仕事を終えてたどり着いた外科部長のマンションで三成は思わぬ対応をされた。
まずはまともに食べていなかっただろうからと食事を用意される。独身が長いことを豪語する光秀の料理は美味しい。それは三成も認めるところだった。
食事を終えると風呂に入ることを勧められ三成はわずかに緊張する。しかし風呂を出た後も、三成は何もされず寝るよう言われた。
光秀の態度はいつもと変わらず、距離を取られている様子もない。だとしたらなぜ何もしてこないのかと、逆に気になってしまう。
一度はベッドに入ったが、寝ることができない三成は寝室を出た。リビングで缶ビールを開ける光秀を見つけるとため息を漏らす。
「明紫波は疲れているんですか?」
「おまえほどじゃねぇよ。お疲れさん」
テレビに目を向けていた光秀は語尾と共に三成を見上げた。その様子から本当に労うだけだったのかと思える。
「明紫波」
光秀のそばに膝をつけてしゃがむと名前を呼ぶ。すると光秀は仕方ないと言いたげな顔を見せた。
「今な、理性フル回転させてんの」
わかるかと問われた三成は眉をひそめて光秀を見つめた。
テレビの内容を確認するがそれほど難しいものには思えない。世界情勢を伝えるただのニュースだ。
「何か問題が?」
「おまえを抱きたいけど絶交されてるっつー大問題がな」
軽く笑いながら言い放つ光秀は缶ビールをあおる。その様子からは本気なのか冗談なのか判断できない。
「絶交なんて…本気にしていなかったじゃないですか」
「それ」
どう返すべきか悩む三成に光秀が短い言葉を向けてきた。意味のわからない三成はじっと光秀を見つめる。
「おまえのそういうの、理性を殺しに来てる」
「意味がわかりません」
「肉食獣の目の前で弱いとこ見せると食われるぞ?」
「あなたは獣なんですか?」
「男は狼だからな」
ここまで来ると光秀は酔っているのではとすら思える。しかしビールを少し飲んだ程度で酔う男ではないはずだ。
三成が結論を出せないでいると光秀に胸ぐらをつかまれた。そのままの勢いで引き寄せられ口付けられる。
ラグの上に引き倒された三成は再び上に座られた。あの時と同じ体勢で光秀を見上げる。すると光秀がにやりと笑った。
「今回は殴らねぇよな?」
思わぬ質問に一瞬目を大きくさせた三成だが、すぐに笑みを返す。
「あなたが下手なことをした時はわかりませんよ」
「なら安心だわ」
俺はうまいからと光秀が笑う。咄嗟にその上手い下手ではないと言おうとした三成だが二度目のキスに言葉を飲み込んだ。