辺りは、死んだように静まっていた。
「誰?」
聖堂の隣にある小さな建物から声がした。
「俺は、シグルズ。
子供がさらわれたって聞いて、調査に来たんだ」
「お願い、ここから出してもらえる?」
「ああ、分かった」
シグルズは、ピッキング道具を使って、鍵を開けた。
「ありがとう、シグルズさん。
あのね、私たち以外にも友達が城の中にいるの…」
男の子がポケットから何かを探していた。
「あ、あった。
これは、ここに閉じ込められたとき、怪物から奪ったんだ。
よくわからないけど、役に立つと思うよ」
少年は、何かの欠片を差し出した。
「向こうでアルティスの父親が待ってる。
急いで逃げるんだ」
「教えてくれてありがとう!
さあ、ティトス。
行こう」
「うん。
あなたも気をつけて」
姉弟は、氷で滑らないように気をつけながら去っていった。
「あの子達の話では他の子供たちがあの中に閉じ込められているのか…。
とりあえず、正面玄関から入ろう…」
城の正面玄関に向かった。
……ドスン!
何か大きな物が落ちる音がした。
「お前が来るのを待っていたよ!
鏡がお前の到着を予言してね。
我々の邪魔をするつもりだろうが、
それはお前の死を招くだけだ!」
怪物は、懐から小さな欠片を取り出した。
それを空中に放り投げた。
「
たちまち氷は、狼に姿を変えた。
「待て!」
怪物はそのまま城に入り、門を固く閉ざした。
グルル………
「まずいな…、城に入るにはあいつをどうにかしなければ…」
シグルズは、狼を見て考えた。
(…あれは……氷が変形して……、
……あ……!
……炎だ……!)
シグルズは、早速木の棒に火をおこした。
ボッ…
「さぁ、来い!」
「グルル!」
シグルズの言葉に呼応するように狼が動き出した。
「グルル!」
狼が牙を剥き、シグルズに向かって襲いかかる!
「ヤッ!」
シグルズは、とっさに松明をかざした。
「キューン!」
赤々と燃え立つ炎で狼は、小さな水晶の欠片を残して、たちまち溶けてしまった。
その小さな水晶の欠片を拾い上げると、バッグにしまった。
「ふぅ…」
城の扉は、固く閉ざされていた。
大きなエンブレムの一部が欠けている。
(どこかで見たような形…)
試しにティトスから渡された欠片をはめてみた。
すると、エンブレムが輝き始めた。
カチャン…
鍵が外れる音がしたあと、ゆっくりと開いた。
城の中からかすかに鼻歌が聞こえる。
シグルズは、門をくぐった。
―――――――――――
壁にかけられた鏡が呟く。
『………とうとう城に入ったか、探偵よ』
鏡は、ひび割れており、曇っていた。
『………しかし、誰にも私たちを止めることはできない………』
美しい女性の顔が現れた。
『………フフフ………
女性は、不気味に笑う。
『………この世界を滅ぼすことができる………』
その瞳は、狂気に満ちている。
『…スノー、哀れな子ね…。
私を信じるだなんて…。
《息子を救う》という言葉で難なく釣れたのだから…。
………フフフ………、………早く復活して、スノーの哀しみで世界を氷で閉ざしたいわ………』
そう言うと、女性の顔がフッと消えた。
……鏡の名は、『偽りの鏡』。