サラザール・スリザリンの憂鬱 作:サラザール・スリザリン
はてさて、あれから幾年か流れた。
魔法界はというと、相も変わらずトム・マールヴォロ・リドルが勢力を伸ばし続け、すでに日常と化していたその退廃ぶりをむざむざ私に見せつけていた。
見せつけて"いた"のだ。
こうして強調しなくても分かる者には分かるだろう。
そもそも、年単位で間を空けていたこの一人語りをわざわざしているということは、何か大きな事件があったということなのだ。
現状で千年以上生きる私の目に止まる事件だということと、魔法界の現状を踏まえれば、自ずと答えは見えてくるのである。
そう、あのトム・マールヴォロ・リドルの失墜のことだ。
今の私にとってこれほど嬉しいことはない。
奴のせいでこのところの魔法界は単調で面白みに欠けた。
なにより、知恵も策略もほとんどない実力行使など見ていてもすぐに飽きるのだ。
そして、これで私のイメージも徐々に回復するだろう。
私もトム・マールヴォロ・リドルの自爆を間近で鑑賞させてもらっていた。
あれは非常に愉快であった。
愛の魔法の、詠唱がなく、それでいて非常に強力という性質は目をみはるものがある。
今ではほとんど知られていないにしても、ホグワーツの禁書棚にはそれについての研究論文が数多く眠っているはずだ。
実際、私やゴドリック達も含めた昔の偉大な魔法使い達は、魔法と感情をつなげることで己の魔法をより高い次元へと進化させた。
ゴドリックやヘルガはそれを感覚的にやってのけたし、私とロウェナは自らの魔法理論にきっちり組み込んだ。
私はしなかったが、ロウェナは他の者にその理論を伝えていたこともある。
今でもその魔法の一部は残っている。
代表的なのは守護霊の呪文だ。
あれは強い感情を必要とするが、その分"幸福"という非常に抽象的で曖昧な感情を使うため、感情を組み込んだ魔法の中では、かなり簡単だと言える。
おそらく、そのおかげで魔法技術の衰退した今でも伝わっているのであろう。
これほどまでに有用な愛の魔法を、トム・マールヴォロ・リドルは知ろうともしていなかったのだ。
思うに、奴はただ"愛"を嫌っていたという理由だけで、この愚挙に出たのだろう。
闇の帝王とまで呼ばれる男の理解していないことが、何と多いことか。
こんなのが魔法界を握れるようになってしまった魔法界の衰退を嘆かざるをえない。
その点、ゲラート・グリンデルバルドの方はそういった選り好みをしなかった。
彼は己のためならどんなことでもやってのけたし、そもそも知識欲を満たすことに喜びを感じられる性格だった。
そして、彼は理由もなく罪を犯さなかった。
罪に対する忌避感、罪悪感を持っていた。
私が今まで知った人物の中で、私に一番似ている人物は誰かと聞かれたならば、私は一番に彼の名前を挙げるだろう。
ともかく、幾年ぶりかに私がこうして語るぐらいには、この事件は私にとって喜ばしいものだったのである。
そして何より、生き残ったあの赤ん坊のことだ。
あの子からはゴドリックと同じような雰囲気を感じた。
何か大きなことを引き起こす、それこそ魔法界を揺るがすような・・・。
それに、トム・マールヴォロ・リドルも私と同じ存在となっていた。
すぐに逃げ出したので、私に気付くことはなかったが、これからは少し注意しなければならないだろう。
そろそろ私も動き出すとしよう。
続いたらいいな。