童話の闇~Dark Parables~   作:アリス・リリス

18 / 29
「『黄金の子供(ゴールデン・チャイルド)』…。
どこかで聞いたような…」

シグルズの報告書を読んだユリアは、資料室に向かった。


それは、すぐに見つかった。

『黄金の子供の物語』と書かれた本を手に取り、ゆっくりと開いた。


黄金の子供(ゴールデン・チャイルド)の物語は、雪の女王が誕生する500年前までさかのぼる。


舞台は、サウザリア大陸に広がる月の森(ムーン・フォレスト)


―幕間―
黄金の子供の物語


昔々、太陽の森(サン・フォレスト)月の森(ムーン・フォレスト)の間にある小さな村に木こりの夫婦が住んでいました。

 

ある日、妻は双子を産みます。

 

男の子と女の子です。

 

夫婦は、男の子は『ヘンデル』、女の子は『グレーテル』と名づけました。

 

4人は、仲睦まじく暮らしていました。

 

しかし、ある日、木こりの妻は病気で死んでしまいます。

 

 

数年後、木こりは隣町の美女・ココと結婚します。

 

 

けれども、木こりは、先妻を忘れられず、ヘンデルとグレーテルを溺愛しました。

 

それを妬んだ継母は、2人を鬼が棲むという月の森(ムーン・フォレスト)の奥深くに置き去りにしました。

 

 

「お兄ちゃん、どうしよう…。

家に帰れないよ…」

 

「この森には鬼が棲んでいるって聞いたよ。

僕たち、食べられるのかな…?」

 

「そんなのいやだ!

ねえ、日が暮れる前に森を出ましょうよ」

 

「そうだね、急ごう!」

 

2人は、薄暗い森を歩き始めました。

 

 

「わっ!」

 

ヘンデルは、石につまずいてころんでしまいます。

 

「お兄ちゃん、大丈夫?」

 

「イタタ…。

……どうしよう。

トゲが刺さっちゃった……」

 

「誰か来てくれるはずないわよね……」

 

 

と、辺りが白い霧に包まれた。

 

 

「周りが全然見えないよ…」

 

しばらくすると、霧が晴れてきた。

 

しかし、現れたのは薄暗い森ではなく、明るい平原だった。

 

遠くに見える家から誰かが出てくる。

 

 

「お前たちは、どうしたんじゃい?」

 

「トゲが刺さって…」

 

「そうかそうか。

わしの家に来なさい。

トゲを抜いてやろう」

 

 

2人は、おばあさんの家に入りました。

 

すると、不思議な香りが立ち込めていました。

 

 

「「なんだかくらくらする……」」

 

2人は、ばったりと倒れました。

 

 

…………………………

 

 

「………ん………」

 

ヘンデルは、気がつくと牢屋の中に閉じ込められていました。

 

「グレーテル!

どこにいるんだい!?」

 

--------------------

 

 

同じ頃、グレーテルは、目を覚ましました。

 

 

「ヘンデル…?」

 

「起きたかい?」

 

声をかけてきたのは、おばあさんでした。

 

 

「おばあさん、ヘンデルはどこにいるの!?」

 

「おばあさんと呼ぶんじゃない!」

 

穏やかな様子からは、想像もできないくらい、おばあさんは、声を荒げました。

 

「わしは、この森を統べるココ様じゃ!

お前たちは、わしの森を荒らしおった!

 

本来なら、お前ももう一人も食ってやるところじゃが、お前を召使いとして生かしてやることにしたのじゃ。

 

もう一人に会いたければ、地下牢へ行け。

 

しかし、わしの持つこの鍵がなければ、連れ出すことは出来ぬからな」

 

 

ココの言葉を聞いたグレーテルは、急いでヘンデルの元に向かった。

 

 

 

「お兄ちゃん!」

「グレーテル!」

「お兄ちゃん、大変!

あのおばあさん、ヘンデルを食べようとしてるわ!」

「グレーテル、君だけでも逃げるんだ!」

「嫌、お兄ちゃんも一緒よ!」

「ダメだ!」

「私、召使いとして生かされてるの…。

どうにかして、一緒に逃げる方法を見つけるから…」

「わかった。

無理するんじゃないよ…」

 

 

 

こうして、ココの家での生活が始まりました。

 

 

 

 

 

…………………………

 

 

「グレーテルや、そろそろヘンデルを食らおうと思うのじゃ。

大釜でお湯を沸かしておくれ」

 

 

ある日、ココは、グレーテルに言いました。

 

 

(お兄ちゃんが食べられちゃう…!

 

よし…!)

 

 

グレーテルは、大釜に水を満たし、火をつけました。

 

(これが失敗したら…)

 

30分後、ココは、ヘンデルを連れて戻ってきた。

 

 

「グレーテルや、お湯はどうかね?」

 

「沸いたと思いますが、確かめてみてください」

「そうじゃな、よく煮込みたいからのう」

 

 

そう言うと、ココは、釜を覗きこみました。

 

 

「えいっ!」

 

 

その時、グレーテルは、ココを押したのです。

 

 

「アッ!

熱い!

グレーテル、助けておくれ!

グレーテル!」

 

 

2人は、ココの最期を見ていました。

 

 

ココが息絶えたとき、辺りが歪みました。

 

 

「「なっ、何!?」」

 

 

視界が白く染まったかと思うと、森の中。

 

「戻ってきたの…?」

 

 

どこからか美しい翅を持つ女性が現れました。

 

 

「どうか恐れないで。

私は、この月の森(ムーン・フォレスト)を守護するセレナです。

 

ヘンデル、グレーテル。

あのココを滅ぼしてくれてありがとう。

 

あの魔女は、この森に害をなす者だったのです。

 

あなた方に贈り物をあげましょう」

 

 

そう言うと、セレナの手から光の粉がまかれた。

 

 

「これであなた方は、邪悪な魔法から守る力を宿しました。

 

これからも、シルバー・ムーンが起こる時に選ばれし子供にこの力を与えましょう」

 

セレナは、立ち去ろうとした。

 

 

「待って。

私たち、お家に帰りたいの…」

 

 

セレナは、微笑んだ。

 

 

「そう。

では、魔法で家まで送りましょう。

目をつむって。

私が指をならしたら、目を開けるのよ」

 

 

セレナは、指をならした。

 

 

「ヘンデル!グレーテル!

 

無事だったか!」

 

「「お父さん!」」

 

 

継母は、2人を森に遺したあと、姿を消したという。

 

 

「これからは、3人で暮らそう」

 

 

こうして、3人は仲良く暮らしました。

 




ユリアは、別の本を見つけた。

黄金の子供(ゴールデン・チャイルド)の奇跡』


その本には、ヘンデルとグレーテルの物語から150年後、
イーストリア大陸西部の街・ミランダを邪悪な魔法使いが襲ったとき、黄金の子供(ゴールデン・チャイルド)が起こした奇跡を目にした吟遊詩人(トゥルバドゥール)がその事を歌った叙事詩が記されていた。


「また…黄金の子供(ゴールデン・チャイルド)が狙われるのかもしれないのね…」


ユリアは、本を戻した。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。