本丸、準備中の様子、その3。
1、2で借りたお子様全員再登場してます。
ちなみに今回の班は、
・料理班(班長光忠)
・買い出し班(班長薬研)
・会場設営班(班長堀川)
・テーブルセット班(班長乱)
・企画班(班長安定)
・伊織誘導係(長谷部)←班員無
主催:加州清光/へし切長谷部
となっております。
「ただいま帰りました」
「意外に疲れましたね」
「そうですね…」
美咲が来てから半刻ほどが経っただろうか。買い出し班と薊、彩たち4人が本丸に帰還した。たまたま帰り道でばったり会ったため、全員仲良くここまで歩いてきたというわけだ。
「んじゃ、俺と平野で食材を旦那たちのとこに持っていく」
「お菓子はどうしますか?」
「あー…じゃあ、菓子類もこっちに置いておくか」
「なら、ぼくが持っていきますよ!」
「頼むわ」
買い出し班の班長に任命された薬研藤四郎は、同じ班員の平野藤四郎と今剣を連れて厨へと歩き出す。
「私たちのこれはどうしたら…」
薊が荷物と財布を手に疑問符を浮かべる。
「そちらの荷物は、僕がお預かりします」
「では、お願いするわ」
前田藤四郎が申し出ると、薊と彩が紙袋を彼に渡す。
「すみません、そちらのいち兄と山姥切さんの分の荷物は、僕では持ちきれず……」
「構わない。これくらい持てるさ」
山姥切が平謝りする前田を制する。
「ありがとうございます。では、荷物を持って着いてきてください。小夜くんは、薊様たちを大和守さんの所に案内してください。小広間に居ると思います!」
「…わかった。…着いてきて」
「はい」
「ええ」
6人は3人ずつ二手に分かれ、廊下を進んでいく。
「よし!これで完了!」
サーモンマリネの器と、同時進行で光忠が作っていたローストビーフの皿が並ぶ。
「美味しそうやねえ…」
「すごいな…」
秋穂と鶴丸は感嘆の声を漏らした。
「2人ってなんか似てるね、反応とか。恋人同士なんだっけ」
「んなっ……」
秋穂が耳を赤くする。
「きみの所の審神者はお喋りなんだなあ」
鶴丸が呆れたように言う。
「お喋りなことないよ。仲睦まじくて羨ましいなーって言ってただけだし、俺も何回か2人の話を主から聞いて、そうなんだろうなって思っただけだよ」
「…そ、そうか、悪い悪い…」
加州がむっとした表情で言い返してきたものだから、鶴丸は呆気に取られてしまった。
「ま、まあまあ、そないなことどうでもええやん!それより、次のメニューは……」
「…そうだね、サラダや簡単な料理は粗方出来上がったから、煮込み料理に取り掛かろうかな。ロールキャベツを作ろう」
「おっけー。じゃあ、鶴丸はこれね」
冷蔵庫から玉葱をいくつか取り出して、皮をむいて洗い、ボウルに入れ、微塵切りよろしく!と言って鶴丸の前に置いた。
「…また玉葱か…」
「切ったら挽肉と混ぜる仕事もあるよ」
「…怒ってるのか?」
「いや別に、ただ、経験を積ませてあげようと」
「せやせや。鶴丸も料理覚えたらええよ、これを機に」
「…そうかい」
逃げ場はないと悟ったのか、鶴丸は包丁を手に、玉葱に切れ目を入れ始めた。
「えっとねー、じゃあ次はグラス並べよう!」
大広間は騒がしい。今1番人が集まっているのはここだ。会場設営班とテーブルセット班の作業場がここであり、おまけにそこに紫音と美咲、そしてそれぞれが連れてきた山姥切と加州という、思わぬ助っ人まで加わっているのだ。
「わかったわ」
紫音は部屋の隅に置かれたグラスの乗った盆を手に取り、1つ1つ丁寧にテーブルに並べていく。山姥切も同じように、紫音から少し離れた場所から並べ始める。乱はどうやらこのテーブルセット班の班長らしく、あれこれと指示を出しながら、部屋を行ったり来たりしていた。
「座布団まだー?」
「はいはい、焦らせて済まないね……準備のことだよ?」
奥からにっかり青江と、鯰尾藤四郎、骨喰藤四郎と、三振が並んで座布団を持ってきた。前日のうちに洗濯しておいたカバーが乾いたため、3人でそれを付け替えていたのである。主人の誕生会のために全員分の座布団カバーを洗濯するあたりに、乱の気合が伺える。
「乱くん、グラス、並べ終わったわ。次はそれを並べたらいい?」
作業の終わった紫音が、積まれた座布団を指さして尋ねる。
「うん!お願いします!これはボクもやるけど…」
「了解」
座布団を手に、部屋の端から端を、行ったり来たり。まだまだ時間はかかりそうだ。
「あれ?美咲ちゃんじゃん!来てたの?」
「貴方は…蓮、さん?」
「蓮でいーよ、さん付けとか慣れなくてさ」
乱達がテーブルのセッティングに勤しむ傍らで、会場設営班も忙しそうにしていた。
美咲は先程、加州とここ大広間に太郎太刀の運んでいた荷物を届けに来たのだが、流れでそのままここを手伝うこととなった(他の班に比べ人手は足りていた方だが、和泉守が「多けりゃ多いほど助かるだろ!」と言い出したため)。左程背丈のある方ではない美咲は、天井付近の飾り付けに回るのは止め、障子の張り替えを手伝うことにした。で、作業をしていたら通りかかった蓮に声をかけられた、という流れである。
ちなみに蓮も会場設営班の助っ人らしく、障子を綺麗に剥がす役割を担っていたらしい。大広間の障子は全て剥がし終えたので、次は張り替えに移ろうと、美咲の隣に座った。
「貴方も手伝いに来てたんだ」
「うん。ま、伊織の誕生会だし」
「2人は仲良しなの?偶に伊織さんから話を聞くんだけど」
「ん?ああ。俺達、幼馴染なんだ」
「へえ……」
「美咲ちゃんは伊織の友達なんだよな?」
「…伊織さんがそう思ってくれてるなら」
「じゃあ友達だな。…あいつのこと、頼むね。素直じゃねえし意地っ張りなとこあるけど、すごいいいやつだから」
「うん、なんとなく、蓮さ……蓮、の言うこと、分かる気がする」
「そっか」
並んで障子紙を貼りながら、そんな会話をした。
それを見ていた加州が密かに「鶴丸が来てなくてよかった。あいつが嫉妬するタイプなのか知らないけど」と胸を撫で下ろしていたのはまた別の話。
それぞれが、それぞれの仕事をこなし続けること数時間。
日が傾き始め、伊織の帰宅の時間が迫ってきていた。
次回、ようやく主役とその近侍が出ます。前編ぶりですね!←