城の中に侵入したベヒモスはデミウルゴスの命より王を探す。
ワラワラと足止めにくる兵士や冒険者をひたすら切りつけ、叩き潰していく。ベヒモスが通った道の後にはおぞましい程の肉塊が出来ていった。
ベヒモスは壁に叩きつけられて命を落とさなかった兵士の頭を潰さないように握り尋問する。
「王は何処だ」
「くっ…誰が教えるものか!」兵士は手から逃れようと必死に体をよじる。
「そうか…なら死ね」
ベヒモスは握っていた兵士の頭を思いっきり潰す。
頭を無くした兵士の身体は血を吹き出しながら崩れ落ちていった。
ベヒモスはさらに兵士を捕まえるために進んでいくのだった。
ベヒモスの戦った後を追って城前まで来たアインズとセラフィスは倒れているラキュース達を見つける。
「なかなか派手にやったなぁ…とアインズ君、あれって私達と同じアダマンタイトの蒼の薔薇じゃないか?」
「そうみたいですね、やはりベヒモスにも勝てませんでしたか」
「まぁそれだけ弱いという事だな。…さて、大丈夫か?」
セラフィスはラキュースの元へと行き声をかける。
「ん…」
「意識が朦朧としているな。とりあえず全員ここに集めてっと…」
セラフィスは気絶したいた蒼の薔薇を一箇所に集め、全員に《大治癒/ヒール》をかける。
すると次々と意識を取り戻していった。
蒼の薔薇は互いの無事を確認しあった後代表してラキュースが言った。
「あ…あのあなた達はセラさんとモモンさんですよね。私達を助けてくださってありがとうございます」
「いえ、同じアダマンタイト級として当然です」
回復されて余裕が出来たのか、まずガガーランが質問してくる。
「なぁあんた戦士なのに治癒使えるのか?」
「使えますよ。勿論治癒以外もですが」
「お兄さんすごいね。ね、お兄さん天使ってほんと?」
「お兄さんの長髪真っ白だね、女の人みたい」
「こら!ガガーランもティナもティアも今はそんな場合じゃないでしょう!」
『はーい』
アインズが話を戻そうとラキュースに話しかける。
「それでモンスターの方は何処へ?」
「はい!モンスターは私達を放って城の中に」
「ラキュース、正直に言うとまた挑んだ所であれには勝てそうにないぞ」
イビルアイがボソボソと言う。
「確かに…あれは桁が外れていたわ…けど私達がやらなきゃ王様が!」
「王様は何処にいらっしゃるんですか?」
「え?王様は王座で守を固めていらっしゃる筈ですが」
「わかりました。ではモモン君行くとしよう」
「2人だけでは無茶ですよ!?」
「心配いりませんよ。私達強いですから」
セラフィスは笑顔でそう言った。
「あなた達はここで休んでてもいいですから。モモン君王座の位置わかる?」
「分かるわけないじゃないですかセラさん。城とか入ったこと無いんですから」
「あ、あの!私達なら案内出来ますし5人増えればきっと何とかあのモンスターを倒せるかもしれません」
「では案内お願いしても?もし何かあってもあなた達は守ってあげますから」
上からの言い方に少しムカっときたイビルアイを宥めつつラキュースはアインズとセラフィスを連れて急いで王座へと向かうのだった。
ベヒモスは兵士の頭を潰し続け、10人目にしてやっと王の居場所を聞き出した。
「な、なぁ話したんだから離してくれよ!…あ…やめろぉ…」
ベヒモスは用済みになった兵士の頭を潰した。
「…お前が勝手に喋っただけだ、助けるとは言っていない」
ベヒモスは王のいる王座への扉へと到着し、補強してある扉を簡単に斧で吹き飛ばす。
中には貴族達と王がおり、その手前にはまた兵士達が壁のように立ち塞がっていた。
その中の一人、完全武装したガゼフが一番前に立ち剣を構える。
「王へは指1本も触れさせん!さぁ兵士達よ、ここが最後の砦だ…絶対に王を守るぞ!」
『おぉ!』
「無駄なことを…己が無力さを噛み締めるがよい」
ベヒモスは2本の斧を構え、ゆっくりと前に進みだす。
「おぉぉ!」
ガゼフも剣を構え、裂帛の気合いを放って突進する。
「がぁ!」
ベヒモスが左右の斧を交互に振り下ろす。
「くっ!ぉぉ《四光連斬》!」
ガゼフはなんとか即死の一撃を捌き、四連撃を繰り出す。
ベヒモスは防げず四つ全てをくらいよろける。
「まだだぁ!《即応反射》《六光連斬》!」
武技によって攻撃後にまた攻撃出来るようになったガゼフは自分の最高の技を放つ。
瞬間的に六連撃を放つ攻撃にベヒモスは反応出来ず、ダメージの蓄積から膝をつく。
「はぁ…はぁ…どうだ!?」
「…なかなかやるようだな。ならば本気でやらねばなるまい」
そう言ってベヒモスはどす黒い息を吐き出し始めた。
「はぁぁ…スキル《魔力強化解放》」
ベヒモスの身体がボコッと音を立てて盛り上がっていく。
大きさは1.5倍程になり、皮膚は黒く硬質化していった。
「アソビハオワリダ」
ベヒモスは今までが比にならない程のスピードで突進し、ガゼフを斧で薙ぎ払う。
「っ!《流水加速》」武技で脊髄反射を強化したが間に合わず斧で吹き飛ばされた。
「がっ…がはっ…」
壁に激突し、呼吸もままならないガゼフは身悶えする。
ベヒモスはなおもガゼフに接近し、斧を振り下ろそうとする。
「オワリダ…シネ!」
振り下ろされる斧をどうすることも出来ないガゼフは、死ぬ覚悟をしながら目をつぶって自分を振り返る。
「最後にセラに会っておくべきだったな…」
「呼んだかい?」
目を開けるとセラフィスがベヒモスの斧を剣で受け止めていた。
「セラ!?どうしてここに!?」
「細かいことは後だよ、モモン君!」
「はぁ!むっ!?」
セラフィスに呼ばれたアインズはすぐさま2本のグレートソードを抜きベヒモスの胴を横薙ぐ。
しかし強化されたベヒモスの体は分断出来ず、弾かれる。
「グッ…シャァ!」
ベヒモスは空いている左の斧をアインズ振り下ろす。
アインズは2本のグレートソードで振り下ろしを受け止める。受け止めた衝撃でアインズの足元が陥没した。
セラフィスはアインズが戦っていた間にガゼフを運びアインズ達の戦闘に魅入っていたラキュース達の元へ連れていく。
「酷い傷だな。《ヒール》!」
セラフィスが魔法を唱えると、死にかけていたガゼフの傷が全て一瞬で治る。
「セラ…すまない」
「いいんだガゼフ。ラキュースさん!ガゼフを頼みます」
そう言うとセラフィスはベヒモスの元へ突進していく。
「一瞬で治すとは…あの人はいったい?」
ラキュース達の疑問が残る中、セラフィスは自分の剣【Ciel Sanctuary/天空聖域】を抜き、ベヒモスの片腕を落とす。
「オノレ…ユルサヌ、ユルサヌゾ!」
ベヒモスは残りの手に残る斧を放り投げ、更なる強化スキルをかける。
「スキル《魔力強化完全解放》」
ベヒモスを黒い靄が包み、身体がまた大きくなり切り飛ばした腕の断面からも急速に腕が生えてくる。
ついに四足歩行となったベヒモスの頭には禍々しく鋭利な角が生えて、まさに邪悪のモンスターとなったベヒモスはセラフィス目掛け突進をする。
「させるかっ!《パーフェクト・ウォーリアー/完全なる戦士》」アインズがセラフィスの前に立ち、魔法を唱える。
この魔法でレベル100の戦士となったアインズはグレートソードを構え神速の一閃を放つ。
ベヒモスの突進とアインズの一閃が激突し、両者が止まる。
先に動いたのはベヒモスで、再び振り返ってアインズに突進しようとするがそこで自分が縦に両断されていたことに気づく。
「ソンナ…バカナァァァ!」
ベヒモスはそれ以上動くことは無かった。
戦いの始終を見ていたラキュース達はセラフィスとアインズの強さに魅入っていた。
「…なんて強さ…」
「あれが英雄かよ…」
「やばい」
「やばい」
「…アインズ様カッコイイ」
『…え?イビルアイ?』
イビルアイの衝撃の一言にラキュース達が驚くなか、急に拍手が響き渡る。
音の出処を探すと、またも黒い影が開き中から仮面を被りスーツをきた悪魔と同じく仮面を被った銀髪の少女ががでてくる。
「いやー、お見事ですね。ベヒモスを倒す者が人間にいるとは」
「お前が魔王か?」
正体を理解しているセラフィスが一応尋ねる。
「えぇ!私が魔王。ヤルダバオトと申します」
ヤルダバオトと名乗った魔王は律儀にセラフィスとアインズに礼をする。
「それで?今からお前達も戦うのか?」
「いえいえ!あなた達と戦って勝てるかどうかはわかりませんので、ここは引かせてもらいます」
ここでラキュースが口を挟む。
「なっ!?めちゃくちゃにしておいて自分で引けるとはおもうな!」
「おやおや、雑魚の癖に随分吠えますね。そんな事を言えるのはあそこにいるお二人だけですよ」
そう言ってヤルダバオトはセラフィスとアインズを指さす。
「でもまぁ大人しく引き下がれるとは思っていません。ではこれではどうでしょうか、私が倒されると、自動的に王都に悪魔の大軍が攻め込みます。果たして防げますかね」
「そんなっ…」
「できませんね?そうでしょう、では今日の所はここで。皆さんまたお会いしましょう」
そう言ってヤルダバオトと少女は影の中に入って消えていった。
落とし所が難しい…