蒼の薔薇は急に登場します。
ナザリック第七階層、溶岩によって満たされているこのエリアの奥の神殿“赤熱神殿”にデミウルゴスとシャルティアがいた。
デミウルゴスは何やら要項が書かれた紙を持ち、隣に立っている大きな下僕に話しかけている。
その下僕は頭が象で、オークを大きくした身体を持ち、杉のような尾を垂らしている。
腕は丸太程の太さで、手は華奢なデミウルゴスならすぐに潰せそうな大きさだ。
そんな下僕にデミウルゴスは優しく説明する。
「さぁベヒモス、君の仕事は王都で暴れることだ。けれどあまり無抵抗の人間を殺してはいけないよ?対抗してきた者だけを圧倒的に潰しなさい」
ベヒモスは圧のかかった声で答える。
「わかりました。このベヒモス必ずアインズ様とセラフィス様のお役に立ちますことを誓います」
デミウルゴスは企みを含んだ笑みではなく、純粋な笑顔をみせ頷き、シャルティアに声をかける。
「シャルティア、こちらは準備が出来ましたよ。そちらはいいんですか?」
「いいでありんすよデミウルゴス。しかし私もアインズ様の役にもっと立ちたいのでありんすが…付いていったらダメでありんしょうか?」
「ふむ…。私も仮面をつけることだし、大人しくしていただけるのなら構いませんよシャルティア」
「そうでありんすか!?大人しくしておくから連れて行っておくんなまし!」
「わかりましたよ。ではシャルティア、ゲートをお願いします」
シャルティアが王都へと繋がるゲートを開き、ベヒモスが先に入っていく。
「あぁ、実に楽しみです。一体どれほど抵抗してくれるのでしょうか…」
狂気じみた笑みを写す仮面をつけたデミウルゴスとシャルティア、それに悪魔型の下僕達は自らの出番を今か今かと待っていた。
賑やかな市場では今日もたくさんの人が行き交っていた。
そんな中、一人の男が空を指さして声をあげる。
「お、おい!あれはなんだ!?」
周りの人も男の指さした先を見る。
そこには巨大な影の渦が出来ていた。
影は何もかも飲み込んでしまいそうな程真っ黒で今にも王都を吸い出してしまうかのように思える。
人々はしていた事をやめ、皆が城門から影を通じての様子を窺いにいった。
どうやら貴族や王も影に気づいた様で兵隊を出動させており、兵士達は市民に自分たちの家に戻るよう指示している。
一方冒険者達も王国に雇われた形で銅からミスリルまでの様々な冒険者がモンスター対策で警戒していた。
兵士達が準備を整え、誰かが近くに様子見に行こうと思ったその時、影が蠢き中からモンスターが出てきた。
そのモンスターは平原に降り立つと、未だ残る影の方に両手を伸ばす。
すると影から2本の斧が落ち、それを掴む。
ふた振りほど素振りすると、そのモンスターは恐ろしく低音の声をだす。
「我はベヒモス。魔王の命よりこのリ・エスティーゼ王国を滅ぼさせてもらう。それが嫌ならばとくと抵抗して見せよ」
魔王という名前とその圧倒的なオーラを放つモンスターに恐れた人々は徐々に中へ逃げ込もうとする。
兵士達は現れたモンスターのあまりの恐ろしさに全く動けずにいた。
そんな中冒険者達はすぐさまモンスターの危険を察知し、中には侵入させまいとモンスターに突撃していった。
最初に突撃したのは集まった冒険者達の中でも一番級の高かったミスリルのチームだった。
6人で構成されたそのチームの前衛役2人が、ベヒモスへと剣を振りかざす。
対するベヒモスは全く避けようともせず仁王立ちしていた。
後衛の魔法詠唱者に強化をふんだんにかけられたその一撃はベヒモスの両腕に突き刺さる…筈だったのだが、結果は傷をつけることもなく、弾かれる。
「なっ、なら魔法なら!」
前衛2人はすぐに退避し、合図を受けた魔法詠唱者は《火球》を放つ。
放たれた火球をベヒモスはまたも避けようとせず、顔に直撃する。
「やったか!?」
しかしベヒモスは顔を振るだけで火を振り払い、何事も無かったかのようにまた仁王立ちしている。
「まだだ!」
前衛2人は何度も切りつけ、後衛は魔法で攻撃し続ける。
「煩い」
今まで何もしなかったベヒモスが両手の斧で前衛2人を地面に叩きつける。
水風船が弾けるような音がして前衛2人はすぐにミンチになってしまった。
「お前達の強さは分かった。ではこちらから行かせてもらう」
そう言ってベヒモスは斧についた血を払うと、門へと歩を進める。
周りでは必死に冒険者達が魔法や剣で足止めしようとするが全く意に介しておらず、ベヒモスはすぐに閉められた門へとついた。
ベヒモスは片方の斧を振りかざすだけで門を破壊し、王都へと侵入していった。
ベヒモスはデミウルゴスの命令より城へと進んでいく。
途中で邪魔をしてきた兵士や冒険者達を斧で叩き潰し、城へと行くと城門の前にまたもや冒険者が立ち塞がる。
先頭に立つ冒険者達は今までの雑魚とは少し違うようだった。
「蒼の薔薇の方々よ!あれは桁が違います!どうかお気を付けて!」
どうやら冒険者の中でも上位の者達らしいそのチームのリーダーは声をかけた兵士に微笑み言う。
「大丈夫です。私達が絶対守りますから。」
ベヒモスの前に立ち塞がった蒼の薔薇のリーダーはメンバーに指示を出していく。
「ガガーランは前衛でティアとティナは陽動、イビルアイはサポートよろしく!」
「おう!」『了解』「わかった」
メンバーは口々に答えて行動し始めた。
まず男と言っても差し支えない大女のガガーランが巨大な刺突戦鎚“鉄砕き”でベヒモスの両手の斧と打ち合い、忍装束のティアとティナはガガーランが凌げなかった斧を忍術で防ぎつつ目くらましなどを行い、仮面を被っているイビルアイが魔法を打って攻撃する。
さすがの怒涛の攻撃にベヒモスも押されつつあった。
「かぁ!」
ベヒモスは距離を空けるために、斧を地面に叩きつけ衝撃波を放つ。
全員が衝撃波を避け、再び睨み合う形になった。
「お前達はなかなかやるようだな」
イビルアイが答える。
「モンスターが話しかけてくるとは…お前は一体何だ?」
「私はベヒモス、暴飲暴食の権化なり。魔王の命によってこの王国を滅ぼしにきた」
「魔王だと…?」
「お前達はなかなかだ。だから私も本気でお前達を潰そう」
ベヒモスはそう言い放つと、ガガーランへ突進し二斧の振り下ろしによる渾身の一撃を叩き込む。
「くっ!」
予期していなかった速さの突進に、対応が遅くれたガガーランは無理矢理刺突戦鎚を振り上げる。そこにティアとティナが割り込み《不動金剛の盾》を発動させベヒモスの一撃を受ける。
しかし二人がかりで術を使ったにも関わらずティアとティアはガガーラン諸共吹き飛ばされ壁に激突した。
「っくらえ “超技・暗黒刃超弩級衝撃波(ダークブレードメガインパクト)”!!」
リーダーのラキュース・アルベイン・デイル・アインドラの持つ魔剣キリネイラムから放たれる無属性の爆発がベヒモスを包み込む。だがベヒモスは倒れない。
「これも効かないというの!?」
イビルアイが続けて魔法を放つ。
「これならどうだ!《ぺネトレートマキシマイズマジック/魔法抵抗突破最強化》、《クリスタルランス/水晶騎士槍》!!」
自らの負のエネルギーを暴走させ、魔法に負のエネルギーを乗せて結晶槍をベヒモスへと放つ。
ベヒモスは結晶槍を打ち消す為に魔法を放つ
「《龍電/ドラゴンライトニング》」
雷の龍は放電しながら結晶槍に激突し、お互い消滅した。
「なっ!魔法も使えるのか!?」
「オオォォォ!」
ベヒモスは咆哮をあげ、イビルアイとラキュースを斧で吹き飛ばす。
「くっ私達を守れ!“浮遊する剣群(フローティング・ソーズ)”」
ラキュースの周りの浮遊していた6本の黄金剣がラキュースとイビルアイを守るために前面で壁となる。
しかしベヒモスの一撃を耐えれる程ではなく、二人とも簡単に吹き飛ばされてしまった。
ベヒモスはラキュース達が動けなくなったのを見て、城の中へと進んでいった。
ラキュースは壁に激突した衝撃で意識が朦朧としながらも必死に城に侵入していくベヒモスへと手を伸ばす。
「私は…まだ…」
だが身体は動かない、意識が薄れていくなか誰かが近づいてくるのがわかった。
しかし、姿を確認する前に意識は暗闇の中に落ちてしまった。