みっどちるだのはてをめざして   作:Qrz

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どうも、お久しぶりです。
資料作りにイラついたので投稿します。


2.目次をめくって

 彼らパタポンと彼が出会ったのは、もうかなり前の話になる。

それは青年がまだ少年だったころの話。そこそこ発展したどこかの世界の隅っこの話だ。

 

 釣りをしようと人気のない海岸を歩いていると、何やら楽しげな音楽と太鼓の音が聞こえた。どこかで祭りでもやってるのだろうか、などと思考を他にやりながら荷物を置く。

 すると。

 

 まっくろくろすけ?

 おさきまっくら!

 くらいよーこわいよー。

 めがああああ!めがああああ!

 

 音楽と太鼓が一瞬で悲鳴に変わった。何事かと慌てて荷物を抱え上げる。 

 砂の中から、ちらりと金具のようなものが見えた。砂を払って確認すれば、

 

 ひかりだー

 みらいはあかるい!

 たいようって……あったかいんだな……

 めがあああああ!めがあああああああああ!

 

 と歓喜の声……いや最後の滅んでそうだぞ。

 

 砂の中から拾い上げれば、一冊の絵本であった。

 タイトルは……パタポン族の冒険。

 触ると音声が再生される絵本……今の絵本ってすごいんだなあ、と、小学生並みの感想を一つ。

 よく考えれば、少したりとも風化せず、海水でふやけてもいないそれは異常だ。だが、この声に気を取られてしまっていた彼はそんなことは気にもとめず。

 

 

 

 好奇心には猫をも殺す。これが彼のこれからを決定づけた選択だった。

 

 

               神さまの誓約書

 

 

  わたしはセカイの果てを目指すため パタポンの神さまになることを誓います。

           たとえリズム感に自信がなくても

           たとえ途中で投げ出しそうになっても

           絶対に最後まであきらめません。

 

 

          わたしはこの誓いを守ることを約束し

       パタポンの神さまとして 勇気のタイコを手にします

 

                 

                 約束する

 

 

 これまた珍しい絵本であった。絵本の導入としてはよくあることなのだろうか?誓約をさせることで、より感情移入させるこの導入方法は実に面白い。

 

 ところで、パタポンって何?

 

 次のページをめくろうとするも、何で固められたかさっぱりわからないほどびったりと閉じてしまっている。なんだこの本。

 まあ読めないなら仕方あるまい。面白い絵本だと思ったのに、と約束する、の文字をなぞった。

 その瞬間だった。

 

 誓約書の文字が赤く輝くと、瞬く間にそのページが燃え上がったのだ。

 思わず本を落とす彼。燃え尽きたページから、黒い何かが飛び出してきた。

 勢いよく空中へ躍り出たそれは、くるくると回転しながら地面へと向かい

 「ぐふっ」

 着地に失敗。

 「ぐへっ」

 青い太鼓が追撃。

 「ごはあっ」

 フィニッシュは黒い旗。泣きっ面に蜂とはこのことか。

 

 ……黒く丸い目玉だった。手足もある、意味の分からない生物だった。正確には生き物かどうかすら分からないが……二度の追撃を受けてぴくりともしない。

 じり、じりとそれに近寄る少年。ぴくりともしない。

 つん、つんと突いてみる少年。ぴくりとも……した。

 

 大丈夫?

 「へんじはない ただのしかばねのようだ」

 大丈夫みたいだね。そういえば青いのどこいった?

 あ、俺の足もとにあった。ポンポンうるさいぞこいつ。

 「あなたは、だれ?」

 いや君こそ誰さ。いやてか何さ。

 「えッ、もしかしてかみさま!?」

 えっ。

 「タイコをもってるってことは、かみさまですねっ」

 いや そのりくつは おかしい。

 「いのちがけでまもってました!」

 聞いてよー。

 その黒い生物は、おもむろに赤い太鼓を取り出した。待て、それどこから取り出した?

 「PATA PATA PA!!TAAAAAAAAA」

 うるさい。

 「かみさま、いまこそしんぐんのうたを!」

 いやどこに軍があるんだよ。いろいろと意味が分からなさ過ぎぃ。

 「ぐんならそこにいますよ」

 指さす先には落とした絵本。自分が飛び出してきたから、軍も中にいるって?

 HAHAHA、面白い冗談だ。あとで釣る予定の魚をくれてやる。

 拾い上げた絵本は、彼らの生涯をつづった伝記だった。

 海を越え、山を越え。あらゆる障害を排除し、お宝を手に入れ、セカイの果てを目指したパタポン族の伝説。驚いたことにこの絵本、動いている。新手のマジックアイテムか何かだろうか。

 そして、本から出てきた黒い生物は、パタポンと言うらしい。

 

 きみパタポンっていうんだね。

 「こうしんのあいずをたんとうするはたポンともうします!」

 うん、ご丁寧にどうも。

 「ではかみさま、こうしんのうたを」

 いやさっきから君ほんと突然だね。どちらにせよ進軍の歌なんて分からないよ。

 「そんなせっしょうな」

 そう言われましても。

 

 困った風に視線を絵本に戻すと、ついに物語はクライマックス。

 セカイの果てを目指す途中、はたポンが消えたことに驚く彼ら。たいへんだ、たいへんだと慌ててしまって、そのページから動こうとはしなかった。

 

 これ、君がここにいるから混乱してるの?

 「そのとおりでございます。しかし、かれらにたいこのおとがとどけば、あるいは」

 太鼓の音って、それが進軍の歌ってこと?

 「はい!うたがとどけば、たちまちかみさまのもとへまいりましょう!」

 その進軍の歌が何か分かれば話は早いんだけどね。ってか参ってほしいわけじゃないんだけど。

 

 すると、停滞していたページがめくられた。

 真っ黒なページに、白い文字が浮かび上がる。

 

 PATA PATA PATA PON

 パタ、パタ、パタ、ポン。

 PATA PATA PATA PON

 パタ、パタ、パタ、ポン

 

 断続的に繰り返す、四拍子と彼らの歌を交互にはさむ歌。パタとポン。ひらめく少年。

 ……あれ、もしかして。

 手に持つ青い太鼓と、はたポンの持つ赤い太鼓を見る。再び彼らは歌いだす。

 「PON PON PO POOOOON!!」

 「PATA PATA PA!!TAAAAAAA」

 やはりそうだ。彼らに対応した音を、四拍子で演奏するのだ。なんてイージー。

 

 ちょっとそれ貸して。

 「これはかみさまのものです!なんなりとおつかいください!」

 そいつはどうも。てか今更だけどかみさまって何よ。

 「かみさまはかみさまです!」

 さようか。

 

 二つの太鼓を浜辺に置く。心なしか、楽しそうに揺れている。

 楽器だからか?叩かれて喜ぶ。字面は最高に気持ち悪い。

 まあいいや。とりあえず一回。

 ……叩いたら怒らない?

 「おこりません」

 さいですか。それでは。

 

 PATA PATA PATA PON!!

 パタ、パタ、パタ、ポン。

 

 

 

 ………………しかし なにもおこらない。

 はたポンがこけた。

 「えんそうをつづけてください。リズムをつないで、わたしたちにちからをおあたえください」

 ああ、続けなきゃいけないのね。そりゃそうか。歌だし。

 気を取り直して。

 

 PATA PATA PATA PON!!

 パタ、パタ、パタ、ポン。

 PATA PATA PATA PON!!

 パタ、パタ、パタ、ポン?

 

 

 誓約書に書いてあったとおり、少年にはリズム感も、音楽的なセンスにも自信はない。

 

 

 PATA PATA PATA PON!!

 パタ、パタ、パタ、ポン!

 PATA PATA PATA PON!!

 パタ、パタ、パタ、ポン?

 

 だが、この太鼓と、この歌と。

 叩き、紡いでいくその歌を耳にしたこのよく分からない高揚感は一体なんだろうか。

 

 PATA PATA PATA PON!!

 パタ、パタ、パタ、ポン!

 PATA PATA PATA PON!!

 パタ、パタ、パタ、ポン!!

 

 初めは自信なさ気だった音も、徐々に力強いものへと変わっていく。

 

 PATA PATA PATA PON!!

 パタ、パタ、パタ、ポン!!

 

 これは行進の歌、進軍の歌。

 どんな敵を、どんな大地を、どんな壁を前にしても進む、勇気の歌。

 

 PATA PATA PATA PON!!

 パタ、パタ、パタ、ポン!!

 

 絵本が強い風にめくられているかのようにページが進んでいる。

 はたポンが旗を振って踊りだす。太鼓に合わせて体を揺らす!

 

 PATA PATA PATA PON!!

 パタ、パタ、パタ、ポン!

 

 

 

 

 行こう!セカイの果てへ!!

 

 

 

 

 高らかに宣言した、その瞬間。

 「えんやこらー」

 「しんぐんだー!」

 「えらいこっちゃ♪かみさまだ♪」

 絵本からとめどなく飛び出す黒い目玉。砂浜を埋め尽くすように溢れ出す!

 そのどれもが、太鼓の音に合わせて楽しそうに踊る、踊る。まるで小さな宴会だ。

 そこには既に、最初にあった少年の疑問などどこへやら。

 

 いつのまにやら、50匹を超えるかというような大集会と化していた。

 

 

 気付けば時刻は夕暮れも間近。拙い演奏に疲れ切った彼が砂浜に腰かけていると、しゃなりしゃなりと音を立て、虹色の羽を付けた一匹が頭を垂れた。

 「神さま、お初にお目にかかります。巫女のメデンと申します。長き旅の果てに神に会えるなど、夢のように思います」

 そういえば神様って何さ。

 「神さまは神さまでございます。我らパタポン族をその太鼓で導く偉大なるお方の事です」

 偉大って。そんな高尚な性格じゃないんだけどなあ。

 「我々はセカイの果てを目指している旅を続けておりました。しかし、邪悪なる者たちにこの書に魂を封じ込められ、かくも永い間時空の海へと沈められておりました」

 邪悪なる者たちって?

 「ああ!」

 反応したパタポンがメデンに殴られた。知っているのか雷電。

 「世界を滅ぼす悪い存在です」

 急にふわふわした説明になったぞ。そんな説明で大丈夫か。

 「大丈夫だ、問題ない」

 また殴られてるけどきみら本当に長い間海に沈んでたの?

 「ええ。それはそれは長い間」

 さいですか。

 「それはさておき。この度奇蹟は起きました。神さまの導きによって、再びパタポン族は繁栄を取り戻すのです!」

 おー!すごいぞー!かっこいいぞー!

 

 え?いやいや。導くのとかめんどくさいしいいわ。勝手にやってー。

 

 歓声を上げるパタポンを横目に見ながら、メデンは愉快そうに目を細めた。

 「分かりました。まずはこの町から攻略していけばよろしいのですね」

 ちょっと待って。待って待って。攻略って何。

 「攻略は攻略です。我らの力をもってすれば、一日もすればこの町は陥落するでしょう」

 ……。やっぱなしの方向で。

 「えー」

 えーじゃない。俺の故郷だぞ。

 「なんと。神さまの故郷でしたか。これは失礼をいたしました。仕方ありません、私たちは一度戻って作戦会議をとると致しましょう」

戻るって、どこに。

 「本の中に、ですよ」

 そういうと、メデンは絵本をばらりと開く。

 「もし御用があれば、なんなりとお呼びください。我らパタポン族は、必ずや神さまの力となりましょう」

 その言葉と共に、絵本にすう、と吸い込まれていった。どうなってんのこれ。面白っ。

 「かみさまー!またねー!」

 「ぐっばいかみさま!」

 「さらだばー!」

 そうして彼らはメデンに続き、次々と本の中へと吸い込まれていき、ついに影の一つすらなくなった。絵本の中ではまた宴会が続いているようだ……いや作戦会議は?

 

 

 いや別にいいんだけどさ。

 え、もしかして夢だった?

 両脇の太鼓が揺れるのを見るに、現実だと再認識。

 

 君ら帰らないの?

 

 太鼓に問いかけると、二つの太鼓は笑ったように大きく揺れた。

 「PATA!!」「PON!!」

 二つ声を上げると彼らも、夕日に溶けるように消えてゆく。が、パタポンたちとは違って彼らは背表紙に吸い込まれ、上下左右に振り分けられた円に吸い込まれていった。

 赤い太鼓は左の円の中で□となり、青い太鼓は右の円の中で○となった。

 

 残ったのはたった一冊の本と、少年と。

 そして、忘れ去られていた本来の目的。

 

 晩御飯、どうしようかな。

 

 すでに夕暮れを過ぎ逢魔が刻。さびれた港には明かりなぞあるまい。

 わけの分からない彼らを、さっそく呼び戻そうかしら。

 若干遠い目をした、青年の過去話だった。

 




一週間と弱ですかね。
待ってた人は待つなって言ってるでしょうに。
待ってない?それは重畳。

ちなみにプロットなんぞはありません。行き当たりばったりでござい。
期待はしないでくださいな。
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