第28話
厳重な生体認証とセキュリティチェックを終えて 超硬合金製の隔壁が開いていく。
通行証をかざしてゲートから出てきたのは、十代半ばほどの少女だった。
華やかな髪型に、センスよく飾った流行りの服装,整った顔立ちの女子高生だ しかし今は全身に疲れた雰囲気を漂わせて、せっかくの恵まれた容姿もくすんで見える。
「あああ......つ......かれたあああ......」
藍羽浅葱はそう呟いて、んぐぐっ、と力無く背伸びをしたビルの窓に反射する夕陽を眺め、寝不足気味の目元を覆う。
彼女がいるのは、絃神島のほぼ中心部 キーストーンゲートと呼ばれる巨大な逆ピラミッド
型の建物だ。周囲を武装した特区警備隊の隊員たちがうろつき、足止めされた市民や集まって
きた野次馬たちで、建物のロビーはごった返している。
島内でもっとも高いこの巨大ビルの屋上は,ほんの数十分前まで、メイヤー姉妹と呼ばれる
国際指名手配中の魔導犯罪者二人に占拠されていた。ようやくビルの封鎖が解除された今も
その影響が残っているのだ。
「ああもう、やってらんないわ。なにが哀しくて祭の日まで、泊まりがけでバイトしなきゃなんないのよ。どいつもこいつも人使い荒すぎでしょ!」
右手に握ったスマートフォンに向かって、浅葱が恨みがましく不満をたれる。それに答えたのは、弧亜であった
『悪かったな。お前とモグワイくらいしか頼れなかったんだよ』
その弧亜が、不意に声を潜めて浅葱に言う
『未登録増設人工島が出現してる。何か、嫌な予感がするんだ』
「はぁ?何?幻想郷の一部でも来たの?」
『いやぁ、そんなはずは無いんだがなぁ....』
「そんなの零とあんたで何とかしなさいよ。モグワイ貸すから」
そして浅葱は、弧亜が何か言う前にスマホの電源を切り、モノレール乗り場に向かう
「崩壊が始まったか....!」
零は呻きながらも、ポケットからペンを取り出す
「
零が呟くと、零の手にあるペンが光輝いた
気が付くと古城たちは外におり、那月は消えていた
「な!?お前のポケットどうなってんだよ!」
「うるさい!んなことより優麻はどうだ?」
「...少し安定したよ」
古城が答える前に、本人が返答する
夏音が扇子を使い、傷を直したのだ
「......天血当主権限行使・
零が告げるとほぼ同時。優麻はその場で寝息を立て始めた
「何をしたのですか?」
「優麻は魔力の使いすぎで疲れきってる。
「南宮先生はいったいどちらに...」
「その話は後だ、剣巫。阿夜が待てなそうだ」
古城が目を向けると、今まで見ていた聖堂ではなく、有刺鉄線に囲まれた建物──監獄が姿を現していた
「返してもらうぞ、娘よ」
「お母...様....?」
零は反射的にポケットから銃を取り出し、コマンドを告げる
「<
銃が電気を帯び、歪な音が響き渡る
「遅い、な。零」
「う....あああああああああっ!」
「優麻!?」
「優麻さん!?」
突如響いた優麻の声に振り返る古城と雪菜
「守護者を奪う気か!」
零が引き金を絞り、レールガンを打ち出すが、遅かった
「我とその娘は、同一の存在....。だからこそ、出来る」
古城はその場に倒れかかった優麻を抱き抱える
「チッ、他の魔導犯罪者共に今出てこられると困る。一旦退くぞ!」
零はそう言うと、転移魔術と同時にあるものを起動した
「スペル、波と海の境界線!!」
零が叫ぶと、零を中心に大量の球体が放たれる
阿夜はその威力を知るため、空間転移で逃げたようだが、他の魔導犯罪者はまともに受けた
「古城、優麻を頼むぞ。雪菜は夏音を!」
「お、おう」
「わかりました!」
「使いたくなかったが致し方あるまい。
そして古城たちは、空間に飲み込まれていった
「チッ、暴れたかったのによォ!」
シュトラDという男の叫び声が、夢から出された監獄に響き渡る