あれから、意気投合という訳ではないものの、仲良くなった俺は、ほとんどイッセー達といた。初めの方こそ兵藤と呼んでいたが、イッセーでいいとのお許しが来たので、現在は名前呼びになっている。
この学園は元女子校とのことで、男女比が女子の方に傾いていて、いわゆるハーレムだの入れ食いだのと言っていたが、そのまま2年目の春になってしまったのだと。正直言ってしまえば、こいつらが下心隠して、それなりに紳士に対応したりすれば少しは状況が好転していたのではないか? と邪推してしまう、今でこそ覗きや教室内で堂々とおっぱいについて語っている事をしていなければ、変態トリオとかドスケベだとかの風評を流されず、彼女が出来る可能性がわずかながらも上がるんじゃあないかと思う。
そんななか、金髪と泣きぼくろが特徴的なイケメンくん、木場祐斗が女の子に誘われているところに遭遇し、俺以外の三人が血の涙を流さんばかりに嘆いている。
「クッソー! ちょっと顔がよくてちょっと頭がよくてちょっと性格がいいからって入れ食いしやがって!」
それを世間一般的に完全敗北と言わないか?
「それを世間一般的に完全敗北と言わないか?」
「アク、おまえはどっちの味方なんだよ!!」
ちなみにアクというのは、あだ名のようなものだ。どうも時悪と呼ばれると歯切れというか、語呂が悪く聞こえてくるためにアク、と呼んでもらっている。
「味方も何も争ってるわけじゃあないんだから。味方もくそもないだろう?」
「おまえは悔しくないのか? あいつがいる限り俺たちに彼女が出来ることは――――」
「正直全然悔しくないな、できなきゃできないで仕方ないし、仮に彼がいなくても……いや、やめておこう」
これ以上言ったら、心に癒えない傷を与えてしまうかもしれない。すると時間だと松田が時間だと腰を上げどこかに行こうとする、キリリとした顔でこちらを見るが、一瞬でだらしなく弛緩する。
この顔見覚えがある。覗きに行こうとしてる顔だ、俺は遠慮してグラウンド付近をうろうろしつつ帰ろうか帰ろまいかと、悩んでいるとフッと旧校舎が目に入り、なんとなく気になり歩いて行くと、少々だか古くなった校舎が目に入るが、後ろからギャーギャー騒ぎながら例の三人がこちらに向かってきた。
何故か全身ボロボロになったイッセーが目に入った、旧校舎の石垣にもたれ話を聞くと、松田が体育の授業中、偶然見つけた女子剣道部の更衣室への覗き穴を見に行ったそうだ。松田元浜は見ることが出来たからいいが、イッセーが大声を出したせい? で見つかり他の二人は見事に逃げおおせ、イッセーだけ女子達にボコられたそうだ。ひどい話だろ? と同意を求められたが自業自得だと返答しておいた。
「なんて理不尽だよまったく……」
イッセーが旧校舎の窓を見つめる。少し遅れて振り返るが真っ赤な髪がちらりと見えただけだった。
「旧校舎だっけか、ここにも人がいたんだな」
元浜がちらりと見えた赤髪の主の情報を話してくれた。リアス・グレモリーという三年生の女性らしい、スリーサイズに関しては興味がないので聞き流しておいた。イッセーいわく、俺のほうを見ていた気がしたそうだ。有名人だそうだからいい意味で目つけられてたらいいなと答えておく。その日はそのまま解散になった結局やることなんて、ほか三人のある意味健全な会話と討論を聞いているだけだったからな。
翌日、登校途中で顔芸をしながら固まっている松田と元浜、それに女の子を連れたイッセーを発見し走って近づいて行った。
「よう、どうした? 顔芸の練習か?」
「おっす、アク。彼女は天野夕麻ちゃん、俺の彼女だ。んでこいつはアク、こいつも俺のダチだ」
「そうか、イッセーにもようやく春が来たか。おめでとう、よかったじゃあないか」
「おう、じゃ行こうぜ夕麻ちゃん」
天野さんはこちらにぺこりとお辞儀して、イッセーのもとへ早足でついて行った。その間この二人は、フリーズしたまま苦悶の表情を浮かべ、ただただ涙を流していた。
「お前ら早く行かねぇと遅刻するぞ? ……しかしあのイッセーに彼女が出来たか……俺も彼女の一人も見つけないといかんかな。なんつってハハッ」
とくにやることもない授業後、また俺は旧校舎に立ち寄っていた。単純な興味本位で旧校舎内を探索してみようと思い立った、しかし旧校舎の扉に手をかけた時。
「あれ、君も部活かい?」
泣きぼくろと金髪が特徴的なイケメン君こと木場君に声をかけられた。
「いや、こちらに転入してきたばかりで、まだ知らない場所があるみたいでね。探検してみようと思っただけだそれじゃあ」
なぜだろう、逃げてしまったあのさわやかオーラにあてられたのだろうか? そんなことはないはずだが。あれか、彼の絶対的リア充オーラにひれ伏したのか、情けねえ俺。
「はぁ……情けね、帰るか」
校門を出る寸前に、宿題を机に入れぱなしだったことを思い出し、あわてて取りに行く。上履きに変えるために下駄箱を開けるとハラリ、と一通の手紙が落ちた。とりあえず教室の宿題を回収し帰路に着く、途中松田と元浜にAV観賞会しないかと誘われたが断っておいた、がその手の付き合いの悪い俺は、まさかお前にも彼女が! とあらぬ疑いをけられたが普通に否定しておいた。
「あなたを始めてみたときから好きでした。大切な話があるので、日曜日の夕方五時半に公園の噴水前で待っています……か、なんか胡散くせぇな、誰かのいたずらか? 少なくともあの二人ではなさそうだが、まぁいいや行かないで恨まれるのも嫌だし、言って丁重にお断りするか」
仮に、ホントの一目惚れで彼女が出来たとしても、今のところ構ってる暇もないし、もてあましそうだからな諦めよう。
時は流れ日曜日の夕方、公園の噴水に到着する時間を確認すると大体五時、少し早く来すぎてしまったか、晩飯の買い物の後だから仕方ないな。ふと周りを見渡すといい感じの黄昏時だったのが、いつの間にか真っ暗になっているではないか。何かがおかしい、たとえ春でもこんな速さで暗くなるはずがない。
思考をフル回転しても、周りの状況が全く理解できない、振り向くと噴水の向こうから一瞬光が見えた、この意味不明な現象の原因がある、と直感した俺は噴水の向こうに走り出すと、そこには先ほどの光をまとった、槍を持ちイッセーを貫く天野さん? の姿がみえた。前に見た制服姿ではなく、正直全裸とほとんど変わらないほどの、布面積の少ないコスチュームを着て、背中にはカラスのような漆黒の羽をはやしていた。
「なんだ……なんなんだよこれ。おいイッセーなんかの冗談か……手紙なんぞで呼び出して、こんなたちの悪い冗談でビビらせようなんて……何考えてんだよ!!」
「あら、あなたも来ていたのね、ついでに呼び出したかいがあったわ」
天野さん? は先ほどの赤い槍を思い切り投擲してきた、俺はとっさに両手で飛んできた槍を止めようとしたが、両掌を貫通し勢いが全く死なないまま、心臓に突き刺さり槍が消えだらだらと血が垂れ流しになる。
「危――子―――――――始末―――――
もう、何言ってるか聞こえねぇ……短かったが……良い……人生だった。
ほんの一瞬だけ赤い光が見えたが、ここで俺の意識は深い闇の中に沈んでいった。