ありったけの愛を君に   作:みずい

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遅くなりました………
伊織が帰城。いよいよ本番。
たかさとさん、しーかさん、AMEさん、あじゅさん宅のお子様お借りしてます。






後編 1/4

 

「ただいま」

 

時刻は5時を少し回った頃。薄暗い本丸の玄関に声がした。

「主!おかえりー!」

その声に反応して、加州清光が奥から走ってきた。

「ああ。…約束通り、5時を目処に帰ってきたが…何かあるのか?」

普段なら現世で仕事のある日に、こんな時間に帰ってくることはない。だが、今日はどうしても少し早く帰ってきて欲しいと嘆願され、こうして帰路についた訳だが、伊織にはその理由が分からずにいた。

「…主、今日誕生日なんでしょ」

「……そうだが、長谷部に聞いたのか」

「違うよー。ずーっと前に、主に聞いたの、俺が。忘れちゃったの?」

意外とうっかりさんだよね、主って。そう言って、加州が呆れたように笑ってみせる。

 

「そうだったか、済まない…それで?」

「だから、今日誕生日じゃん?主は。だから今日は絶対皆でご飯食べたいよね!って話をしてたの」

「成程。…それならやはり最初に言ったように、今日は1日休みにした方が…」

「それはそれで申し訳ないよ。そりゃ確かに1日居てくれたらそれはそれで嬉しいんだけど…結局これって俺達の我儘じゃん。無理のない範囲で振り回したいっていうか……」

申し訳なさそうに目をそらす加州に、伊織が笑いかける。

「我儘も何も、そう思ってもらえるだけで私は嬉しいよ。…まあ、お前達がそうしたいというなら、これ以上あれこれ言うのはよそうか」

「…ありがと」

 

「ところで、食事の用意は出来ているのか?もしまだなら、私もなにか……」

「いいよいいよ!そんな気遣わないでよ!」

「そうですよ………そうだ、せっかくいつもより少し早めに帰ってこられたのですし、ゆっくり湯浴みでもなさっては?…翡翠様から貰った、そのばすあろまとやらの試用も兼ねて」

ね、と微笑む長谷部。2人にそう言われては、断る気にはなれない。

「分かった、そうする」

 

ぱたぱたと廊下の奥に消えていく主人の背を見て、加州と長谷部はほう、と息を吐いた。

「危なかったね……」

「ああ………しかし、晩餐のことを話すとは驚いたな」

「パーティとは言ってないから、ネタバレじゃあないでしょ。かと言って嘘言ったわけでもない。下手な嘘吐いて疑われたら終わりじゃん?何のためにここまでやってきたのか分かんなくなるでしょ」

「それもそうだな…しかし、本当に助かった。さて、では俺も手伝いに回るか」

「誘導係は大人しくしときなよ。いつ主が上がってくるか分かんないでしょ」

むう、と長谷部が唸った。

 

そうしていると、不意にがらがらと音がした。玄関の戸を開ける音である。

「あ…こんばんは……」

遠慮がちに顔を覗かせたのは、小柄な少女だった。髪もその大きな瞳も黒いが、寒いのか鼻と頬だけはほんのり赤くなっていた。巫女服の上に少し生地の厚い桃色の羽織を着ている。

「邪魔するぜ」

その少女にぴったりくっつくようにして入ってきたのは、鶴丸国永だった。こちらも鼻と頬を赤くしている。少女もさることながら、彼は全身真っ白だから余計にその赤が映えている。

「いらっしゃい」

加州がにこやかに出迎えると、少女は何を言われるでもなく白い封筒を出した。―招待状だ。

「高橋桜です。本日はお招きいただき…」

深々とお辞儀をしようとする桜を、加州が止める。

「やめてやめて、俺そんな堅苦しいの苦手なんだよ。もっとゆるく構えてくれて大丈夫だから!」

後ろで鶴丸がくっくっと喉を鳴らしている。

「…いつもこうなの?」

「ああ、いつもこうだぜ。俺達の主は」

「…そう」

加州は突っ込むのを半ば諦めたようだ。

「もう殆ど準備は整っております。さあ、こちらへ」

肩を落としかけた加州をよそに、長谷部が誘導に回った。桜と鶴丸はそれについていく。

「ちょっと、主の誘導はいいの?」

「まだ大丈夫だろう。お前は他の方の誘導を頼む。まだ来られるんだろう」

「おっけー」

 

3人が廊下の奥に消えたところで、加州は玄関に腰を下ろす。そして懐から紙を出して広げた。

「えーと、あとは………」

そこに書かれていたのは、加州が招待状を送った審神者の名前だった。今日来る、と言ってくれた者にマーカーで印がつけられており、その内、今日姿と招待状の持参を確認した審神者の名前の横には赤いペンで印が付けられていた。

「ええと…美玖留さんと、姫川さん、守宮さんに、紅さん…あとは京花さんか。」

桜の名前の横に印をつけながら、足をぱたぱたと前後に振る。

 

「「こんばんは」」

ふと顔を上げると、可愛らしい少女が二人並んで立っている。一人はクリーム色の髪を右に流し、緩めの三つ編みにしている少女。薄桃色の地に控えめにあしらわれた藤桜が髪色に映えている。もう一人は、絵に描いたお姫様のようなロングのブロンドヘアーに、小ぶりのピンクのリボンをちょこんとくっつけた少女。フリルがあしらわれたパーティドレスに身を包んでいる。

「あっ、こんばんは!えーっと、…守宮ちひろさんに、姫川アリスさんだね。今日は来てくれてありがと!」

名簿に目を通しながら、加州が礼を言う。

「いえ、こちらこそ呼んでいただいて…」

ちひろと呼ばれた少女が静かに礼をする。

「もしかして、もう始まっちゃったかしら」

不安そうな声で、アリスが尋ねる。加州はそんなことないよ、と手を振ってみせた。

「まだ主が準備中だし、全然余裕だよ。案内するね」

他に案内役も居ないので、加州自ら2人を誘導する。2人はそれぞれ薬研藤四郎と燭台切光忠を連れてそれに続く。

廊下を進んでいると、、向かい側から急ぎ足でこちらに向かってくる影が見える。―彩だ。準備が完全に終わったため、会場で座って待っていてもらったはずだが……

「彩さん、どうかした?」

加州の問いに、彩が足を止める。

「ああ、紅が来たみたいだから、出迎えにね」

「あ、そうなの?それなら俺が……」

「大丈夫。あの子、私がそばに居た方が良いみたいだし…加州さんにばかり負担はかけられないわ」

「…そっか、わかった」

玄関に向かう彩を見送り、また会場に向かった。

 

 

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