借りモノの英雄譚   作:とらまる@

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2︰見知った場所、初めての土地

 

ーー聖杯戦争

 

 万物の願いを叶える万能の願望機「聖杯」を求め、7人のマスターと7騎のサーヴァントが争い最後の1組になるまで行われる、言わばバトルロイヤルだ。

 もっともそれは表向きのカタチであり、裏側ではもっと面倒臭いものが色々と渦巻いている。

 だが、どちらにしろ聖杯戦争に参加するマスターというのは他のマスターやサーヴァントの事など関係なしに己が為に殺しにやってくる。

 

 俺は思う。この聖杯戦争ってのは、「如何にして相手を殺すのか」ではなく「如何に上手く立ち回り生き残れるか」が重要なのではないのか、と。

 

 そこで大事になってくるのがマスターとサーヴァントとの関係性だ。連携が上手くいかず敗れてきた者や、サーヴァントに裏切られ殺されてきたマスターを俺は知っている。

 お互いに関係を深め、意思疎通の出来る良好な関係であるべきだ。

 

 ましてや、朝っぱらから大声を上げて喧嘩し合うなんて以ての外だ。

 

 なぁ、そう思うだろう?

 

 

   ◇◆◇◆ ◇◆◇◆

 

 

「はぁぁ!?霊体化が出来ないってどういう事よ!」

 

「そう朝から吠えるなって。さっきまで寝てて今日学校サボろうって奴が元気なことだ」

 

「うるっさいわね!あーもう...昨日は勢いであんな啖呵をきっちゃったけど、こんなヤツと2人でどうやって聖杯戦争勝ち進んでいくのよー!」

 

「まぁ他の英霊は知らんが俺はほら、見た目なんて一般人と変わりないし霊体化しなくても大して問題ないだろ」

 

 黒のTシャツとジーパン、この世界に召喚される前に着ていたものと同じものだ。サーヴァントって着替えなくても大丈夫なのかな?うーん、だけど気持ち的に着替えたいし風呂も入りたい...。

 そういうのは聖杯、教えてくれなかったもんなぁ..。

 

 そう、昨日の夜..あの後マスターである凛はサーヴァント召喚の儀の疲労もあり寝室へと去っていった。そして残された俺は、自身が召喚された部屋の片付けを任されたのだった。

 掃除の途中、急に俺の頭の中に流れ込んできたのは聖杯による現代知識と聖杯戦争でのルール、そして俺自身のステータスやスキル、宝具の名とその能力であった。

 『Fate』というこの世界観を既に知っている俺にとっては前半の部分は殆ど復習に変わりなかったが、問題は後半部分。俺自身のチカラについてだった。

 

 凛の言った通りステータスこそ低いが1番の収穫はやはり固有スキルと宝具を把握出来たことにある。むしろ一般人の俺が宝具なんてあったのかと驚くくらいだ。しっかし...これまた運任せな宝具だなぁ。『Fate』の世界を知っている俺ならではの能力であるが。

 

 

「ちょっと、ムツキ!なにボーっとしてるのよ!ほら、出掛けるわよ」

 

「出掛ける?学校はサボるんだろう、何処に行くんだよ?」

 

「せっかくだから街を案内してあげる。これからの戦いに備えてアンタもある程度地形が分かってた方がいいでしょ」

 

 ......サーヴァント召喚の翌日。遠坂凛の寝坊からの学校欠席、そして街案内を受ける。

 この流れは『知っている』。この流れはアニメで『見ている』。ここまではまだ俺の知っている第五次聖杯戦争のようだ。俺というイレギュラーを除いて。

 恐らく今後どのルートに分岐するにしても英霊エミヤのいない、そして一般人の佐久間 武月がいる事によって変化が起きる。つまりは...

 

「そうだな。じゃあ案内頼むよ、凛」

 

 原作知識があるといって何一つ安心は出来ないという事だ。

 

 

   ◇◆◇◆ ◇◆◇◆

 

 それから俺は凛に案内され、冬木市内を探索して回った。俺達の拠点であるこの遠坂邸や後に出会うであろう衛宮士郎の住む衛宮邸、他にも穂群原学園や柳洞寺のある深山町。

 そして冬木大橋を挟んだ先にあり、言峰綺礼が神父を務める冬木教会やFate/Zeroで切嗣が爆破したハイアットホテル等がある新都。

 アニメやゲームでは見馴れた街並みだったが、いざ歩いてみると結構広いものだ。ある意味聖地巡礼だな、これは。

 

 一通り回り歩いた現在、俺と凛は深山町に戻り未遠川の見えるオープンカフェで休憩中だ。

 

「これで大まかにだけど冬木市内の案内は終わりかしら。どう、ムツキ?参考くらいにはなったかしら?」

 

「あぁ、色々と見て回れて良かったよ。良い所だな、冬木は」

 

「なら良かった。色々と物騒な事も多いけど、そう言ってもらえると私も嬉しいわ。さて、この後だけど...ってちょっとムツキ、聞いてるの?ねぇ!」

 

 

 ーー何故、キミが此処にいる?

 それはアニメで、ゲームで、この世界(Fate)を知っているムツキだからこそ目を疑った光景だった。

 

「...すまん、凛。ちょっと席を外す!先に帰っていてくれ!」

 

「ちょ、ちょっと!ムツキ!?」

 

 凛に断りを入れて急いで店を出た。

 一瞬目に入っただけだったが見間違いはしない。川沿いを1人寂しげに歩いていたその女の子を。

 

 その少女をよく知っている。

 特異点を旅し、7つの聖杯を回収して、未来を取り戻す為に共に戦ってきたその少女のことを。

 だが、そんな彼女が何故この冬木にいるのだ?何故この時期に?

 

「なぁ..、キミッ!!」

 

 漸く追いつき、声をかけると少女は振り返る。片目を前髪で隠してはいたが、その表情はどこか寂しげで朧気な瞳をしていた。

 

「あなた...は..?」

 

「俺はムツキ。佐久間 武月。アンタに話があって追いかけていた。

 

  マシュ...マシュ・キリエライト」

 

 

 

 




私事ですが、今週の土曜日に福岡で開催される『FGO冬祭り~ダヴィンチちゃん・コード~』に行ってきます!
川澄さんと能登さんのトークステージ楽しみで小躍りしてます。
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