借りモノの英雄譚   作:とらまる@

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今回の話を読むにあたり、事前に『ロード・エルメロイⅡ世の事件簿』を読んで頂くか キャラクター設定に目を通して頂いた後だと、より一層楽しんでいただけると思います。




15︰人形遣いと魔眼遣い 3

 

 ロード・エルメロイⅡ世に連絡を取ったのは俺が召喚されて3日目、衛宮邸にて聖杯戦争の解体を決意したその日の夜だった。

 俺の知るFateの世界では第五次聖杯戦争から約十年後に遠坂凛とエルメロイⅡ世の二人によって冬木の聖杯は解体される。それが早まった今回に於いても彼のチカラを借りようと思ったのだ。

 魔術協会の総本山である時計塔の連絡先すら知らない俺は凛にパイプ役を頼み、なんとかエルメロイⅡ世に連絡と取り次ぐ事が出来た。そして俺は彼と一つの取り引きをした。

 

 

  ◇◆◇◆ ◇◆◇◆ 

 

「ムツキ、アンタのことを疑ってはいなかったけど...まさか本当に電話一つで時計塔の君主(ロード)を呼び出すなんて」

 

 凛が驚くのも仕方ない。現代魔術科という十二学科の内で最も若輩ながらも相手はその学部長、君主(ロード)の一人だ。普通ならば電話一本でこんな極東の国に来るような人物では無い。

 

「まぁちょっと個人的な取り引きをしてな。しかし渡りに船とはまさにこれだな。正直助かった..」

 

 腰まで伸びる黒髪、いかにも高級そうな黒のスーツに赤のコートを着たしかめっ面の男性、ロード・エルメロイⅡ世が足元に落ちている人形の破片を拾う。

 

「ふむ...外装は強化セラミックといったところか。これといった魔術はかかっていないな、やはり量産を前提に作られている物のようだ」

 

 手に持った欠片を捨て、スーツのポケットから葉巻を取り出す。

 

「貴方のことは知っていますよ。時計塔十二の学科のひとつ、現代魔術科の学部長 ロード・エルメロイ。何故貴方がここにいるのかも疑問ですが、一目見ただけでこの私の人形の何が分かったと?」

 

 男は葉巻に火をつけながら、カイゼルの質問につまらなそうに返事をする。

 

「...Ⅱ世をつけてくれ、この名は私には些か重いものでね。これだけの数の人形を顔色ひとつ変えずに操っている時点で少し疑問に思ってな。更にサーヴァントの彼が壊した人形を見ると、中身の半分は空洞といったシンプルな作りだ。質より量を重視している。そして恐らくは人工霊だろう、そいつを一体一体に憑依させ半自律的な動きをさせていた。それなら術者である君の負担は限りなく少なくなる。この大量の人形に関しては、恐らくは質量変化の魔術と虚数空間のポケットを利用しているのだろう。ここまでで何か反論はあるかね?」

 

「なっ...ぐぬ..。成程、噂以上の観察眼をお持ちのようだ。だが分かったところで対処出来るかは別問題ですよ」

 

 カイゼルの苦虫を噛み潰した様な表情が、エルメロイⅡ世の憶測の正しさを物語っていた。しかし彼の言うとおり問題はそれをどう対処するかにあった。

 

「そちらにおいても問題はない。大切なのは人形を破壊する術ではなく、如何にして動きを止めるかだ。...グレイ」

 

 エルメロイⅡ世の背後から一人の女性が現れる。フードを深く被り顔は見えないものの隙間から綺麗な銀髪が垣間見えた。

 そうか、彼女も共に来たんだな。

 

 『ロード・エルメロイⅡ世の事件簿』...Fateシリーズのスピンアウト小説であり題名の通りロード・エルメロイⅡ世をメインキャラクターとしたミステリー小説だ。その物語の語り手であり、エルメロイⅡ世の内弟子である一人の少女。それが彼女、グレイである。

 カイゼルの人形の特性がエルメロイⅡ世の説明した通りなら、確かに彼女はその天敵となり得る。

 

「はい、師匠。いくよ...アッド」

 

「イッヒヒヒ。低俗な人工霊だらけじゃねーか、張り合いねーなぁ!?」

 

 グレイがコートの奥から取り出した鳥籠に似た檻。先ほどの陽気で口の悪そうな声はこの檻から聞こえた。が、その檻は途端ルービックキューブのようにカチカチと姿を変えていき、その形状をグレイの身の丈以上の大鎌へと変形した。

 

「大層な大鎌ですね!ですがそんな鎌の一つや二つでどうにかなる状況とは思えませんが!お前達、先ずはあの大鎌使いを蹂躙してやりなさい!」

 

 再び、パチンッとカイゼルが指を鳴らし人形に指示を出す。

 しかし人形は動かない。疑問に思い何度か繰り返し指を鳴らすが、それでも人形は一体足りとも動かない。

 

「あーぁ、やっぱり不味いぜ。この霊共、中身がスッカスカだ!腹の足しにもなりゃしねぇ」

 

 再び大鎌《アッド》が軽口を叩く。

 

「キサマの仕業かっ!何をした!?私の人形たちに何をしたー!!」

 

 これこそがグレイの持つ大鎌、喋る魔術礼装である《アッド》の能力の一端。そして俺たちがこの状況を打破できる最適解にして唯一の方法。

 

「悪いがその木偶たちに憑く人工霊、‘’喰わせてもらった‘’。味についてはよく分からんが、酷評のところを見ると倫敦のフィッシュ&チップスの方がまだマジなように思える」

 

 葉巻の煙をふかしカイゼルへと皮肉を垂れる。そして彼は未だ片膝をついているこちらを向き言った。

 

「こちらが出来ることはこれくらいだろう。あとは君がなんとかしたまえ。それくらい出来なければ聖杯解体など夢物語で終わるぞ」

 

 そうだ、今や目の前の人形たちはただの置き物と化した。ーーー今なら、届く。

 

「舐めるなよ!霊たちがなくともある程度の数ならば私のチカラで操ってみせるわ!」

 

 動かなくなった人形の内の数体が、カイゼルの魔力により再び息を吹き返す。

 

 だがそんな事は関係ない。人形達の最奥でアル(盾の少女)を抱えている一体の人形に視線を定める。

 今、この身体に降りた英霊のチカラは雷電の使い手『ニコラ・テスラ』。だがそのチカラも残り一分足らずで消えてしまう。ーーー構わん、十分だ!!

 

 最早、宝具を放つ力も残ってはいない。最後の力を振り絞って体面に電気を帯電させる。こんな無茶な使い方、当の英霊(ニコラ・テスラ)が見たらきっと怒るに違いないだろう。何かしらデメリットもあるかもしれない。ーーーだが既にこの身はボロボロだ、今更大して変わらない!

 

 踏み出したその一歩は、なによりも力強く ただその先の一点だけを見て 走り出した。

 雷を纏った身体は、その先に立ちはだかる人形達を薙ぎ払っていく。

 

 そして目の前に残ったのは最後の一体、アルを担いだ人形のみ。その瞬間、ガクンと身体中のチカラが抜け落ちた。宝具『英雄譚(ストーリーオブグローリー)』の制限時間が訪れ、英霊 ニコラ・テスラのチカラが消えていったのだ。

 

 そのまま崩れ落ちそうになりながらも なんとか踏み止まり、ただ無心に...ただ我武者羅に...そのクラスなきサーヴァントは拳を突き出した。

 

 

「ーーーーーーーーーーーッ!!!!」

 

 

 

  ◇◆◇◆ ◇◆◇◆ 

 

 

 そこから先のことは覚えてない。

 次に目を覚ますと、そこには夕焼け空と涙目の遠坂凛の姿があった。

 

「なぁ...凛、あの子は?あの子は無事なのか?人形遣いは?あれからどうなった?!」

 

 俺からの怒涛の質問を、凛の代わりにエルメロイⅡ世が応える。

 

「君が必死に救おうとしていた少女なら無事だよ、気は失っているが命に別状はない様だ。人形遣い、カイゼル・ファルク・ユグドミレニアの方は君が最後の人形を破壊した直後に去っていった」

 

 その言葉に安堵する。その直後、今度は今まで黙っていた凛の方が口を開く。

 

「こんの..バカムツキ!!!アンタひとりで突っ込みすぎよ!いくら時計塔のロードが助っ人に来てくれたからって、考えなしに動きすぎるのよ!アンタは私のサーヴァントなのよ、二度とこんな真似はしないでよね!」

 

 いきなりの罵声に面を食らうも、これは..後頭部に何やら柔らかな感覚がする。どうやら俺は今、凛に膝枕をされている状況らしい。こんな事は今後も含め滅多にはないだろう、今しばらく一時の至福を堪能しておくとしよう。......まぁ身体を酷使しすぎて全く動けないのだが。

 

「悪かったな、凛。取り敢えずこの現状だし、イリヤには悪いが一度衛宮邸に戻ろうか。スマンが肩貸してくれ」

 

 

 

 代償は大きかった。使ったカードは二枚。魔力も体力も空っぽで一人でろくに歩けやしない。

 

 だが、それでも守れたものがある。

 

 だから...サーヴァント(英霊)としては及第点くらいは貰えるだろ。なぁ?

 

 

 

 





更新遅くなってすいません!これからは可能な限り週一ペースくらいで上げれたらいいなと考えています。

エイプリルフールの特別篇も書きたいなぁ...

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