※今回の内容にはFate/staynight [Heaven'sFeel]ルートの一部ネタバレが含まれています。ご注意ください。
その魔術師が願ったのは、ひとつの『理想』だった。
この世全ての悪の廃絶という、困難で先の見えない理想を可能とする為に彼は『魔法』という手段を選んだ。
第三魔法「魂の物質化」これにより人類の種による進化を経て、彼の願いは叶う。そう信じて生きてきた。
肉体を取り替え、延命に延命を重ね数百年の時を過ごした。その姿が、理想を諦めない姿勢が後世に遺ると信じていたからだ。それが自分ひとりのチカラでは叶えられないと知ればアインツベルン、遠坂といった外の魔術師のチカラを借り、根源に至る為の大聖杯を敷説させた。
しかしその聖杯を使えるのは一組だけである事が発覚し、その所有権を決めるが為に彼らは殺し合う事となる。
初めの失敗から更に二度、三度と回を重ねるがそれでも尚、根源に..魔法に至る事はなかった。
それでも諦めきれなかった男は更に生命を延ばし続けた。その結果、五十年に一度取り替えれば良かった肉体は半年に一度で腐り落ちるようになり、その肉体と共に魂も腐敗していった。
故に理想は消え、残ったのはただ「死にたくない」という不老不死の願いだけとなった。
それが間桐臓硯。本名をマキリ・ゾォルケン。蟲使いの魔術師にして五百年を生きる妖怪である。
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「どうした、先程より手数が落ちたのではないか?サーヴァントといえどこれだけの蟲の数、マスターを守りながら戦うのは流石にキツいかのぅ!」
休む暇を与えず襲いかかってくる蟲の大群。その数は減ることなく、堕ちてはまた産まれ生命を狩りにくる。
絶えることない蟲たちに予想外の苦戦を強いられるサーヴァント、セイバーとライダー。お互いに宝具こそ使えればこの場の一掃は可能だが、その僅かな時間さえ間桐臓硯は与えない。
「ちょっとムツキ、まだなの!こっちかなりピンチなんですけど!」
先の約束の時間である十分が経ち、徐々に押されゆく戦況に悲鳴をあげる凛。
その背後では彼女のサーヴァントである佐久間 武月が今までにない量の魔力に包まれていた。
「待たせたな、凛!いくぜ...
宝具名を叫びその新たな能力を解放する。それと同時に左腕に刻まれた三画の刻印は一瞬強い光を放ち、二画へと減っていった。
カードに現れたクラスはキャスター。今発動した能力『英雄は三度、その声に応える』はその名の通り、三度のみではあるが指名した任意の英霊を呼び出しそのチカラを借りることが出来る能力である。
しかしそのチカラが及ぶのはステータスとスキルのみ。彼ら英霊の持つ伝説の象徴たる宝具には届かない。
そこで次の能力だ。
「まだまだァ!
間髪入れずに発動したその能力こそ、右腕に刻まれた七画の刻印の数だけ使える
回数こそ決まってはいるがこの二つの能力の並行使用により、任意の英霊の宝具を発動することが出来るのだ。
そして今回、佐久間 武月が呼び出した英霊の宝具こそ、この戦いの最後の鍵となる。
手に持った一本の
その
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Fate/stay nightにおける第3のルート...[Heaven's Feel]。このルートでのみ間桐桜はマキリの聖杯として覚醒をする。その時の切り札として使われたのが、第五次聖杯戦争のキャスターである裏切りの魔女メディアの宝具『
ならば今回もそれを使えば良いのでは、当初そう考えていた俺に一つの違和感が襲う。
『
そしてもう一つの問題点は、間桐桜の心臓に巣くう蟲...間桐臓硯の本体についてだ。
魔術効果を無効にするこの宝具の力なら、桜の心臓から臓硯本体を分離させることは可能かもしれない。だが問題はその後だ。はたしてそれはそのまま体外へと追い出すまでいくのだろうか?そのまま体内に残られては何の意味も成さない。
だから今回使うのは『
俺の前いた世界において彼女はこう呼ばれていた、メディア[リリィ]と。
そしてその彼女が持つ宝具は『
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「ぐっ...があぁ!なんじゃこれは..何をした、小僧!!」
突然痛みを訴え出す臓硯。先程までの尽きることのない蟲たちの猛攻も忽ちに止まる。
どうやら賭けは成功のようだ。
『
これならば桜の体内に巣くう蟲たちや発動前の聖杯の欠片も取り除け、心臓部の臓硯本体も排除できるに違いない。
とはいえ実際にこの宝具を使ったのは勿論初めての為、分からないこともある。このまま聖杯の欠片や臓硯の本体は、桜の身体の自動修復により体内で消滅していくのか。それとも異物として体外に排出されるのか、だ。
そんなことを考えながら様子を見ていると、親指サイズの小さな蟲が桜の胸部を食い破り外へと出てきた。が、その傷は宝具の効果もあり瞬時に塞がっていった。体内での消滅を免れる為に慌てて体外へと飛び出てきたといったところか。
「終わりだ、間桐臓硯!」
その蟲の最も近くにいた俺はトドメを刺すため、士郎から借りた木刀を振るう。
が、その剣筋を想像を超える素早さで掻い潜り逃げようとする一匹の蟲。
「どうなっている!理解出来ん、何が起きた!だが今は兎も角この場を離れなくては!五百年も待ったのだ、こんな所で..こんな所で死んでなるものかぁ!!」
ーーそれは執念だった。
死にたくない。ただひとつ、その生への縋る想いが妄執となり一匹の蟲をここまで動かしたのだ。
その姿はみすぼらしくも必死に足掻く一人の魔術師の成れの果てのカタチだった。
地べたを這いずる蟲の前に立つのは
「やめろ...たかがサーヴァント風情が儂を見下ろすな」
「サクラ、構わないですね?」
臓硯の声をまるで無いものと聞き捨て、ライダーは桜に問う。
「えぇ。お願い..ライダー。そしてさようなら、お爺様 」
それに間桐桜は応えた。ハッキリと、自分の意思で。
「さくらあぁぁ!キサマ、許さんぞ!嫌だ...儂は、永遠の..生命を」
それが魔術師、
こうして五百年を生きた老魔術師はその長い生涯の幕を閉じた。
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臓硯の最後を見た俺は、そのまま縁側で仰向けに倒れ込んだ。
始まりの御三家の一角を落とし、間桐桜の救出。最終目標である聖杯戦争の解体において、ようやく最初の山場を越えたといったところだろう。だが、まだまだやる事は山積みだ。
しかしまぁ..今日くらいはゆっくり休ませて欲しい。宝具の能力の連続使用、馴れない事の引き続きでもう既にくたくたなのである。
これにて間桐臓硯戦は終わりになります。次回からは更にオリジナル展開に向かっていくと思います。
そして大人数での戦闘描写が難しくて士郎、セイバー組が特に空気にw けど彼らも喋ってないだけで必死に蟲退治してたんだよ!