前回の続きです
約10分くらい経ち、ようやく救急車が来た
そして、後ろから「木下!」と呼ぶ声が聞こえた
振り返ってみると、私の学校の先生だった とても筋肉質な西村先生だ
「木下、怪我はないか!?」
「ハイ、私は大丈夫です。 でも吉井君が・・・」
そう私が答えると、西村先生はじっと吉井君の方を見た
そして、また私の方を向くと、
「木下、事情は後で聞く。 とにかくお前は試験があるんだ、早く学校に行きなさい。
吉井は・・・病院は俺が行く」
私は先生の言葉に「ハイ」と答えたくなった
しかし、言えなかった。 言えない理由があった
命がけで私をかばってくれた吉井君を放っておけなかった
だから私は
「イイエ、先生、私も同行します」
と答えると西村先生は驚いた表情で
「何を言う!?木下!お前はこの日のために懸命に勉強してたじゃないか!
結果を出したくないのか!?」
確かにそれも大事だった だって、今まで勉強してた理由の一つとしては、
この振り分け試験の為でもあった
結果を出したい・・・
でもそれは彼だって同じハズだ・・ 吉井君の成績が良いという噂は聞かないけれど、
彼も彼なりに努力して結果を出そうとしたはずだ・・・
しかし、彼はそんな結果よりも命がけで私を守ることを第一とした
そんな彼を見てたら、結果を第一と考える私がアホらしく思えてきた
そう思った私は、先生に
「確かに先生の言う通りです 結果は出したいです
結果よりも大事なことがあるって気が付いたんです」
というと、西村先生の表情は少し悩んで見えた そして、その表情のまま私に
「後悔はしないな?」
と言ってきたので私は
「ハイ、大丈夫です」
と答えた
そして私と先生は救急車に乗り、病院へ向かった
☆☆☆
病院に着き、吉井君はすぐに手術室に運ばれた
私は心の中で「どうか無事でいてください」と祈った
手術が始まり、私と西村先生は、手術室の外で待った
先生は学校に連絡しながら、私はずっと祈りながら待った
20分、30分、1時間、3時間・・・
どれくらい時間が経っただろう・・・?
そろそろ振り分け試験も終わる時間ね・・・そう思ったとき
手術室からドクターが出てきた・・
すると同時に西村先生は表情を変えて
「先生、吉井は・・・」と聞くとドクターは無言のまま西村先生を見つめ、
少し間をおいて、
「すみません、我々も手を施しましたが・・・彼の内臓はあちこちダメになっている上、
その上・・・」
とドクターは言葉を止め、そして
「心臓が停止しました」
ガタンッ!
西村先生は膝をつき、
「そんなバカな・・・」と目を潤ませて言った
今まで見たことのない姿だった
私もどうしても納得できず、泣きたい感情をこらえ、
「っ・・・!」と声をもらした
そして私の脳にある記憶が甦った
それはトラックに轢かれた直後に彼が言った言葉だった
「木・・・し・・た・・さん・・・ごめ・・んね」
その言葉を思い出すとともに今まで我慢していた感情が一気に込み上げ、
涙となってこぼれ落ちた
何で吉井君はあんなこと言ったのだろう・・・
辛いのは、痛いのは、苦しいのは吉井君のハズだ
なのに、彼はあの時、そんな感情を一切見せず、笑いながら私に謝った
さっきまで祈り続けた「どうか無事でいてください」・・・
この祈りはきっと吉井君を救ってくれる・・・そう信じた
でも吉井君は死んだ・・・
この祈りに裏切られた気がした
そして、手術室からもう一人ドクターが出てきて、
「先生!」
「どうした!?」
「それが・・・停止したハズの患者の心臓が・・・」
私はバッと顔を上げた・・・
心臓が・・・
言葉の続きが気になった
「心臓が動き出しました!」
「何!?」
ドクターは再び手術室に戻った
そして時間が経ち、ドクターが再び手術室から出てきて、
「何とか彼の心臓は動き出しました しかし、彼はもう今まで通りの生活は
できないでしょう」
すると西村先生は今まで見せたことのない表情で涙をこぼしながら
「それでも生きていれば・・・」
私も同感だった・・・生きてくれれば
悲しみの涙から嬉し泣きに変わった
☆☆☆
4月5日 始業式・・・
私は当然テストを受けていないため、クラスは一番下のFクラスだった
Fクラスの教室のドアを開けると
「アレ、木下さんて、Aクラス候補じゃなったっけ・・・」
「だよね・・・」
と教室が騒がしかった
おそらく吉井君もテストを受けていないからFクラスなのは予想できた
でも、彼はしばらく来ないだろう・・・
そう思った時、
「すいませーん、遅れちゃいました☆」
何?このふざけた挨拶・・・
顔を上げてみると驚くことにそこには吉井君の姿があった