本丸での様子、その2。
千種ちゃん、rikriさん、水野ちゃん宅のお子様をお借りしました。
次まで、本丸の様子が続きます。長くてごめんなさい…
「…ふう」
薊たち4人に買い出しを頼んだところで、安定も持ち場に戻った。
1人残った加州は、仕込みをしている光忠達―料理班を手伝おうと、3度目の正直で、今度こそ、厨へと向かった。
「お待たせ」
「ああ、清光くん!今はとりあえず、晩御飯の仕込みをしてるんだ。秋穂ちゃんの所の鶴さんが苦戦してるよ」
ほら、と言われ示された方向を見れば、秋穂の共の鶴丸が、秋穂の指導の下玉ねぎを切っている。そこから既に苦戦するものなのかと、加州も思わず失笑した。
「わ…笑うな」
「ごめんごめん」
「こら鶴丸、余所見したら指切るで」
「あ、ああ、済まない」
これは今日のメニューの1品、サーモンマリネのための玉ねぎのようだ。側には光忠が切ったのであろう、均等に、美しく薄切りされたサーモンが盛られた器がある。
「じゃあ俺も何か手伝うよ」
「そうかい?なら、このマリネの液を……」
腕捲りをして、手を洗ってから、りょーかい、と軽い調子で言い、彼も作業に取り掛かった。
「あ!加州さんが呼んだ、あるじさんのお客さんだよね!いらっしゃいませ〜!」
光忠達が厨でマリネ作りに勤しんでいる中、玄関には新たな客の来訪があった。
「ええ。呼んでくれてありがとう」
黒髪ポニーテールに、青い瞳。凛とした佇まいの女性が会釈する。加州は厨にいるので、たまたま通りかかった乱藤四郎が出迎えた。
「ええっと……紫音さん、だね。うん、おっけー!」
女性―紫音が提示した招待状に目を通し、指でOKサインを出す。
「…って言っても、確認したあとどうしたらいいかボク聞いてないんだよね…パーティ始まった後なら、真っ直ぐ会場でいいと思うんだけど……」
うーん、と唸る乱に、紫音の傍にいる山姥切国広が、彼女に耳打ちをした。
「…そうね。あの、」
「?なーに?」
「もし良ければ、私達、お手伝いを」
「えっ」
「先程彩さんから連絡が来ていて…買い出しを手伝うことになったと。もし他にも何かあるようなら…」
紫音の提案に、乱がばっと身を乗り出す。
「本当!?それ…ものすっごく助かるよ!ボクの所、会場設営班に何人か回っちゃったから人手が足りなくて…」
「会場設営班」
山姥切が復唱する。
「そう。今ね、いくつかのグループに分かれて作業してるんだ。ちなみにボクはテーブルセット班!会場設営班は、会場全体の飾り付けをする係なんだ。身長高い人はみんなそっちだから、今こっち、短刀と脇差何人かしかしなくてさ」
「成程な……」
「それなら、テーブルセットを手伝うわ」
「ありがとう!じゃあ、案内するね!」
乱がぱたぱたと廊下を進んでいく。その後ろを、紫音と山姥切が着いて行った。
「あれ、誰もいない」
「皆忙しいんじゃない?…すいませーーん」
またも玄関先に現れる人影。ボブカットにした黒髪に、どこか吸い込まれそうな青の瞳。不思議な印象を感じさせる少女だった。
傍らにいた加州清光が、流石に無断で上がるわけにもいかないと、中に向かって声をかける。
「…はい」
声の主は、太郎太刀だった。大きな、しかし彼の体躯から見るとやや小さめにも映る段ボール箱を2箱抱え、玄関に顔を出した。
「あ、こんにちは。私は…美咲。伊織さんのお誕生会に招待されて来ました」
「ああ、主の……ええと、文を拝見しても」
箱を足元に置き、太郎太刀が手を差し出す。
「はい」
隣の加州が、手に持っていた封筒を手渡す。中からカードを取り出して、数秒見てから、また戻す。そうしてそれを、加州に返した。
「…はい、大丈夫です。問題ありません」
「ありがとうございます」
「そうですね、ここでは寒いでしょう。まだ準備中ですので、暫し奥の部屋で待って頂くか……」
「…あ、それなんだけど、俺達、手伝おうと思って早めに来たんだよ。あと、これ」
加州が美咲の方を見る。それに促されるように美咲が手に持っていた箱を太郎太刀に差し出した。
「…これは?」
「ガトーショコラです。伊織さんがお好きだそうなので…こちらの本丸の加州に了承を得て作ってきました」
「そうですか…ありがとうございます。ではこちらはお預かりしますね」
丁寧な所作で箱を受け取った。
「で、お手伝いなんだけど…俺達、何かやることある?」
加州が首を傾げると、太郎太刀は少しの間黙り込んで、それから口を開いた。
「…でしたら、私達の仕事を手伝って頂けるとありがたいです。此方の段ボールを、この道を行って、手前から3つ目の部屋に運んでいただきたいのです。私はこれを料理組に預け次第戻りますので」
「わかりました。行こう、加州」
「うん」
2つ積まれた段ボールを、美咲と加州で1つずつ抱える。2人は歩調を合わせ、目的地を目指した。