パン! パン!
二回乾いた音が部室の中に響いた。一回目は俺、二回目はアクからだ。
「どうしてあなた達はわかってくれないの? 何度言われても、あのシスターの救出は認められないの」
なんで、こんなことになっているのか。それは、ハンバーガーショップでアーシアにアクのすべての傷をいやしてもらった後、俺達はアーシアを連れて日が暮れるまで遊びとおした。そして夕暮れの公園でアーシアの、「聖女」に祭られた少女の末路を聞いた。だから俺達は言った、いやその話を聞かなくてもその言葉を言っただろう。なら俺達はもう友達だろ? と、涙を浮かべながらアーシアは頷いてくれた。だけど、
堕天使レイナーレ。天野夕麻と名乗って俺の恋心を利用し、俺とアクを殺した堕天使。やつがアーシアを連れ戻しに来た、アーシアはやつに、教会には戻らないとはっきりと言った。だから
俺達の命を人質に取られてしまったアーシアは、自分を犠牲にしてまで、俺達を助けてくれた。やつは計画に、儀式にアーシアの
「わかっている! 理解はしているんだ。俺の、俺達の軽はずみな行動でみんなに悪影響を及ぼすのはわかっている! でも、納得できないんだ! 俺達は彼女に、アーシア・アルジェントという少女に、友達っていう絆の糸を結んじまったんだ。もう、無関係じゃあいられない、だから俺は、俺の納得のできる形で、この事態に終止符を打ちたいんだ!」
アクが部長をじっと睨んで叫ぶ。だけど部長は冷静な態度を崩さずに諭すように言う。
「あなたが納得できる形って何? あなた達はグレモリー眷属の悪魔なの! それを自覚しなさい」
「だったら、グレモリー眷属から外れてはぐれるだけだ。そうすれば、堕天使たちも野良犬を狩るだけで、あんたらにはかけらも迷惑はかけないはずだ」
その瞬間、部長は俺の目の前で初めて激昂した。
「そんなことできる訳ないでしょう!」
アクにも俺にも譲れないものがあるだって……。
「俺はアーシアと友達になりました。友達を見捨てるなんて俺にはできません」
「そういうことを面と向かって言えるのはすごいことだと思うわ。それでもそれとこれでは別なの。あなたが考えている以上に悪魔と堕天使の関係は簡単じゃないの」
「アーシアは敵じゃない!」
部長が言おうとしたことを先に強く否定した。あんなやさしい子が敵なわけがない。
「だとしても私には関係のない存在だわ。イッセー、アク、彼女のことは忘れなさい」
そんなこと言われたって忘れられるわけないじゃないか!
そこへ、いつの間にか朱乃さんが部長に近づいて耳打ちした。朱乃さんの表情はとても厳しい、朱乃さんの口が部長の耳元から離れると、より一層部長の表情が険しくなった。そして俺達をちらりと一目見た後、部員全員を見渡すように言った。
「大事な用ができたわ。私と朱乃はこれから少し外に出るわ」
部長がイッセーに『
「んじゃ、いっちょはぐれますか」
体をほぐしながら、イッセーとともに部室から出ようとする。すると木場くんから急に声をかけられた。
「行くのかい?」
「ああ、行く。行かないといけない。アーシアは友達だからな。俺が助けなくちゃならないんだ」
「さっきも言ったでしょ? 納得のいく形で終わらせたいって。なら行かなきゃ始まらないし納得いかない結果で終っちまう」
「……殺されるよ。いくら
だろうね、むしろ新人下級悪魔二人で勝てる集団なら、こんなとこで儀式なんてやらないでしょ。
「それでも行く。たとえ死んでもアーシアだけは逃がす」
「危なくなったら、俺がしんがりを務めてこいつだけは逃がす」
「覚悟はしているんだね。でも無謀だ」
「だったら、どうすりゃいいってんだ!」
イッセーが木場君に向かって怒鳴る、少しは落ちつけよ、だけど怒鳴られた木場君は動じずイッセーをじっと見てはっきりと言った。
「僕も行く」
驚いた、てっきり切ってでも止めてくるもんだと思ったから。
「いいのか? 部長から叱られるぞ?」
言ってから気づいたが、かなりマヌケたことを口走ってしまった。俺の質問に木場君が軽く笑う。笑うんじゃあない泣くぞ。
「僕はアーシアさんをよく知らないけれど、君たちは僕の仲間だ。部長はああおっしゃったけど、僕は君たちの意志を尊重したい部分もある」
仲間ですか、木場君も意外と熱い人なのかもしれない。
「部長もおっしゃっていただろう? 『私が敵の陣地と認めた場所の一番重要なところへ足を踏み入れたとき、王以外の駒に変ずることができるの』って。これって、遠まわしに『その教会をリアス・グレモリーの敵がいる相手陣地だと認めた』ってことだよね」
え!? そうなの? 全然気付かなかった。たしかにそこに行かせないのであれば、『
「部長は遠まわしに行ってもいいって認めてくれたんだよ。もちろん、僕のフォローも込みで。部長にも何か考えがあるんだろうね。じゃなければ」
「監禁してでも止めてきそうだ、あぁ恐ろしい」
一応冗談のように、おどけた口調で言ってみたが苦笑する木場君を見て、やりかねないと悟りフッと笑う。するといつの間にか塔城さんが俺達の目の前まで来ていた。
「塔城さんも来る?」
「はい……三人だけでは不安ですから」
「感動した! 俺は猛烈に感動しているよ、小猫ちゃん!」
隣から急に感動した風のイッセーが割り込んできた。イッセー、声でかいしうるさい。
「あ、あれ? 僕も一緒に行くんだけど……?」
木場君よ、イッセーはああいう奴なんだ、だからあまり気にしない方がいいよ。と心の中で言う。実際口に出さないのは、いつもの事だから。一応イッセーに代わってフォローしておこう。
「すまないね、巻き込んでしまって。でも木場君や塔城さんがいると頼もしいよ」
お世辞ではなくマジで心強い、戦闘経験は俺達よりもはるかに上のはずだ。
「んじゃ、四人で救出作戦と行きますか! 待ってろ、アーシア」
イッセーが以前、アーシアを送り届けた教会の入り口の様子をうかがっていた。人の出入りはない。それにどうせ相手方さんもこっちに気づいてるだろうし、ならやることは一つか。
「お、おいアクどこ行くんだ?」
「ノックしてもしもーし!」
バガン! と教会の扉を、昔に友人から教えてもらったソバットで蹴り飛ばして教会の中に侵入する。どうせばれてんだ、なら堂々と行くべきだろ。教会の中には入ったことはなかったが、長椅子に祭壇、それになんか偉そうな人が描かれているステンドグラスまである。教会といえばパイプオルガンがあったりするイメージがある。ことのすべてが終わったら探しに来るのも悪くないかもしれない、もし見つけたのならば引いてみたい。ほらパイプオルガンを弾いてみたら、向かい側にある扉の付いた棚にドアノブが入ってたりするかもしれないしね。さて現実逃避はこのくらいにしておこう、多少は現実逃避をしないと我を忘れて飛びかかりそうになってしまう。
「ご対面! 再会だねぇ! 感動的だねぇ!」
「あぁ感動的だよ。母さんの敵をこの手で殺せるんだからな」
『Creation!!』
俺は右腕に鈍く銀色に光る肩まで覆う籠手を作り出し、拳を長椅子に座りこむフリードに向ける。
「おい! アーシアはどこだ!」
立ち上がったフリードに対してイッセーが怒気のこもった声で問う。その問いに対してフリードはへらへらニヤけながら、ふざけた口調で答えた。
「そこの祭壇の下に地下への階段が隠されてございます。そこから儀式の行われている祭儀場へ行けますぞよ」
あっさり居場所をばらしやがった。罠か? それとも行ったところで無駄だとでも言いたいのか。どちらにせよ腹の立つクソ野郎だ。
「俺としてはよ二度会う悪魔はいないことになってんだけどさ! 俺、めちゃくちゃ強いんで悪魔なんか一度会ったら即解体! なのによ、お前らが邪魔したから、俺の人生設計が台無しなわけよ! だから死ねって思うわけよ! つか、死ねよ! このクソ悪魔どもがぁぁぁぁ!」
激昂すると同時に懐から光の剣と銃を取り出し、俺に向けて発砲する。前回の様にスローでは見えなかったが、俺はなんとか弾丸の軌道を予測して右腕の籠手で弾く。カンッ! カンッ! と二度甲高い金属音が響き本当の
塔城さんがそこら辺にあった長椅子を一つ持ち上げて、フリードに投げつける。しかしフリードは光の剣で長椅子を真っ二つに切り裂く。長椅子が埃を巻きあげて床に叩きつけられる。俺は一気に駆け出しフリードに鎧で包まれた右手で殴りかかるが、光の剣で防御され、ギギギギと金属音を鳴らしながら鍔迫り合いの様な状態になる。
『Creation!!』
左腕に右腕と同じ籠手を作り出し、顔面めがけて拳を振るうが、バックステップで鼻先を軽くかする程度で回避されてしまった。クソッ速すぎて攻撃が当たらねぇ、かすらせるのがやっとだ。
「そこだ」
剣を抜いた木場君が飛び出して後ろに下がったフリードに、追い打ちをかける。だがフリードには一撃も当たらない、すべて動きをしっかり捉えているようだ。俺と同じように鍔迫り合いになる。
「そろそろ本気を出そうか。喰らえ」
木場君が低く迫力ある声を出すと、剣が徐々に黒く染められてゆく。まるで闇を纏ったかのような漆黒の剣に変貌して、刃同士が接触している光の剣をも浸食し始めた。
「な、なんだよ、こりゃ!」
「『
闇の剣……だと……やばい俺の失われた中二心が再び炎を灯しそうだ、だけど今はそんな場合じゃあない。フリードの光の剣を見ると木場君の闇に吸いこまれて、刃を形成できないほど光を失った。
「
『Boost!!』
イッセーの赤い籠手から渋い音声が発せられ、イッセーが走り出す。それに続いて俺も走る。
「しゃらくさいんだってばぁ!」
フリードがイッセーに銃口を向け、光の弾丸を打ち出した。
「ここだ! プロ―モーション『
バシュウッ! とイッセーの近くで光の弾丸が弾けて消える。そしてイッセーの左の拳がフリードの顔面を捉え吹っ飛ばした。
「プロモーション! 『
俺は素早く騎士へとプロモーションを行い、吹っ飛んだフリードの真下にもぐりこむ。地面すれすれまで体勢を低くして、最初にフリードにぶち込んだ鉄拳と同じく掬いあげるように、腰と肩の丁度真ん中あたりに体のばねを利用して思い切りアッパーカットを叩き込む。ボキゴキバキッ! とフリードから立て続けに小枝をへし折った様な、ある意味心地の良い音を感じながら拳を振りぬき、きりもみ回転しながら強かに床へと叩きつけられた。
叩きつけられたフリードが、よろよろと立ちあがり口にたまった血を吐きだす。攻撃力が若干足りなかったか、あそこは戦車にプロモーションすべきだったか。
「――――っけんな。ふざけんなよッ!! クソ悪魔の分際でチョーシくれてんじゃねぇぇぇぇ! 殺す! 絶対にぶっ殺す!」
激昂するフリードはさっきまで使っていたボロボロの剣を投げ捨て、懐から更に二本柄だけの剣を取りだしイッセーに向かって飛びかかる、だが塔城さんの投げつけた長椅子が直撃して、元の場所へ長椅子ごと飛んでいく。そしてフリードの周りに長椅子を担いだ塔城さん、剣を構える木場君、拳を構えた俺とイッセーが囲うようにいる。フリードは忌々しそうに吐き捨てる。
「これはもしかしてピンチってやつですかねぇ? んー、俺的に悪魔に殺されるのはカンベンなので、悪霊退治ができないのは残念ですが退散したいねぇ。てなわけで、はいチャラバ!」
修道服? のボタンをちぎり取り地面に叩きつける。その瞬間眩い閃光が迸る。クソッ閃光玉かよ!
視界が軽く戻ると、もうそこにはフリードの姿はなかった。だがどこからか奴の声が聞こえた。
「おい雑魚悪魔二人……イッセーくんとアクくんだっけ? 俺、お前ら絶対に殺すから。俺を殴りやがったクソ悪魔は絶対に許さないよ」
なんとか声の方向を探ると、右側の壁の上の方から聞こえた、見上げると高い位置に設置された窓に手をかけて逃げようとしていた人影が確認できた。
『Creation!!』
「逃がすかぁぁぁ!! クソッタレがぁぁぁ!!」
俺は手元にカイリーを作り出し、人影の見えた方向にぶん投げる、しかし窓から大きく左側に逸れ壁に当たりガンッ! と鈍い音を立てて突き刺さった。チッ逃げられたか、しかもいらねぇ捨て台詞まで吐きやがって。
全員の視界が完全に戻ったのを確認して祭壇に近づく、その時コツンとつま先にフリードが落して行った柄だけの剣が二振り床に転がっていた。くすぶる中二心を抑えきれずにその剣を回収した。塔城さんが祭壇を殴り飛ばして祭壇をどけると、あのクサレ神父が言っていた通り、地下へと続く階段があった。そこを降りると、奥へ行くための一本の通路があった。他にもいくつか扉があったが塔城さんがこの通路の一番奥からアーシアの匂いがすると教えてくれた。そして奥の大きな扉の前に立つ。
「向こうには、おそらく大量の堕天使とエクソシストが存在すると思う、覚悟はいいかい?」
木場君の質問にみんなが頷く。覚悟なんて殴りこみを決めた時からできているさ。イッセーと木場君が扉に手をかけようとすると、手が触れる前にまるで来ることがわかっていたかのように扉が開く。
「いらっしゃい。悪魔の皆さん」
艶のある黒髪と、漆黒の羽を広げて俺達を見降ろす堕天使レイナーレ。その隣の十字架には、アーシアが鎖で縛られ磔にされ不気味な光を灯していた。部屋中には予想以上の数の神父どもがフリードと同じ光の剣を携えてひしめいている。
「アーシアァァ!」
イッセーがアーシアに向かって叫ぶ。こちらに気づいたアーシアは涙を流し苦しそうな表情を向けた。
「「助けにきたぞ!」」
「遅かったわね。いま、儀式が終わるところよ」
何だと!? クソッ! 間に合わなかったか。
「あぁあ、いやぁぁぁぁぁぁッ!」
アーシアの絶叫とともに、更に怪しく不気味な光を増す十字架。何故だろうすごく嫌な予感がする。俺が走り出すとともにイッセーも同時に走り出した。それに気づいた神父どもも、光の剣の刃を形成して、襲いかかってくる。道を開くために、最初に横薙ぎに光の剣で切りかかってきた神父を、俺は剣のしのぎの部分を拳で思い切り叩きつけて無理やり軌道を落とし、できるだけ相手を巻き込むように殴り飛ばす。ひしめいていた神父たち二~三人をボウリングのピンの様に巻き込みながら吹っ飛んで行く。その隣では木場君が闇の剣で光を吸い取り、武器の使えなくなった神父を塔城さんが一撃の名のもとに殴り飛ばすといったコンビネーションを披露していた。
「イッセーここは俺たちに任せてアーシアを助けにいけ!」
イッセーはただ無言で頷いて、俺達の開けた道を走っていく。そしてその道を塞ぐように神父どもが集まってくる。まったく、砂糖に集る蟻かこいつらは! 一人の神父の腹に掌底を打ち、くの字に折れ曲がったところに顔面へ、ソバットを放ち他の神父にぶつける様に吹っ飛ばす。数が全く減らない、多勢に無勢とはこのことだ。はぁ……と疲労のこもった息をはいた瞬間眩い光が儀式場を覆う。視界が晴れ、イッセーの向かった先に目を向けると丁度階段を登り終えたイッセーと、今まで以上にぐったりとしているアーシアと、緑色の光の球体に手を伸ばす堕天使レイナーレ。邪悪な笑みを浮かべてその球体を愛おしい何かを包み込む様に抱きしめ、体内に取り込む。その瞬間レイナーレの体から球体が放っていた緑色の光を身に纏い耳障りな高笑いをする。
クソッ神父どもが邪魔で何話してんのかわかんねぇ。また一人神父を殴り倒して十字架の方を見上げると、イッセーがアーシアを抱えて走ってくるのが見えた、もちろん神父たちもイッセーの方に向かっていく。
「大禍くん、小猫ちゃん、兵藤くんの逃げ道を作るぞ」
「……了解」
「アイサー!」
邪魔そうな神父を片っ端から殴り飛ばす。木場君達と開いた道をイッセーが通り抜けて入口まで到達した。
「木場! アク! 小猫ちゃん!」
「先に行くんだ! ここ僕達が受け止める!」
「……早く逃げて」
「でも!」
「いいからさっさと逃げろ! しんがりは任せろっつっただろ!」
「木場! 小猫ちゃん! 帰ったら、絶対に俺のことはイッセーって呼べよ! 絶対だぞ! 俺たち、仲間だからな! アク! 死ぬんじゃねぇぞ!」
俺の分だけ若干雑じゃない? とか一瞬思ったけど今回は不問にしてやるよ。しかしホントに神父が多い。ようやく半分くらいといったところか。ゾクリと悪寒を感じて大きくバックステップを取ると、俺のいた場所に光の槍が突き刺さり弾ける、その余波で俺は五メートルほど吹っ飛び、俺に襲いかかろうとしていた神父も吹っ飛んで気を失っている。これであと三分の一くらいか、だけどどうやら俺は、厄介な奴から狙われてるようだ。
「いきなり槍投げとか、もうちょい常識学んだ方がいいんじゃあないの? 手紙の主さんよ」
上空から俺に向けて光の槍を投げつけてきた堕天使レイナーレ、飛べない俺にとってどう戦えと? と問いたくなるほどの強敵だ、そもそも堕天使とかって卑怯じゃね? 最初っから弱点武器持ってるとか、どんなイージーモードだよ。
「あら、たかだか人間風情が説教なんてやめてくれない? 反吐が出るから」
『Creation!!』
両手に一本ずつカイリーを作りだして片方を投げつけるが、いともたやすくレイナーレに受け止められる。
「何これ? ブーメラン? こんなもので私に傷をつけられると思ってるの?」
受け止められたカイリーを振りかぶりこちらに投げ返してくる。そのスピードは俺の投げたものよりもはるかに速い。飛んできたカイリーをなんとか右手で弾き飛ばすが、すぐに二発目の光の槍を投げつけてくる。俺は思いっきり左へと飛び残りのカイリーをぶん投げる、しかし狙いは大きく外れレイナーレの真上の天井に突き刺さる。
『Creation!!』
今度は自分の周りの床に五本ほど
「アッハハハハ、どこを狙ってるのよ」
レイナーレは自分の背後に複数の光の槍を展開し、すべての矛先を俺に向ける。更に二本床に刺さった槍を引き抜き、そのうちの左手の一本をまた天井に投げつける。それと同時にレイナーレも光の槍を一斉に投げつけてきた、最後の槍を取りながら右へと走る。左側には木場君達がいる、そちらに意識を向けないようにしないと。一斉に飛んできた光の槍は俺を追い立てるように、地面に刺さる。そのうち一発は俺の後頭部をかするように飛んで来た。正直騎士にプロモーションしていなければ、回避できないほど、いやこの状態でも回避できたのはやはり奴が手加減していることに他ならないだろう。チッと舌打ちを打ちながら、相手の下に移動し残った右手の槍を今度はレイナーレをかすらせるように天井に投げる。レイナーレは大きく回避をせずに軽く上体を反らせて槍を回避して反撃に二発、光の槍を投げる。なんとか一発目はよけたものの二発目が左の太ももを抉って地面に刺さる。ジュウッ! という音とともに激痛が走る、だがかすった程度で根を上げていてはイッセーに合わせる顔がない。最後に残った槍を思いっきり振りかぶり天井に投げつける。
「地に
その槍が刺さった瞬間、天井の一部が崩れレイナーレの背中と羽に直撃して地面に叩きつけられ、瓦礫の下敷きになった。フゥと乱れた息を整えてから木場君の方へと向かう、そこにはまだまだ沢山の神父がいた。三人でかかればすぐにでも掃討できるはずだ。
神父の袈裟切りをよけて、後ろに回り込み背中に蹴りを入れる。エビ反りになったところに目の前に来た顔面に肘打ちを打ちこんだ後、倒れこんだ神父にエルボードロップをかけて最後の一人の意識を刈り取った。
「はぁはぁ……これで最後だな」
荒く切らせる息をゆっくりと整えながら、木場君達に話しかける。
「お疲れ様、でも途中から堕天使を相手にしてなかった?」
「一応瓦礫の下に埋めとい―――――ッ! ヤバいな」
レイナーレを下敷きにしていた瓦礫がいつの間にか、無くなっていた。これが何を意味するか、そう奴はイッセーの方へ向かったんだ。
「イッセーの所へ急ごう!」
木場君と塔城さんは軽く頷いて、入口の方へと走った。
「吹っ飛べ! クソ天使!」
階段を登りきると、ガッシャァァァァン! という破砕音とともに涙をこぼして立ちすくむイッセーの姿が見えた。俺の心配は杞憂に終わったようだ。グラリとイッセーの体が揺れて倒れこみそうになったのを俺と木場君が支える。
「お疲れ、敵はとれたようだな」
「お疲れ。堕天使を倒しちゃうなんてね」
「遅いぞ、色男と親友」
なんだよ、よく見りゃボロボロじゃねぇか。お互いかなり頑張ったみたいだな。
「悪いな、俺も神父の相手で手いっぱいだったんだ」
「邪魔をするなって部長に言われていたんだ」
部長に? 部室を出てから部長とあってない気がするんだけど。
「その通りよ。あなたなら、堕天使レイナーレを倒せると信じていたもの」
突然の声に驚きイッセーとともに振り返ると、笑顔の部長がいてこちらに歩いてきた。さっきまでいなかったはずなのに、なんで地下にいんの? 入口から入れよ。とは口が裂けても言えない。
「部長、どこから?」
「地下よ。用事が済んだから、魔法陣でここへジャンプしてきたの。教会にジャンプなんて初めてだから緊張したわ」
部長でも緊張することあるんスね、と心の中で思う。そう思っていると塔城さんが、イッセーがぶち破ったと思われる大穴の方へと歩いて行った、気になったのでイッセーは木場君に任せて小走りで塔城さんを追う。
「お疲れ、どうしたの?」
「……お疲れ様です。部長に堕天使を持って来いと言われたので」
持って来いて、物じゃあないだからせめて連れてこいとかにしようよ。うつ伏せで地面に倒れているレイナーレ、一応脈はあるし息はしているみたいだから死んではいないでしょう。生きているか確認していたら、塔城さんが無造作にレイナーレの背中にある衣装のひもを引っ張って引きずりながら歩く、ちょっとかわいそうだな。
「……そういえばさっきの戦い、見事でした」
「さっきのって神父とかと戦ってた時の話?」
「はい、それと堕天使とも」
てことはあの戦いを見られてたのか、恥ずかしい。相手が油断して、手加減して、舐められていたからこそ当たった様なものだったし、地に
「ありがとう、塔城さん。でもあれはこいつが油断してたから当たった様なもので」
「あの、大禍先輩。その塔城さんっていうのやめていただけませんか? みんな名前で呼んでくれているのに、先輩にだけ壁を感じてしまいます」
「そっか、ごめんね塔……じゃなくって、えっと小猫……さん? それじゃあ俺の事も大禍じゃあなくってアクって呼んでくれ」
「はい、アク先輩」
小猫さんが二コリと笑って返事をくれた、これで小猫さんがレイナーレを引きずってなければ、良いシーンだと思ったのは内緒だ。
「部長、持ってきました」
小猫さんが引きずっていたレイナーレを部長の目の前に置いて木場君達の方へ向かう、俺もついでにイッセーの方へと歩いて行く。
「ありがとう、小猫。さて、起きてもらいましょうか」
部長がそういうと、姫島先輩が手を振りかざす。するとレイナーレの真上に水の塊が出現して、それをレイナーレに浴びせる。魔力ってこんなこともできるのか。
「ごきげんよう、堕天使レイナーレ」
「……グレモリー一族の娘か……」
「はじめまして、私はリアス・グレモリー。グレモリー家の次期当主よ。短い間でしょうけど、お見知りおきを」
毎回思うけど部長の笑顔怖い。レイナーレが何かを言おうと口を開いたが、それを遮るように部長が言う。
「それから、あなたに協力している三人の堕天使は助けに来ないわ。私が消し飛ばしたもの」
部長はスカートのポケットから、三枚の黒い羽根をレイナーレの目の前に落とす。それをみたレイナーレの表情が一気に曇る。消し飛ばしたってことは、前のはぐれ悪魔みたいに跡形もなく殺したってことだよな、なんかちょっと心が痛むな。
部長は俺達が、アーシアを助けに行こうと言う以前から、堕天使が動き回っていることに気づいていたらしいが、それは堕天使全体の計画だと思って無視していたらしい。でも突然こそこそしだしたから実際に会いに行ったら、すんなり独自の計画だとバラしてくれたらしい。お前らは少年漫画の敵キャラかよ、急に説明しだしたら失敗するっていう法則を知らないのか。
「その一撃を食らえばどんな者でも消し飛ばされる。滅亡の力を有した公爵家のご令嬢。別名『
滅殺とはなんとも恐ろしい、敵の体力を一撃で持っていきそうな二つ名だ、とても物騒だけど。
「イッセーその
部長は何か合点がいったような口調でイッセーの左手の籠手を見て一人で頷き説明を始めた。
「堕天使レイナーレ。この子の
「十四種の『
その一言を聞いた瞬間、レイナーレの曇っていた表情が驚愕で歪み青ざめる。つか赤龍帝の籠手ってことはイッセーが、俺がいずれ対峙して喧嘩を吹っ掛けるであろう相手。無理じゃね? 勝つの。十秒ごとに倍ってどんなチートだよ、一分経ったら六十四倍とかまさにムリゲー。
『まさかこんな近くにいるとは思わなかったがな。しかしよかったじゃあないか、今回はドライグが味方で』
今回はってどういうことよリンドさん。前回は違ったの? あと『
『前回はみんな敵の三つ巴の戦いだった、その前はたしかアルビオンが味方だったかな。『
イッセーのに比べるとだいぶ見劣りする気がするんですが。とリンドさんに聞いたが返事が返ってこなかった。
「消えてもらうわ、堕天使さん」
しまった、リンドさんとの会話に集中してたせいで話聞いてなかった。今の部長のセリフを反芻するにレイナーレに対する死刑宣告なのだろう。
「イッセーくん! 助けて!」
何というか声の質が変わった、その声は堕天使がイッセーを殺すために変装していた天野夕麻の声。それをまた演じている、つまりはイッセーの情を利用する気なんだろう。
「この悪魔が私を殺そうとしているの! 私、あなたのことが大好きよ! 愛してる! だから―――」
素晴らしいほどの手のひら返しだな。さすがにやさしいイッセーでもブチギレるんじゃね? しかしイッセーはとても悲しそうな表情で言った。
「グッバイ、俺の恋……」
また、レイナーレは絶望した表情を見せる、そしておそらく次の標的は……。
「アクくん! 初めて見た時、あなたに一目惚れしたの!」
やっぱり俺か、と鼻で笑う。ゆっくりとレイナーレに近づいて顔の前でしゃがみこむ。
「そういうのってよくないと思うんだ」
「え?」
「お前にはさ、悪の美学ってのが足りてないのよ。何かを計画した時点で、遅くても自分計画を邪魔する奴が現れた時点で、殺される覚悟をしなくっちゃ。せめて潔く殺されようよ、殺される寸前になって命乞いなんて、もう哀れを通り越して可愛らしく思えてくるよだから」
一拍置いて、今までにしたことのないくらいの最上級の笑みを浮かべながら。
「お前から力をすべて奪い、封印し、生き恥を晒しながら生きてもらうよ」
そう言い放った。
『お前のやりたいことは大体わかった。しかし今のお前じゃ、この能力は制御できない、だから代償を払い一時的にその体を俺に貸してくれ』
いいよ、なんとなくそんな気がしてたから。代償はどんなの?
『お前の体の一部をドラゴンに変える、そしてそいつと
両目でいいなら安いものさ、他人に任せるのは不本意だけどね。とリンドさんに言った瞬間意識がどこかへと飛ばされた。
「お前から力をすべて奪い、封印し、生き恥を晒しながら生きてもらうよ」
アクがそう言って立ち上がった瞬間に、ゾクリと圧倒的な威圧感をアクから感じた。
「『久しぶりの現世の空気だ、しかし冥界の空気でないのが少々残念だ』」
アクの口から、アクとは違う凛々しい声といつも耳にするアクの声が、機械で合成された様な声が発せられる。こいつは誰なんだ?
おもむろにアク? が手を伸ばし指をパチリと鳴らす。すると堕天使の首と両手と両足にリングの様なものが生成される。そしてもう一度パチリと指を鳴らすと、作られたリングからザリザリザリザリ! と金属が削れるような音がなり、謎の紋様が幾重にも刻まれ銀色の光がその紋様を満たしていった。思い出したかのようにも一度指を鳴らす、今度はアクの右手の鎧に紋様が刻まれ、堕天使の背中に手を伸ばし、まるで水の中に入れるかの様に体の中に手が入りこんでいく。そしてそこから緑色の光を放つ何かを引きずりだした。
「『さて、相棒に頼まれたことは完了した。後は相棒の意識が返ってくるのを待つだけだ、そのまえに』」
自分の足元に倒れていた堕天使を無視して、俺の方を向き近づいてくる。
「『相棒の目を通して見ていた、この
俺の手に載せられた二対の指輪。それを渡した後も、じっと俺を金色の瞳で見続けている男に問う。
「誰だ、お前は」
「『ドライグはまだ目覚めていないのか、なら仕方がない。俺はリンドヴルム。お前達悪魔からは
アクの
「……部長、みんな、俺とアーシアのために本当にありがとうございました。でも俺、アーシアを……守ってやれませんでした……」
「泣くことはないわ。今のあなたの姿を見て、誰があなたを咎められるというの? あなたはまだ悪魔としての経験が足りなかっただけ」
「『ふむ、その子を救いたいのなら、転生させてみたらどうだ? 残っているかどうかは知らないが『
リンドさんが、そう提案する。
「そうね、前代未聞だけどやってみる価値はあるわ」
部長はポケットから紅いチェスの駒を取り出してアーシアの胸の上に置く。
「我、リアス・グレモリーの名において命ず。汝、アーシア・アルジェントよ。いま再び我の下僕となるため、この地へ魂を帰還させ、悪魔と成れ。汝、我が『僧侶』として、新たな生に歓喜せよ!」
駒が紅い光を発して、アーシアの胸の中に沈んでいく。駒が完全にアーシアの中に入ると指にはめられた、
「帰ろう、アーシア」
俺は涙を流しながら、そういった。
意識が戻ると、イッセーがアーシアを抱きしめながら泣いているのが見えた。そうか、無事だったのか良かった。
「アク、戻ったのか」
「戻った? あぁリンドさんに体を預けてたんだっけ」
どう? うまくいった?
『おうよ、堕天使の力は封印した、体のスペックも高校生レベルまで下げた、人間や悪魔に危害を加えることができなくなった、この町から出られなくなった、悪魔に頼らなければ生活できなくなった。これだけ制約を重ねれば問題ないだろう。因みにあのリングは錆びない、溶けない、削れない、の三拍子そろったリングだ、絶対に壊れないし仮に壊れてもすべて同時に、跡形もなく破壊しないと元通り再生する逸品だ』
何それ怖い。逸品どころか呪いのアイテムじゃん。いや実際呪いのアイテムだから合ってるんだけど。
「レイナーレ……さま……」
イッセーに支えられて立ち上がったアーシアがぶっ倒れてたレイナーレに気づいた。
「違うよ、もうそいつはレイナーレじゃあないよ、だから安心していい」
しかし困った、夜中に一応女性を担いで出歩いていたら、誘拐か何かと勘違いされる、服装もアレだし、どうしたものか。
「……どうかしましたか? アク先輩」
悩んでいると、小猫さんがこちらに来て訪ねてきた。
「ん? あぁ、こいつを運ぶにはどうしたらいいかなって考えててさ。さすがに全部奪っておいて放置じゃ可哀そうだし、一応俺の所に置いておこうと思って」
「正気ですか? また襲われますよ」
とても不安そうに上目使いで見上げてくる小猫さん、かわいいなぁ。
「それは大丈夫。リンドさんが堕天使の力を封印したし、悪魔と人間には危害を加えられないとかいろいろ制約かけてたし。そうだ小猫さん、これを運ぶのを引き受けてくれないかな?」
小猫さんは少し考えるそぶりを見せた後、部長の方に行った。おそらく確認を取るためだろう。そして軽くお辞儀をした後こちらに戻ってくる。
「引き受けます。堕天使が本当にアク先輩を襲えないか、確認をしてきなさい、と部長がいっていました」
部長の許可ももらえたことだし、そろそろ帰るかな。部長達はジャンプして帰っちゃったし。
「ありがと。俺達も行こうか、一応引きずるのはやめてあげてね」
小猫さんがレイナーレの衣装のひもを引っ張るのを見て釘をさしておいた。小猫さんは、ちょっと不服そうな顔をしてから肩で担ぐ。俺が運ばれた時のプロレス技みたいな持ち方じゃなかったのはちょっと安心した。
「こ……ここは?」
「目ぇ、覚めた? 堕天使さん。ここは俺の家」
我が家について小猫さんと食事を取ってからおよそ二時間経過して、レイナーレが目を覚ました。しかしなんでこいつは気絶してたんだろうか? まぁいいや。椅子に座った俺と小猫さんをレイナーレが認識して怯えた表情で後ずさって座り込む。
「ひ……
「違うから、今はただの悪魔だから」
リンドさんなんかやったの?
『抵抗されないように、体の中に入っていたときに、ありったけのプレッシャーと敵意を向けただけだが?』
原因それかよ、やりすぎ。
「まぁ、落ち着いて腹を割って話そうじゃあないか」
そう提案したとたんにレイナーレが立ち上がって、光の槍を作り出そうとする。しかし光の槍は出現しない、もう一度槍を投げつけるようなポーズをするがやはり出ない。今なら勝てると思ったんだろう。
「何故!? どうして槍が出ないの!?」
「そりゃあ出ないよ、封印するって言ったでしょ? 今のお前はただの高校生くらいの人間だよ。今のキミにかかっている制約は力の封印、スペックのダウン、悪魔と人間に危害は加えられない、この町から出られない、悪魔に頼らないと生活できない。とこんな感じかな」
ガクリと膝から崩れ落ち虚ろな目を俺に向けるレイナーレ。今日一日で何回絶望してるんだろうかこいつは。そりゃ見下してた悪魔に縋らないと生きていけないんだしね。
「まぁ生きていれば、いいことあるよ。原因を作ったやつが言うのもなんだけどね」
「安全を確認できたので、私はこれでお暇します。アク先輩、ご飯ありがとうございました」
椅子から立ち上がった小猫さんと玄関まで行き、送って行こうか? と聞いたが大丈夫です。と断られてしまった。すこししょんぼりしてリビングに戻ると、放心状態だったレイナーレが一応復活して椅子に座っていた。
「なんで助けたのよ」
そうムスッとした表情でぶっきらぼうにレイナーレがたずねてきた。
「別に助けたわけじゃあない、ただ殺すまでしなくてもいいんじゃないかって思っただけ。アーシアだって無事だったし、でもそっちは味方の堕天使を三人殺されたんでしょ? さすがにやりすぎなんじゃないのかなって」
「どれだけお人好しなのよ、私はあの子を殺したのよ?」
「え? でも俺の意識が戻ったとき、ちゃんと息してたし、意識もあったべ?」
「知らないわよ、でも
てことは、アーシアはすでに一度死んで、何らかの方法で生き返ったってことか。あれ? それじゃあ俺、結構まずいことしてるんじゃあないか?
「どうしよ、俺、明日部長に殺されるかも……まぁ、そんときはそんときか、恥も外聞も捨てて土下座でもするかな」
うんきっと大丈夫だと思う。イッセーにはぶん殴られるかもしれないけど、そいつは甘んじて受けよう。それよりこれからの事を考えよう。
「そうだ、話は変わるけどお前名前どうすんの? まだレイナーレって名乗るの?」
「はぁ? なんでそんなこと聞かれなきゃならないのよ」
「そりゃあ、これから一緒に生活すんのに名前がなきゃ不便だろ? 言っとくけど俺、レイナーレって呼ぶのいやだぜ」
「なん……はぁ……なら、あんたが責任もって新しい名前を考えてちょうだい」
多分なんで、あんたと一緒に住まなきゃなんないの!? と言いたかったのだろうが言葉を飲み込んでくれたようだ。おそらく制約のことを思い出したのだろう。しかし名前か、いざいわれると思いつかないものだ、堕天使……てん、あま……し、つかい……。
「んー……
「ふーん、悪くないんじゃないの」
どうやらレインさんはお気に召したようだ、仏頂面だけど。
「細かいことはまた今度決めよう。とりあえずよろしくレイン、俺のことはアクって呼んでくれていい、部屋は二階の奥の部屋を使ってくれ」
残念ながらレインからの返事はなかった。仲良くやっていけるといいんだけどなぁ。
翌日、いつもより早く起きて学園へ向かう。なんでも朝から集まりがあるそうだ、つるしあげじゃなければいいけど。
「はよー、あれ、俺がラス一か」
オカ研の部室に入ると、俺以外のメンバーが勢ぞろいしていた。
「さて、全員そろったところでささやかなパーティでも始めましょうか」
立ち上がった部長が指を鳴らすと、テーブルに巨大なケーキが出現する。
「たまにはみんなで集まって朝からこういうのもいいでしょ? あ、新しい部員もできたことだし、ケーキを作ってみたから、みんなで食べましょう」
部長が照れくさそうに言う。新しい部員、そういえばアーシアが学園の制服を着ていることに、今気づいた。似合ってるな。イッセーが一発芸をするらしいので、俺もドン引きされる前提の一発芸「邪神立ち」の準備に取り掛かるとしようか。