借りモノの英雄譚   作:とらまる@

19 / 19
16︰人形遣いと魔眼遣い 4

 

「イリヤスフィール・フォン・アインツベルン...。何故アナタがここにいるのかは知らないけれども、邪魔しないでもらえるかしら」

 

 魔眼遣いこと、サミュエル・E・ブラッドベリーは視線こそ目の前の二人のサーヴァントから逸らしはしないものの、突然の乱入者である白銀の少女と鈍色の巨人をその目に捉えていた。右手に埋め込まれた魔眼を通して。

 

「へぇ..その手に付いた魔眼、視覚の共有も出来るのね。でも人と話す時はちゃんと顔を向けて話せって習わなかったのかしら?」

 

「あら、アナタこそ聞いてないのかしら?私をここ、この冬木に派遣したアタシの雇い主こそアインツベルンのアハト翁だって。つまりアタシ達は味方同士ってこと、お分かり?」

 

「なによそれ...私そんなの一言も聞いてない!」

 

 イリヤスフィールの反応を見るにそれは本当に初耳のようであった。そしてその反応を見たサミュエルはククッと喉奥を鳴らしながら嘲笑った。

 

「アンタ、全然信用されてないんじゃな~い?ま、これからはアタシも手伝ってあげるから一緒に頑張りまちょうねー、お・じょ・う・さ・ま」

 

「......らない」

 

「え、なぁに?何か言ったかしら」

 

 魔眼遣いの言葉を受け俯いたイリヤがぼそりと呟く。それをサミュエルが聞き返すと少女は顔を上げ、先ほど自分は味方同士だと告げた相手に向かい叫んだ。

 

「アンタなんかいらない!!私とバーサーカーだけで十分よ!やっちゃえ、バーサーカー!!」

 

「■■■■■■■ーーー!!!」

 

 

ーーそれは明確な敵意。

 

 無理もない、あれだけ貶されてそれで尚 手を組もうだなんて虫のいい話だ。先程までイリヤの背後で沈黙を保っていた巨人は少女の一言により荒れ狂う。それはさながらハリケーン。全てを巻き込み破壊してなお進む暴風の如くであった。

 

「あらやだ、交渉決裂ね。まぁアタシもこんなお子様と組むより一人の方が気が楽で助かるわ」

 

 そういうとサミュエルは両手の掌にある魔眼をバーサーカーの方へと向けた。右手の「炬爆の魔眼」と左手の「炎焼の魔眼」を。

 

 その目線の先にいる巨人、バーサーカーを襲ったのは幾度となく放たれる爆発と猛火。普通の人間ならばこの時点で消し炭となりその痕跡すら残らないだろう、だがその巨体は止まらない。業火の中を突き進み、その魔眼の遣い手へ向けて手に持った斧剣を振りかざした。

 

「うっそ、あれだけやって効かないの!?どんだけ脳筋なの..よっ!」

 

 並の攻撃をものともしない重戦車、それがイリヤスフィール・フォン・アインツベルンのサーヴァント...ヘラクレスである。その規格外の耐久に驚きつつサミュエルは後ろに飛び、ギリギリのところで振り下ろされた斧剣を避けきった。

 

「なるほどね、アインツベルンが用意したサーヴァントなだけあるってことかしら。真っ向からガンガン来られるのは嫌いじゃないけど、戦闘だとちょっと苦手かしら。それに、目線逸らしちゃったもんね...」

 

 先程まで地に伏していた二人のサーヴァント、セイバーとライダーがそれぞれの得物を構え立ち上がっていた。

 バーサーカーの一撃を避けるのに精一杯となり、彼女らを捉えていた左眼の『重圧の魔眼』から解放してしまったのだ。

 

「そこまでです、魔術師(メイガス)!」

 

「お望みならばこの石化の魔眼、その身で試されてみますか?」

 

「■■■■■■■ーーー!!!」

 

 ジリジリと距離を詰めてくるセイバーと、その眼を隠した眼帯を外そうとするライダー。そして今にも襲いかかってきしうなバーサーカー。

 

「やだわ、一気に大ピンチじゃないのアタシ!うーん...奥の手は最後まで取っておきたいし、無理してこの大事な魔眼たちが傷つくのなんてもってのほか。......うん、決めたわ!今日は一旦退くとしましょ!」

 

 サーヴァント三体を前にし、サミュエルは軽々と『逃げる』と言ったのだ。普通の魔術師ならとうに諦めているであろうこの状況で。

 しかし、この男にはそれが可能であった。

 

 ゆっくりと右手を空に突き出し、その手の甲をサーヴァント達に向ける。そこに移植された魔眼が徐々に淡い光を放ち、魔力が蓄積されていく。

 

「何か来るッ!ライダー!」

 

「はい!お覚悟を...!」

 

 魔力の流れを感知し、早々に決着を着けようとセイバーとライダーが翔ける。サーヴァントの跳躍力、サミュエルとの距離は一気に縮まり二人の英霊はその手の得物を振りかざした。

 

「偽ーー魔眼大投射!!」

 

 サミュエルが叫ぶと同時にその右手が光を放つ。が直後、セイバーの不可視の剣がサミュエルの右腕から胴体にかけてを断ち、ライダーの杭がその眉間を穿ち貫いた。

 そのままだらんと重力のままにサミュエルの身体は崩れ落ち、地へと落ちた。

 

「酷いわねー、アンタたち。乙女の身体になんてことしてくれるのよぅ!」

 

 その声は今まさに死に体となり地に落ちたサミュエルから聞こえた。胴体を半分断ち切られ眉間を貫かれたその身体は、何事も無かったかのように立ち上がり 傷口は瞬く間に回復していった。

 

「流石にサーヴァント三体を相手取るのは大変だし、今回は退かせてもらうわー。大事な魔眼をひとつ犠牲にしちゃったけど、そっちの戦力もある程度把握出来たし良しとしましょ。じゃあね、バイバ~イ☆」

 

 別れの言葉を告げると魔眼の遣い手はその身体を粉にして消えていった。

 残った者たちは皆、呆然と立ち尽くしていた。まるで悪い夢でも見たかのように。

 

「やられたわね...魔眼遣いを名乗るのは伊達じゃないってことかしら」

 

「これは...どういうことですか、イリヤスフィール?」

 

 いち早く今の状況を理解したイリヤにセイバーが問う。

 

「今のは魔眼による幻覚よ。恐らくは『幻影の魔眼』ね。アナタ達が攻撃を仕掛ける直前にアイツの手に付いた魔眼が光ったでしょ?きっとあの時発動したんだわ...。それにしても効力が強すぎる..ある程度の耐性がある私やライダーすら気づかなかったなんて」

 

「そんな!これだけの大人数を相手にして全員にあの幻覚を魅せるなんて...、もはや魔眼の域を超えた能力ですよ!」

 

 

 

「それについては俺も聞きたいね、主にこの現状に至るまでも込みで」

 

聞き覚えのある声に一同が振り向くと、凛に肩を借り立っている佐久間 武月がいた。

 

 

 

 

 





 春になり仕事がとても忙しくなりました。
 更新が以前より遅くなるかもしれませんが、少しずつながら書いていってますので長い目で見ていただくと幸いです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。