童話の闇~Dark Parables~   作:アリス・リリス

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第五話~鏡の最期~

ウェルキンは、シグルズを連れ、国王の間に入った。

 

 

「古い記憶の中、

鍛冶屋が私に不思議なハンマーを渡した。

 

私は、それを見つからぬように隠した。

 

娘は、鏡の奴隷となっている。

 

救うには、ハンマーを見つけなければならない。

 

あのハンマーだけが、鏡を完全に破壊できるのだ…」

 

 

二人は、広い部屋をくまなく探した。

 

 

(………ズさん!

皆…無事…す!)

 

 

ふと窓に目をやると、外でアルティスたちがシグルズを呼んでいた。

 

 

「アルティス!

今すぐ逃げるんだ!

門でお前の父親が待っている!

俺のことはかまわない、すぐに逃げろ!」

 

「わかりました!

どうかご無事で!

 

 

………皆、走るよ!」

 

 

子供たちが去るのを見届けていると、

 

 

「ハンマーを見つけた!

あとは、鏡の間に向かうだけだ!」

 

「よし、行こう!」

 

 

 

―――――――

 

 

「ちょっと!

離して!」

 

「…………」

 

 

ゲルダは、薄暗い部屋に連れてこられた。

 

 

「………!?」

 

 

ゲルダの視界にあの棺が入った。

 

 

「しばし待て」

 

 

雪の女王は、ゲルダを棺の前に座らせると、壁にかけられた鏡を取り外した。

 

 

(……死んでいるの?

でも、生きているみたい……)

 

 

女王が棺の前でひざまずくと、中の少年を慈しむように見つめた。

 

 

(女王の…息子…?)

 

 

「鏡よ、黄金の子供(ゴールデン・チャイルド)を見つけたわ」

 

《これであなたの息子は、眠りから醒めることができるのです。

さあ、涙をください。

涙で私を癒せば、息子を同じように癒します》

 

 

ゲルダは、直感した。

 

鏡の言葉が偽りであることを。

 

 

黄金の子供(ゴールデン・チャイルド)、私のために泣いておくれ。

たった一粒でよい…。

それが欠片に落ちるとき、お前を解放する」

 

 

同時に直感した。

 

 

彼女…雪の女王は、鏡の言葉を信じきっていることを。

 

 

「………嫌よ。

鏡の言葉は、偽りのもの。

 

私は、決して涙を流さないわ!」

 

その言葉に雪の女王は、一瞬驚いた顔を見せた。

 

「………」

 

何かを唱えると、その手にはつららが握られていた。

 

 

「…流せ、流すのだ!

さもなければ、お前を殺す!」

 

 

女王は、ゲルダを持ち上げ、首もとに鋭く尖ったつららの先端を突きつけた。

 

 

「スノー!

やめるんだ!」

 

 

「……お父様」

 

ウェルキンの姿を認めると、ゲルダをおろした。

 

「私は、大馬鹿者だったのだ!

鏡がお前の息子を救うことはない!

 

全てを思い出した!

その鏡は、『偽りの鏡』!

 

鍛冶屋によって壊されたのは、恐ろしい鏡だからだ!

けれど、割るだけでは不完全だったのだ!

 

今、完全に壊さねばならぬのだ!」

 

「お父様!

私たちは、長い間、何のために苦労してきたの!?

 

今、願いが聞き届けられるのよ!」

 

「涙をください、早く早く!」

 

「鏡は、憎悪にまみれている!

 

世界を苦しみで包もうとしているのだ!

 

それでもよいのか!?」

 

「………………鏡よ、本当なの……………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《…………気づかれてしまったか…………。

まあよい。

スノー、お前の精神(こころ)を食らいつくしてやる!》

 

 

 

すると、雪の女王がしていたネックレスが輝き出した。

 

 

「ウッ!

…アアッ!」

 

 

「スノー!

 

探偵よ!

早くそのハンマーで鏡を壊すのだ!」

 

ハンマーを受けとると、棺に向かった。

 

《邪魔はさせぬ!》

 

「スノー!」

 

 

ウェルキンは、娘を押さえつけた。

 

 

「ウェルキン!」

 

 

ウェルキンの体は、スノーの体に触れているところから氷漬けになっていく。

 

 

「何をしている!

早く壊せ!」

 

 

シグルズは、ハンマーに両手をかけ、勢いよく降りおろした。

 

 

 

ガシャン!

 

 

 

鏡の四方にヒビが入った。

 

 

ガシャン!

 

 

さらに、細かく入る。

 

 

 

ガシャン!

 

 

 

《アアアッ…!

悔しい!

私が…滅せら…な…》

 

鏡は、粉々に砕け散り、風に乗って、消えていった。

 

 

すると、ビーストと同じように雪の女王も黒い靄に包まれた。

 

 

靄が晴れると、若い女性が立っていた。

 

 

「………私………。

…………!

なんて恐ろしいことを…!」

 

「スノー、もう息子を諦めよう…」

 

「………ええっ………」

 

 

二人は、涙を流した。

 

 

そんな二人を見て、ゲルダは、一粒の涙を流した。

 

それは、ガラスの棺に落ちた。

 

 

すると、瞼を閉ざしていた少年がゆっくりと目覚めたのだ。

 

 

「………お母………様……?」

 

「よかった!」

「よしよし!

祝いの宴だ!」

 

 

スノーとウェルキンは、ゲルダの手をとった。

 

 

「恐ろしい目に遭わせてごめんなさい。

でも、あなたのお陰で息子が目を覚ましたわ。

 

ありがとう………」

 

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