どこにでもあるFate/のオリ鯖参戦系の他愛ないお話   作:凍傷(ぜろくろ)

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そして、日常へ

 ───悲鳴が聞こえた。

 それは誰の声だったっけと思って、それが自分のものだったことを思い出す。

 

「───、……!? ……!!」

「……っ! っ! ……!!」

 

 泣いているのだろうか。

 ただ、なにかを嫌がっていることは確かだったと思う。

 目の前には下卑た、醜い表情の男たち。

 自分は組み敷かれていて、なにかを叫んでいた。

 

「───! ───!!」

 

 男たちが叫ぶ。

 わたしは否定する。

 男が静かに言う。

 やはり否定する。

 魔女だ魔女だと言われては否定して、自らを貫かんとした。

 どのような拷問を受けようとも、人として扱われずとも、女性として穢されようとも。

 

  神は救ってなどくれないだろう?

 

 誰かが言う。

 それはそうだとわたしは頷いた。

 神は誰の味方も出来ないのだから仕方ない。

 唯一、神の敵の敵には手を差し伸べるのだと思うのだ。

 だからわたしはこれでいい。

 神は手を差し伸べてはくれなかった。

 それはきっと、相手はこんなのでも主の味方だったということなのだろう。

 

  燃えてゆく。

 

 自らが、尊厳が、生きた日々が。

 死んでしまえと叫ぶ民の声が胸に刺さる。

 わたしは泣いているのだろうか。

 ……だとしても、それは自らの生にではなく、焼ける痛みにこそ泣こう。

 わたしはまちがっていなかった。

 わたしまでもがこの生を否定したら、誰がわたしを救えるというのか。

 死後に撤回された魔女という誤解も、与えられた聖人としての栄誉もいらない。

 わたしはただ、わたしとして───

 

  沈んでゆく。

 

 景色が赤い。

 赤くて、黒い。

 それを自覚すると、ああ、自分はあの淀みに飲み込まれているのか、と理解した。

 見せられていたのは過去だ。

 努力も虚勢も全部飲み込まれて、砕かれて、燃やされたいつか。

 清くあれと願われたことだって、聖人と認められてからだ。

 なにもかもが遅すぎて、なにもかもが叶わなかった。

 生きているうちに自分が聖人と認められていたなら、この想いも神に届いたのだろうか。

 なににも味方できない主よ。

 わたしは───

 

「だからさ。神なんか信じるもんじゃねーって言ってんでしょうが」

 

 え───? と。

 心が驚きに染まった瞬間、見ていた景色が一気に巻き戻った。

 男がわたしに覆いかぶさった瞬間、その男の股間が背後から蹴り上げられ、吹き飛ぶ。

 

「老若男女平等粉砕! 正しきを唱えつつ穢すことしか能がねぇ野郎どもに地獄を僕が大・進・呈! ……とりあえず男女差別しないならエロスもやめようやマイシスタ。あ、シスタ関係ねぇや」

「なっ……何者か貴様っ!!」

「俺か! 俺は───南葉高校の超新星、剣道部の田中だ!」

「タナッ……誰だ!?」

 

 男たちが叫ぶ。慌てる。

 けれどその人はゆっくり歩いて一人一人をボッコボコにして、

 

「ブリュンヒルデ、よろしく」

 

 衣服が破れたわたしに、服をくれた。

 ブリュンヒルデ、というらしい。

 わたしの体に纏わりつくと、服の形になってくれた。

 

「さぁて、聖杯の泥の影響で、キミの過去がちょっと歪んじまってるようだけど……私は一向に構わんッッ!! んじゃあこの、“キミが見た過去”を変えよう。実際に起きた過去は変えられないけどね、カレンも桜もこうして救った。あ、あとで俺の過去も見ることになるかもだけど、気にしなくていいからね? 他愛ない他愛ない」

「え、あ、あの───」

「大丈夫、アルティメットおじーちゃんにまっかせなさーい!」

「あ───」

 

 その人は駆けた。

 “わたしが経験した過去の光景”の中らしいこの場で、わたしを異端だと糾弾する者を殴り、蹴り、ビンタし、頭突きし、肘打ちし、膝蹴りし、口からレーザーを吐き、目から怪光線を放ち、なんかいろいろな方法で。

 狭い世界からわたしの手を引いて連れ出してくれて、その先で───……

 

「っ……!」

 

 ぐにゃりと、景色が突然、磔の場に変わって、景色が燃え始めた。

 息が詰まった。この場所は、嫌だ。自分の体が燃えているわけでもないのに、苦しい。

 周囲は完全に人に囲まれていて、逃げられないのに炎は迫る。

 

「あーあーやっかましい。キミらね、団結するならもっと楽しい、みんなが笑顔になれるようなことをしなさいよね。さっきから聞いてりゃ神だ神だって」

「ひ、ヒロミツさん……! 炎が……!」

「自分が死んだ原因だもんね、そりゃ怖いよね。けどね、大丈夫。日本にこんな歌がある。悲しみは消えるというなら、喜びだって消える。キミはもう悲しみを味わったんだ、次は喜びがなくちゃ不公平だ。そして、僕ぁそんな喜びをくれない状況が大嫌い」

「でも……」

「主の決定じゃなけりゃ頷けねぇってんならね、それもよろしい」

 

 にこりと笑って、その人は腕に刻まれた紋章のようなものから長く巨大な剣を取り出した。

 けど、それがヒョンと回転させられると、形を変えた。

 

「キミらが神の言うことしか聞かないってんなら。神の僕にしかなりたくねーってんならね。……俺が一時、神になろう。───刮目せよ」

 

 錫杖、だろうか。

 剣がそれに変わると、彼はその底を地面に叩きつけた。

 途端に彼が放つ空気が完全に変わる。

 わたしたちに罵倒を投げていた人達の声も怯えに変わって、やがて声も消える。

 

「ほぅれどうしたの? お望みの神様の氣だよ?」

「おのれ異端者が! 神を騙るかぁああっ!!」

「! ヒロミツさん!」

 

 どうしてか気配が変わった彼へ、怒気を放つ男が矢を放つ。

 

「北斗神拳二指真空把」

 

 けれど彼はあっさりそれを掴んで投げ返して、逆に男を殺してみせた。

 

「わはははははちょいと神氣を創造してみればこれだよ! OKOKやっぱり貴様ら最低だ! ああところで───知ってる? 燃やしていいのは燃やされる覚悟を持つヤツだけだよ?」

 

 殺せ殺せと人が押し寄せる。

 自分が殺された場で、人の殺意を浴びせられたからだろうか。

 わたしは体が動かせなくて、みっともなく震えることしか───そう思った瞬間、一定距離に近づいた男の一人が燃え上がり、燃え尽きた。

 

「っ……ひろ───」

「大丈夫。安心おし。今までよぉ頑張ったなぁ。神に振り回されて、頑張ったのに否定されて。なのにその神はなにもしてくれなくて、人々の説得さえしてくれなかった。人はキミを嘘つき呼ばわりして、異端者扱いして、最後はキミという存在を穢し尽くした」

「……、……」

 

 知らず、彼の服を掴む手に力が籠った。

 違うのだと否定できたはずなのに、想いが彼から流れるたび、それを否定できない自分が居た。

 神の言葉が無ければ、ただ静かに農家の娘として暮らしていた筈だった。兄や妹、両親たちとただ静かに。

 神を信じ、信じることを貫き通したのに、なぜ神こそを信じる者に殺されなければならなかったのだろう。

 ただ互いに神を信じ、主の下で手を繋ぎ合えていれば、戦などせずに済んだのに。

 ならば信じた神とは。

 そんなものは、わたしが見て、声を聞いた神と同じく───

 

「でもね、ジャンヌ」

 

 わたしとなんら変わらぬ、人によって神であれと押し付けられただけの、“人の意思”だったのでは───

 

「言った通り、俺は、キミを信じるよ」

「───」

 

 矢が放たれる。

 それを、彼は影から伸ばした腕で叩き落として見せた。

 

「この博光が、聖女でもなんでもねー、農家で生まれたおなご、ジャンヌ・ダルクを信じましょう。キミは正しくキミであれ。周囲の言葉なんざ無視していいんだ。聖女でなくてよろしい。教養足らずで騙されたキミでもいいのだ。僕はキミを信頼し、キミを───」

 

 裏切られるまで裏切らない。

 そう言って、彼はわたしの頭を撫でた。

 他人にやるようなものではなく、ひどくやさしく、そして……温かな、ずっと昔に置き去りにしてきてしまったような───家族の温かさが、そこにあった気がした。

 家の手伝いをして、汗水たらして、扉を開ければ……貧しくとも、温かなスープを作った母や、笑って迎えてくれる父が居るような……そんな───

 友達で仲間で家族。

 その言葉の意味が、胸に届いた気がした。

 

「魔女の下僕が……! 奇怪な術を使いおって! 殺せ! 殺せぇ!」

「あーあ、言っちゃった。それ言ったら、もう殺されても文句は無視するよ? 俺が見る全ての者は俺と平等だ。相手が殺すって言ったら俺も殺す。遊ぼうと言ったら遊ぶ。上下なんてねぇのよ。汝ら、等しくただの人であれ」

 

 胸に熱いものが込み上げてきて、不安がやさしさに包まれると、我慢する暇もこらえる時間もなかった。

 ぽろぽろと涙はこぼれて、視界は滲んで。

 そんな世界の中で、彼は錫杖を巨大な剣に戻すと、それを二振りの剣に変換。

 

「紅蓮に炎、蒼碧に光。連ねて一つの力と為す。んじゃあせめてゴッドらしくこう……“光あれ”(シャイニングフレア)!!」

 

 彼がそう言って、再び一つの巨大長剣になったそれを翳すと、そこから眩い閃光が放たれた。

 人々はその光に驚き、しかし魅入った瞬間には燃え上がり、爆裂した。

 悲鳴を上げる暇さえない。

 剣から放たれた光に当たると爆発する能力だったらしい。

 

「おっほっほっほ~、燃える覚悟もねぇヤツが誰かを燃やすなど。しっかし下衆がよく燃えるってほんとなんかね……まあ、これでクズどもは消えましたさ。弱気退散! よいことです」

「……、え……?」

 

 震える体でみっともなく彼に抱き着いていたわたしは、燃えて消え去り、静かになった景色を見て呆然とした。

 自分を殺すであろう記憶が、眩い光によって自分が救われる世界に塗り替えられたのだ。

 

「………」

 

 歓喜の祝福を思い出す。

 知らず、なんらかを呟いたのに、その言葉がなんだったのかが思い出せない。

 

  眩い光が目を閉ざさせ、気づけばまた……赤に居た。

 

 見たこともない景色。

 そこに降り立って、掴んでいた筈の彼を探した。

 不安が溢れると、服……ブリュンヒルデが心を癒してくれる。

 そんな温かさに救われるのも束の間、景色は変わった。

 誰かの視点で世界は動き、見たことのない景色が次々流れる。

 とても平和で、不安はいつの間にか弱まって。

 

  けれど───……その先に、絶望があった。

 

 その記憶は希望と絶望、信頼と裏切り、そして忘却で出来ていた。

 視点の主の感情が叩き込まれて、苦しくて、悲しくて、涙を流しながら吐いて、口が勝手にごめんなさいと唱えていた。

 四肢を八つ裂きにされた。

 磔にされて魔法の実験台にされ、幾度となく焼かれ、磨り潰された。

 生きたまま頭蓋を割られ、生きたまま心臓を引きずり出され、それらを磔にされ、見世物にされた。

 脳を抜き取られ、空いた頭蓋に硫酸を流し込まれた。

 死んでも生き返るからと水の中に沈められ、一週間放置された。

 生きたまま鳥葬し、血肉を食わされた。

 逆さ吊りにされ、股からゆっくり切り裂かれた。

 爆薬を飲まされ、内側から爆破させられた。

 思いつく限りの拷問を受けてもなお死なぬ体で、それは生きた。

 助けてくれた人が居たのだ。

 その人にとても感謝した。

 感謝して感謝して───その人が、人々に殺されたことを知った。

 

  長い時を生きた。永い刻を生きた。

 

 争いの絶えない世界を見守り、時に人を救って、時に人を殺めて。

 やがて世界の最果てへと到り、それは世界によって弾かれた。

 それからそれ……彼は、世界の“こうであれ”を見なくなり、人の“こうでありたい”を見るようになった。

 人の言う神を信じなくなり、神と名付けられた誰かは信じて。

 ただし押し付けず、それらがそうでありたいと願う姿を見ては笑っていた。

 

 ……ああ、そうだ。

 神は居る。

 信じることが出来る。

 主は見捨ててなどいない。見捨てられてなどいない。

 真に見捨てられていたなら、救われるわけもなく。

 そして……信じる者の一人一人が神の姿を知らぬというのなら、それでいいのだ。

 わたしも、いつか見た神の姿など覚えていない。

 声とて遥か過去に置き去りにしてしまった。

 ただ信じ、ただ歩いた。

 正しくあろう、神を信じよう、主の祝福のあらんことを。

 神は居るのだ。

 人を救えぬ神だ。

 代わりに人に信仰心を与え、導となる。

 ひとりひとりに信じる神の像があって、それらの集合体として神が象られるというのなら。

 わたしの神は───わたしの主は。

 

 

───……。

 

 

……。

 

 聖杯が発動し、中の泥が溢れ出した。

 まずは海魔が飲まれ、溶け、息絶えた。

 雨生龍之介はその後、聖杯から切り離されたが肉塊のまま血肉を撒き散らし続けた。

 意思を通して雨生龍之介と会話を試みるも、生と死にしか興味のない肉塊としてしか機能しておらず、その奥にあった彼の遺志さえそれで占められていたため、スキル・超巨大化を実行した中井出がソレを掴み、究極生命体といえば宇宙でしょう? と、空の果てまで投げられ、宇宙空間へ。

 やがて凍り付いて停止し、再生能力も無くなったため、死んだことに気づかないまま血肉に喜びを得ながら死亡した。

 

 一方、泥が溢れ出した冬木は相当なパニックになり、炎が溢れ、人を、町を焼いた。

 特にその炎は人を飲み込み、まるで様々な殺し方を試しているかのように、人を追う。

 火で行なえる殺人の様々が試されようとして、けれどそれをサーヴァントたちが救う。

 炎はまるで呪いのように町をしつこく焼いたが、抜き取られた聖杯のバックアップもなくなったからだろう。サーヴァントらの消火活動により、少しののちに鎮火。

 しかし、万能の願望機と呼ばれたものが叶えたものが、生易しいわけがない。

 当然死人は出たし、その願いの醜悪さに、サーヴァントもマスターも口を押えたものだ。

 町は焼かれ、人は助かりたいと声を上げて死に、そこに絶望が生まれた。

 

「私たちは本当に……あんなものに願いを……」

 

 セイバーが呟き、一人でも救おうと駆けた。

 焼けた場所を、火が残る瓦礫を蹴り。

 

「誰か……誰か居ないのですか! お願いだ! こんなっ……私はっ……!」

 

 けれどそこは地獄だ。

 死と生の在り方を望んだ殺人鬼と、神を憎んだ男と、火で焼かれた娘の苦悩と、絶望と忘却を身に宿した男の黒さを吸い取り溢れた泥が生み出したもの。

 どうあれ聖杯に溜まっていたものなのだから、誰が願いを口にしたところで災害は起こっていたのだろう。

 

「欲が絡むとやはり、人などろくなことはしないな……。こんなものが願望機などと、よくも戯言を吐けたものだ」

「ギルガメッシュ殿……いや、今は一人でも多く救うことが先決。このザイード、多数の人格とともに探して参りますぞ」

「…………チッ、このような事態を招いたアインツベルン。いっそ潰してくれようか……? 我の庭を一部といえど穢した罪は重いぞ、下郎どもが……」

 

 それが想像できるからこそ、セイバーは……いや、この聖杯戦争で召喚されたサーヴァントと、自らこそが聖杯をと願っていたマスターは歯噛みした。

 “これは、自分たちが起こした災害だ”と、嫌でも自覚させられたからだ。

 

「坊主! どうだ!」

「っ……だめだ……! もう、ほとんど……! くそっ……ちくしょうっ……! なにが願望機だっ……! 人をなんだと思ってんだ……! 馬鹿にしやがって……!」

 

 だから生存者を探した。

 中井出が降らし始めた癒しの雨の中、地を蹴り息を弾ませて。

 

「ランスロット卿! そちらは!」

「ディルムッド殿か! ……いや、もはや……」

「~……!」

 

 あの男なら生き返らせることくらい出来るのだろう。

 けど、それとこれとは話が別なのだ。

 

「っ……、っ……!」

「切嗣、やめて! 手が焼けてっ……!」

「だめだ……! 瓦礫の下に居るかもしれないんだ……! 救わなきゃ、僕は……!」

「切嗣……」

「……マダム、仕方ないさ。こんな光景を見せられちゃあな。まるであの日の夜だ。火が放たれて、知り合いが死徒になった。……足掻かなきゃ、やってられないんだよ、そいつは」

「ナタリアさん……」

「ケリィ……」

「シャーレイ、お前も目に焼き付けておけ。人の好奇心の先には、いつだってこんな地獄が存在する。魔術師の好奇心の先には付き物だっていっていいくらいだ」

 

 癒されるのを座して待つなど出来るはずもない。

 まだ生きていて、苦しんでいるのなら、救わずにいてなにが英霊か。

 いや、英霊がどうとか以前の問題なのだ。

 

「私はまた……こんなことを繰り返して……!」

 

 瓦礫と死体が積み重なる光景を見て、カムランの丘を幻視したのかもしれない。

 セイバーは表情を歪め、視界を滲ませ天を仰いだ。

 泣くな。

 そんなことをしている場合ではないのだ。

 どうせ居ないと諦めたくなどない。

 一人でも救って、私は───

 

 

 

───……。

 

 

……。

 

 

 その顔を───覚えている。

 

「ハッ!? あ…………皆さまぁああーーーーーっ!! おりました! おりましたぞぉーーーーっ!!」

 

 貌に白の仮面をつけて、“生きている人間を見つけ出せた”と、心の底から喜んでいる男の姿。

 

「アサシン! っ……その子が……!」

「でかしたぞアサシンよ! 坊主! 貴様ヒロラインで回復の術を覚えておったな!」

「もうやってるよ! アインツベルン! お前も手伝え!」

「え、ええっ!」

「よかった……! 生きてる……生きてる……! 生きてる……!!」

「ケリィ……」

 

 それが、あまりにも嬉しそうだったから。

 まるで、救われたのは俺ではなく、男の方ではないかと思ったほどに。

 

「私も一歩間違えれば、こんな世界を望んでいたかもしれんのか。つくづく、人間というものは……」

「綺礼……人の欲に、果てなどないのかもしれないな。私は少し……魔術師として、というものを……見直してみようと思う」

「時臣師……」

「根源に迫ることも出来た。これから先には、踏み込み過ぎない方がいいのかもしれない」

「………」

「……気休めにしかならないだろうが。一人でも救えて……本当に、よかった」

「同感です。素直に……そう思えます───」

 

 ───そうして、死の直前にいる自分が羨ましく思えるほど、その人たちは何かに感謝するように、ありがとう、と言った。

 

 見つけられてよかった、と。

 

 ひとりでも助けられて、救われたと。

 

 日常が地獄に変わって、誰かの悲鳴にごめんなさいも呟けないまま、耳を塞いでは歩くことしか出来なかった。

 

 そんな自分に救われていい理由なんてあるのか、なんて思いながら───

 

 自分はたしかにこの人たちに救われ、この人たちの心を救えたんだと……そう、思った。




 ■べつに飛ばしても私は一向に構わんッッ!! って感じのキャラ設定。

 ■中井出博光───なかいでひろみつ
 *凍傷のオリジナル小説、天地空間に登場する自他共に認める外道。
 *外道の意味は数あれど、とりあえず木端な外道。みみっちい。
 *元はただの提督と呼ばれる一般人。凡人。提督といっても艦これとは一切関係ない。
 *かつての級友に巻き込まれる形でファンタジーを知り、踏み込み、受け入れた。
 *幼い頃に自分を庇ったことで祖母が目の前で死亡、両親も殺され、祖父も殺された。胸に抱いていた夢は“賑やかさに囲まれながら、祖父母のような老人になりたい”だったが……
 *精霊に操られて、空間世界の住人を大勢殺した経験がある。操られながら最後に手にかけたのが老夫婦であり、憧れた夫婦像であったため、操られながらも慟哭。けれどそのまま、何十回目になるかわからない結婚記念日を祝っていた二人を殺した。今日まで一緒に居てくれてありがとうと伝え合い、一緒に育てようと用意した鉢植えを血で濡らして。その頃から左目は赤で染まっていて、消えない。
 *怨敵をブチノメすために、人の力じゃ解放出来ない武器を強引に解放。人ではなくなった瞬間に自分のことも忘れ、亜人と融合状態になって不老不死になる。そののち、拷問、実験、遊びと称したものの“残酷”の大半を、身を粉々にされながら経験してきた。
 *元の世界で覚えてくれている人がほぼ居ない。
 *出来ないことがほとんど無いが、能力のほぼすべてが武具によるものであり、彼自身は武具の意思を読むことくらいしか出来ない。つまり武具が無ければ何もできない激烈雑魚。
 *武具の全てがいろいろな神話だとか逸話にちなんだものであり、大半はニーヴェルンゲンの指輪に由来する。

 ■武具
 *ともにゲームをプレイした仲間たちの武具すべてが融合された、巨大長剣。
 *名前は稀紅蒼剣(きこうそうけん)ジークフリード。赤と青が混ざった巨大長剣であり、刃渡り4メートルほどの伸縮自在の意思ある武器。その剣に仲間たちの武具も意思も全てが刻まれているため、剣の墓碑と書いて剣碑と呼ぶ。
 *中井出自身は無機物等に宿った意思を読む能力しか無いため、武具がなければ宿っている意思とも会えないし、なんにもできない。
 *意思を読み取る器詠の理力もろくに使いこなせる才能もなく、冥界で家族の魂を使って作られた鎌を融合、家族の助けがあって初めてまともに使える。つくづくこやつ単体じゃなにも出来ない。
 *服はファンタジー世界の村人の服っぽいが、変形可能な意思ある防具ブリュンヒルデであり、村人の服のくせに防御力は異常。
 *篭手がファフニールという拳武器だったりして、当然というべきか、背中は常に弱点。
 *具足はドンナーという雷を纏う装備。稲妻反転蹴りとか出来る。いぶし銀。

 ◆宝具
 *剣碑に眠る刻剣思念───けんひにねむるこっけんしねん/ユグドリュアスブレードグリフ
 自分の中の世界、ヒロラインに相手を引きずり込んでみんなでリンチするようなもの。
 剣に刻まれた仲間とともに生きた、絆を大事にした男の能力。

 *万象担う灼碧の法鍵───ばんしょうになうしゃくへきのほうけん/スピリッツオブラインゲート
 自分の中の世界、ヒロラインに生きる者から力を借りて、自分一人を強化、戦う能力。
 自分の能力、スキルだけじゃなく、精霊や妖精や、果てはモンスターの力も借りるので普通に外道能力。

 *我が意思こそが無限の自由───アンチェイン・グロウリィ
 繋ぎ止められず縛れもしない阿呆どもの宴。
 元は“創造”を得意とする仲間の能力であり、“自分にとって都合のいい世界”を創り上げる能力。

 *掌の楽園───てのひらのらくえん/ポケットエデン
 番外。魔力やら癒しやらがほぼ無限に湧き出す楽園の出口。
 効果は弱いが、ハサンのしるしに込められた常時微弱回復宝具。

 *其の名に幸荒れ───そのなにさちあれ/リネーム
 番外。大干渉宝具。人の産まれた歴史から未来まで、その者の名前を変える能力。
 変えられた時点で記憶は残るが世界からは別人とされ、たとえばその名に宿る弱点などを消せたりする。
 例:ジークフリードは背中が弱点なら、名前を変えればジークフリードではなくなるため、弱点が消える。
 Fateではジークフリートだが、中井出の武器はジークフリード。
 なお、名前である“其の名に幸荒れ”の“荒れ”は間違いではない。
 何故って、名前を変えても良いことなんてあまりないから。
 そして主に持ち主の馬鹿者が遊びにしか使わないため。

 *器詠の理力───きえいのりりょく/バストラルフォース
 器を詠む力。ものに宿った意思などを読み取り、具現化出来る。
 それ故か、初めて手にしたものでも意思さえあれば使いこなせる。
 ファンタジーに触れる前、なんの才能もないくせに、機械にだけはほんのちょっぴり強かったのはこのため。


 ■ジャンヌさん
 中井出の剣碑を拠代に召喚されたジャンヌ・ダルク。
 普通のルーラーな彼女よりも弱点が多く、より人間っぽいかもしれない。
 このジャンヌさんはApocryphaにご降臨なさっておらぬよう。
 外見はApocryphaのままだが、おバカさんと一心同体な剣を拠代にした所為で、やっぱりか弱いところが多い。
 神に導かれたというのに、神はなにもしてくれなかったという悲しい聖処女。
 神を信じ神に裏切られた、と言われている。
 人を信じ人に裏切られ続けた中井出とは、なんだかんだ相性がいいらしい。
 一定以上の強い火が苦手で、川も苦手。それぞれ、己が焼かれ、遺灰を流されたから。

 ■武具
 *万象大樹の戦癒旗───ドリアードラポー
 中井出に授けていただいた、軽くてデカくて強くて癒す旗。
 握る部分は大樹ユグドラシルの枝。
 旗はマナの糸で編まれていて、振るうとマナの粒子が出てきてなんか綺麗。
 マイナスイオンが溢れ出る。めっちゃ溢れ出る。
 先端が鋭い螺旋状な枝なので、槍としても鈍器としても使用可能。

 ◆宝具
 *永遠に消えぬ光の御楯───とわにきえぬひかりのみたて/リュミノジテ・エテルネッル
 自分の信じた神の属性に寄る守護の力。
 その時信じている神によって効果が異なる。
 中井出の場合は力と防御と速度が上がる。とりあえず強化して物理で潰せ。

 *剣碑を撫ぜる聖女は此処に───けんひをなぜるせいじょはここに/シュプリーム・ルーラー
 中井出スキル使用可能。
 剣を拠代に召喚されたため、剣から能力を引き出せる。
 ランクは下がるが宝具も発動可能なため、無敵ジャンヌさんになれなくもない。
 ただし宝具を使った場合、それぞれペナルティ有り。
 使用から3分経過したら“自爆”が発動したりとか。

────────────────────────

◆ネタ曝しです。

*剣道部の田中
 今日から俺は! より、剣道部の田中。頭が悪いらしい。

*北斗神拳二指真空把
 にししんくうは、と読む。
 北斗の拳より。
 飛んできた矢を人差し指と中指で止めて、相手に投げ返す。

*弱気退散───じゃっきたいさん
 はい! 吾郎さん!
 ほんとうにあった怖い話より、イワコデジマイワコデジマ! ほん怖、五字切り!!

*究極生命体
 ジョジョ二部より、カーズ。
 死にたくても死ねないので、そのうちカーズは考えるのをやめた。

*稲妻反転蹴り
 ガーディアンヒーローズより、燻銀次郎の技。
 ニコレ・ニールの画面端バリアーは反則だと思うの。



◆あとがき
 やっぱり日常回は次回へ。
 ええ、もうちょっとだけ続きます。あと12~14万文字くらい。

 今回は一万文字程度……いえ、キャラ設定含まなければもっと少ないです。
 いっそこれの前ので纏めちゃってもよかったかもですけど、あんまり長くなると読み辛いので。ええまあ、どの口が……口? どのキーボードが言うんだって話ですが。
 ではでは次回。シロウくんや皆さんがちょっぴり救われたあとのお話。
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