時代あたりまで飛ばそうか。
この頃の俺は、まあ自分で言うのもなんだがまだ社交的だったと言えるだろう。
目も腐ってなかったし、なにより自分から他人に話しかけていたほどだ。しかもどもらず。なんて勇者だ、この頃の俺。社交要素ありすぎで表彰されたいくらいだ。
問題は相手がそれを受け入れるか否かだ。
当時はまだ、幼馴染……由比ヶ浜結衣と仲が良かった俺は、ガキの頃からなにかと“自分ではなく自分の周りを立てようとする”ために人気があったあいつの幼馴染ってだけで、随分と無駄な嫉妬をされていた。
言ってしまえばあいつと仲が良かった、または幼馴染であったことで、俺が得をしたことなど一度としてない。……ママさんが居たことは、まあ得ではあったのかもだが、それも“鶏と卵”的なことなのだ。彼女が居なけりゃそうならなかった、とかな。極論ではあるが。
完全に無関係であれば子供の純粋な嫌がらせを受けることもなかったかもしれなければ、なにより自分の居場所がなくなることもなかった。ああいや、これに関しては由比ヶ浜を恨んじゃいない。本当だ。自業自得でしかないし、むしろいっそありがとうと言ってもいいから一人にしてほしいまである。……現在を作ったのは自分ではあったのだし、突き放したのも俺だ。
まあ俺の自由がどうあれ、問題であったのは由比ヶ浜───ではあるが、苗字が同じその父親だった。
物心ついた頃から俺を睨むようになり、娘に近づくなだの俺以上に結衣と仲良くなんて許さんだのと言うようになってきた。
そう言われても由比ヶ浜には関係なく、嫌でもアイツが俺のもとへ来れば、彼は嫉妬した。まあ、それはいい。最悪遊びに来た由比ヶ浜は妹に押し付ければ良かったのだから。
問題であったのは……妹と妹の親の存在だった。ん? ああ、俺の親でもあるが、相手はそう思って接してないだろあれ。俺も今じゃ他人への感情程度しか持っていない。
俺は自分で言うのもなんだが、容姿……というよりは顔だな。顔だが、大分整っている自信がある。目は腐っているが、べつに産まれた頃からこんなDHA豊富な目をしていたわけではない。一応産まれつきだとは周囲に言ってはいるが、産まれ付き腐ってりゃその時点で殺されてんじゃねーの? あんな親だし。だが、あえて言おう。俺は悪くない。社会が悪い。まあ、目に関してのみはな。ぼっちなのは望んでなったことだ、誰も悪くはない。
そんなエリート直前、プロぼっちたる俺、比企谷八幡には妹が居る。
比企谷小町。俺と同じく頭にアホ毛の生えた、八重歯が眩しい妹様だ。
ここでただのぼっちは“何故いきなり妹の話をするのか?”などと面倒臭そうに思考することだろう。口にしない。ぼっちは無駄を口にはせず、思考で暖めるものだ。
だからその思考に解を届けよう。俺は幼馴染とも妹とも仲が良いなんてこともない。いや、そんな問答を通り越して“興味ない”まである。
なに? ぼっちを名乗っているのに幼馴染や妹と仲がいいとでも思った? んなわけないだろ、エリートなめんな。今の俺ならぼっち星で王子様になって、口だけでぼっちぼっち言ってるやつを最下級ぼっちと言えるほどにぼっちだ。
現に、花京院くんが交流の証として喩えに出した俺のアドレス帳にはアマゾンさんしか存在しないし存在させない。引かれながらも交換した“ただの”クラスメイトのアドレスは全て、メーラーデーモンさんという紳士が返信をくれる魔法のアドレスだったよ。
もう一度言おう。俺は妹にも幼馴染にも関心を向けない。幼馴染には罪悪感はあっても、興味は向けない。
俺という存在は親にとって、小町が産まれた時点で“無視していいもの”に成り下がったようだし、だからといって由比ヶ浜と親しくなれば相手の父親が黙っていない。
ならばとガキの頃に作ろうとした学校での友人関係は、由比ヶ浜と幼馴染で多少仲が良かったというだけで崩壊。それでも俺がアホみたいに唯一を信じて突っ走った結果、親友だと思っていた相手に裏切られ、執拗なイジメで人が怖くなり、心のどこかで信じていた親にまで裏切られ、目を濁らせ、腐らせ、気づけば人と話すことに躊躇を覚え、どもっちまうガキの完成だ。
家に居ればほっとかれ、小町が俺に懐けば親は嫉妬し、だからと小町を突き放せば泣かれて親父に殴られ、由比ヶ浜が来れば親父さんが嫉妬し、突き放せば由比ヶ浜が泣いて親父さんが激怒。学校にいけばぼっちでイジメは続き、幸いだったと思った別クラスになった由比ヶ浜が遊びに来れば、その日はイジメ決定。そんな息苦しい世界をガキの頃から経験し続ければ、早い内から世界の在り方に諦めを向けるってもんだろう?
目が腐ってる? どの口が言う。そういう俺に完成させたのはお前たちだろうが。
そんな言葉も口には出さない。ぼっちはただ黙して語るのみだ。
けど、解るよな? そんなエリート目前プロぼっちなガキが、周りに頼らず生きようとすれば、一人で頑張るしかないわけだ。
突き放せば泣かれて殴られ怒られ、迎え入れれば嫉妬され愚痴をこぼされる。俺にとっての妹と幼馴染との関係なんてそんなもんだ。そう言い聞かせて足場を固めるしかなかった。幼馴染には悪いが、突き放すしかなかった。
だからぼっちはぼっちに与えられるべき最高のギフトを最大限に活用し、成長を目指した。
……あ? ギフトってなんだって? そんなのアレだ、アレに決まってるだろ。リア充どもが仲間一人一人に対して割かなきゃならんもの。───時間だ。
俺はぼっちに与えられるそのギフトの全てを自分のために使用して、自身の成長を願った。
べつに難しいことじゃない。ほうっておかれたから、“一人でしなきゃいけないこと”の全てを自分で出来るように頑張っただけだ。
誰に聞かせようが難しいことだと言うことでも、必要に迫られりゃやらないわけにはいかない。ぼっちである場合、そうしなきゃいけなくなる時期が来る機会が、他人よりも相当に早かった。それだけだ。
小町が受け取る小遣いよりも遥かに少ないそれを遣り繰り、勉強からジョギングランニング、体を適度に鍛えることも始め、年齢が足りてなくても稼げる新聞配達を始め、誰に陰口を叩かれようとも“独り”の努力を怠らなかった。
“みんながやる努力”と“俺がする努力”は言葉の時点で違うそうだ。俺がやれば指差されて笑われることでも、他の誰かがやればそれは感動話になる。そうした指差されの日々さえ越えて、ただ自分のためを続けた。
もちろん、妹様や幼馴染様のご機嫌を損ねることなく、親のご機嫌を損ねることもなく、“都合の良い子”であることも努力した。内心ではいつも反吐が出ていたがな。……あ? いや、他人に対してじゃなく、そんな自分に対してまで嘘つかなきゃなんねぇ自分にだよ。
ぼっちの努力をしているのは俺だ。そんな俺が俺に嘘をつかなきゃいけないんだ、それが一番辛かった。ママさんには頭が上がらない。
小学中学と、二人には俺に関わるなと言ってあった。
小学では低学年時代に由比ヶ浜が俺に無駄に近づいてきたために、地獄の幕開け。
イジメに遭えば妹が“イジメに合ってるヒキガエルの妹”なんて言われて泣かされることもあって、泣けば親父が俺に怒る。こちらの事情は一切聞かずに一方的にだ。……事情? 娘のために怒る父親に、俺の意見なんて届くもんか。そんなもん、とっくの昔に諦めている。呼び出された親と、帰路を歩む放課後。俺の目には男親の広くカッコイイ背中など映らず、ただそこには小町の味方だけが存在していた。あの日を、俺は一生忘れないだろう。
俺の中では、“親は俺の言葉なんて一切聞かないもの”として認識が固定されていたもんだよ。そしてそれは、今でも変わらない。これからもだろうな。家でも学校でもそんな調子だ、休める場所なんてありゃしない。
だから変わる必要があったんだ。なんでも独りで出来るエリートぼっちに。
誰かに頼ってなにになる? 信じたところで裏切られるだけだ。だったら最初から独りで出来る自分であればいい。
……そうして、人との係わり合いに疲ればかりが先行するこの世界を……俺は、見限った。
後悔があるとすれば一つだけ。
いろいろな物事を社会や自分の所為にして諦めたことは数あれど……幼馴染との関係だけは───そいつは悪くなかったというのに、全てを世界や社会の所為にしたままに離れてしまったこと。
妹のことでさえ、妹の自業自得だときっぱり言えたのに。
× × ×
両親が仕事で家を留守にし続ける家で、糧を用意するのは兄の仕事だった。
妹は手伝うと言ったが断固拒否した。洗剤や水で手が荒れれば、包丁で指を切れば、怒られるのは俺なのだ。
だから炊事洗濯掃除、全て俺が受け入れ、必要になれば弁当だって作った。
多くもない小遣いを切り崩して買った料理の本は、今でも俺の宝物だ。
小町が勝手に読んで汚されて、初めて激怒した日にも、親父に怒られようが殴られようがその日だけは絶対に引かなかった。
……が、所詮はガキの虚勢だ、親は怒鳴って無理矢理謝らせてそれで勝手に満足した。その時に俺が流した涙を、怒られたから、殴られたから泣いたもんだと思っているやつには、きっと永遠に俺の気持ちなんて解る筈もない。だから、アレは親という名の他人でしかなかった。
その出来事は、その日より前の放課後の帰路を思い出させる。思えばあの日からだ。大嫌いが無関心になったのは。こんなに痛いなら関心も期待も持たなければいいと、心が折れた。
それからは嘘だらけの日々。
波風を立てない程度に振る舞って、本心を隠した日々を生き、それでも独りの努力を忘れない。
それを続けたのは、それだけは嘘ではないからと信じたからだろう。
高校になればなにかが変わると信じて、嘘と欺瞞だらけの中学時代にさよならを。
自転車で通える距離の進学校、総武高校という場所を受験。
由比ヶ浜から離れ、努力して磨いてきた自分をその新しい場所で解放してやろうとわくわくしていた。
……由比ヶ浜もそこを受験して、受かっていたとも知らず。
周囲が何にどれだけ喜ぼうが知ったことじゃなかった。何に対して喜んでいようがどうでもよかった。
俺は俺で、ようやく解放されると……報われると、そう思っていたのに。
ある朝のことだ。
心機一転、新しい場所での自分の未来にガラにもなくわくわくしながら、随分と早くに家を出た。
まだ早朝。
朝独特の空気に包まれながら自転車を漕いで、濁りきっていたであろう目を久しぶりに期待に輝かせて、通学路を進んでいた。
今でも時々思うことがある。どうしてあの時間に出てしまったのか。
結論から言えば、そうすることで守られた命は確かにあった。人は嫌いでも動物に罪はない。むしろ人がどうであろうともそいつは守りたかったから───通学路の途中。サブレという名の犬のペットの散歩をしていた彼女の手からリードが離れ、サブレが道路に飛び出してしまった時点で、全てはまちがっていたのだろう。
飛び出し、助け、轢かれ、足を骨折。
心機一転になる筈だった朝は……友達を作るために必要となるであろう期間は、骨折のために入院、という形で……終わってしまったのだ。
入院生活の大半は勉強と読書に使った。
初日からこんなくだらないミスをする生徒を心配して見舞いにきてくれた教師が居て、なんかあまりの格好良さに危うく惚れそうだった。女の人なのにすっごく格好いいんだ。おかしいね。あと見舞いにきてタバコ吸おうとせんでください。
「あ、の……はーくん」
「別にお前のためにやったわけじゃねーよ。いいからもう来る度に謝んな」
「でも……」
「ああそれから。お前も総武だったんだってな。平塚先生に聞いた。驚いたよ。頑張ったんだな。おめでとう」
「あ、う、うん……」
「入学したばっかじゃ友達とかグループとか作ってる時期だろ? 俺のことはいいから友達作りに励めよ。あの中学から総武に来たやつなんざゼロだろ? ああいや、三浦が居たか? ……とにかく、せっかくの関係リセット、友達ゼロのこの時期に俺の見舞いなんざしてる場合じゃねーだろ」
「……はーくん……」
「もし俺に対して罪悪感みたいなのを抱いてるからここに来てるなら、そんなのはやめろ。そんなものはいらないし、感謝される謂れはないし、巻き込まれた運転手以外に怒られる謂れもねーよ」
「……ざいあ……っ…………あるよっ、それはっ……あるに決まってるよっ! だ、だってあたしがあの時、リードを離さなきゃっ……!」
「サブレを助けたのは偶然だし、べつにお前のペットだからってわけじゃない。たまたまそこを通ったのが関係のリセットの先を考えて浮かれた馬鹿で、巻き込まれたのが車に乗った運転手だ」
「……はーくん、いつもそうだよね。そうやって、きっぱり……。あ、はは……あたし、そういうの自分には出来なくて、ちょっと苦手で、でも……」
そうだろうな。中途半端に優しいやつこそ、断言なんて言葉とは無縁だ。
「でも……でもさ。させてよ……心配。踏み込ませてよ……! いつもそうやって自分は大丈夫って……! なんで避けるの!? 仲良くしようよ! そうしなきゃいけない理由なんてあるの!?」
「当たり前だ。俺は独りでいい。自分でなんでも出来なきゃ、誰が俺を安心させるんだ。ぼっち生活に不安なんて邪魔でしかない。誰かを心配してる所為で眠れないだの不安だだの、そんな感情は邪魔なだけだ。だからさ、由比ヶ浜。もう心配する必要なんてないんだ。俺は独りで生きていけるんだ。ずっとそのための準備をしてきた」
「っ……な、なんでいっつもそんな……っ……昔はもっと引っ張ってくれて……! ……ゆ、結衣って呼んでくれてっ……」
「……。別に、そんなのこのくらいの歳になりゃ男子だったら一度は通る道だろ」
「じゃあ小町ちゃんはっ……!? 小町ちゃんも心配させてもらえないってさっき───」
「“ゴミ”の心配なんか、あいつがする必要ないだろ。普段からごみぃちゃん言ってるんだ、なにを今さら」
「っ……!」
そうだ、べつにいつもと変わらない。
学校に行ってもぼっち、家に居てもぼっち。
やることと言ったら勉強と家事と運動くらい。友達に割く時間なんぞないから、それらに全力で振り分けられる。
つまり、自分の時間を作るという能力において、ぼっちに勝るものなどあらず。
アニメの世界に憧れたこともあったな。特撮の主人公の強さに夢を見た時期も確かにあった。
けど、そんなものは、いつかの語り上手な主人公が言っていた通りの結果だ。
宇宙人や未来人や幽霊や妖怪や超能力者や悪の組織や、それらと戦うアニメ的特撮的漫画的ヒーロー達、果てはサンタクロースだって信じられない。
うちのサンタは小町専用だし、別に今さらそれについてを言うつもりもない。孤独で結構。せいぜい愛情を注いでやってくれ。あと俺に近づくことを禁ずる、とか家でルール作ってくれ。俺は一切逆らわないどころか、諸手を挙げて喜んでみせるから。
“たった一言”を言えない関係に、興味なんて抱けない。それでいい。
「………」
「………」
訪れる沈黙。“だからどうした”だ。
ぼっちは空気によく溶け込む。むしろぼっちこそ空気。どれほどの重苦しい空気にも溶け込んで、ステルスモードで認識されないまである。
“比企谷? いたっけ”なんて普通に首を傾げられて終わる。ぼっちへの認識なんてそんなもんだろうが。
だがだ。ぼっちは自分がされた仕打ちを決して忘れない。絶対に許さないノートはいつだってお前らの名前が書かれる時を今か今かと待っている。
まあ、ともあれだ。
今さらなにがどうなったところで心は動かない。たとえ視線の先の幼馴染がぽろぽろと涙をこぼしても、こいつと小町の涙=親や親父さんの激怒なのだ。そんなのにいちいち動揺していたら、俺は人として壊れて……いや、壊れてるんだろうな、とっくに。
心は動かない? 随分と嘘をつくのに手馴れてきたもんだ。そんな自分が気持ち悪くて仕方が無い。
こいつがなにをした? 妹と違って、俺をゴミ扱いしたわけでもない。ただ純粋に俺と遊びたかっただけで、勝手に騒いだのはいつも周囲だった筈だ。
でも───…………ああ、でもだ。もう泣く必要もなくなるだろ。お前はそれを待つだけでいい。悪かった。それを言ってやれないことだけ、本当にすまん。
「“罰ゲーム”おつかれさん。泣くほど嫌ならもう俺に近づかないでくれ。お前と小町のお見舞いイベントも、次に親父と親父さんが来て、それでおしまいだ」
「ぐしゅっ……っ……え……? それ、どういう……」
「“小町”もお前も、いい親を持ったよな。羨ましいよ」
「え……? え……?」
困惑する由比ヶ浜だが、その姿に突き放すように「もう帰れ」と言ってやる。
拒絶したのが俺ならそれでいい。相手は巻き込まれただけだ。ワケも解らず突き放され、受け取り方次第では悪意を向けられたと取れる。
そうなれば悪いのは俺だけ。さっさと認めて怒られて呆れられて、ぼっちになる。
あとはこの高校生活の間に自分を完成させればいい。
全治まで約一ヶ月。
その間にぼっちである自分を完成させて、誰にも干渉しないしさせない自分を確立させればいい。
「…………」
由比ヶ浜にはもう目を向けず、本を開いて集中した。
しばらくすると看護師が検診に来て、それに入れ替わるように由比ヶ浜が退室する。
俺は長く息を吐きながらいつも通りの検診を受け……来るであろう二人の大人を思い、はっと鼻で笑った。