借りモノの英雄譚   作:とらまる@

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 エイプリルフールに投稿したかったけど間に合わなかったやつです!
 本編とは別の、外典的な物語として楽しんでいただけたらと思います。



特別扁
まほうつかいの匣︰1


 

 それは、あったかもしれない ひとつの可能性の物語

 

 

「ここいらで少し休憩にでもしましょうか、ムツキ」

 

「あぁ、どこかで座って温かいものでも飲みたいとこだな。喫茶店でも入るか?」

 

 時刻は十五時。俺と凛は日用品の買い足しの為、新都へと足を伸ばしていた。

荷物持ちということで連れてこられた俺としては、そろそろこの両手の大荷物を置き休憩したいところだ。

 

「丁度いいところに喫茶店発見~。ムツキ、ここにしましょ」

 

 運良くすぐに店を発見できた俺達は、そのレンガ造りの店舗へと入っていった。

 店内は電灯を極力排した落ち着いた雰囲気のある、どこか『隠れた名店』といった感じだろうか。

 

 店員のひとりが俺達に気づきこちらへやって来る。

 

「いらっしゃいませー、アーネンエ... 「ってミドリじゃねーか!!!」 だーれがミドリだ!誰が!ってアンタ、どっかで会ったことあったけ?」

 

 その緑の髪をツインテールにした女性店員を見た俺はまさかと思い、急いで店外へと出て店の看板を確認した。

 

「やっぱり...おいおい、マジかよ..」

 

 改めて店内に戻るとそこには緑髪の店員ともうひとり、オレンジの髪をしたショートヘアの少女が立っていた。

 

「も~ぅ、チカちゃんダメだよ!お客さんにそんな言葉遣いしたら」

 

「いや、だってアイツが!...うぅ、わかったよ!」

 

 緑髪の少女、桂木千鍵とオレンジ髪の少女、日比乃ひびきが改めてこちらを向き俺達を出迎える。

 

 

「いらっしゃいませ、お二人様ですね。『アーネンエルベ』にようこそ!」

 

 

 

  ◇◆◇◆ ◇◆◇◆ 

 

 喫茶店 アーネンエルベ。そこは普段出会うことのない人間と出会うことのできるという、ちょっと特別な場所。

 メタくいえば同じTYPE-MOON作品でも時代や場所、世界が違ってもそれを紡ぐ境界のようなお店。そしてひとりの魔法使いが建てた不思議な"匣"。

 

 まさか実物を見るどころか来店することになるとは..。更にはこの店があるということは客の方もまさか...。

 

「ほう、サーヴァントとそのマスターか。実物を見るのは初めてだが、なかなかに興味深いな」

 

 ほら、居た。

 

「はじめまして、ミス・アオザキ。偶然とはいえお会いできて光栄だ。佐久間 武月という、ご察しの通りサーヴァントだ」

 

 蒼崎橙子。稀代の人形師にして業界屈指の魔術師。そして、第五の魔法使い(ミス・ブルー)蒼崎青子の姉である。

 

「ほう、私の事も知っているのか。ならば話は早い、折角だ...少しお話でもしないか?なに、ごくごく当たり障りのない談笑程度さ」

 

「ははっ、その談笑程度でどれだけ情報聞き出そうとしてるんだか」

 

「............」

 

「...............」

 

 暫しの沈黙が流れた。が、その静けさは二人の傍観者(置いてきぼり)によって破られた。

 

「ちょ、ちょっとムツキ!蒼崎橙子ってあの人形師の?!嘘、ホンモノ!?」

 

「橙子さーん、さっきから聞いてると知り合いだか初対面だか分からないんですけど!私にも紹介してくださいよー」

 

 声の主の二人。一人は我がマスターこと遠坂凛。そしてもう一人は少し気の強そうな所は凛に似ている、肩より少し長い黒髪の少女 黒桐鮮花である。

 

 こうして奇しくもそのテーブル席は 稀代の人形師、魔術使い見習い、サーヴァントとそのマスターというなかなかに異常且つ特質な集まりとなったのである。

 

 

  ◇◆◇◆ ◇◆◇◆ 

 

 

「改めて自己紹介しておこうか、蒼崎橙子だ。肩書きとしてはこういう者だ」

 

 そういうと橙子は懐から一枚名刺を取り出し凛へと差し出した。そこには『建築デザイン事務所「伽藍の堂」社長』と書かれていた。

 

「何かあったら連絡するといい。金と気分次第で相談に乗ろう」

 

「ありがとうございます。まぁ貴女ほどの魔術師に頼まなければならない事態に至らない方がいいですけどね..。私は遠坂凛、冬木市の管理者(セカンドオーナー)をやっています。そしてコイツのマスターでもあるわ」

 

「ほう、その歳で管理者(セカンドオーナー)とは大したものだ。鮮花に爪の垢でも飲ませたいものだな」

 

「あ、橙子さんひどーい!どうせ私には魔術の才能ありませんよー。私は黒桐鮮花、橙子さんの弟子として魔術を教えてもらっています。凛さん、私と同じくらいの年齢よね?よろしくね!」

 

 黒桐鮮花は『空の境界』に登場する黒桐幹也の妹であり、確か何処かのお嬢様学校の生徒だった筈だ。年齢も同じか近かったと記憶している。

 さて、最後に回ってきた俺の番だが..。

 

「あーー、佐久間 武月だ。凛のサーヴァントをしている。以上」

 

「えっ、もう終わり!?もっと色々話しましょうよー。ほら男性ひとりでハーレムですよ、ハーレム!」

 

「うるさい、こういうのは昔から苦手なんだよ。それとも俺の秘密やら宝具やらを残さず全部喋っちまった方が良かったか?」

 

 と、鮮花を遇うのと同時に凛の方をチラ見する。

 

「アンタ、タダでさえ聖杯戦争は秘密裏に行うのがルールなんだから余計な事話すんじゃないわよ!大体アンタは極端過ぎるのよ!」

 

「という訳でマスターから自己紹介は控えめにと命令も出たことだし、俺の番もお終いということで」

 

 各々の自己紹介も終わった丁度いいタイミングで、先ほど頼んでいた注文品を持って日比乃ひびきがやって来る。

 

「ほいほーい、お待たせしましたぁ!ホットコーヒーふたつと本日のオススメ、オレンジとヒマワリのミックスパイでーす!」

 

 俺と凛の前に一杯ずつのコーヒーが、そして俺の前に本日のオススメ品であるパイが置かれる。このパイ、一度食べてみたかったんだよなぁ。

 

「...凛、そんな目で見ていても俺のパイはやらんぞ。欲しかったら自分で頼むんだな」

 

「べっ..別にそんな物欲しそうな目で見てなんかないわよ!すいませーん、ブルーベリーパイ追加で!」

 

 それを見て俺が「結局頼むんじゃないか」と言えば、凛が「うるさい」と言い口を尖らせる。

 そんなやり取りをみて鮮花が疑問に思ったのか、橙子に問いかけた。

 

「橙子さん、サーヴァントってつまりは使い魔って事ですよね?なんか全然そんな感じがしないんですけど..」

 

「使い魔といっても様々あるさ。特にサーヴァントってのは元は一人の人間だからね。通常の使い魔との関係とはまた少し違ったものがあるんだろうさ。もっとも、私が文献で知っているサーヴァントとも...ムツキくん、アンタは少し違うようだけどね」

 

 流石...というべきか、この短時間で俺が通常のサーヴァントとは違う事を察している。

 

「な、何を言っているのか全然分からないのだけれど。蒼崎橙子といえど変な言いがかりはやめて欲しいわね」

 

 咄嗟に凛がフォローに入るも突然の事に動揺を隠しきれていない。

 

「先ず始めに彼の事をクラス名ではなく名前で呼んでいる点。普通聖杯戦争に於いてサーヴァントの真名がバレる事は宝具や弱点を晒す事と同義だ。なのに何故か?それは真名がバレても対処の仕様がない英霊か、それかイレギュラーによりクラス名そのモノがないサーヴァントなのか..。サクマ ムツキという名前の英雄は、神話や歴史上において私の記憶には存在していない。恐らくは未来か、別の世界から来た存在。どちらにしろイレギュラーには違いない」

 

 淡々と話していく橙子だが、当の本人である俺はまさかここまで言い当てられるとか思っておらず、折角のパイも喉を通らずにいた。

 

「...そこまで知ってどうするつもりだよ?まさかアンタも聖杯戦争に参入するなんていうんじゃないだろうな?」

 

 その問いに蒼崎橙子は、クスリと笑みを浮かべてこう応えた。

 

「別にどうもしないわよ。ちょっと気になったから聞いてみただけ、当たってたらヤッタってくらいよ。これ以上時計塔に目ぇ付けられたくないしね」

 

 つまりは単なる好奇心から出たものだったと。はぁ..天才というのはこれだから怖いんだ。

 

「ま、その様子だと割りと正解だったようね。さて...気が済んだし私たちはそろそろ行くわね」

 

「そうですね。もうすぐ兄さんと式との待ち合わせですし。短い間でしたが色々聞けて楽しかったです、また機会があれば是非!」

 

 そういって蒼崎橙子と黒桐鮮花の『空の境界二人組』は颯爽と去っていった。

 残ったのは緊張からドッと来た疲労感だけであった。

 

「あぁ~緊張したぁ!なんで偶然入った喫茶店にあの蒼崎橙子がいるのよ!しかもムツキの事も見透かされてるし!」

 

「まぁもう過ぎたことだ。パイでも食べてゆっくりしようぜ」

 

 これでやっと心身ともに休める筈だ。周囲のお客を見ても知った顔は一人もいないし、如何にアーネンエルベといえど いつもTYPE-MOON世界のキャラがいる訳ではないようである。

 

 

 

 

  「いらっしゃいませー、アーネンエルベへようこそ!」

 

 

 ん?新しいお客が来たようだ。

 

「ちょっとロマニ、こんな安っぽい喫茶店じゃなくてもっと立派な店があるじゃないの!」

 

「まぁまぁ所長、たまにはこういったお店もいいじゃないですか。僕、一度来てみたかったんだぁこういった喫茶店!」

 

 

 んん......?

 

 

 

 

 





 続きは次のエイプリルフールか。それとも、もう少し早くか

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