とある魔法の魔導司書(ブックキーパー)   作:神の槍

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帰ってきたぜ!!in,ハーメルン!!
まさかの二か月も休んでしまうというクズな作者ですが、夏休みという時間を利用して頑張って書きました!

……久しぶりに書いたから所々おかしいかも…。


とある病魔の対策治療(ディスピクシイクシール)

三日後。

神槍(しんやり)と神裂が激闘を繰り広げていた一方その頃、炎の魔術師ステイル・マグヌスにコテンパンにされた上条当麻は、もはや避難所扱いになっている月詠小萌の家で目を覚ました。

『ん?……やっと起きたか、当麻』

「トシキ?――ッ!?」

起き上がろうとしたが全身に走る痛みに中断され、また寝転がる上条。その隣では神槍が一冊の分厚い本を読み終え、床に置いたところだ。

「痛てて、何だこりゃ。陽が昇ってるって事は、一晩明けたんだろ。今何時なんだよ?」

いや、と答える神槍の表情には多少の疲れが見えた。

聖人との戦いを終えた彼は、すぐにインデックスの元へ向かった。その途中で倒れている上条を発見、回収し、銭湯で待っていたインデックスに魔術師に襲われた事を話した。(マジ泣きされたので必死になだめた……やっぱ子供じゃん)。

『三日。三日も気絶してたんだよ、お前は』

「みっか……三日だって!?――ッ!インデックスはどこだ!?」

上条が焦っているのには理由がある。神槍が神裂火織からインデックスの事情を聞いたのと同じように、彼もステイルから説明を受けたのだ。

インデックスの記憶消去までの猶予時間、それが三日だった。自分はその大事な大事な三日間を丸々無駄にしてしまった。

悔やんでも悔やみ切れない時間の浪費だ。

もしかしたら彼女はもう……、上条の頭に最悪な展開がよぎる。

『大丈夫だ。アイツなら今、小萌先生と管理人さんトコの風呂に――』

「ただいまですー」

ほら、帰ってきた。神槍がそう言うと、ドアが開き少女二人(いや片方は成人してる……はず)が入って来た。

と、上条が起きている事に気づいたインデックスが駆け寄ってきた。

「とうま、大丈夫!?どこか痛くない!?」

「痛いって、あのな。そんなに痛かったらのた打ち回ってるっつの。何だよこの全身包帯、お前ちょっと大袈裟すぎんじゃねえの?」

「……」

インデックスは何も言わなかった。

それから、ついに耐えきれなくなったという感じでじわりと涙があふれてくる。そこで、気づいた。“痛みを感じない方が危ない状態”だという事に。

眼前に迫る業火を思い出してしまい、体温が下がったような寒気を感じた。

そんな上条の様子に気づいたのか、神槍は小さく笑って持っている皿を見せながら、

『なんか食べるか?お粥にリンゴやら色々あるぜ?』

「いや食べるってこの手でどうやって食えって――」

言いかけて、上条は神槍とインデックスの手におハシが握られている事に気づいた。

「……あの、お二人さん?」

「うん?今さら気にしなくてもいいんだよ?こうして私かとしきが食べさせてあげなきゃ三日の間に飢え死にしちゃってるんだから」

「……いや、いい。とりあえず深く考える時間をください神様」

(え、何?つまりこーゆー事?この不幸の化身こと上条当麻が三日もの間、可愛いヒロインと中性的な美“少年”(←男なのが非常に残念)に看病プレイをされていたと?あの男の夢であるはいご主人様アーン❤とかを?)

…………。

………おお。

お父様お母様、わたくしにもまだまだ幸せがあったようです、と不覚にも純情少年上条の瞳から涙がほろりとこぼれ落ちた。

『……なんで泣いてんだよ。ほら、とりあえず食べとけって』神槍が差し出したお皿の上には綺麗に切られたリンゴがある。

なにげにウサちゃんカットなのがグッジョブ!!とバクバクとリンゴを食べ進めていく幸運値が吹っ切れている上条。

しかし、少年は知らない。

この世界は少年が思っているよりずっと、不幸に溢れている事に。

「うぅ、こんなに幸せなのは初めてです……。ひっく、ヒロインと美人さんに囲まれているなんて……」

『…………………………………………………………………………………………………………』

神槍の表情が、凍った。

「?」あれ?なんだか様子がおかしいぞ、と最後のリンゴを食べ終えた上条は、笑顔のまま固まっている神槍に視線を向ける。

顔は笑顔だけど目がまったく笑ってないのは気のせいですか?と不幸の予感を感じ取った上条。明らかに怒ってる。

そこで、上条はようやく思い出した。彼が前に言っていた一言を。

――今度俺のコンプレックスである女顔の事をいじりやがったらボコるので覚悟しろ。

ボコる?え、美人さんって言っただけでアウトなの?

「えと、もしかして……まさかのブチ切れモードでせうか?」

『……』

神槍は答えない。花も恥じらう美笑を維持したまま、聖人さえ厄介だと言ったパンチが不幸野郎に降りそそぐ。

 

 

 

神槍トシキという少年が本当の意味でブチ切れる事はあまりない。

少しイラッっと来たりする事は多々あるが、マジで手が出たりする事はごく稀である。

しかしそれには例外がある。

コンプレックスである女顔の事を言われると、問答無用に沸点を突破してしまうのだ。例えば「女っぽい」とか「中性的だね」とか「美人さん」とかである。

これには過去のトラウマが関係しているのだが……今は秘密にさせていただこう。

魔法使いの少年にも触れられたくない部分があるという事でここは、一つ。

 

 

 

「うん?今なんか変な説明タイムがあった気がするんだよ」

『気のせい気のせい。それとインデックス、そういう発言は控えるように』

「……つーかトシキ、突然ボコボコにされた上条さんに対するごめんなさいはどうした」

ただでさえボロボロな身体にパネェ威力のパンチを決められた上条は、力を振り絞って抗議するが「人の性別さえ認識できない奴なんて滅べばいいんだ」と未だにイライラしている神槍に一刀両断されてしまう。

もはや「不幸だー」と言う体力も残っていない上条はもぞもぞと布団に戻った。

と、この三日の間小萌先生の家にある医学書を読み漁っていた(らしい)神槍がスクッと立ち上がり、玄関に向かう。

「――?おい、トシキ。どっか行くのか?」

『ちょっと“良い医者”っぽい人を見つけたから直接会ってくる』

時間がない。

インデックスは隠しているが、明らかに顔色が悪いし米神を押さえる仕草が増えている。

おそらくは頭痛。頭のパンクの予兆。

この三日間、持ち主が教師なだけあって家にも大量の本があったので粗方は読んでみたが、そもそも小萌先生とは分野が違うらしく完全記憶能力に関する記述は見つけられなかった。

もしかしたら、あまり知られていない体質なのかも知れない。

だが、まったく収穫がなかった訳ではない。

様々な医学書に出てきた一人の医者。本によると『死なない限り』あらゆる患者を救う事が可能だと言う。

嘘かも知れないし本に大袈裟に書かれているだけかも知れない。完全記憶能力なんて知らない、と一言で断じられてしまうかもしれない。

(それでも、今の俺にできる事はそれぐらいしかない)

「としき、どこか行っちゃうの?」

『すぐに戻ってくるよ。その間、当麻と仲良くしてるんだぞ?』

「?……うん!」

ポンポン、とインデックスの頭を優しく撫でる。彼女は不思議そうな顔をしたが、除々に笑みが広がってくる。

上条はその横で「お兄ちゃんかよ」と呟いている。

適当に上条に言い返して、「行ってくる」とインデックスに言ってからバタンと扉を閉める。

『……待ってろ』

重ねるように呟いてから、神槍は走り出した。

絶望から逃げるためでなく、希望を抱えて戻ってくるために。

 

 

 

すっかり残業になってしまったね、とカエル顔の医者は蛍光灯の光に照らされる診察室で呟いた。回転式のイスをクルクル回して窓から外を見てみれば、もうすっかり陽は落ち満月がこんにちはしている。時刻は……十一時半か。

嫌がらせとしか思えないほど机に散乱している書類達を見て、息を吐く。医者は何も手術や患者と話しをするだけではない。書類作成だって仕事の一つだ。

(やっと終わった。手術二連チャンのあとに三十枚は流石にキツイね)

書類処理用に誰か雇っちゃおうかな、と半分以上本気で思う。

ハァともう一度小さく息を吐いて、白衣をはためかせイスから立ち上がろうとする。

立ち上がろうと、腰に力を入れた瞬間だった。

 

『なぁ、完全記憶能力って知ってるか』

 

開けたままにしておいた窓から声がしたのは。

見れば、赤髪とまっ白い肌が特徴的な少年が窓の外からこちらを見ていた。

ここは五階だ。間違っても足が届く高さではない。壁にひっついているようにも見えない。身体がグラついていない所を見ると、ちゃんとした足場に立っているかのようだった。

「……念動力でも使って空中に力場を造っているのかい?随分と奇抜な登場方法だね。とりあえず入って来たらどうだい?ウチの診療は二四時間制だよ」

『遠慮しとく。時間がないんだ、質問に答えろ』

ハァ、とカエル顔の医者はまたまた小さく息を吐いた。“まだ残業は終わりそうにないな”と。

「完全記憶能力ね。あれは病気というより体質だね?分野的には脳医学になるのかな。でもま、問題ない。僕は医者だよ?医学っていう大きな分類の中に入ってさえいれば、何でも解決できる」

医者は引き出しから白紙のカルテを取り出し、

「で、患者は君なのかな?それともどこかで待っているのかな?ああ、そうだ。この僕に相談した時点で誰であろうとソイツは僕の患者だ。完璧な健康体になるまでは麻酔薬を注射してでも逃さないからね?」

『お前……』

「ん?んん?そんな意外そうな顔しないでくれ。確か、その症例に対しては二六ほど治療策を用意しているけど……どれがお好みかな?なるべく話は早く済まそう、その方が僕も助かる」

カエル顔の医者はニコリと笑い、乱れていた白衣を改めて着直した。

どうやらこの物語(せかい)は、罪もない小さな少女を見捨てるほど腐っちゃいないらしい。

 

 

 

「一〇分間だ。良いな!?」

ギリギリと。ステイルは今にも上条の喉に喰いつきそうになるのを必死に抑えて言い放ち、きびすを返してアパートのドアへ向かった。

神裂は何も言わずにステイルに続いて部屋を出たが、その目はとても辛そうに笑っていた。

バタン、とドアが閉まる。

後には、上条と頭を圧迫され指一本動かせないインデックスだけが残された。命を懸けて――上条ではなく、インデックスの命を削って手に入れた一○分間。

「――コイツに“着いてくるな”って言われた時も、トシキの背中が斬られた時も。なんで俺には何もできねーのかな」

返事は、ない。

彼女はもう、答えてくれない。

「……どうして、たった一人――苦しんでる女の子を助ける事もできねーのかな」

ぐっ、と。

悔しさのあまり右手を握る。

握るだけで、他には何もできない自分に嫌気が刺した。

 

「ぁ――――か。ふ」

 

ぐったりとしたインデックスの口から声が漏れて、上条はビクンと肩を震わせた。

インデックスが、薄目を開けていた。何で自分が布団の上なんかで寝転がっているのか、ここで眠っていたはずの上条はどこへ行ったのか、ちょっと出てくると言って居なくなった神槍は無事なのか、ただそれだけが心配だと言わんばかりに。

自分の事など、すっかり忘れて。

「……」

上条は奥歯を噛み締めた。

恐い。

今の彼女の前に立つ事が、他のどんな事より恐かった。

だけど、逃げ出す訳には、いかなかった。

「とう、ま?」

上条が布団に近づくと、インデックスは汗びっしょりの顔で安堵したように、心底安堵したようにホッと息をついた。

「……ゴメン」

「……?とうま、としきは帰ってきた?今どこに居るの?」

「アイツは……、今も戦ってるよ。“俺と違って”」

「?」

言葉の意味が分からずインデックスは首を傾げるが、やがて部屋に落書きのような陣が張ってある事に気がついた。

「とうま、部屋に陣が張ってある」

布団の近くに描かれている模様を見ながら、何も知らない少女みたいに首を傾けている。

「……っ」

上条は一瞬、奥歯を噛み締めた。

ほんの一瞬、誰にも気づかれる事なく、表情は戻る。

「……回復魔術、だってさ。お前の頭痛がそんなひどくなんのがいけねーんだぞ?」

「? 魔術って……誰が」

そこまで言った時、ようやくインデックスは『ある可能性』に気がついた。

「!?」

もう動かせない体を無理矢理に動かして、インデックスは跳ね起きようとする。ズキン、とその顔が歪んだのを見た瞬間、上条は思わずインデックスの両肩を掴んで強引にでも布団に押し戻した。

「とうま!また魔術師が来たんでしょ!もしかしてとしきが今戦ってるってアイツらとって事!?なら早く行かなきゃ!!」

「……もう、良いんだ。インデックス」

「とうま!」

「終わったんだよ。……もう、終わっちまったんだ」

上条当麻はそう告げた。

「……ゴメン。俺、強くなるから。お前をこんな風に扱う連中、全部一人残らずブッ飛ばせるぐらい強くなるから…」

泣く事さえ、卑怯。

同情を誘う事など、もってのほか。

“アイツと違って”、既に諦めてしまった自分は。

「……待ってろよ。今度は絶対、完璧に助け出してみせるから」

インデックスの目には、それがどんな風に映ったのか。

インデックスの耳には、それがどんな風に聞こえたのか。

「分かった。待ってる」

事情を知らなければ、上条が保身のためにインデックスを売ったとしか見えない。

なのに、彼女は笑っていた。

上条には、分からない。

どうして彼女がこんなに人を信用してくれるのか、そんな事はもう分からない。

だけど、一つだけ分かっている事がある。

自分はもう、嘘を貫き通す事ぐらいでしか彼女を笑顔にできないほど、諦めてしまった(クソッタレな)人間だという事だ。

と、その時。

 

落書きのような模様が描かれている窓が、外から石を投げられたかのように粉々にバリぃぃイイイイイイン!!と砕け散った。

 

「ッ!?」

向かってくる無数の鋭利なガラスの欠片を見て、上条は咄嗟に体を楯にしてインデックスを庇おうとする。

が、理解不能な事にガラスの欠片は上条とインデックスを避けるように軌道を逸らした。バラバラと上条達の周りにガラスが散らばる。

「え?」

自分とインデックスが無傷である事を呆然と確認して、上条は窓の方を見た。何かが窓をぶち壊しながら部屋に入ってくるのを、彼は見逃さなかった。

石でも転がっていると予想したが――違った。

転がっているのではなく二本の脚できちんと自立しているようだ。段々と上に視線を上げてみると、『それ』には手もあった。片手に2メートルほどの金属制の筒……金属パイプ?を持っている。さらに上を見ると、男と女の狭間に居るような容姿。

何より、ルビーみたいに鮮やかで印象に残る赤髪。

「……と、しき?」

 

『ったく、ナニ勝手に諦めてんだバーカ。お前らしくもねえ』

 

今までのシリアス空間は何だったのか、と場違い思考を与えるような軽口を彼は言った。

しかし。その口調を聞いて、何故かしっくり来ているのを上条は感じていた。

ボロボロのローブを纏い、背丈より長い棒状のモノを持った彼を見ていると、

(おいおい。これじゃホントに……)

『手伝え、当麻。インデックスを助けられるのはお前しかいない』

魔法使いが、そこにいた。

 

 




唐突すぎるけどお構いなしに始まる「魔法説明しちゃうよコーナー」!!

『魔法の射手 サギタ・マギカ』
初歩の戦闘用呪文。色々な属性バージョンがあるが、神槍は好んで光を使う。
撃つ矢の本数のよって威力が大きく変動する魔法。一本の威力は(光属性の場合)成人男性のストレートパンチくらい。
簡単に言えば「細いビーム」とお考えください(えっ
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