前編。といってもプロローグに近いレベルです。もはや一次創作じゃねえか!帰れ!レベルなので別に読まなくても死にはしません。
閉じた瞼の向こうから、薄ぼんやりとした白が差し込んでくるのを感じる。真っ暗な世界が真っ白に変わったところで、ぱちり、と目を開ける。
「………ん…」
まだ半分夢の中にいるような心地で、頭を持ち上げる。目に入ってきた時計の短針は8を指していた。外の白とその針が、既に朝を迎えたことを知らせていた。
まだ足取りが覚束無いが、目を擦りながら立ち上がる。ただ体を横たえる事だけを目的とされた簡素なベッドが、ぎし、と音を立てた。
ドアを開けると、そこには今いた部屋より広い空間が広がっている。大きめの事務机が2つ、真ん中にぽつりと置かれており、壁には所狭しと本棚が並べられている。本棚の中には大小様々な本やファイルがぎっしりと詰め込まれていた。
「…もう少し早く目が覚めるはずだったんだが…」
誰に言うでもなく、口から言葉を零したのは、白髪の青年だった。名は伊織。白髪に灰青の目、そして白い肌は、雪を思わせる。
伊織は少しはねた髪を抑えながら、机上の書類を手に取った。今日は予定が詰まっているため、前日から泊りがけで仕事をしており、仮眠を取ってまた取り掛かろうとしていたのだが、本人の予定以上に眠り込んでいたらしい。
かちゃり、と音がして、扉が開く。
小柄な少女が立っていた。白藍のボブヘアが、僅かに揺れる。ぱっちりとした蜂蜜色の瞳が、朝日を受けてきらきらと輝いていた。
「おはよう。もう起きてたんだ。昨日も遅くまで作業してたんでしょ?」
「…おはよう。寝たのは4時くらいだった気がする…寝すぎたかな」
「4時まで仕事してたんなら4時間しか寝てないじゃない。寝てなさすぎよ、むしろ」
少女がむっとした顔で答えた。
「だが、もともと昨日今日と2日出勤だったのを、1日半に縮めてもらった以上、呑気に休んでもいられまい」
くあ、と欠伸をしながら伊織が言う。
伊織は現在兼業をしている状態で、週に数回この職場に来て仕事をしている。その出勤日が今週は昨日今日の2日間となっていたが、所用で今日は半日で退勤することになっていた。そのため、2日分の仕事を1日半で片付けようと、こうして泊まりで働いていたわけである。
「そうかもしれないどさ…。でも、もう大分終わってるみたいね」
「ああ。なんとかな。昼過ぎには出られそうだ」
「良かったわね。でも、早く帰りすぎても駄目だし、いつも通り帰っても駄目だなんて、随分注文が多いのね、みんな」
「…全くだな」
この日、伊織が半日で仕事を切り上げるのは、"もう一つの職場"が原因だった。そこに居る仲間達が、今日はどうしてもいつもより早く帰ってきてほしいと頼んできたのである。それなら出勤日を振替にすると提案したのだが、それはそれで不都合らしく、伊織もよく分からないまま今のスケジュールにすることで落ち着いていた。
「まあ、気にしていても仕方が無いしな。とりあえず、残った分を片付けるとするよ」
「それがいいわ。じゃあ、今片付いてる分はもらっておくね」
「ああ、頼む」
伊織は書類の束を少女に手渡し、机につくと、まだ寝起きだというのに早々に仕事に取り掛かった。