どこにでもあるFate/のオリ鯖参戦系の他愛ないお話   作:凍傷(ぜろくろ)

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フレッシュミントってフレッシュミートと似てるよね!【挨拶】

リステリン・フレッシュミントを貰いました。
テイルズオブファンタジアにて、フレッシュミートと叫びつつ襲い掛かってくるモンスターを思い出したの。
さて、今回は日常回にござ候。
戦争らしいことろくにしてないのは大人の事情とか子供の事情とかはさておき、きっとそのー……いろいろな事情があったんじゃぜ?

そんなわけで現在の第一話キャプションの注意書き達成度。
■主人公最強✔
■原作崩壊✔
■キャラ崩壊✔
■キン肉マン大好き✔
■暴力シーン(殴る)✔
■すぐに殴る(セイバーが)✔
■キン肉マン二世も大好き✔
■家屋破壊(主に中井出とセイバーが)✔
■内臓が大量にぶちまけられる
■心臓が貫かれる
■車に撥ねられる(今回)✔
■竜巻で人間がズタボロになる(今回)✔
■人が燃える(サクラ大戦3! 巴里は燃えているか!)✔
■生首が飛ぶ
■女性が吹き飛び窓ガラスをブチ破って地面に落下する(ミレニアム)✔
■首が折れた男性が首を引っ張られ、皮が伸びた状態で引きずられる(カレン&中井出)✔
■少年少女の首を普通にゴキャアと捻る外道主人公✔
■少年が、笑顔で駆ける男女に潰される(ジャンヌ&中井出&アンリマユ)✔
■独自解釈✔
■捏造✔

あとは生首と内臓と心臓だけですね。
心臓はとってもわかりやすいかと。
ではでは、もう少々お付き合いくださいませ。


日常。それは騒がしき英霊の宴

 聖杯戦争は終わった。

 人々はまるでその事件を忘れてしまったかのように過ごし、事実、その場であった火災などの事件も、どこにも記されてはいない。

 すべては癒され、死んだ人も巻き戻されたように生き返った。

 ただ、その事件がきっかけだったかどうかはわからないが、亡くなった人は何人か居た。

 その中の何人かが少年の家族であったことにも、きっかけ、なんてものではあったんだと思う。

 士郎、という少年は衛宮の屋敷に引き取られ、しばらくはボーっとしていたものの、悪いところも特にはなく、多少あった傷も、すぐに癒しとマナの樹の影響で癒えていった。

 ……起きた出来事の記憶を、そのままに。

 

「………」

 

 家族が死んだと聞かされた時、死んでないほうがおかしいって納得した。

 あんな絶望の中をひとりで歩いて、悲鳴と、息絶える瞬間の人の声が耳にこびりつくような絶望を越えて、自分は助かった。

 クロリストって人が、そんな絶望を救ってくれたというけど、救ってもらったのに、助けられるほうがどうかしてるって思えてしまうほど、ひどい世界だった。

 そんな世界を越えてもまだ、耳を塞いでも悲鳴が聞こえる気がして、目を閉じれば目の前が焼けているような気がして。しばらくは、眠るのも苦労したし、眠ればうなされていたそうだ。

 この家に引き取られてからは、それも少しずつよくなっている。

 

「………」

 

 幸いって言えるのかどうか。

 ここには同い年くらいの子供が居て、その子達が人をほうっておかないタイプだったことも手伝って、歩けるようになってからは毎日が忙しい。

 気づけば笑えるくらいにまでなっていて、そして……そんな俺は。

 

「シロウ」

「あ……えと、アルトリアさん」

「む。シロウ、お姉ちゃんでいいと言っているでしょう」

「それ、イリヤにも言われた」

「むう。ヒロミツに人に変換してもらってからというもの、イリヤスフィールは少々調子に乗りすぎだ。背がなんですか背が。私も受肉したからには、背もこう、胸も……ハッ!? こほん、ではなく」

「うん」

「シロウ、今日の稽古はどうしますか? 基本的には毎日続けてほしいところですが」

「じゃあ、ご飯食べて少ししてからで」

「わかりました。今日もヒロミツがよい食事を作ってくれることでしょう。……今日もあのルーラーに食べられないようにしなくては。受肉してからというもの、彼女はいささか聖女という名から離れていると思います」

「俺に言われても」

「……それもそうですね。ではシロウ、今日もよい一日を」

「うん」

 

 そう言って、アルトリアは道場へ歩いていった。

 視線をその背から戻すと大きな樹。さっきまで見ていた大樹だ。

 その樹に触れると、胸が軽くなる気がした。

 家族の死に涙も出ないなんて、薄情だな、なんて思いながら……自分はきっと、もうどこか壊れてるんじゃないかな、なんて考えながら。

 

「シロウ、考え事か?」

「え? あ、ディルムッドさん」

 

 男の俺から見ても格好いいって思う人、ディルムッドさん。

 その少し後ろからはランスロットさんが歩いてきていて、道場から歩いてきたのが伺えた。

 アルトリアと稽古でもしてたんだろう。

 

「考え事っていうか…………まあ、うん。そうかも」

「そうか。あまり悩み過ぎるなよ。人生経験から言って、それはあまりいい結果を生まない」

「そう、だな。ディルムッド殿の言う通り、振り返れば振り返るほど、なんともまあ……」

「ああ……」

『はあ……』

 

 二人して溜め息。

 なにか共通する辛い事でもあったのか、「今晩、どうだ?」「是非」とか言ってる。

 こういう時はお酒を呑むらしい。大人ってフクザツだ。

 

「ギャラハッドの話をアーサー王がした時は、クロリスト殿に殺されるかと思った……」

「ギネヴィアだけでは足らんかったのかドアホウがと、我が主ながら恐怖するほどに激昂しておられたな」

「順番的には逆なのだが」

「言ったら今度こそ殺されるぞ」

「その上で生き返らされて更に、だろう。想像できる」

「……自業自得とはいえ、後悔はないとはいえ、人とは難しい……」

「まったくその通りだ……」

『はぁ……』

 

 いろいろあったらしい。

 二人は以前、敵同士だったらしいけどいろいろあって意気投合、今では一緒に酒を呑む仲らしいけど、なにがあったんだろう。

 

「………ん」

 

 気が済むまで樹に触れてから歩き出す。

 さあ、今日も頑張ろう。

 頑張って頑張って、いつか───

 

「───」

 

 決意を新たに、屋敷に振り返って歩き出す……と、玄関前で跪いてる二人と……玄関の上部にフンドシ一丁で磔にされてるクロリストさんの姿が……ってなんでさ!? え? 祈ってるの!? あれ祈ってるって言えるの!?

 

「主よ。今日も健康に一日を歩めることをあなたに感謝します」

「クロリストよ。今日もあなたにとって、そして私たちにとって、よい一日でありますように」

「ウォゴー! モゴガー! オムモー!!」

 

 磔にされているフンドシさんが一生懸命暴れてる。

 こんな状態で良い一日もねーでしょうが! とか言ってそう。

 

「? クロリスト? なにか言いたいことが?」

「《しゅるっ》ぷっは! あのねぇ! 毎朝毎朝、人を玄関の上に張り付けるのやめない!? なんだって乾布摩擦してただけなのにこげな目に遭わなければならんとよ!」

「主よ、わたしは学びました。それは神・オムツという礼装なのでしょう?」

「真顔でなんてこと言うの!? てかジャンヌ! 主よ主よ言って神扱いするのやめて!?」

「いいえ。わたしは神を信じます。人を救えぬ神です。けれど、そんな神がようやく手を差し伸べてくれた。わたしにとってのそれがあなたです、ヒロミツさん」

「いやちょ───」

「それに、わたしは聖杯ではなくあなたの剣、すなわちあなたの一部を拠代に呼ばれたのですから。わたしはあなたの旗を掲げ、主とともに在りましょう。大丈夫です、ドリアード様とは話をつけてきましたから」

「いやああああ聞きたくない聞きたくない!」

「……聖女を安心させて、一時だろうと農家の娘に戻した責任。取ってもらいますから」

「ゲッ……ゲェエエーーーーーッ!!」

 

 責任云々を言われると弱いみたいだった。

 大人って怖い。

 

「よぉ見とくんやで士郎……大人になるって、こういうことさ……!」

「俺、にーちゃんみたいにはなりたくないかも……」

「なにを言うのですかシロウ! クロリストは……ああ、ええその、このようにはならなくていいとは思います。ええ」

「だったら乾布摩擦に戻させて!? ドッスィー(フンドシ)のままはりつけとか、ある意味で神・オムツより恥ずかしいでしょうが! ていうか肖像画みたいなので神が履いてるあれってほんとなんなんだろうね!?」

「? 神・オムツでは? 動画でしかと見ましたが」

「ジャンヌちゃんキミ綺麗な顔でなんてことを……」

 

 動画の中でその現人神が車に轢かれてそうだった。

 

「さあ祈りも済みました。まあ既に破門された上、聖人として認められてなお破門は撤回されぬままのわたしですから、もはや神に祈ることすら許されないわけですが。わたしの信じる主は、常識破壊が常の外道らしいので。というわけでヒロミツさん」

「な、なにかな?」

「…………お腹が空きました……っ……!《かあああ……!》」

「キミほんと、無駄にアルトリアと似てるとこあるよね」

「そんなことは知りません。人が狙っていた肉団子を横から奪うような王など。まったく、あの王はまったく」

「……まあそげなわけだから、カレン? 下ろして? 下ろしてくんなきゃ、聖骸布ぶっちぎっちゃうゾ☆」

「それは困ります。けど、言いはするけど実行に移さないクロリストを信頼しています」

「そりゃ大事なものは大事にせんと。たとえ直るとしても、破かれたって気持ちは残るからね」

『…………《ずぅうううん……》』

「え? …………ア、アーーーッ!! いやいや破かれたってそっちの意味じゃなくてね!? ごめんなさいほんとごめんなさい! 僕ちょっとデリカシーとかなかったね!」

「……い、いえ、構いません。既に癒してもらいましたし、その上で穢れまで落としていただけたのなら」

「救われたという記憶が作られただけでも、クロリスト、人とはとても救われるものなのです」

 

 感謝を、って言って、二人は祈るような姿勢で目を閉じた。

 ……せっかく下ろしたクロリストさんを、もう一回玄関の上に張り付けた上で。

 いーから下ろせー! って言ってるクロリストが印象的だった。

 

「元気だなぁ」

 

 屋敷内に入ると、そこでもまた元気な声。

 イスカンダルさんがレースゲームでウェイバーさんに負けたようで、「もう一度だ坊主!!」と叫んでいた。

 このウェイバーさん、ちっとも戻ってこないえーと……ケイ、ネス? さんを迎えに行ったらしいんだけど、すっかりヒロラインに根を下ろしちゃったらしいその人は、聖遺物も奪われ令呪も奪われ参加すら出来なかった自分に、今さらどんな顔をして戻れというのかと言って追い返したらしい。

 なのでウェイバーさんが時計塔に戻って、いろいろ説明することになった───んだけど、ここでクロリストさんの悪戯が炸裂。

 聖杯戦争の勝利者がウェイバーさんってことにされていたらしくて、しばらく戻ってこれなかった。

 暇を見つけては一緒に行ったクロリストさんが、転移でこっちに連れ戻してたけど、面倒なことになったとかでヒロラインに籠って、ロードエルメロイなんたらっていう本を作成、それを提示すると、いろいろと治まったとか。

 代わりにロードエルメロイ二世って呼ばれるようになって、「キャー! ロードエルメロイ二世よー! ステキー! 抱い《バゴシャア!!》つぶつぶーーーっ!?」その怒りをクロリストの顔面を殴ることで発散していた。

 

「ま、いいではないか。これで貴様もきちんと認められたわけだ。誰の手柄でもない、貴様が駆けたからこそ認められたものだぞ?」

「……なんか納得いかないんだよ。結局ケイネス先生を騙すみたいな形で手に入れた地位じゃないか」

「いつの世も、誰ぞが何者かを蹴り落とすことで、人は上に立つものだろう。上に立ったなら胸を張れ馬鹿者。余とともに駆けるのであれば、まずはそうした前に立つ者、教え導く者としての在り方も学ばなければなぁ」

「はんっ、言っておくけどなぁ、僕はいずれ講師となってくれって頼まれてるんだ。言われるまでもなくそんな自分になってやるさ。……いや、違うか。こういう自分も卒業しなきゃだな。教えるヤツがちょっとのことで冷静さを欠いてちゃ、ケイネス先生のことを悪くなんて言えやしない」

「ほほう? はは、おう、それでよい。既にあるものに倣いすぎてつまらん大人になぞなるなよ坊主。既存なぞ破壊してこそ王道よ。常に新しい己で挑んでゆけ」

「───ああ。彼方にこそ栄え有り」

「おお。届かぬからこそ挑むのだ。強く逞しく、そして器を大きく成長せよ、ウェイバー・ベルベット。我がマスターよ」

「やってやるさ、震えて待ってろイスカンダル。我が王よ」

 

 示し合わせたわけでもない。

 同時に突き出した拳が、ゴッて音を立てて……二人は笑った。

 それはたぶん、マスターだとかサーヴァントだとか、主従とかを越えた、友としての笑みだったんだと思う。

 

……。

 

 食事はみんな一緒に。

 まるで旅館の食事のように、卓を分けての食事になる。

 卓によってはギスギスしてたりラブラブしてたりする。

 切嗣の卓は女性で溢れ、雁夜さんの卓はラヴラヴしてる。あそこだけ初々しいカップル空間だ。俺から見ても恥ずかしい。

 間桐雁夜さんはサーヴァントを恋人に持つという、凄まじい人だ。

 どんな経緯が会ってかは知らないけど、幸せそうだ。

 遠坂って人となにかがあったらしいけど、俺が引き取られる前に遠坂って人はここを出ているから、俺とは面識がない。

 

「《はむっ……きゅっ》……いい漬かり具合です。今日も素晴らしい腕前です、ヒロミツ」

「はっはっは、漬物は米が進みまするなぁ。あ、このザイード、おかわりをいたすが、他におかわりを所望の者は?」

『わたしに───む』

 

 さて。食事となると、結構うるさいのがアルトリアとジャンヌだ。

 ザイードへ、ズイと差し出した茶碗にあった筈の白米は、すっかりなくなっている。

 そんなジャンヌさんの服装は……アレだ。

 普段の礼装はごっちゃりしているのに対して、普段着となった服は随分と……うん。

 ノースリーブだっけ。聖女だって言われてるのに、肩とか普通に出してる。クロリストと一緒に買いに行ったらしくて、随分気に入ってるみたいだ。

 ウェイバーさんが目のやり場に困るって言ってた。もうちょっと自分のスタイルとか考えて服着ろよ、とも。

 ……アルトリアが時々ぐぬぬって言ってるくらい、綺麗で立派。どこがとは言わないけど。

 ジャンヌさんといえば、側近? 信奉者? としてジルって人が居たらしいけど、いろいろあって空いた教会で神父として奉仕活動を言い渡されたらしい。

 そこでジャンヌ・ダルクの素晴らしさについてを説きまくっているそうだ。大丈夫なんだろうか、その教会。

 

「ジャンヌ……ふふ、聖杯戦争には途中から参加したくせに、よく食べますね」

「主より授けられる糧を残すことなど出来ませんし、食欲に参加時期は関係ありません。なにより美味しいものは心にとてもやさしい。食べない理由がありませんから」

「それについては同感ですが───アサシン、私のご飯を先に」

「いいえザイードさん、わたしのご飯を」

「え? あ、いえあの……最速でよそるので、どちらが先で競うことはせずとも……」

「ヒロミツの食卓の掟に従い、米無き者におかずを食べることは許されないのです! 大体何故個別におかずを用意してくれないのです! 纏めて出されては、こうして争うしかなくなるではないですか!」

「分けたらキミらが、やれジャンヌのハンバーグの方が大きいとかアルトリアのステーキの方が大きいとか言い出したんでしょーが!!」

「うぐぅ! けれどですよヒロミツさん、こればかりは、あなたの料理がとても美味しいのが……その……!」

「そうです! ヒロミツが悪い!」

「いい度胸だ明日の朝刊載ったぞテメー!! 表出ろコナラー!!」

「えぇええええ!? 何故そうなるのですか!」

 

 食事風景は大体やかましいというか賑やかというか。

 よせばいいのに二人同じ席に座るもんだから、いっつもこんな感じだ。

 ……まあ、そこの席のおかずが一番山盛りだから、そこに座るんだろうけど。

 クロリストも狙ってやってるんだろうなぁ。

 

「ジョワジョワジョワ出る気がねぇっていうなら容赦はしねぇぜ~~~っ!! トタァーーーッ!!」

「! 凝りもせずまたマッスルミレニアムですか! 生憎ですねヒロミツ! その技はもう見切らせてもらいました!」

「なっ、なにをぬかす~~~っ! これはマンターロがなんかボコボコにされながら編み出した技だ~~~っ! ちょっとやそっとで破られるものか~~~っ!!」

「だから甘いと言っているのです! そんなものは───キン肉マン二世を読めば容易く破れるというもの!」

 

 取っ組み合いを始め、クロリストがアルトリアを掴み、巴投げの要領で天井向けて彼女を投げる。

 すぐにクロリストは次の行動に入って───

 

「そりゃーーーっ! マッスルミレニアムーーーッ!!」

「知りなさいヒロミツ……常勝の必殺技などないということを!!」

 

 クロリストが壁を蹴って、弾丸めいた速度でアルトリアの背中目掛けて飛翔。

 対するアルトリアは背を向けたまま、ブリッヂの要領で体を逸らして、なんと両手と両脚でクロリストの頭を掴んで見せて───!

 

「アッ……ウォアァア~~~~~~~ッ!!」

「ふふふふふどうですかヒロ《どがしゃああああんっ!!》ぴぎゃああーーーーっ!!」

 

 それはそれとして、そのまま突っ込んだ。そりゃそうである。そんなもので勢いが止まれば苦労はしない。

 どごしゃっ! ごしゃっ! バキベキゴロゴロズシャーーーアーーーッ!! ………………グビグビ……。

 障子と窓ガラスを破壊して、豪快に転がり滑っていった二人を見送った。

 その後彼は、のそりと起き上がった最優のサーヴァントの拳でボコボコにされた。

 あの人、一日に一度はどこかで必ずボコボコにされてる気がする。

 主にアルトリアをからかって。

 大体いっつもマッスルミレニアムをしかけるけど、あれ実際にやったら首折れると思う。

 実際毎回、首が妙に曲がってて、その所為でグビグビって謎のロビン汁とか吐き出してるし。

 

……。

 

 食後しばらく。

 約束通り道場に行くと、

 

「真剣勝負! 一本目! 始めっ!」

 

 ジャンヌさんが中心に立って、相対するはクロリストとアルトリア。

 どうやら試合をする瞬間に来てしまったようで、開始の合図を受け取るや

 

「うりゃっ! 目潰し!《バゴシャア!》つぶつぶーーーっ!?」

「いきなり目潰しを仕掛ける馬鹿がどこに居ますか!!」

「え……え? ひ、博光ですが……?《ズキズキズキズキズキ》」

「……あなたという人は……!」

 

 目潰しを仕掛けた途端に思い切り左頬を殴られて、泣き崩れた女の子ポーズ的な格好できょとんとするクロリスト。いや、それよりも頬がすっごい痛そう。涙流してる。

 

「ジャンヌ! こんな外道を主と崇めていいのですか!? あなたそれでも聖人ですか!?」

「主とは、神とは信じるものですよ、アルトリア。神は神という名の存在ではありません。わたしの知る神は、自由で外道だけれど人を救える楽しい人です」

「ジャンヌ……」

「それと。わたしを聖人と呼ばないでください。わたしは、今も昔も農家の娘です。ただ、神を信じた愚かな娘だったのでしょう。そこに悔いはありません。歩いた道に、貫いた気持ちに。だからこそ、これからは悔いも感謝も抱きます。過去のわたしが聖人として認められたのなら。わたしは、聖人としてではなく一人のジャンヌとして、この生を謳歌します」

「…………」

「あの。……いい、ですよね? ヒロミツさん」

「ウヌ! やっぱり楽しむなら自分としてじゃないと! というわけでアルちゃん! ……どこからでもかかってきなさい」

「え? あ───ちょ、ちょっと待ってください! 先ほどのは一本では!?」

「コココ……! 誰が一本と言いおった? 宣言されてないからまだ一本もないよ?」

「なっ……ジャ、ジャンヌ!」

「そうですね、一本です」

「ゲェエエエーーーーーッ!!」

 

 馬鹿正直だった。

 崇められし主が、ぜんぜんまったく神々しくない悲鳴をあげるくらい。

 

「マニマニマニマニマニ! そういうことならもう容赦しねぇぜ~~~っ!!」

「ちょっ……やめてくださいヒロミツ、貴方がおかしな笑いをした時は、大体ろくなことが起こらない」

「しっ……失礼な!! これから一戦交えようってのにそんなことでどうするか!」

「む……言う通りです。では」

 

 アルトリアが竹刀を構える。

 一方のクロリストはなにも持たず、妙な構えで立っていた。

 

「ヒロミツ。先に二本取れば、好きな料理を好きなだけリクエストしていい約束でしたね」

「うむ。で、俺が勝ったらキミにステキなあだ名をつける約束」

「……本当にそれでいいのですか? 私にあだ名など、別に私にとっては喜ばしいことですが」

「……、……《こくっ、こくっ》」

 

 ジャンヌが頷いてる。つけてほしいのだろうか。

 

「え? ほんと? じゃあ勝ち負け関係なくつけるよ?」

「ええ。ただ、どういったあだ名なのかくらいは教えてください。その上で───」

「じゃあフレンドリーに───一手よろしくな! 秘湯混浴刑事(ひとうこんよくデカ)エバラ!」

「全力でブチ殺します《コォオオオシャキィイーーーン!!》」

「ゲゲェ完全武装だぁーーーっ!! ジョワジョワジョワ、だがこの俺が勝てば貴様はエバラよ! エバラ! このエバラ! エバラめが!!」

「その言葉───勝ってから言ってもらおう!《クワッ!!》」

「ゲェーーーッ!! 口調まで本気だこの騎士王! フ、フフフよかろう! 精々油断せんことだなぁ! 油断すれば貴様は即エバラよ!」

「“約束された(エクス)───!!」

『ちょっと待てぇええーーーーーーーーっ!!』

 

 クロリストとジャンヌが、喉が張り裂けんほどの悲鳴の如く叫んだその日。

 俺は、金色の太陽を間近で見た。

 

───……。

 

 子供は風の子元気の子。

 

「ヒロミツさんヒロミツさん、あそこの子供がやっているのはなんですか?」

「ほっほっほ、ジャンヌや? あれはねぇ、石投げといってねぇ」

 

 過ぎる時の中、家にこもってばかりなのはいけないと、外で遊ぶベーと誘われた日。

 今日もジャンヌはクロリストの隣で笑顔である。

 寒くなった今、さすがにノースリーブじゃなくて温かい服装をしている。

 これもクロリストの贈り物らしくて、もらった時なんか一日中にっこりしていた。

 それでも食事の時はアルトリアと喧嘩してたけど。

 

「石投げ、ですか。なるほど、つまりヒロミツ、あれは投げた石が何回水面を跳ねるか。それを競う遊びですね?」

 

 そして、ジャンヌとクロリストあるところにアホ毛王在り。

 キミもいい加減女らしい格好しなさいと、クロリストにコーディネイトされた服装は随分と似合っている。

 髪も下ろさせられて、なるほど、女の子って感じだ。

 

「丁度先ほどの子供も去ったようですし、湖の加護を得た私の石投げの技……とくとご覧あれ!」

 

 アルトリアさん第一球投げた!

 ……水がどぱぁんと弾けた。そして直撃したらしい魚がプカーと浮いてきて、川に流されていった。

 

「………」

「今日のアルちゃんの晩飯、アレね?」

「ヒロミツ!?《がーーーん!》くっ……い、いえ、殺生してしまったのなら、せめて血肉にしてやらねば……! 獲ってきます……!」

 

 湖の加護を得たアルトリアが川の水を踏みしめ、魚のところまでを駆けると、それを引っ張り上げて戻ってきた。

 するとすぐにクロリストが凍結、保存をしてくれた。

 あ、ちなみに石投げは、続いて俺が。

 

「え、っと……なるべく平たい石を……よしっ」

 

 構え、横投げで、回転を加えて……投げるっ!

 ……、……4回。普通だ。

 

「むぅっ……! シロウは4回ですか。ではその……」

「わたしの番ですね」

 

 次にジャンヌ。

 適当な石を拾うと、大した迷いもなくシュピっと投げて……三回で沈没。

 なのににこーと笑顔でアルトリアを見た。

 アルトリア、ぐぬぬ。ようするにアルトリアに勝てれば問題なかったようで。

 

「ひろっ……ヒロミツ! やり直しを要求します! こんな筈ではなかったのです! 本当ですよ!? 湖の精霊の加護を得た私が、まさか水での勝負で負けるなど! ……ヒロミツ?」

「ジョワジョワジョワ! 石なんぞで満足するなぞ正義超人ってのは甘ちゃんだぜ~~~~っ!! 僕ならそう───己!!《どーーーん!》」

「えっ……ヒロミツ? え?」

「アルトリア、知りなさい。遊びとは常に進化するものなのですよ。石を投げて跳ねさせて遊ぶ……? ノン、時代は己。己を回転させ、水を弾いて進むのです《にこり》」

「いえっ、あのっ、ヒロミツっ!? いい笑顔で言っても、あなたがジョワジョワ言った時点でそれは失敗すると───」

「バカモン! やる前から失敗するだなんて言ってどうします! そう、僕らはこれを機に進むんだ。人として。やる。やれる。やるからね、僕は。……博光です《脱ギャアーーーン!!》」

「脱がないでください!」

 

 なんでか服の上を肌蹴て上半身を見せたクロリストは、ニコリと笑って早速行動に出た。

 石を投げる場合、ともかく平べったいことと回転がものを言う。

 つまり、人体でやる場合も重要なのは横回転の速度であること。

 それを説くと、彼は回転を始めた。

 

「そりゃー! 忍法光輪渦斬(こうりんかざん)ーーーっ!!《ギュイイイイイイ!!》」

 

 おお、見よ! クロリスト=サンはただ回転を始めたのではない! 宙に浮き、四肢を伸ばして回転することで、己をスリケンに見立てたジツを完成させてみせたのだ!

 空気を裂くチェーンソーめいた高速回転!

 その回転速度は留まることを知らず、やがて空気を巻き込み、トルネードのように塵を吸い込み、ついには本当に竜巻になって、ってうわぁあああっ!?

 

「ヒロミツ!? ヒロミツーーーっ! やはり失敗です! というか川にも向かわずなにをしているのですか貴方はーーーっ!!」

 

 言っている間にゴミとか木の枝とかが吸い込まれていって、すっかり砂の色に埋もれた風の壁の中で、ジョリャリャベキバキゴシャメシャって音がして「ギャアアーーーーッ!!」…………クロリストの悲鳴が聞こえて、やがて風は治まった。

 

「………」

「………」

「………」

「グビグビ……」

 

 で、案の定。巻き込まれた木の枝やゴミなどでボロボロになったのち、地面に落下して大地を抉ってミステリーサークルならぬヒロミティックサークルを作った彼は、ズタボロ状態で謎のロビン汁を吐いて痙攣していた。

 

「ひ、ヒロミツ、さん……? 平気なのでしょうか……」

「だ、大丈夫だよ!? 僕強い子だもん!《シャキィンッ!》」

 

 あ、起きた。

 でもやっぱりボロボロでボコボコだった───のに、それもシャキンと一瞬で回復。

 

「いや、言っておくけどこれ失敗しただけだからね? 川に向かって飛んでないからノーカンだから言っとくけど」

「ヒロミツ、やる前から失敗が目に見えているので、もうやめておいたほうが───」

「うるさいやい! 一回でも跳ねればアルちゃんには勝てるんだから、今度こそ貴様をエバラと呼んでくれるわ!」

「それはまだ続いていたのですか!?」

「ヒューホホホホ!! ではゆくぞ輝かしい回転伝説! そりゃー! 忍法光輪渦斬ーーーっ!!」

 

 おお、ゴウランガ! ゴウランガ! 彼は一度の失敗程度では挫けなかった!

 今度は川へ向かって勢いよく駆け、歩法奥義とやらを実行!

 弾丸めいた速度で走り、その途中でワザを実行!

 高速回転しながら川へと跳んだ彼は、その着水一度目で川から飛び出た岩に足の小指から高速で激突!

 「ッ───キィイイイイャアアーーーァアアアッ!!」と、聞く者全てが痛みを感じてしまうほどの悲痛な声を上げ、しかし水ではないにしろ確かに一度は弾き、前へと進んだのだ!

 その勢いのまま向こう側の岸へ乗り上げ、地面を弾き、あさっての方向へ跳んでゆくベイブレードのように道路へ飛び出て、ドグシャアとトラックに撥ねられた!

 

「ヒロミツーーーーーっ!?」

「わわわわわ主よぉおーーーーっ!?」

 

 場面が場面ならどこぞに転生してオリ主でもやってそうなのに、彼はそのままキュリキュリと錐揉み回転して吹き飛ぶとドゴォと電柱に激突。

 それでも勢いは止まらず再び横回転に移行して、反対車線の車にドゴォと撥ねられた。

 

「………」

「………」

「………」

 

 おお、向こう岸が阿鼻叫喚。

 キャーとかうわぁあとか悲鳴があがる中、彼は普通に「わはははは! アルちゃんに勝ったちょー!」とか、春巻先生のように言って、笑顔で走って戻ってきた。

 

「貴方はぁああーーーっ!! 自分の行動で他人に与える影響を少しは考えろとぉおーーーっ!!」

「大丈夫! 特撮じゃよー! って言ったらみんな納得してくれたから!」

「えぇええええっ!?」

 

 見れば、確かに向こう岸にはもう日常が戻っていた。

 ええ……? それでいいのか日本。

 

「ホホ、なにせこの博光は忘却で出来ておるからのう。それよりさアルちゃんアルちゃん!」

「な、なんですかヒロミツ……私は」

「よろしく! 秘湯混浴刑事エバラ!」

「───」

 

 彼は手を差し出した。

 アルトリアはその手を拒んだ。

 そしてジャンヌは裁定する。

 一度も“水”は弾いていないので引き分けとする、と。

 

「い、いやでもいろんなもの弾いたよ? 主に僕の大激痛な部分とか。足の小指とか死ぬかと思った」

「だめです」

「で、でもね? ジャンヌ? でもね?」

「だーめーです」

「美味しい料理いっぱいつくってあげるから、ね?」

「だ~め~で~すっ」

「グ、グゥムッ……!」

 

 だめだった。

 裁定を前に、彼女はどこまでも公平であった。

 

 

───……。

 

 

 リンゴォーーーッ! リンゴォーーーッ!!

 

「ィヤッハッハッハッハッハ!! メリィクリスマス!!」

 

 ある聖夜。

 どうしてかリンゴォとしか鳴らない奇妙なベルを鳴らしながら、クロリストがサンタの格好をして予行練習をしていた。子供に見つかってるのに練習もなにもないもんだけど。

 「日本のクリスマス……確か子供にプレゼントなどを与えるのでしたね」って、妙にうきうきしていたジャンヌが印象的だった。対してクロリストはまたアルトリアをからかって、殴られて顎を破壊されて悶絶してうきうき言ってた。

 当然というべきなのか、他の子供には内緒らしい。

 俺とジャンヌはクロリストの部屋に入り浸ってたから、そもそもサンタチームに入れられてたみたいだ。

 クロリストにからかわれたアルトリアも、事情を知るや「そういえばクリスマスとやらでしたね」と頷いた。

 今気づいた、って口振りのわりに、咄嗟に隠したプレゼント入れ用の靴下がやけにデカかったのが、また、なんとも。

 

  そんなわけで、今日は聖夜、クリスマス。

 

 みんなが寝静まるまで待って、クロリストは早速行動開始。

 何故か老人姿になったクロリストが爆肉鋼体って能力でムキムキマッチョになると、ミッション:お子の枕元や、サンタを信じる者に魂の救済を! じゃなくて、静かに気づかれず、プレゼントを置いてくること、を開始した。

 

「ヒロミツさん……みんな、眠ったようです……」 

「サンクス、ジャンヌ。どおれ今日は盛大にプレゼントしてやるとするか~~~~~~~っ!!」

 

 俺とクロリストとジャンヌは、サンタ衣装で夜中の衛宮邸を歩く。

 各部屋の子供や、苦労してきた大人たちに、プレゼントを、というのがクロリストの考えらしい。

 こういうところは、なんというか……友達で仲間で家族って言葉って、眩しいって思うんだ。

 

「《ゴゾォ……》WRYYYYY…………!!《ゴキベキバキボキゾルゾルゾル……!》」

(空気供給管にィイーーーッ!!)

 

 うん、でも人の部屋に入るサンタとしては大失格だと思う。

 少し開けた引き戸から、ゴキベキと関節を外して細くなって侵入した。それサンタじゃなくてサンタナだよクロリスト。一応ノリよく心の中で叫んではみたけど。

 ともかくそんな無駄な行動をしつつ、その先で再びゴキベキと身体を戻すと、いざプレゼントを置こうとして

 

「《ザザッ!》───! このディルムッドの寝首を掻こうとは───! 貴様、何者」

「パウッ!」

「《ドボォ!》ゲブゥ!?」

「フン」

「《ゴキャア!!》オゴァ!?」

 

 ……ゴドシャア。

 クロリストの侵入に気づいたディルムッドさんが素早く起き上がり、構えた途端にツェペリパンチが彼の鳩尾を襲った。

 次いで首をゴキャアと捻られると、彼は力なく膝から倒れ、動かなくなった。

 

「ふぅヤベェ……! もう少しでこのサンタの正体がバレるところだったぜ……! 子供の夢は守らねば……!」

「ヒロミツさん……!? 正体がどうとか以前に行動が外道すぎます……!」

「え? そ、そう? そんな照れるな……《テレテレ》」

「いえ褒めているのではなくて……!」

 

 こんな惨劇のあとにも、きちんと小声で言うジャンヌはすごいと思う。俺は、なんというかもう言葉もない。

 そんなわけで、気絶したディルムッドさんの傍にソッとプレゼント。

 「いつもありがとうね」と感謝したのに、先ほど見た光景の所為でちっとも感動的じゃないのはさすがクロリストだった。

 

「じゃあちゃっちゃといこうね! よぅし次は───」

 

 俺とジャンヌはただ、これから向かう部屋で眠る人が、どうか気配に敏感だとかそういう方向に長けていないことを願うだけだった。

 ……まあ、無理だったけど。

 

『ディルムッド殿が襲わ』

「寝ろこの野郎!!」

『《ゴバキャア!!》はごぶっ!?』

 

 ランスロットさんの部屋に行くと、甲冑を装備して待ち構えていたランスロットさんが───確認された刹那、クロリストが目にもとまらぬ速さで移動。思い切り振り抜かれた拳が彼の兜を破壊。ジャンヌの話だと、スキル・アーマーキラーが発動したらしい。

 ランスロットさんは畳に殴り倒され、動かなくなった。

 

「サンタを前に眠らず待つとはなんと不届きな! このたわけが!」

 

 それでもソッとプレゼントを置いて、次いくべーと笑顔で言った。

 ……姿がマッチョ老人な所為で誰も気づかないとはいえ、大丈夫かなぁこれ。

 

  そんなこんなで。

 

「……、んん───? 誰……? あ……わあ……! キリツグ、サンタさんが《ゴキャア!!》うぴぃっ!?」

 

 各部屋にマッチョサンタが寄る度に気絶者は増えた。

 

「だ、誰───」

「サミング!」

「《ゾブシャア!》痛ァアーーーーーッ!?」

「っ……!? 誰!? ここでなにして」

「ずえりゃあ!」

「《ドゴドガァン!!》うぴぃっ!?」

 

 厳密にいえば、イリヤ姉ぇが輝く瞳でサンタを見つめれば首を捻って気絶させ、トイレに起きたアイリスフィールさんには目潰し。のちに当て身で気絶させ、丁度やってきたシャーレイさんをぶちかましで壁画にするなど。

 およそサンタがすることではない行動をとって、けれどきちんとプレゼントは置いていく。

 せめてこれだけはしないと、誰も救われないし。

 

「ふぅ……サンタも楽じゃあねぇぜ……! やはり子供にはサンタは居るって信じてもらいてーからね」

「今頃夢も希望も粉々になってると思うぞ……」

「ウフフ、やだなぁ士郎ったら。だから僕らが行くんじゃないか」

「いや……行ったからボロボロって意味で」

 

 ちなみに征服王と英雄王の枕元には普通に置いていけた。

 いちいち小さい音を気にする器ではないらしい。

 そういうわけで、幾度の犠牲と困難を乗り越え、最後───アルトリアの部屋なわけだけど。

 

「靴下デカかったからね、きっと楽しみにしてるに違いねー」

 

 もうあとは野となれ山となれだった。

 だって俺達がツッコんだってあいつ、止まらないし。

 一応は侵入は静かに、すっと引き戸を開けての侵入となった。

 ───が、まあ当然ながら起きているわけで。

 

「───! 来ましたね……貴方がサンタク・ロース……! 赤の外套に、老人だというのにその筋肉……名に“突撃(ロース)”の名を冠するだけはありますね……!」

「………」

 

 あ、クロリストがこっち見た。

 どうすればいいの? って感じで戸惑ってる。

 突撃を仕掛けて気絶させようにも、アルトリアは木刀を構え、油断なくそこに居た。

 ……なんでだろ。いや、あれだけやかましくしたんだから、起きてるのはわかるんだけどさ。

 

「子供には無償で贈り物をし、大人にはその突撃に耐え、認められた者にのみ贈り物をするというサンタク・ロース……! そのっ……わ、私も、王たる身ではありますが、そういったものは参加した経験がなく……! これがせめて、よい聖夜になればいいと思っています……! では、そのっ……! セイバー、アルトリア・ペンドラゴン! いざ、聖夜の試練に挑ませ頂こう!! はぁああーーーーっ!!」

 

 だめだ話にならない! アーサー王はやる気だ!

 これにはさすがのクロリストも驚き───ってなんで普通に迎え撃って戦闘してるの!?

 

「《ごかぁんっ!!》……っ……!! つ、ょ……!? くぅっ! まさか現代にこれほどの達人が───!!」

 

 しかも圧してる!

 高速で振るわれるアルトリアの木刀での攻撃をズパパパパパパァンと手で弾いて、その上で殴りかかったり蹴りを繰り出したり。

 振るった拳を木刀で受け止められて痛くないの!? とか真剣に驚いてたら、クロリストの姿が消えた───次の瞬間。

 

「分身烈風拳ーーーっ!!」

「なっ!? 分身し《ぐしゃあっ!》っ……!!」

「ぬう!?」

 

 マッチョサンタが四人に分裂、四方から振るった拳が四つ重なり、その下で身を屈めたアルトリアが表情を驚愕の色で染めていた。

 

「なんと見事な……! まさか分身まで……! ───もはや老人と侮るのは失礼と受け取りました。───いきます!」

 

 驚愕を拭い去るや、疾駆。

 袈裟、突き、払い、斬り上げ斬り下ろし───だ、だめだ見えない……!

 見えないのに、クロリストはそれを素手で弾きまくっている。

 

「体術をここまで昇華させるとは───! だが侮ってもらっては困る!」

 

 アルトリアの攻撃がより一層に過激になる。

 でも、サンタはそれを弾いて避けて逸らして受けて、どんどんと速くなる攻撃に真正面から立ち向かっている。

 攻撃をしては躱し、攻撃をされては弾き、避け、一進一退の攻防は続く。

 癒しとマナの効果で疲れてもすぐに癒されるから、体力なんて無限っていっていいほどだ。

 それにしたって呆れるくらいの速度での攻防。

 これ、決着つくのかな、と思ったら、

 

「喝!」

「《メゴシャア!》───!?」

 

 アルトリアの木刀が折れた。

 身を回転させての袈裟の大振りに、拳を合わせたのだ。

 そして、その驚きの隙を縫うようにアルトリアの足が水面蹴りで弾かれる。

 体勢を立て直す間もなく尻もちをついたアルトリアは、すぐに立とうとするもその眼前に“ズパァンッッ!!”と空気が弾ける音とともに音速拳が寸止めされるや、息を飲んで止まった。

 

「ほっほっほ、見事な戦いじゃったぞぃ、お嬢ちゃん」

「……《ムッ》……ま、まだ出来ます! まだ負けたわけでは!」

「おや。せっかく良しとしたのに、お嬢ちゃん、プレゼントはいらんのかい?」

「うぐっ……いえ、欲しいですが、騎士として、騎士として……!」

「ほうかほうかぁ……残念じゃのぉ……。お嬢ちゃんが喜ぶと思って、とびっきりのライオンのぬいぐるみを用意したんじゃが……《ゴソリ》」

「!? らっ……ラ───!?」

「相解った、お嬢ちゃんの実力判定は取り消しじゃ」

「ぇっ……あ、ぁぅっ、あのっ、そのっ……」

 

 ゴソリと白い袋から出されたライオンのぬいぐるみに、きゃらんと目を輝かせるアルトリアだったけど、それもすぐに袋の中に戻された。

 そうなるとおろおろし出すアルトリア。

 ……ライオン、好きなのかな。

 

「ではヌシの力、存分に披露されませい!」

 

 サンタが構える。

 しかしアルトリアはおろおろと迷いを見せ、それを断ち切るように首を横に振るんだが、視線は白い袋に釘づけだった。

 そんなアルトリアが、頬を染めながらもじもじして、ついに質問を飛ばす───!

 

「あのっ……も、もう一度力を見せれば、ぬいぐるみ───」

「だめじゃ《どーーーん!》」

「───!?《がぁあああああああああああああん!!》」

 

 ……あ。

 この世の終わりみたいな顔になった。

 

「なぜです! なぜっ……! いいではありませんか! やることは同じなのですから!」

「だめじゃ《どーーーん!》」

「お願いです!」

「だめじゃ《どーーーん!》」

「お願いですっ!」

「だめじゃ《どーーーん!》」

「お願いです!!」

「だめじゃ《どーーーん!》」

「~~……《ぷくー……!》」

 

 あ。頬膨らませた。

 

「ならば……ならば! 倒してみせれば文句はないのでしょう!」

「やってみろ! このサンタに対して!!」

 

 そうして本格的なる戦いは始まった。

 アルトリアも素手で挑み、しかし本気になったのかどうなのか、クロリストサンタはアルトリアの攻撃をやはりズパパパパパパァンと弾き落とし、隙が出来れば寸勁を叩きこんだりして圧倒してゆく。

 やがて─── 

 

「成敗!!《どーーーん!!》」

「《しゅうううう……》…………」

 

 アルトリア、敗北。

 肩で息をしながらうつ伏せで畳に転がり、起き上がろうとするもそれも叶わず。

 癒しとマナが溢れるここでも立てないくらいって、どれだけ全力でやったのさ……。

 

「ではなぁ嬢ちゃん。また来年頑張れや」

「っ……~~~……!!」

 

 去ろうとするサンタに、アルトリアはぷるぷると手を伸ばす。

 いや、サンタっていうか、彼が持っている白袋に。ようするにライオンのぬいぐるみに。

 どんだけ好きなのさ。

 

「おっと、しかし良い戦いをさせてもらったし、なにかお礼をせねばならん」

「……!《ぱあああ……!!》」

 

 ああ。あっさり無邪気な子供の顔になった。

 根っこのところは少女より少女らしいのかもしれない。

 

「ではこの邪神モッコスのご神体を《ゾルァ》」

「!?」

 

 そんな彼女の少女らしさが驚愕に変わった。

 ゴゾリと出されたのは、モッコス、と呼ばれた奇妙な人形だったのだ。

 なんというか、ずっと見ていると呪われそうな顔をしていた。

 

「おやおやホッホッホォォォォッ、こんなに大きな靴下を用意しおって~~~っ! 受け取る氣満々じゃのォォォォ~~~~ッ!!」

「……! ……!!《ぶんぶんぶんぶんぶんぶん!!》」

 

 呼吸が荒れすぎている所為か、上手く喋れず、とにかく首を横に振る。

 そんな彼女の驚愕なんぞ無視し、クロリストはわざとモッコスの視線が常にアルトリアに向くようにズチャアアアアアと取り出した。

 

「フフフ、ほぅら、物凄い造形じゃろう? このご神体、なんと喋るんじゃ。最近の若いのにはこんなものがウケとると聞いてのぉおお」

『《キチチチチ……》…………ワレヲ……アガメ……ヨ……』

「!? !?《ぶんぶんぶんぶんぶん!》」

 

 喋った! ほんと喋った! アルトリアの拒絶が一層増した!

 そんな彼女の恐怖さえ無視し、クロリストはアルトリアが用意した大きな靴下へと、ズボボと邪心モッコスのご神体を突っ込んだのでした。

 ……え? アルトリア? なんか気絶した。

 翌朝には恐怖しながらも靴下の中を確認するアルトリアが居て、というか独りで開けるのが怖かったんだろうけど、なんか一緒に居るようにって言われて、強制参加だったらしいクロリストと一緒に靴下の中を確認。

 え? クロリスト? うーん……たぶん同じように付き合ってくださいと言われて逃げ出そうとしたんだろうなぁ。気絶させられたみたいで、たぶん背を向けた瞬間に一発背中にもらったんだと思う。

 ともあれ靴下が逆さにされ、底からプレゼントが落ちてゆく。

 すると、とすんっと出てきて畳の上に落ちたのは、綺麗な作りのライオンのぬいぐるみであり、アルトリアの恐々とした表情を一瞬にして歓喜に変えてみせた。

 

  ……直後に、追うようにしてゴシャアと邪神モッコスが出てきた時。

 

  おそらく、アーサー王は産まれて初めて少女のような悲鳴を上げた。

 

 

 

───……。

 

 

……。

 

 またある時。

 何回か四季が廻ったいつか。

 冬の日、こたつが重宝する季節、アルトリアが読んでいた本を片手に駆けてきた。

 

「ヒロミツ! この黄金長方形の回転なのですが!」

 

 クロリストの世界の蔵書、ジョジョを読んでいたらしい。

 

「え? どったのいきなり」

「いえ、いつかの石投げを思い出しまして。これを使用すれば、永遠に水を弾ける石を投げられるのではと」

「《ハッ……!》」

「ヒロミツさん、そこで“その手があったか”という顔は違うと思いますよ。黄金の回転は真球でなければ発生しませんし、真球を投げても、そうは跳ねないと思いますよ」

「《ハッ……!》」

 

 クロリストの部屋は人気だ。空間をいじくってあるそうで、無駄に広い。

 ジャンヌはほぼ毎日来てるし、俺もくつろぐ時は大体ここ。

 本人が騒がしいくせに、近くは落ち着くんだから不思議だ。

 そしてこたつ、あったかい。

 ジャンヌなんてほっこり笑顔でヌクヌクしてる。

 

「しかし私にはどうしても黄金長方形というものを見出すことが出来ず……。これはどうすれば出来るものなのでしょうか。ヒロミツなら知っていると思いまして」

「よろしい。ではまず体を自然に委ねます。ドリアードと契約し、繋がっている博光な上、無の精霊に超自然体の肉体に体を強引に成長させられた博光ですから、実はこの身は黄金長方形にかなり近い。必要な分はゴキメキと修正して、あとは爪弾か鉄球を投げます」

「はい」

「残念ながらここには鉄球がないので、ここは爪でいきましょう。次いで馬でございますが、カリユガンホースを使います」

 

 言って、クロリストは霊章から黒い炎を召喚。

 それが大きな馬となって、クロリストはそれに乗ると突然凛々しい顔になって、

 

「大暴れ、将軍」

 

 デゲデーーーーン! デッテッテッテェーーーーン!!

 自分で音楽まで流して、キリっと引き締まった顔でしばらく停止した。

 

「じゃ、いくよ? ───黄金の回転───!!」

 

 馬の一歩目から黄金長方形が線となって見えた気がした。

 その瞬間、クロリストは馬の背から弾かれるに自然体で飛び、回転すると、その回転を指に送り込んだ。

 やがてその指から爪弾が発射されると、

 

「《ぶしぃいいいいっ!!》ギャアアーーーーッ!!」

 

 爪が剥がれた指から、血も一緒に発射された。

 

「どうしてあなたいつもいつも詰めが甘いんですか!」

「届け私のナマヅメスプラーーーッシュ!!」

 

 けれど確かに爪弾は飛んで、やがて

 

「クロリスト殿ー、藤村大河嬢が遊びに《ドチュウウウン!!》ジェルァアアーーーッ!?」

 

 引き戸を開けてやってきたハサンに衝突。

 回転エネルギーがスパークして、ついには爆発。

 ザイードがドリルのように高速錐揉み回転しながら、引き戸も襖も壁も障子も窓も破壊して吹き飛んでいった。

 

「………」

「………」

「………」

「…………アルちゃん、なんてことを……」

「私の所為ですか!? いえ確かに私が言い出したことですけど!」

 

 これが俺の、俺達の日常。

 なんだか時々、少しずつ自分の中の日常が死んでいくような気がするけど、本当に日常的にこんなことが起こるもんだから、もう普通の定義が高次元まで飛んで行ってしまった気がする。

 ……さて、藤ねぇが遊びに来てるらしいから、俺も用意しようか。

 人を巻き込むのが好きな人だから、動きやすい服にでも着替えておこう。




◆ネタ曝しです。

*神・オムツ(かみ・おむつ)
 イエス・キモスト。
 一万年と二千年前から神様を愛してる、神様を愛してる二章などの動画が存在する。

*震えて待て
 カナリアより。
 部長が轢かれるシーンはキツかったなぁ……。
 部長、結構お気に入りだっただけに。
 ちなみに震えて待て自体の源典はバイク雑誌に書いてあったもので、ダサくて使ってみたら人気が出たそうですよ?

*真剣勝負! 一本目! 始めっ!
 サムライスピリッツより、開始の合図。
 初期では王虎をよく使い、後期では妖怪腐れ外道をよく使っておりました。
 王虎の、石柱削って石造作るのがもう楽しくて。

*うりゃっ! 目潰し!
 ジャングルの王者ターーーちゃん!
 あそこまで堂々とした目潰しはないと思うの。

*秘湯混浴刑事エバラ───ひとうこんよくでか・えばら
 ジャンプコミックス・封神演義より、四不象のこと。
 ゾッフィーとは鳴かない。

*忍法光輪渦斬───にんぽう・こうりんかざん
 ワールドヒーローズより、ハンゾウの技。
 己をスリケンに模し、スリケン・ジツとして実行する奥義。

*キイーーーヤアーーーッ!!
 軍曹的悲鳴。
 ケロロ軍曹より。

*春巻先生
 浦安鉄筋家族より、春巻龍。
 語尾が“ちょー”だったり“ホイ”だったり“チェン”だったり“ウー”だったりする。
 ルームランナーで顔面を削りながら、「ちぇるしーーーっ!」と叫んでいたのが物凄く印象的。

*特撮じゃよー!
 名探偵コナンより、阿笠博士の推理失敗例。

*グ、グゥムッ
 キン肉マン二世より、一般観客人の謎の言葉。
 「うるさい静かに見てろーーーっ!」
 「グ、グウムッ」

*リンゴォ
 ジョジョ第七部より、リンゴォ。
 ようこそ、男の世界へ。

*爆肉鋼体───ばくにくこうたい
 幽遊白書より、美しい魔闘家鈴木の技。
 戸愚呂(弟)のものとはやっぱり次元が違う気がするの。戸愚呂(弟)の方がスゴいって意味で。
 ちなみに同じマッチョ技で、鋼霊身というものがある。

*鋼霊身───こうれいしん
 奥義。氣の練り方で強いマッチョにもエセマッチョにもなれる。
 ラスボスが使うとエセマッチョになって、「あ……あ……?」とか言いたくなる。
 終いには「くかか死ね……死ね……! 死ね……!」とか言って首を絞めにかかる。
 ボンボンで連載していた餓狼伝説より。ええ、単行本、集めてましたよ?
 気絶から立ち直る時はやっぱり「う……むむ……む……むおお……」でしょう。

*空気供給管にィイーーーッ!!
 ジョジョ第二部より、サンタナ。
 骨を砕いたりして体を細め、狭いところにも自由に出入り出来るようになる。

*パウッ!
 ジョジョ第一部より、ツェペリボディブロー。
 小指を少し立てるのがコツ。
 なお、ゲブゥはツェペリさんが若かった頃に、父親に吸血されそうになった時に言った悲鳴。
 あっちは《ドズゥ!》ゲブゥ!だった気がしますが。

*アーサー王はやる気だ!
 女神転生シリーズより、会話の失敗例。

*分身烈風拳
 スプリガンより、我らがボー・ブランシェの技。
 分身して多方向から一気に攻撃を仕掛ける技だが、技後硬直中に脇腹を刺されるという欠点がある。

*音速拳───おんそくけん
 マッハ突き、とも。
 刃牙シリーズより、愚痴克己の技。

*存分に披露されませい!
 餓狼MOWより、グラントの言葉。
 ボイスとしてはない。

*だめじゃ
 武器屋トルネコ───完
 ドラクエ4コマより、旅に出ようとしたトルネコが提案を却下された瞬間。

*やってみろ! このサンタに対して!!
 ジョジョ第三部より、DIOのセリフ。
 ……今回ジョジョ系多いなぁ。

*邪神モッコス
 ゼノサーガ エピソード2限定版に付いて……もとい憑いてきたフィギュ……もといご神体である。
 限定版が約18000円、通常版が約8000円とくることから、ゲームより価値のある邪神像であることは明白である。

*黄金長方形
 誰も見たことのない黄金長方形のパワーは……存在する……
 ジョジョ第七部より、黄金長方形理論。
 ジョジョらしい素敵理論だと思うし、わりと好きです。

*デゲデーーーーン! デッテッテッテェーーーーン!
 暴れん坊将軍の例のBGM。
 大暴れ将軍は忘却の旋律。

*届け私のナマヅメスプラーーーッシュ!!
 南国少年パプワくんより、ナマヅメハーガス。
 個性豊かなナマモノが居る漫画だったなぁ。
 ああ、愛が痛い。
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