どこにでもあるFate/のオリ鯖参戦系の他愛ないお話 作:凍傷(ぜろくろ)
その後の馬鹿者はといえば。
「まったく、一人で楽しみおってからに……。そういう時はだなぁヒロミツよ、余にも一声かけるのが同胞というものであろうが!」
帰る途中で出会った征服王に捕まり、公園に戻ってからはガミガミグチグチと説教されていた。
ディルムッドはドッペル博光を追って、冬木の地を激走中である。
「まあまあ。埋め合わせとして、ヘタイロイのみなさんにお土産持ってきたじゃない」
「うむ……まあ、どれも至宝と言えるほどの見事な業物であったが……貴様いったいあんなもの、どこで手に入れた?」
「それがさぁ聞いておくれよマスター。どこぞの王様がさぁ、こんなものはいらんとばかりに捨てるんだよ? だから、じゃあどうせならって僕が黒で飲み込んでね?」
「黒ってのは?」
「ほらこれ。僕の影ってバケモノでね? アモルファスとかダークセンチネルとかいろいろ名前はあるけど、モノをそのまま飲み込んでヒロラインに飛ばせるのさ。あ、もちろん食わせることも出来るよ? 僕とは別の意味で外道なやつなんか、よく食わせたもんさ」
「はぁん……? よくわからんが、びっくり箱のような男だなぁ貴様は」
「ウフフ、僕に触ると火傷じゃ済まねぇぜ? 主に自爆で」
「自爆? なんだよそれ、恥ずかしさとかでって意味か?」
「え? いや、文字通り自分を爆発させて相手を巻き込むって意味で」
「だからなんなんだよお前はぁあっ!!」
「博光ですってば!!」
「じゃあなにか!? お前はヒロミツだから自爆するのかよ! ていうかこの質問自分で言っててわけわかんないぞ!?」
「おうさ! 自爆せずしてなにが博光か! 甘く見るでないわ!」
「そこは見てもらえよぉお!! あぁもうやだこいつ!!」
「最初の頃は貴様もこうして、余にぐちぐち言っておっただろうに」
「……悪かったよ……だからこいつと同列扱いだけはやめてくれ……」
「うわー、すげー言い方」
しかし気にしなかった。
今日は思わぬところでいっぱい武器を手に入れちゃったなぁとか笑って、残りの料理を堪能した。
……そのほとんどは、セイバーに食われていたが。
そして馬鹿者は、ぜえぜえと息を荒くして戻ってきた槍の人に正座をさせられ、ガミガミと怒られた。
いわく、危機感がなさすぎだと。
「ところでだなぁセイバーよ。貴様はこれからどうするつもりだ?」
「どうする、とは?」
「聖杯戦争のことだ。聖杯に願うことがなくなってしまったのなら、無理に聖杯を求める理由もなかろうて」
「……いや、理由はある。私のマスターが聖杯に願うものは、どうあれ貴いものだと私は思っている。お前に語れば“聖杯に願うものではない”と怒るかもしれない。ヒロミツに語れば、そうしてからどうするのかと訊ねられるかもしれない。だが……」
「その願いとは? 訊いてもよいか」
「……アイリスフィール」
「……言ってみましょう、セイバー。心に響くのなら、協力してもらえるかもしれない」
「ちょっと待てよアインツベルン。協力ったって、いくら願い事がなくても命のやり取りを手伝えっていうのか? 魔術師相手に取り引きもなしだなんて───」
「いーからだぁっとれい坊主! こういう時にちまちま小賢しくしているから嫌われるのだ、魔術師というものは!」
「じゃあお前はタダで命差し出せってのかよぉっ! 戦争って死ぬ可能性だってあるんだからなっ!?」
「正当な評価なんてもんに命を差し出した貴様がなぁ~~にを言うか!! 少なくとも一国の王が貴いと言うのだ! まずは聴いてみるのが礼儀ってもんだろうが!」
「聴いたらお前! どうせ面白いだとかなんとか言って、そのまま突っ走るだろうがぁあっ!!」
「おぉ無論だ。それが余の心を動かせばだな。だがそれが余の覇道を邪魔だてするものであれば、敵対することに是非もない!」
「なんでお前はそう両極端なんだよぉ!!」
「決まっておろう。人の行動など動くか動かぬかの極端しか結局のところは存在せんのだ。故に余は動き、時には座して待つのだ」
どっかとレジャーシートに座り直し、すっかり冷めた握り飯を口に、「おぉっほ! こんなものでもしっかり美味いのう!」と喜んでいる。
巨大な手、巨大な体では、食べる速度も異常である。
そんな彼に、セイバーは衛宮切嗣の願いを口にした。
「なに? 恒久的世界平和?」
「そうだ。それが、私のマスターの願いだ」
「あらまあ……おやまあ……」
「………」
「世界平和って…………」
それを耳にしたイスカンダルは目をぱちくり。
中井出はあらまあとかこぼし、ディルムッドはぽかんと口を開けて固まり、ウェイバーはなんだそれ、って顔で疑問符を浮かべた。
「なぁ、セイバーよ。それはなにか? 貴様のマスターは争いのない世界を望んでいるということか? そしてそれは、貴様もそうだと」
「そうだ。争いが無くなれば、死ななくて済む人が大勢居る。犠牲にならずに済む人も大勢居る」
「ンマー……あのー、セイバーちゃん? 悪いがこの博光は、そげな願いにゃ協力出来ねーよ?」
「なっ……!? 何故だ! 繰り返したブリテンの時代において、誰よりも人を救わんとした貴方が!」
「いや、ほら……さぁ。あの、じゃあ訊くけどねセイバーちゃん。キミの言う平和ってなに? ただ争い事がなけりゃそれでオールハッピー?」
「それの何が悪いのです……! あなたには幾度もブリテンのために尽力してもらった恩がある! そんな貴方が、何故真っ先に否定するのです!」
そう言われてもなぁ、と頬をコリコリ。
その横で、征服王はふぅむと息を吐き、かいていた胡坐の膝をその大きな手でバムと叩き、そのままの姿勢で言った。
「セイバーよ。世界平和ってのは、それこそ世界にとっての平和だろう。そんなものを願ってみろ。糧のために命を食み、住む場のために大地を削る人間なんざ真っ先に消滅する。争いなくして発展など有り得ん。悔いを経験するから人は成長し、次こそはと挑むからこそより強く磨かれてゆくのだ」
「征服王……」
「平和な世界はそりゃあ尊いのだろうなぁ。だが、それだけだ。平和を願われれば、誰もなにも出来やしない」
「それは極論だ! ならばこう願えばいい! 平和で有り続けるために必要なものを用意してくれと!」
「極論を叶えるからこその願望機であろうが! 大体、そんなもんを用意されれば人なぞ怠惰するだけだ! 平和であればなんでもいいなら、余が人類全員を植物人間にでもしてやるわい!」
「っ……征服王……! 貴方は……!」
「落ち着いて、よーく組み立てるのよセイバーちゃん。まず、恒久的な平和なんてのは無理だ。人の行動にはどうあれ、得するものと損するものとが存在する。それをなんとかするのが奇跡だって言うなら、そりゃちょっと勝手が過ぎる」
言って、中井出は腕の霊章から黒板をニョキリと取り出し、それを置くと説明を始めた。
「キミらは平和を願う。けど、一切の争いのない平和なんてのは無理だし、誰かが損をするならそれは、そいつにとって平和じゃない。誰ひとり平和からこぼれない世界なんて作れっこないし、それを聖杯に願って、叶え方が違えばどうせ文句を飛ばすでしょ? なにかに奇跡の行使を任せるってことは、やり方も任せるってことだ。それで文句を言うのは間違ってるよ。ライダーをブリテンの王にしてみた時、事ある毎にキミが文句を飛ばしたように」
「っ……それは……!」
「魔法ってのはさ、そりゃあ奇跡ってもんなんだろうけど、57億生きた博光が断言しましょう。……奇跡ってさ、万能じゃないんだよ」
人が平和を願えば人が優先される世界なんて存在しない。
誰よりも生き物を殺していると世界に見られていれば、真っ先に平和から除外されるのは人間だ。
57億を生きて、どれほどの醜さ見苦しさを眺め、経験してきても、人は人が救われて当たり前なことしか願わなかった。
だから言うのだ。人が正義を唱えるなんて馬鹿げていると。
「ヒロミツ……! 貴方は人を救う時、僅かでも正義を抱いたりはしないのですか!? 救えてよかったと! 生きていてくれてよかったと!」
「僕がなにかをする時は、その全てが自分の為です。“俺が救いたいから勝手に救う”。そうしたいって願ったことが達成されて、よかったと思わん奴はそうおらんでしょうねぇ」
「ならば!」
「ただ、俺のは正義じゃなくて悪でございます。我欲を押し付け相手の想いを好き勝手に打ち砕いておいて、よくもまあそれを正しいだなんて言えたもんです。そのくせ壁にぶつかればしょっちゅう迷うものを正しい義などと。長生きする中でうんざりするものがなにかって言ったら、他人が振りかざす正義以外のなにものでもねーだよ。オラ、そげな世界さめいっぱい見てきただ」
「ヒロミツ……」
「セイバーちゃん、他人に自分が求める完璧さを求めちゃあいかんよ。実際ね、正義を振りかざす者の物語なんて、最終的にゃあ運がよかったーとか偶然アレがああなってよかったーとか、正義とはまったく関係ないものに救われることばっかなんだから。いやほんと、マジで。なのに“正義の力が悪を砕いた……!”とか言われてみなさいよ、お腹がよじれて一度でも見たら病みつきになるどころじゃないよ?」
「………」
「?」
「あの。ヒロミツ? 結局のところ、あなたは正義が嫌いなのですか?」
「正しいならいいんでないの? 口にしないで志にしている内は、嫌いじゃないよ? ただ、正義を口にしたなら一切迷わず裏切らず、その信念だけは折らずに突き進んでほしいかなぁと。俺ねー、正義のヒーローに味方が出来る状況ってよくわかんないのよ」
わからないって、なんで。と、話を黙って聞いていたウェイバーが疑問を投げる。
サーヴァント同士の問答なんて、普通は見られるものじゃない。
それを黙って聞いていたウェイバーにとって、正義のなんたるやは純粋に疑問だった。
「いやほら、正義っていったって個人によって違うわけでしょ? ただそれを邪魔するやつが強いから共闘してるだけで」
「……まあ、そうだな」
「だから思うわけですよ。もし悪の親玉に“一人の正義だけ叶えてしんぜよう”とか言われたら、ヒーローたちってどうなるんデショ、と」
「ほう! そりゃあ面白そうだのう! 敵が居たから味方であった者たちが、いざ一人の正義だけが叶えられるとなれば、いったいどうなるのか!」
「……趣味悪いな、お前」
「外道を自負しておる博光ですもの」
静かに言うウェイバーに対し、馬鹿は胸を張った。
その流れでセイバーは目を瞑り、息を吐く。
味方になってもらえそうにない、と。
「そんなわけで聖杯はそっちで適当にどうぞ」
「……えっ!? ひ、ヒロミツ!?」
「ああまあ、そうさなぁ。平和がどうとかに興味はないが、余もこうして受肉しておる。聖杯に願うことなど既に存在しないとなってはなぁ」
「ていうか、えーと、キリツグ……だっけ? そやつの願いってそれでいいの? こげな世界で平和を願うなんて、よっぽど異常じゃない? いっそやり直したい過去とかがあるなら、セイバーちゃんの時みたく僕も協力するけど」
「───! それです、ヒロミツ! 過去になにかがなければ、そんな願いなどそもそも出るはずが無かった! 行きましょうヒロミツ! 私も彼の過去には興味があります!」
「え? いやちょ、あの? 僕これでも一応敵対してるサーヴァ《ガッシィ!》オワーーーッ!?」
「なにをぐずぐずしているのですか! 私は切嗣を知ると決めたのですから、さあ! すぐに!」
「わ、わーたわーたわかりました! 走って行くってったってめんどーでしょうが! えーと……ほいっ」
「? ヒロミツ、これは?」
霊章からズチャアアと出した巨大長剣ジークフリードを空中に寝かせ、彼はその上にひょいと乗る。
そのまま手を貸してセイバーも乗せると、
「各馬一斉にスタートォッ!!」
「え《ドチュゥンッ!!》ふわぁっ!?」
剣から光が放たれ、なんと空を飛んだ。
しかも速い。速いくせに風の抵抗を感じない。来るのはせいぜいでそよ程度だ。
「まさか空を飛ぶ武器とは……」
「コココ……! この博光の武具に出来ぬことなどあんまりないわグオッフォフォ……!!」
「いまいち格好がつきませんね……」
「ほっといてよもう!」
言っている間に景色は過ぎ、セイバーの指示通りの場所へたどり着くと、ひょいと飛び降り剣を収納。勢いはそのまま。ようするに、前へ向けて呆れた速度で飛んでいる。もとい跳んでいる。
飛び降りた場所も高度もどうかしているが、狙い通りだったのでなにも問題はなかった。……馬鹿のみに。
「《ドガッシャアアアン!》ヤシロです」
ひょいと飛び降りたのが空中で、向かった先が窓だった。
その部屋には久宇舞弥が居て、衛宮切嗣は留守のようだった。
それにしてもこんなデタラメな速度で到着するとは……と驚くセイバーは先に中井出が転がり込んだホテルの部屋へと、同じくそのまま転がるように飛び込んだ。
で、先に飛び込んだ馬鹿はといえば。
「グビグビ……《ピクピク……》」
親切な殺し屋、ヤシロさんがミスター・コロッサレルの屋敷へ飛び込んだ時のように、ダイナミックに窓をブチ破って入ったはいいが、受け身を取ろうと身を捩じった瞬間、背中を痛打して大ダメージを負っていた。
おまけに勢いも殺し切れなかったようで、痛打のあとは転がり滑ったのか、部屋の壁の傍で、ネプチューンマンに掟破りのロビンスペシャルをされたロビンのように、グビグビと謎の液体を口から流しながら痙攣していた。
舞弥が警戒するが、すぐにセイバーが事情を話し、対話の場が設けられることになった。
ちなみに会話に混ざれなかった馬鹿は、イジケて部屋の隅でT-SUWARIをしていた。
そんなわけで。
問答無用でケリィの過去を救ってみた。
シャーレイ死徒化の際にはアンデッド支配で落ち着かせてから特効薬を作り出してみたり、それ以前に薬を飲ませない未来も作りたいというケリィのお願いを聞いてもう一度繰り返してみたり。
まあどの道誰かしらが薬を飲んで死徒化。掃除屋が派遣され、そんなものを作った切嗣の父はナタリアという狩人に射殺され、ケリィとシャーレイは彼女とともに生きることに。
様々を学び生きる中で、シャーレイはナタリアが切嗣に異性として惹かれていることに気づき、取られたくないと思って接しているうちに、弟だと思っていた切嗣に恋をしていた。なんともまあ甘酸っぱいものである。
……と。どんなに甘酸っぱい状況が起ころうが、なにかしらの起点、因果というものは存在する。
魔蜂使いオッド・ボルザークを追って旅客機に乗ったナタリアの話だ。
既に旅客機内は死徒の群れとボルザークの蜂で溢れている。
不時着でもしようものならば世界は死徒の都と化すだろう。
ならばどうする?
「異翔転移」
「《ビジュンッ!》うわあっ!? ……え? ……へっ!?」
対象を転移させるスキルであっさり解決。
旅客機はレイジングロアという、竜族の極光レーザーを模した光の波動で跡形もなく滅びた。
「……あなたは本当になんでもありですね……」
「その分苦労しましたもん。我が武具は我が至宝。僕が辿った道は武具とともにあります。武具が無ければ激烈雑魚な僕ですが、今さらそれを武具だけのお蔭とは口にはしません。だって、それらを鍛えたのは僕なのですから」
生前は随分と武具のみのお蔭と言ったものでキョンスと、謎の語尾を口にしては次々と歩みを進める。
ケリィがシャーレイと結婚する未来や、ナタリアと結婚はせずともそういう関係のままパートナーとして生きていく未来。
ともかく悔いが残らぬようにと、様々な未来へ到達した。
最後には一つのチームに到り、アイリスフィールと結婚、シャーレイは魔術師として、ナタリアはパートナーとして、舞弥は仲間として、アインツベルンへ。
その先で聖杯戦争に臨み、令呪を宿したシャーレイとともに共闘、聖杯を手にし───……アイリスフィールと平和を失った。
───……。
びくんっ、と意識が覚醒する。
「今の、は……」
荒い息を吐き、気持ち悪さに襲われ、その場でぶちまけた。
涙をこぼし、ハッとして辺りを見渡すが、そこにシャーレイもナタリアも居ない。
居るのは舞弥と、セイバーと、クロリストというおかしなサーヴァントだけだった。
「クロリスト……今のは……」
「実際起こること、だね。まいったね……あの聖杯、穢れてらっしゃる。過去視で見てみたけど、第三次聖杯戦争の時にアンリマユとかいうサーヴァントを取り込んだ所為で、願いは叶えるけど最悪の形で叶える願望機になっちゃったみたい」
「……それは、つまり」
「あんなもんで平和なんぞ願ってみなさい、冗談抜きで害になるもので全て、泥に溶かされますよ?」
「そんな……じゃあ、僕は……!」
衛宮切嗣は歯を噛み締め、拳を握り締めた。
幸せな夢を見た。
あんな夢を見せられてしまえば、魅せられてしまえば、それに手を伸ばしてしまうものだ。
「1を切り捨てて10を救うかぁ……わからんでもないけど、ひとつ間違っとることがあるよ」
「なに……? お前になにが───」
「一人では誰かを切り捨てなきゃ救えないなら、二人でも三人でも数を増やしゃあいい。それこそ戦隊もののように。ヒーローが徒党を組む理由なんて今でもどうでもいいですが、それで救えるものが増えるなら、正義よ。迷わずそうしなさい」
言うや、その手に光を込め、なにかに干渉する。
両手が次元の渦に呑まれ、けれどそれがなにかを掴むと、ズルゥリとソレをそこから引っ張りだしてみせた。
「あなたが落としたのは死徒になって暴走する寸前のシャーレイさんですか? それともあなたがロケットランチャーで撃ち落とす前のナタリアさんですか?」
「───!」
引きずり出したのは、ソレだった。
双方ともに気絶している。
シャーレイは、恐らくあの時の鶏の血であろうものを服に散らして、けれどまだ、人を襲っていない状態。
ナタリアにも外傷はなく、ただ気絶しているだけなのだということが、見てとれた。
「ぁ…………ぁ、あぁあ……!」
震える。
救えなかった、掬えなかった、秤からこぼれおちてしまった“大切なもの”がそこにあった。
意識せず、足は勝手に前へ進み、手はそれらを求めて伸び、
「問おう、正義よ。なぁなぁ、正義よ、問わせておくれ? ……立ち上がれるかい? “大切”が戻ってきたなら、キミは迷わず歩めるかい? 親を殺してもまだ、それが正義の一歩だったと歩めるかい?」
「───」
直ぐに、即座に、それこそ即答しようとした。
が、喉が詰まった。
今まで切り捨ててきたものの絶望を知っているからこそ、安易に答えられなかった。
じゃあ……? と、胸に手を当て、深呼吸をしてから考えた。
「……悪よ。問わせてくれ。お前は今、なにに語り掛けている?」
「当然、衛宮切嗣だ。キミがキミであるなら、正義も悪もどうでもよろしい」
「重ねて問う。殺人者が人を救い、慕われる世界をどう思う」
「他人の意見は無視してヨロシ。償いがどうとか考える必要もない。一生罪悪感だけを背負って生きてゆけ。それは一生消えることはないから。57億生きても、消えないから」
「………厳しい世界だな」
「死人はなにも言っちゃあくれません。殺された人にしか気持ちはわからんし、生きてる人が“あいつならこうしたはずだ!”なんて言ったって、なにをどこまで信じる必要がございましょう。だから、それはずうっと背負っていきなされ」
ひょい、と。
軽く、二人の女性が投げられた。
フロートというスキルが使われ、投げられたにも関わらずふわりと浮いて、とすんと……あの頃より大きくなった自分の腕に納まった時、衛宮切嗣は涙した。
震え、みっともなく泣いた。
……生きている。
鼓動が聞こえる。
脈打っている。
正義を目指し、挑んだからこそこぼしてきたものがここにある。
それだけを願うなんて酷いエゴだと思っても、それでも……大切であったのだ。
自分の大切なものだけ、こうして取り戻して、どうして罪悪感を抱かずにいられるだろう。
……ああそうか。この悪が言っていたことは、そういうことなのか。
ずっと背負って生きてゆく。
笑みを浮かべるたび、罪悪感が胸を刺すのだろう。
だとしても、今さらもう、大切なものを失いたいとは思わない。
「受け入れるよ、クロリスト。僕は……正義の味方になりたかった。でも、それはすべてに対してじゃあなかった筈なんだ。大切だと思っていたものがあって、それを失ってみて、失うことの怖さを知った。だから救いたいと思って、でも……救うためには切り捨てなきゃいけないものがあって───……僕は……」
「ウヌ。大切なものだけ守る者になりゃあいいよ。正義の味方ではなく、家族の味方になりなさい。取捨選択で迷う者に、正義の味方は難しすぎる」
「ああ…………ああ、そうだな……」
涙ながら、二人を抱き締め嗚咽を漏らす姿に、普段の冷静さなど欠片もない。
けど、それでいいのだと。
家族として受け入れたい相手ならば、それでいいのだと。
衛宮切嗣は深い安堵を胸に、けれど疑問をひとつ、そいつに投げた。
「ああ、けど……クロリスト。なんだって死徒になったシャーレイを……?」
「そうなった時点で消される存在だから。じゃなきゃ連れてきたりなんかするもんですかい。死亡が確定してるんだから、じゃあその時間軸では用済みでしょ?」
「……引っかかるけど、ありがとう。セイバー……きみにもひどいことをした」
「いえ。気にする必要はありません、切嗣。貴方の過去を知ればこそ、そうするのは当然だったのでしょう」
「そうそう。あ、けどアレだね、シャーレイちゃんが目ぇ覚ましたら大変なことになるだろうし……吸血衝動とかは殺しておこうね」
言って、馬鹿者が霊章からひょいと鎌を取り出す。
途端、切嗣は警戒を強めるが、中井出は「まぁま」と手を軽く振って、漆黒の鎌を掲げた。
「
ひょんとひと振り。すると鎌から漏れた輝きがシャーレイを切り裂き、しかし外傷などはないままにスウウと黒の軌跡だけが浮かび、消え去る。
「はいオッケイ。吸血衝動はなくなったから、これでただの好奇心旺盛な、パワーなどが死徒級のシャーレイちゃんのでっきあがりでぃ!」
「そっ……そんなに簡単に!?」
大変驚いている切嗣に、こくりと頷いて返す。
「あとは奥方の中の聖杯だね。取り出さないと、奥方ごとアンリマユに穢されるわ」
「なにからなにまで頼るようで済まない……。あれは、取り外せるのか……?」
「出来るよ? 代わりを作ればいいだけだし。代わりに起源弾ちょーだい?」
「……、すまない、それは出来ない。これがないと、大分困ったことになるんだが」
「いや、見せてくれるだけでもいいから」
「……?」
首を傾げるまではいかずとも、少しきょとんとした切嗣だったが、懐から起源弾を一本取って見せる。
中井出はそれを賢者の石の能力で分析してみせると、文字の羅列を整え、創造を開始した。
「ほいとりあえず500発。それと肋骨もね」
「え?《トンッ》はっ───!?」
創造されたソレを弾薬ケースでどすんと渡され、戸惑っているうちにトンと胸に手を当てられた。
直後、無くなって久しい肋骨が生え、脆かった位置を補強してくれた。
「……なんでもかんでも出来すぎだろう、きみは……」
「博光ですけぇのう。楽しいに繋がることはなんだってやりますえ?」
「僕を救うことが、きみの娯楽に繋がるとでも?」
「押忍。僕、基本的に戦場では老若男女差別はしないものの、その実、普段はロリコンですゆえ」
「……《ジャコンッ》」
「あっはっは、起源弾打ったって、僕にゃあ効きませんよ? 僕に魔術回路なんてもんはござんせん。魔術師じゃないもの」
コンデンターを構えられても動揺もせずにニッコリ。
ならばとキャリコを構えられると、伝説のピーカブーブロックをしてみせる。
「……銃は普通に痛いのか?」
「博光ですもの、ステータス移動しなけりゃ普通に痛いよ? てか、英霊がどうとかいっても、伝説とかで補強されてるだけで元は人間ですもの」
「そうか……」
「あ、ロリコンっていってもそこにエロスはないんだぜぃ? なにせ幼女とは愛でるもんであって、手を出すもんじゃあねぇ。オォオオルハァアアイル・ロリコォオオニアァアアッ!!《ゴチャア!》OOOUCH!!」
コンデンターの底で鼻っ柱を殴られた。
この魔術師殺し、案外ツッコミも出来るらしい。
「で、どうするね? まだ聖杯戦争、続ける?」
「………」
「キリツグ。私にはもう、聖杯に願うことなどありません。どころか、願えば呪われるというのなら、壊してしまうべきだと考えています」
「ああ。そうだね……僕もそう思う。けれど、他の魔術師はそれを知らない」
「……戦うつもりですか、キリツグ」
「………………いや。僕はもう、大切なものを守るためだけに生きたいと思う。クロリスト、アイリから聖杯を切り離すことは出来るか?」
「出来るよ? というか……あの、それやったら、いやむしろキミがそう指示したとバレちゃあ、魔術師としていろいろマズかったりしない?」
「ヒロミツ……貴方は自身を外道と呼ぶ割に、そういうところは心配するのですね」
「え? だって後でなにかある~とかだったら後味悪いでしょ? 僕の心の健康によろしくない」
「………」
褒めればすぐこれだ、と溜め息を吐いた。
が、やはり本質はやさしいものなのだろう、とセイバーは苦笑を漏らした。
「ああ、もうアインツベルンにはいられなくなるだろうね。妻とも娘とも切り離されるかもしれない」
「それでもキミはそうする?」
「もちろんだ。僕は、家族の幸福を願う。家族の味方で在り続ける」
「それは生活環境がガラリと変わっても? 悪に誓える?」
「変わってもだ。が、悪には誓えない」
「ようがす! じゃあちょっと娘さん攫ってくるね! セイバーちゃんちょっとおいで! 娘さんのフェイスとか僕知らないからおせーて!」
「え!? な、ちょ」
「各馬一斉にスタートォッ!!」
問答無用であった。
跳躍と同時に足の下に巨大長剣を召喚、セイバーの手を掴んだまま発進したもんだから、セイバーはしばらく手を引っ張られたままの状態で空を飛ぶことになった。
……。
ゴォオオオ……!!
「ハーイリハーイリフレ背裏砲!!」
外国のどっか。
詳しい地名など博光的にはどうでもいいところまで突っ込んで、その窓ガラスを鉄山靠で破壊した。
先ほどと同じ轍は踏まぬと、前面ではなく背面から突っ込んだのだ───!!
「ギャアーーーーッ!!《ズキーーーーン!!》」
しかし結局は背中が弱点なので、大ダメージを負った。
そんなわけでアインツベルンのおっきなお城。
雪がビョオオと吹きすさぶそこに突入し、ホワイティンなロリを探して暴れ回った。
一応敵サーヴァントではあるんだし、容赦はしなかった。が、なんとなくバレるのもアレだったので、変装はした。
「ワーーーハハハハハ!! ハサン!《どーーーん!!》」
体を黒く塗って、腰布をつけて、顔にはニッコリ髑髏仮面。まさにハサン。
「さあ幼女はどこハサン!? 隠れても無駄サッバーハァアア!!」
この男、掛け値なしの馬鹿であるが、ただ目的のために真っ直ぐだと言えばその通りではある。
手段を選ばなさすぎるのだ。
「ヒロミツ……! 参上はこうなってしまいましたが、出来るだけ静かに、穏便に……! 私たちはイリヤスフィールを迎えに来ただけなのですから……!」
「おお、つまりは忍びのように突き進めば問題無し!?」
「シノビ……ニンジャですか。ええ、それならば間違いないでしょう」
「ならばオッケン! 俺すっげぇ忍者知ってるんだ! まっかせてよ!」
忍びの知識を手繰り寄せ、彼女は頷いた。
ニンジャ……少々不安が混ざったものの、基本は隠れ潜むものだ。
ならばいくらこの馬鹿者とて───
「あ゙ぁあああああああああああっ!! ん゙ん゙んんんんんんんんんん!! うおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
前言撤回馬鹿だこの人!!
よりにもよって一番忍んでない忍者の真似をしやがった!
「ヒロミツゥウウーーーーッ!? 何故! 何故よりにもよってそれを!!」
「わからんのか、このたわけが。忍と言ったら不破師範、忍術といえば不破忍道であろう。それを模せというのならば、
「今すぐやめてください! もうハサンでいいですから!」
「なにを馬鹿な。不破師範はアレだぞ、姿を消せるんだぞ。なんでか影は消せないけど。だから見つかりっこ」
「賊だぁーーーっ!! 侵入者を発見したぞぉおーーーっ!!」
「ゲェエエーーーーーーッ!!」
あっさり見つかった。そりゃそうである。
しかし見つかってしまったならば仕方ない、予定通りハサンで通すしかあるまいて!
「貴様ら何者だ! ここをアインツベルンと知っての───」
「ハサン・口から連続爆裂魔光砲!!《ドチュチュチュチュチュチュ!!》」
「《バゴボゴゴゴゴォオン!!》グワーーーーッ!!」
既にアサシンの真似をする意味もないくらい目立ちまくっている。
同じくハサンコスチュームを(強制的に)着せられたセイバー、アーサー王は、もう羞恥で真っ赤になりすぎて、死にそうであった。
「さあ進みますぞ王よハサン! 雑魚はこのハサンめにお任せをサッバーハ!」
「こんな時だけ王と呼ぶのはやめていただけますか!? ……ハサン! わわわ私は反対した! したのに……! ハサン!」
とにかく語尾にハサンを付けなければバレると思い、セイバーも必死である。
必死であるが、胸を隠すのが布一枚であり、露出部分が多いとあってはそりゃあ恥ずかしい。ハサンの中でも女性なハサンも居たが、まあ装備はあんな感じと考えれば問題はない。
が、肌のほぼを甲冑やドレス、ドロワで隠していたセイバーにとって、こんなものは裸に近かった。
騎士として、王として、男として育つべし、人の心は振りかざすなを生きた彼女にとって、女性の姿でこの面積はやはり恥ずかしかったらしい。
「バカヤロー! 恥ずかしがってる場合じゃねぇハサン! Kときちんと仲良くするためにロリを攫いにきたんだろうがしっかりしろ王コノヤロー! ハサン!」
「ハサンと言えばいいというものではないでしょう!? というか王とか言っておいて、まったく敬意というものが感じられないのですが?! ……ハサン!」
しかし走る。
彼女が居そうな場所をセイバーが伝え、そこ目掛け。
出てきたアインツベルンの者はもちろん退治してだ。
「ポセイドンウェーーーイ!!」
「き、きさ《バゴォッッッシャア!》へぶぅ!?」
「オリンポスオーヴァーーーッ!!」
「抵抗は《ドゴォッッッシャア!》おぶぅ!?」
ウェスタンラリアット、重力倍化エルボードロップ等で黙らせ、次から次へとなぎ倒していった。
アサシンじゃない! こんなのアサシンじゃない! とか言ってた若人は、何故かトルネードフィッシャーマンズスープレックスで長い廊下に崩れ落ちた。
「アクティブテュポーーーン!!」
「ひぎゃあああああ! ややややめ《ゴコォオッチャア!!》ぷぎゅっ!?」
「ヘラクレスルゥーーーッ!!」
「!? ば、馬鹿! こっちへ来るんじゃ《ボッゴォオオンッ!!》ぎゃああああ!!」
魔術を行使されればそれを跳躍で避けると同時に肩に乗り、フランケンシュタイナーの要領とは明らかに違った重力無視の投げ技をキメ、その隙を狙って魔法を放とうとした敵に、ピクピク痙攣している男を掴んで投げつけると、魔法を暴発させて吹き飛ばした。
キモい! あのアサシンキモい! とか言っていた別の若人は、何故かファイナルアトミックバスターで長い廊下に崩れ落ちた。
「とめろ! 止めろぉおーーーっ! これ以上賊の勝手を許せば、アインツベルンの名が───!!」
魔術が雨のように放たれる。
しかしハサンは冷静に全身に力を込め、独特の呼吸をココココォオオオ……!! と整えてみせると、なんと全身を鋼のように固めてみせた!
「
おお、見よ! 雨のように降り注ぐジツを身に受けてなお、まるで怯まないその様を!
その後ろに居たハサン王は、その硬さに目を輝かせているではないか!
「ヒロミツ!? アサシンにそんな技があったのですか!?」
「え? いや、なんか出来た」
「どこまで自由なんですか貴方は!」
「フフフ、これぞ我が宝具、“
言ってる内に片手に出現させた樹木大砲、ホズで追手を吹き飛ばす。
弾はそこらへんの瓦礫で十分なので、相手がここを壊せば壊すほど、弾が増えた。
「ヒロミツ! 少しは話し合いで解決する気は───!」
「バカモン! ハサンたる我らが光に当たるべき者たちと話し合いなんかしてどうするハサン! そんなことは不可能だから、ハサンたる我らはこうして闇に紛れているハサン!」
「紛れてません! 全然ちっとも紛れていないではありませんか!!」
「失礼な! 紛れてますともハサン! ほらハサン! 辺りが暗くて僕ら黒いハサン! めっちゃ紛れてるハサンよ!? ただ敵の索敵スキルが高いだけハサン! せっかくハサンが穏便に済ませようとしたのに、襲い掛かってくるのが悪いんだハサン! おぉっと鉄槌!」
「《バゴシャア!》ソルベ!?」
「ヒロミツ!? 今のは明らかにただの見回りでしたが!? わざわざ襲い掛かる必要がありましか!?」
「騙されるな鉄郎! ヤツは機械の体を餌にお前を───!」
「なんの話ですか!」
アインツベルンの城は地獄と化していた。
通り魔が居る、ということで、腕利きの者が向かわされたが、そのどれもが返り討ちに遭う。
ホムンクルスの中でも腕利きの連中だったのに、男だろうが女だろうが容赦なかった。マジで。
「ディャァーーーハハハハ!! このハサン! 普段は紳士だが戦場となれば老若男女の差別は一切無し! 何故か!? 戦場では武器を取ったなら敵であるからだ! なんだ子供か、なんだ老人かと油断して、もし相手が猛毒ナイフ持ちだったらどうする! 敵であろう! 故にこのハサン! 容赦せん!」
何故かアニメ北斗の拳のラオウ様のような笑い方をしつつ、自らをハサンと名乗る男はホムンクルスをブチノメしていった。
「ニンジャレッグラリアーットォオオ!! 猛烈破砕弾ダスーーーッ!! ダイダロスアタァアアック!! そしてそしてぇえええっ!! 武神流後ろ跳び《スタァーン!》」
とことんまでに体術でぶつかり、ホムンクルスたちを気絶させてゆく。
技のあとになんでか後ろにスターンと飛んでいたが、どうせ意味はないのだろう。
ホムンクルスに任せて逃げ出すようなヤツには口からシャドウフレアを発射、廊下を破壊し、自らの口も破壊して涙を散らしながら激痛に耐えていた。
「さぁああけべ叫べヒィーーーホホホホホ!!」
「ヒロミツ!? 目的! 目的を忘れています! 何故自ら敵に突っ込んでいくんですか!」
「はうあ!?」
そして、女ハサンに言われてようやく止まるハサン。
「ア、アア~~~~~ッ!! そ、そうだった~~~っ! お、俺はここに、イリヤスフィールを奪還しにきたんだった~~~~っ!!」
「ヒロミツ!? 何故説明口調に!?」
「いや、キン肉マンファンとしては、これくらいは当然かと」
言っている内にこちらの魂胆を知ったホムンクルスの何人かが、素早く移動を開始した。
「バレてしまったではないですか! なにをやっているのですか貴方は!」
「す、すまなんだ~~~~~っ!! すまなんだ~~~~っ!! あ、でもあのお子めらを追っていけばいいのよね? このハサンめにお任せあれっ☆《キラーン》」
「気持ち悪いです」
「……真顔はやめようよ……」
しかし追った。立ちふさがるホムンクルスは、ダンターク流奥義ぶちかましで吹き飛ばして。
「たった一歩であの加速……どうなっているのです、貴方の足は……」
「歩法奥義ってやつですハサン。四回までしか出来なくて、使ったあとは少し休まなきゃならんハサンよ」
そんな加速からのぶちかましをくらったホムンクルスが、目の前に続く長い廊下をバキベキゴロゴロズシャーーーアーーーッ!! と転がり滑っているわけですが、無視して進む、博光です。
やがてセイバ……もとい女ハサンが促した扉の前へと辿り着く。
が、予想通り鍵がかけられ、さらに魔術的な結界が扉を開かなくさせていた。
「っ……やられました……! どうします、ヒロ」
「勢い余ってドォーーーン!!!《どぉっごぉおおんっ!!》」
「ミツーーーーッ!!?」
破壊した。扉ではなく、その横の壁を。ショルダーチャージで。
ゴコッ……パラパラ……と崩れ落ちる壁の残骸をゴシャメシャと吹き飛ばし、平気な顔で入ってゆく様は、まさに外道であった。
「ひ、ひろ……ヒロロ……!?」
「? ほらちょっとそこのキングハサン? なにやってんのもう。入るよ?」
「いえっ……は、入るよ、ではなくて……!」
「扉に鍵、結界ときたら、その横の壁を破壊するに決まってんでしょーが。こんなん、ヒロラインでは常識よ? 大体だね、このハサンはいっつも思っておったのよ? 魔王を倒せる勇者様が、なして封印されたドアごときを前に躊躇するのかなって。ドアが封印されてる? じゃあ隣の壁を壊しゃあいいじゃない。それを忠実に実行してみただけハサン。そして、僕はそんな行動で、製作者たる精霊様がたを散々泣かせてきました。最強《ハサァーーーン!!》」
「………」
なるほど、常識破壊で馬鹿で阿呆で外道である。
そんな馬鹿者は中に入るや、暗殺者を模していることも忘れて元気にヘロウと挨拶していた。とんだベンジャミンである。
「……イリヤスフィール……」
中には小さな白いお子と、それを守るように立つ、二人の女性のホムンクルスが
「マキシマリベンジャァーーーッ!!」
『《ドォッゴォオオン!!》…………!!』
「ヒロミツゥウウウーーーーッ!!?」
果敢に飛び込んだ途端に顔面から床に叩きつけられていた。
「貴方はぁあっ!! 物事の順序というものを知らないのですか!?」
「《ビクゥッ!》ヒィッ!? え? な、なに? だっていきなり襲い掛かってくるから……!」
「壁破壊して賊が入ってくれば誰でも警戒するでしょう!」
「し、失礼だよ! 僕は賊じゃないよ! 仮に賊だとしても、ハサンという名の紳士だよ!」
「しっ……紳士に謝ってください! 何処の紳士が女性の頭を掴んで地面に激突させますか!」
「……!《ハサァーーーン!!》」
足を交差させ、両手親指で自分を指さす笑顔のハサンが居た。
直後、ハサンはキングハサンの拳で仮面ごと鼻っ柱を砕かれて、床でもんどりを打った。
「イリヤスフィール、あなたを迎えにきました」
「《びくっ》ひっ……」
「キャッププシシシシ……!! 怯えられてやんのこのキングハサン……!《バゴシャア!》ウチュチューーーッ!?」
復活の速いハサンだったが、せっかく直した仮面ごとまた鼻を砕かれた。
「怯えないでください、私です」
「そう、僕だ《ドス》ベン!」
親指で自分を差したハサンが静かに殴られた。
殴った本人は目を閉じ、息を吸い、そして吐く。
ハサンを模すために纏っていた魔力の膜を解除して、もとのセイバーとしての姿に戻る。いつかの黒服姿だ。
魔力が金色の塵となって、暗い部屋を少しの間散らすと、やがてそれも消え、セイバーは目を開ける。
イリヤも眩しさから閉じていた目を開けると、そこには───
「……!《ハサァーーーン!!》」
ポージングしたハサンが……!
「カァアーーーッ!!」
「《バゴシャア!!》つぶつぶーーーっ!?」
プロボクサーばりの鋭いフックであった。
後ろから的確にハサンの頬と顎を捉えたそれは、ハサンの顎をゴキバキと砕き、床に殴り倒させた。
ハサンは砕けた顎を押さえながらじたばたもがき、うきうき言っている。自業自得である。
「あ……キリツグと一緒に居た……」
「はい。切嗣が呼んでいます。あなたを迎える準備が出来たと」
「え……でも」
イリヤが倒れているホムンクルスを見つめる。
切嗣とアイリスフィールが居ない間、彼女の世話をしてくれていたのだろう。
そんな相手を倒す者が迎えに、といったところで説得力がない。
「ヒロミツ……貴方の所為でまたややこしいことに……」
「コココ……! このハサンめにお任せを。お子の説得なぞちょちょいのちょいじゃぜ? ホホ、これ、嬢? ワシと一緒にデートにでかけねー? きっとそのー……最高……じゃぜ?」
「…………《ソッ》」
「……私の後ろに隠れてしまいましたが」
「ハーーーッ!! なんじゃよ!? このハサンめがそんなに嫌い!? 嬢にはこのファッションがわからねーんじゃよ!?」
「ただの腰布をつけた黒い人ではありませんか」
「《ぐさっ》…………お前……それ、本人の前で言うなよ……? まじで……」
「え…………あの……はい、配慮に欠けていました……」
しかし狙い通りではあった。
このハサンめがキモい行動に出れば、一応知ってはいるセイバーに懐くに違いねー作戦である。
あとはダメ押しでもうちょいつついてやれば、きっと一件落着。そーだそーに違いねー、そーゆーことにしとこー、と、何故かヨダレを垂らしながら、その馬鹿者はそんなことを考えていた。
「と、ところで嬢? このハサンめはサーヴァントではあるが、べつに敵じゃないから怖くねーんじゃよ? だってハサンですもの、ほら見て? この邪気も穢れもない笑顔の仮面」
「胡散臭いですね」
「キミが言ってどーすんの! ほ、ほら、怖くねーハサンよ!?」
「《びくっ》…………」
「怯えてます、やめてください」
「ちょ……声がマジトーンで怖いですセイバーさん」
あの、作戦わかってますよね? と視線を投げてみても、セイバーはなにを見ているのですかと睨み返してきた。
こ、こいつわかってねぇ! ハサンは衝撃を受けた! おお、見よ! このサムライ・ガールはなにもわかっていなかったのだ! 道理でなんかポコジャカと殴られるわけだ! いやそれ関係ねーけど! 自業自得だけど!
ならば二人同時に説得しなければならないわけだ。ハサンは改めて衝撃を受けた。
ハサンは熟考し、悩み、苦しみ、なんか急に感じた孤独感に仮面の奥でほろりと涙し、しかし健気に考え直し、やがて光を見つけ、その考えを実行に移した。
なぜかにちゃりとヨダレを垂らしつつ。
「は、はは~~ん? わかったぞてめーの魂胆が~~~っ!」
「魂胆? ヒロミツ、あなたはなにを───」
「いくら欲しいんだよ~~~~~~っ! えぇ~~~~~~~っ!?」
「カァアーーーッ!!」
「《バゴシャア!!》つぶつぶーーーーっ!!?」
満面の笑みであった。財布を取り出し、お金をちらつかせながらの笑みであった。
そんな笑みが頬骨と顎を砕く渾身の拳で文字通り破壊され、彼は再び地面を転がったのでした。
───……。
で。
「うう……痛ぇ……! もう嫌だこんな人生なにをやっても駄目だよ全部セイバーの所為だ……!」
「人の所為にしないでください」
嫌がるイリヤの首をゴキャアと折って気絶させて癒して強引に連れ出した。
セイバーに外道と言われたが、名前を呼ばれるくらいに当然のことなのでサムズアップで返したらしい。
現在はといえば既に日本。
位置さえ知っていれば転移出来る便利な博光なので、そこらへんは問題なかった。
「ところでヒロミツ? あなたの拠点はどうなっているのですか?」
「おおブレーネリ♪ あな~たの、おうちはどこ~? わた~しのっおうち~ちはっ♪ ………………野宿《ずぅううん……》」
「歌まで歌って心底暗くならないでください!!」
いろいろな能力があるのになんて残念なんだこの男は。
セイバーは本格的に頭痛を感じ、とりあえずこの馬鹿者をなんとかすることを決意した。一応、イリヤも居ることだし。
◆ネタ曝しです。
*うわー、すげー言い方
南国少年パプワくんより。
アラシヤマ、自分は好きですよ? 友情パワー!
*ンマー
ONEPIECEより、アイスバーグさん。
ちなみに北海道は札幌にはアイスバーグホテルというものが───……あった。
……あったんだ。名前、変わっちゃったけど。
誰かリグル・ナイトバグをナイトバーグさんとか呼んで物語作ってくれないかしら。
ごめん冗談です。
*お腹がよじれて一度でも見たら病みつきになる
タイニートゥーンOPより。
華麗なるステップの後に往復ビンタするやつが大好きだった。
テントントンテンテントントンテンッ♪ ズパァンズパァン!!
*各馬一斉にスタート
アニメ・空想科学世界ガリバーボーイより。
もはや名前も覚えていない馬面な彼が、乗り物を発進させる際に言った言葉。
ED“鏡の中の勇者”は今でもたまに聞きます。
*コココ……
福本伸行さんの漫画の悪役キャラはカ行で笑う。
*グオッフォフォ……!
キン肉マンより、サンシャインの笑い。
いちいち笑い方が面白いのですよ、キン肉マンは。
でも一番のお気に入りはジョワジョワ。
*ヤシロさん
親愛なる殺し屋様より、ヤシロさん。
第一話にて窓ガラスをブチ破って登場。
ミスター・コロッサレルを殺すために、マモーティ・ヤルケンが首尾を固める屋敷へ来襲。
でもマモーティがシツレイな人間が嫌いだったため、コロッサレルは見捨てられた。
ユーアーシツレイ!
こういう善良殺し屋漫画では結局死なずに助かるパターンは多いので、和良手 一太の回は驚きました。
*グビグビ
キン肉マンより、掟破りのロビンスペシャルをくらったロビンが、謎の液体を吐きながら出していた擬音。
グビグビってなんなんだろう。でも大好き。
*T-SUWARI
すごいよマサルさんより、体育座りの歌。
検索すれば歌声は聞けるかも。
*キョンス
ワルサースルサーソースルサー!
ワルサースルーより、謎の語尾。
いやー……レオナルド・プリン男の名前って素敵でしたね。
彼を今思い出すと、どうしてか俺物語の剛田猛男と重なるんですよね……どうしてでしょう。
*でっきあがりでぃ!
オーマイッコォンブ!!
リトルグルメのことごとくが美味しくなかった伝説。
いくつかは美味しいのはあったんですけどね、うん。
*伝説のピーカブーブロック
伝説のピーカブーブロック!!
漫画版天地無用より。伝説ってほど伝説だったんだろうか。
*オォオオルハァアアイル・ロリコォオオニアァアアッ!!
コードギアスのシャルルさんの叫びと、マジこいのロリコンハゲの融合。
そう、ロリコンとは幼女にやさしくある者。
手を出したりはしない。ただ一緒に風呂に入りたいだけなんだ!(アウト)
そんなことをハッキリ言える彼が、僕は大好きです。
*背裏砲───はいりほう
ガーディアンヒーローズより。
このゲーム音楽もいいしキャラも多いし声も面白いしで大好きですぞ。
サターン版のディスクを今でも所持し、時折聞いておるでよ。
そしてやたらと鉄山靠系の技を持つキャラが多い。
背裏砲もそのひとつである。
ザコドリームとかゾンビラッキーチャンスとか、凄まじい名前がついてるけど結局は鉄山靠です。
*不破師範
・・・すごい漢だ。
*ハサン・口から連続爆裂魔光砲
犬マユゲでいこう+ドラゴンボールより。
イシヅカンダーの場合は目からである。
*グワーーーッ!!
イヤーーーッ!
ニンジャスレイヤーより。イヤーといったらグワー。
*トルネードフィッシャーマンズスープレックス
キン肉マン二世より、ケビンマスクの技。
ゲームでのこれの声が好きすぎます。
でも検索するとエロサイトが出てくるから気を付けようね!
*ポセイドンウェーブから始まるプロレス技
ほぼ全てグリフォンマスクの技。
*ファイナルアトミックバスター
作品によって投げる回数などが違うが、ザンギエフの必殺技。
*葉山鋼鎧呼法───はさんこうがいこほう
北斗の拳より、華山鋼鎧呼法。
体を鋼のように硬くするという不思議な呼吸法。
*おお、見よ!
ニンジャスレイヤーの解説。ワザマエ!
*おぉっと鉄槌!
ようようそこゆくあんちゃん、町の掟を知ってるかい?
テイルズオブレジェンディアにて、カーチスが悪を殴る際に言った言葉。だった筈。
なんかついで臭あふれる殴り方だった。
*騙されるな鉄郎! ヤツは機械の体を餌にお前を───!
銀河鉄道とKOFと六鐘円鏡示さんと……。
*ニンジャレッグラリアート
ワラヒロパフェー。
ワールドヒーローズより、ハンゾウの技。
ニンジャのレッグラリアート。だからニンジャレッグラリアート。
*猛烈破砕弾───もうれつはさいだん
蒙古猛烈破砕弾。龍虎の拳2より、テムジンの技。
テムジンといってもバーチャなロンとは関係ない。
*ダイダロスアタック
やっぱりグリフォンマスク。
MAX版は小Pから繋げることが出来る。
*武神流後ろ跳び
犬マユゲでいこう!より、格ゲー苦手な石塚さんが編み出した技。
他に武神流裏拳がある。
なお、技票には掲載されていないので注意。
*シャドウフレア
FFシリーズより。
中井出の場合は全30種のランダムルーレットで放てる技で、口から黒いフレアを放つ。
が、自分の口もズタズタになる。
他に臭い息、というのもあるが、自分も臭いので悶絶もの。
ランダムで決まるので、ランダム全部埋まるまでの彼は“No.24:自爆”も合わせて地獄を見た。
*叫べ叫べヒーホホホ!!
彼氏彼女の事情より、怒りに狂ったゆきのん……げふん。宮沢雪野が叫び散らした言葉。
なお、アニメ版のみであるので注意。
*すまなんだ~~~っ! すまなんだ~~~っ!
キン肉マン二世より……ってほんとキン肉マンネタ多いな。
サンシャインヘッドが悪のプリンスアシュラマンに言った言葉。
アルティメット阿修羅バスターの絶望感はすごかったなぁ……個人的に。
*ヘロウ
その名はベンジャミン。
究極超人あ~るより、ベンジャミン。
にせものじゃないか。
*仮に賊だとしても、ハサンという名の紳士だよ
ギャグマンガ日和より、クマ吉くんの心の言葉。
僕は変態じゃないよ……仮に変態だとしても、変態という名の紳士だよ。
*キャッププシシシシ
銀魂より、サンタ回での黒サンタ。
ヤベェェェェ! でけぇ声出し過ぎたァァァァ!!
サンタの言う言葉じゃない。
そしてあの声優にやらせるってのがまた。当時は笑い転げましたよもう。
*そう、僕だ。
掛け値なしに武田蒼一。
*《ドス》ベン!
このスカタン! と叫びながら殴りましょう。
浦安鉄筋家族より。……いや、4年1組起立の委員長だったっけ?
*カァアーーーッ!! つぶつぶーーーっ!!
浦安鉄筋家族より、敵烈藤男(テキレツふじお)。
友情決裂手袋を小鉄に使用したのち、叫ばれつつ殴られ、つぶつぶ。
倒れたのちに「うきうきうき!!」と叫んでたりする。
なんでつぶつぶだったのかは知らない。
*ホホ、嬢……○○○じゃぜ?
神聖モテモテ王国より、ファーザー言語。
例↓
「じょ、嬢の体にもうとんでもないことしたるわ……! す、すぐによくなるし大声あげてもあのー……誰も来やしねぇのじゃよ?」
*よだれをたらしながらそーだそーにちがいねー、そーゆーことにしとこー
漫☆画太郎キャラはなぜかよだれを垂らしている。
*いくら欲しいんだよ~~~っ! え~~~っ!?
珍遊記より、中村たけしが太郎に言った言葉。
金が欲しいから喧嘩を売られていると勘違いしたらしい。当然殴られた。
*おおブレネリ
轟先輩を思い出したあなたは桜吹雪が綺麗じゃねーか。
*轟先輩
あばれ花組より。歌うと強い。
◆あとがき
とりあえず3話まで。ではでは~。