ありったけの愛を君に   作:みずい

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エピローグ的な。
まあちょっとラスト意味深にしてみました。

お子様は全員ちらっと出ております。
秋穂ちゃんについては、伊織と長谷部の事情を知る数少ないメンバーの1人として特別出演してもらっております。




後編 4/4

 

「今日はほんとにありがとうございました。また来てね。主も喜ぶからさ」

 

午後9時を回った頃だろうか。明日も仕事のある者も居ることを考慮し、誕生会は終了となった。今は本丸を出ようとする審神者たちを加州が見送っているところだ。

 

「こちらこそ、先日といい今日といい…とても楽しかったです」

「え、桜ちゃんそんな頻繁にこちらに?」

「先日は演練で話が弾んで、その流れでお招きしてもらいまして」

「遠慮しないでまた来てね。次は美久留さんもぜひ」

仲睦まじげな桜と瀬羅に向かって、加州が笑顔で手を振る。次はこちらにも来てください、と桜が深々と頭を下げた。

 

「じゃあ、私達もこれで」

「今日はありがとう!」

彩と紅が2人仲良く並んで帰っていく。またねー!と加州が手を振ると、それに応えるように大きく手を振り返した。

 

「私達も帰りましょう」

「ええ。とても楽しかったわ」

「加州、帰ろっか」

「うん」

薊と紫音の数歩後ろを、美咲がついていくような形になる。美咲本丸の加州もそれに倣った。

「またね、この本丸の俺」

「うん。また、演練か会議の時にでも」

「仕事関係だと多分鶴丸が行っちゃうからなあ。今度うちに来てよ、ね、主、いいでしょ」

「…皆に聞いてみてからね」

二振の加州清光のやり取りを、美咲は微笑ましく思いながら見ていた。

 

「今日はありがとう。プレゼント、気が向いたら使ってちょうだいって伝えておいて」

「私のもね。簪って普段使いする人も多いらしいから」

ちひろとアリスがそう言うと、加州はうん、分かった、と笑う。

「すごく喜んでたし、絶対使ってくれるよ。写真かなにか、送れたら送るね」

「ありがと。じゃあね。…行くわよ光忠」

「うん」

ちひろと、ちひろ本丸の薬研、そしてアリスが並んで歩き、アリスの一歩後ろを光忠がついていく形になって、4人は歩き出した。

 

「私たちも帰ろ!光忠!」

「そうだね」

出遅れたと感じたのか、京花が駆け出す。それに倣って光忠も早歩きでその後をついていった。楽しかったね、と弾んだ声が聞こえる。その声を聞きながら、喜んでもらえてよかったと加州も安堵した。

 

 

「…さて、あとは……あれ?」

「ちょっと待って!」

残りは秋穂と付き添いの鶴丸だけの筈なのだが、先程まで玄関に居た秋穂が、玄関を上がり駆け足で奥へと消えていくのが視界の端に見えた。おい!と声をかけ、鶴丸がそれを追う。

 

「………何事?忘れもの……?」

玄関に1人取り残された加州が、ぽかんと口を開けていた。

 

 

「いおりん、ちょっとええ?」

秋穂が顔を出したのは、先程までどんちゃん騒ぎが行われていた大広間だった。客人も居なくなったところで後片付けに取り掛かろうとしている刀剣男士たちと、伊織がそこに居た。

「…?どうした?忘れ物でもしたか?」

「いや、ちょっと気になることがあってな、こっちこっち」

 

何の用事かもさっぱり分からぬまま部屋を連れ出され、廊下の奥に連れていかれる伊織。

「おい、一体……」

「ええからええから」

「秋の君、何をやって………」

後ろから鶴丸が呼びかけるが、鶴丸は静かにしとって!と制され、なす術なく口を閉ざす。

 

誰もいない、廊下の突き当たり。

秋穂は伊織に顔を近づけ、聞きたいことがあるんよ、と囁いた。

数メートル先でわなわなと震える鶴丸に、疑問符を浮かべる伊織。秋穂は口の端をこれでもかというほど上げて、問いかけた。

 

「……親指のあれ、長谷部にもろたん?」

 

 

「………っ!」

慌てて右手の親指に手をやるも、そこには何も無い。――が、数時間前までは、そこに指輪があった。…正確には、伊織が長谷部と会場に着き、席に座って襷だ冠だと着飾らせられるまでは。

 

秋穂は2人が揃って来た辺りから、持ち前の勘で何かを感じ取っていたらしい。ふと目をやれば彼の手には見慣れない指輪。刀を扱う者として、手指に装飾品の類を着けるのは邪魔になることは分かっている。それは剣を振る伊織とて変わらないだろう。それなのに親指に指輪を着けている。しかも宝石までついて。まさか長谷部が贈ったものなのでは、と(薄々分かっていたものの)気になった秋穂は、今聞かずにはいられなかったのだろう、こうして呼び出してまで尋問しているわけである。

 

「……あー、うん…そうだが」

「やっぱり!良かったなあ!ちらっとしか見てへんけど、めちゃくちゃ綺麗やったし」

「…ありがとう」

伊織が気恥ずかしそうに目をそらす。ふと秋穂の後ろを見ると、鶴丸がなんとも形容しがたい形相でこちらを睨んでいるのが見えた。

「………あの、秋穂。君の恋人が随分と恨みのこもった目で私を見てくるのだが」

「え?……あ!鶴丸!失礼やからやめえって言ったやろ!なんでいっつもいおりんにだけそんな……」

「……五月蝿い、いいから秋の君、そいつから離れるんだ」

「……なんやそれ、訳分からんわあ……」

 

自分の事となると疎い伊織も、他人の事には聡いのだろうか。原因はともかく自分が彼に憎まれていることだけは理解出来た。

「…まあ、なんだ。今日は来てくれてありがとう」

「こちらこそおおきに、今度はうちにも遊びに来てや!歓迎するで!」

「ありがとう」

「ん!ほな、私らも帰るわ!またなー!」

とたとたと廊下を駆けていく秋穂。行くで鶴丸、という声に、ああ、と答えておきながら、その目はまだ伊織を捉えている。

 

「……どうかしたかい?」

「…………負けないからな、きみにだけは」

 

それだけ言うと、踵を返して去っていく。

 

 

「………何を競っているつもりなんだろうか」

 

 

廊下に1人残った伊織は、小首をかしげた。

 

 

 

 

「改めて、お誕生日おめでとうございました」

長谷部の私室で、2人だけでグラスを傾ける。中に入っているのは、琴乃が持ってきたあのシャンパン。月明かりを受けて、淡い黄色が星のように輝いている。

「ん、ありがとう」

 

「……こうして一緒にお祝いできること、嬉しく思います」

「ああ、私も。まさかこんなに素晴らしい会を催してもらえるとはね」

「喜んで頂けて何よりです」

 

数秒の沈黙が流れた。

 

「…何か」

「はい?」

「何か、礼がしたい。せっかくこんないい思いをさせて貰ったんだし……聞けばお前と加州が言い出した企画なんだろう?なら、全員にも勿論するが、お前にも個別に礼をだな」

「…礼、ですか……………」

 

ふむ、と考え込む長谷部。

長谷部がしたことに対し、何かしたい、と伊織から申し出ることは少なくはない。だが、これまでは全て伊織自ら考え、実行する形だった。今回のように、自分の希望を聞かれるのは初めてで、答えがすぐには出てこなかったのだ。伊織も長谷部も、あまり欲が多くないことも関係しているのだろうが。

 

伊織がグラスのシャンパンを飲み干すのと同時に、長谷部に一つの考えが浮かんだ。

伊織が承諾してくれるかは分からないが、彼が望んだことは――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………この後、時間を頂いてもよろしいですか?…下手をすると、明日に響くやも分かりませんが」

「……この後?…明日は非番だし、別に構わんが……」

 

 





※ちょっと意味深なラストにしましたが続きません。
あとは頭の中で適当に補完してください

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