「今日はなんでまた公園なんかにいるんだ?天気もいいし、散歩でもしてたのか」
俺は目の前でベンチに座っている盾の少女に話しかける。
「別に...私が公園に居てはいけませんか」
う~ん、明らかにまだ警戒されてるなぁ。まぁ出会ってまだ2回目だしな..。
「いや、全然悪くなんてないが...あ、お昼食べたか?良かったら一緒にどうだ、奢るからさ!」
「そういうナンパは結構です。どうぞおひとりで食べに行ってくださ..."ぐぅぅぅ~"...まぁ今回だけは特別に付き合ってあげても構いませんが」
とりあえず今の腹の音は聞かなかった事にしておいてあげよう。それが彼女の為であるし、俺の身の為のような気がした。
「えっと、この辺って飲食店ないんだよな。ちょっと歩くけど商店街まで戻るか」
本来の目的の場所へは少し遅れるが仕方ない。そう思い来た道を戻ろうとすると、盾の少女は公園から何かを指さした。
その指の先にあったのは、
「
店員のやる気のない声が響く。そこは何処の世界でも同じなんだなぁ。
「コンビニなんかで良かったのか?あんまり高いのは無理だけどファミレスくらいなら行けたぞ?」
「実は以前からこの 肉まん というものが気になっていたんです。これをお願いします」
確かにこの寒空の下で食べる肉まんはそれだけで魅力的だ。そういえば、俺も久しく食べてないな。
凛から預かっているお金は商店街で買った買い物を除いても、まだ多少は残っている。かといって使い過ぎる訳にはいかない。これなら財布にも優しいし俺も助かる。
「じゃあ俺は肉まん2つ。キミはどうする?」
「
「これは、色々と種類があるんですね。...ではここにある種類のものを全て2つずつお願いします」
ん...?
「
前言撤回、全然財布に優しくなかったら。だが奢ると言ったのは俺だし、仕方ないか..。
「
コンビニを出て再び公園に戻った俺達はベンチに座り、早速あつあつの肉まんを食べることにした。
「うん、久しぶりに食べたけどやっぱり美味いなぁ。どう、初めての味は?」
「ふぁい、大変おいしいです!」
彼女を見ると、俺が半分食べる間に3つの中華まんを平らげていた。あれ..セイバーのライバルキャラって設定ってそういうこと?大食いのライバルキャラってこと?違うよね..。
結果、ものの数分で10個はあった中華まんを平らげ非常に満足気な顔の少女がそこにはいた。
「ごちそうさまでした。それでは私は行きますね、さようなら」
「えっ、はや!せっかくだし少し話さない?満腹時に急に動くのも体に悪いしさ」
「まぁお昼をご馳走になったのでもう少しくらい話してもいいとは思うのですが、残念ながら私はこの後アルバイトがありまして」
そうか、第四次聖杯戦争から受肉して今まで生きてるって事は普通に生活している場合もあるのか。むしろギルガメッシュが例外なのかもしれない。なら戸籍なんかはどうやって...いや、深く検索は止しておこう。
「なら仕方ないな。君のこと、なんて呼べばいいだろう?流石に盾のサーヴァントちゃんとかシールダーちゃんじゃ呼びにくいしなぁ」
「別にそれでも構いませんが...。なら、al...アルでいいです。では私はこれで」
ペコリと頭を下げ、その少女..アルは去っていった。次はいつ会えるだろうか。そんな事を思いつつ、俺は当初の目的地に向かうのだった。
◇◆◇◆ ◇◆◇◆
石段を一歩一歩登っていく。アニメやゲームではあまり分からなかったが、この石段かなりの距離がある。サーヴァントの身なら兎も角、その前の俺ならば確実に途中でギブアップしていただろう。
「おっ、見えた見えた」
長かった石段の道を登りきるとその先には大きな山門が、そして奥には立派な寺院があった。
「おぉー、これが噂の柳洞寺か!」
「うむ。何の噂かは知らぬが、ここが柳洞寺だ。だがこの山門を一歩でも抜けようとするならば、その首 飛ぶことになろうぞ」
突然聞こえてきた自分以外の声。普通なら驚くところだが、今回に限ってそれはなかった。何故なら知っていたからだ。
この山門の主を。そこに居るであろう侍、アサシンのサーヴァント...佐々木小次郎を。
「寺に近づく気は元より無いから安心しろよ。こんな昼間っから血生臭いことしてたまるか!」
「ほう..では何故ここに来た?貴殿はサーヴァントであろう」
まぁ普通に考えたら敵サーヴァントの襲撃と考えるわな。うん、その判断は正しいよ。けど俺の今日の目的はあくまでこの山門、そして佐々木小次郎にあった。
「今日はとりあえず挨拶に来ただけだからさ。今後色々あるかもしれないけど、よろしくってことで」
そういって俺は先程、商店街の店で買ったものを取り出した。
日本酒である。しかもしっかり一升瓶で。
「ほう、この佐々木小次郎と一献交わそうというのか。そういう事なら話は別だ。なに、この身はここから動けぬものでな。正直暇を持て余していたところなのよ」
「お、いいねいいねぇ。じゃあまず一杯」
「おっとと、ではお主も」
山門の入口で大の男が2人、昼間から日本酒を飲み交わす異様な光景がそこにはあった。
さらに時間は数時間ほど経ち、お互いの自己紹介から下らない世間話まで会話は続いた。
「しっかし小次郎も大変だよなー。こんな山頂の寺にある山門に括りつけられて動けない上、やって来る相手はみんな殺し殺されの関係でしかないんだからよ」
「確かに動けず暇なのは仕方ないことだ。だが元よりこの身は剣にしか能のない身。ここにいれば向こうから好敵手が来るかもしれぬというのは中々ワクワクするものだぞ」
「そんなものかねぇ~」
「剣に生きる者からすれば、そんなものよ」
「ふーん。あ、お酒なくなっちまった。もう日も暮れ始めてきたし、今日はそろそろ帰るかな!また時間のある時にでも来るとするよ」
既に太陽は西に沈みかけている。そろそろ帰らなければ凛や士郎たちが心配するかもしれない。
「そうか。また機会があれば次は将棋でも持って来てくれると助かる。うちの女狐は文句ばかり言って何も与えてくれぬのでな。それと...」
ーー空気が変わる。少し酔っていた頭を一気に現実へ連れ戻す、そんな張り詰めた空気が流れた。
「次に主に会う時が、敵同士だとしたならば容赦無く斬り捨てる故に覚悟なされよ」
そうだ..相手はあくまでアサシンのサーヴァント、佐々木小次郎。彼が斬り捨てるといえば容赦無く斬られるだろう。
全く最後に嫌な汗をかかせてくれるものだ。
俺は石段を降りつつ、軽く小次郎に手を振って彼に別れを告げた。
今回得たかったのは 佐々木小次郎の存在、その有無である。そして彼が山門にいるならばキャスターである魔女メディアもいるという事だ。
これで俺以外のサーヴァントは、セイバー、ランサー、キャスター、アサシンが原作と同じだということが分かった。これによって同時に相手の真名も分かることになる。つまり対策を練りやすい、弱点が分かるといったメリットが生まれる。
だが、俺達の今回の聖杯戦争における目的は他のサーヴァントを倒すことではない。あくまで聖杯戦争の解体だ。それでも相手を知っておく事は大切である。こっちが戦うつもりがなくても、向こうから襲って来ることは十分に考えられるからだ。
何も考えずに昼間から酒を飲んでいた訳ではないのである。断じて!
そして初対面においていきなりの戦闘を避けれたのは、俺の持つスキルが有効に働いてくれたからというのもある。
スキル『友誼の証明』...敵対サーヴァントが精神汚染スキルを保有していない場合、相手の戦意をある程度抑制し、話し合いに持ち込むことができる。聖杯戦争においては、一時的な同盟を組む際に有利な判定を得る。
これはアルに対しても有効であったが、先日のランサーの場合は事前に一戦交えるという目的があった為、戦闘を避けることは出来なかった。
よし、帰ってから今回の情報も入れて今後の動きについて考えるとするか。
だがその前に水でも買って、少し酔いを覚ましてからにするとしよう。
今年最後の投稿となります。今年も1年、拙い文章ながらも読んで頂きありがとうございました。
来年もこの作品共々、また宜しくお願いします!良いお年をー!