借りモノの英雄譚   作:とらまる@

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3︰盾の少女

 

ーーFate/GrandOrder

 

 TYPE-MOON初のスマートフォン専用オンラインゲーム。

人類の未来を取り戻す為に、いくつもの『特異点』を旅し聖杯を探索していく。それが『冠位指定(グランドオーダー)』。

 様々なサーヴァントと共に戦闘を行える事が特徴の作品だが、その中でも最初から主人公に同行し共に旅をしていく仲間であり、英霊と融合した『デミ・サーヴァント』である少女。それが『マシュ・キリエライト』だ。

 

 その少女が今、どういう理由か俺の目の前にいる。

 

 

   ◇◆◇◆ ◇◆◇◆ 

 

「マシュ...?えっと、人違いだと思います...。私、マシュなんて名前じゃないですし。そもそも名前なんて..」

 

 前言撤回。どうやら人違いのようだ。

 

 いやいやいや、人違いにしては似すぎだろ!そんな事あるのか?うーん...。

 

「ッ...!」

 

 おっと、あまりまじまじと見つめすぎていたようだ。流石に警戒されたのか少女は1歩後ずさり身構えている。

 

「あぁ、すまない。どうやら人違いのようだ。知り合いに随分似ていてね」

 

「アナタ、今回の聖杯戦争で召喚されたサーヴァントですね。私には戦う意思も今回の聖杯戦争に参加するつもりもありません。それでもというのならば、お相手になりますが!」

 

「えっ...ちょ、ちょっと待った!待った!タイム!」

 

 マシュではない?だがサーヴァントについて知っている。ならば彼女は一体...?

 

 

 ーーそこで俺は思い出す。

 

 いつ読んだのか。何処で読んだのか。雑誌なのか、設定資料集か何かか。その辺りは全く思い出せないが、内容は憶えていた。否、今思い出した。

 

 今や数多くの種類を持つFateシリーズ。その一番初め、始まりの作品である『Fate/stay night』。そのシナリオのプロット段階で存在した『はぐれサーヴァント』の存在を。

 其処に書かれていたのは、「盾のサーヴァントとしてセイバーのライバルになる予定だった」、「マスターを殺して暴走している」、「ギルガメッシュ同様に前回の聖杯戦争(第四次聖杯戦争)から残っているサーヴァント」と。

 そして何より、見間違える筈だ。マシュ・キリエライトは彼女のキャラクターデザインをモデルに作られたキャラだからだ。

 

 確かに俺というイレギュラーが存在するのなら、彼女だって存在してもおかしくはない。もう既に、これは俺の知る聖杯戦争と違うモノになってきているのだ。

 

「俺には戦闘の意思はない!本当だ、信じてくれ!」

 

 ならば先ずは誤解を解かねば。

 

「.........」

 

「そもそも俺のステータスなんて最低ランクに近いし、君にも勝てないって!」

 

「.........」

 

「え~と...あ、寒いしコーヒー飲む?」

 

「......苦いのは苦手なのでココアがいいです」

 

 どうやら俺の必死さが伝わったらしく、多少警戒を解いてくれたようだ。

 むしろ俺だから良かったものを、意外と危なっかしくないか..この子!

 

 

   ◇◆◇◆ ◇◆◇◆ 

 

 その後俺達は先ほどまで凛と一緒にいたオープンカフェへと戻る事にした。何かあった時に、と凛から預かっていた千円札を早速使いホットコーヒーとホットココアを注文する。

 

「はい、どうぞ。熱いから気をつけてな」

 

「どうもです..」

 

 同じテーブルに着いているが、お互いの座る距離はかなり開いている。まだ完全に気を許した訳では無いようだ。

 

「さっきも話した通り、俺は君と戦う気は全くない。声を掛けたのも本当に君に似ている人がいたからだ」

 

「マシュ...キリエライトさん?」

 

「あぁ。似ているが別人だということも分かった。そして恐らく俺は、君の事について幾つか知っている。君が前回の聖杯戦争の生き残りである事。マスター不在の盾の英霊である事。その点について間違っているだろうか?」

 

「いいえ、アナタのおっしゃる通りです。ですがどうしてその事を?前回の聖杯戦争からこの10年間、私の事は誰にも話していない筈なのに!」

 

 それは驚きと戸惑い、そして警戒の入り混じった声と表情だった。

 

「すまないがそれについて詳しくは話せないんだ。だが俺は君の敵ではない。それだけは信じてほしいな」

 

「.........」

 

 彼女は無言のまま俯いている。それもそうだ。いきなり初対面の相手に気を許すなんて早々しない。この席まで来てくれただけでも奇跡に近い。だって彼女は聖杯戦争の生き残りなのだから。

 だから俺は彼女の返事を待たずに、そのまま話を続けることにした。

 

「今から数日中に全てのサーヴァントが揃って聖杯戦争が始まる。もう一部では戦いが始まっているかもしれない。君はさっき戦う気はないと、聖杯戦争に参加する気はないと言った。だが俺以外の相手はそんな事はお構い無しに襲って来るかもしれない。今後は十分に気をつけてくれ、何なら冬木から出ることもオススメするよ」

 

 それが今、俺に出来る唯一の事であった。そして彼女もこれ以上は望んではいないだろう。

 

「そうですか..分かりました。ご忠告ありがとうございます。では私はそろそろ帰りますね。ココア、ご馳走さまでした」

 

 席から立ち上がり、そのまま去っていこうとする彼女を呼び止めようとしたが、それは止めておく事にした。

 他にも彼女の事で気になることは多々あったが、初対面であまり聴き込むのも悪い気がした。だから最後に1つだけ。

 

「なぁ、君の名前は?」

 

「私はただの盾のサーヴァント。名前も無ければ、ちゃんとした英霊でもありません」

 

 そういうと彼女は去っていった。

 

 名無しのはぐれサーヴァント。普通ならばいる筈のない彼女が何故存在しているのか。俺が召喚された事とも関係があるのか。分からない事ばかりだが、今日はもう遠坂邸に帰ることにしよう。暗くなって他のサーヴァントに襲われたりなんてしたらそれこそ一大事だ。

 

 聖杯戦争に召喚されて2日だが、問題は山積みであり俺の無い頭を振り絞っても問題解決には程遠いものばかりであった。

 

「まぁなんとかなる!...たぶん」

 

 

 

 その後、遠坂邸に帰り着いたムツキを待っていたのは凛によるお叱りと小言の嵐であった。

 

 

 

 

 




はぐれサーヴァントちゃんの声のイメージは種田梨沙さん。
もし本編がFGO編まで行きマシュが登場したなら、マシュの方は高橋李依さんのイメージでいきます。

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