R18ではないはずですが、それ以前の問題と言われれば消します。
飛鳥ちゃんとまゆちゃんを繋いでいた手錠は早苗さんのものだったらしく、そして彼女は手錠の鍵を持ったまま地方ロケに行ってしまったそうだ。つまり彼女たちは今から三日間の間ずっと一緒にいなければならないらしい。
現在は空港から帰って来て、現状を認識したのち、まゆちゃんの寮の部屋。
問題は山積みである。
「絶食するべきだ…」
絶望的な表情で飛鳥ちゃんが言った。
「上の着替えは出来ません…まだ薄着だからよかったものの…」
まゆちゃんが光のない瞳をさらに濁らせて言った。二人の両手は私の手首をガッチリと掴んでいた。
「離して!いやだぁあ!私を巻き込まないで!!」
私、島村卯月の魂の叫びだった。
「この状況でボク達を二人にする気か!手首を切り落とされてからでは遅いんだぞ!」
「なっ!?そんなことしませんよぉ!そもそも手錠をつけたのは飛鳥ちゃんじゃないですか!…はっ!もしかして最初からこれを狙って?」
「違う!断じて違う!君が暴れまくったからだろう!あらぬ疑いをかけるのはやめろ!」
「でも車の中で愛とか言ってたしイケるんじゃいですか?お風呂もトイレも愛さえあれば問題ないし、私帰りますね」
「待ってください!まゆの貞操が危ないです!」
「それはボクのセリフだ!」
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そんな感じで三人でギャーギャー言いながら責任を押し付けあっている(めっちゃ楽しい)と、まゆちゃんの様子がおかしくなって来た。
そこはこのメンバー、察するのが早い。飛鳥ちゃんも気まずい感じで沈黙してしまった。
「……………」
「まゆちゃん、どっちですか?」
「うぅ…小さい方です」
ひとまず安心する。まゆちゃんのピンチは友達である私が救ってあげなければならない。
「よし、二人ともいくよ」
「……先延ばしにしても意味がないのは事実だ」
「へっ…えぇ!?本当にやるんですか!?」
「女の子同士だから気にしなくてもいいって」
「女の子同士でも絶対気にしますよ!」
「まゆ、大丈夫だ。ボクは後ろを向いておくから」
「うぅ…あああもう…!」
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飛鳥ちゃんとまゆをトイレに押し込んだ私は、ヘッドフォンを装着させて大音量で音楽を流した上、目隠しと鼻栓をさせれば何も問題ないんじゃないか、という第三者目線ゆえの名案が思いついていたが言ってしまったら面白くないので黙っていた。ちなみに私は扉の前で聞き耳を立てている。
「じゃ、あ…します…。前向いててくださいよ…?」
「わかってるよ、目も閉じてるから……あっ…」
視覚だけではなく、聴覚などからわかってしまうことに飛鳥ちゃんも気づいたようだった。まゆちゃんはテンパり過ぎて気づいていない。
「うぅ…もう限界………んっ……あ、お、音が、あああすかちゃん耳ふさいで!!」
「……片方しか無理だ…」
小さな水音と手錠の鎖が揺れる音が響いた。
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数分後、私は顔を真っ赤にした涙目のまゆちゃんに怒られていた。残念ながら当然。
「気づいて…!いたんなら…!教えてくださいよ…!!」
言葉の合間にポカポカ殴られているが全然力が入っていないので可愛いだけだ。
「すまない、まゆ。その…音が出ることには直前に気づいたんだが…その時にはもう」
「い、言わなくていいですからぁ!飛鳥ちゃんは悪くないです。…でも忘れてくださいね?」
「うん、もう覚えてないよ」
「嘘つけ」
「卯月さん!」
その数十分後、提案したのが申し訳ないくらいに視覚聴覚嗅覚を塞がれたまゆちゃんが飛鳥ちゃんと交代して先ほどと同じことをした。
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一通り終わって三人でテレビを見ている時に「私もトイレ借りますね」と言ったら、次の瞬間には二人に手首を掴まれていた。
「恥を均等にするべきだ」
「逃がしませんよぉ」
一通り終わっていなかった。個室に三人で入るというレアな体験をすることになった。二人とも目隠しも何もせず扉を見ていた。私が年齢的に一番先輩なだけに終わった後なんとも言えない空気になった。
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私がお母さんに今日は女子寮の友達の部屋に泊まると連絡して数時間、パソコンで動画見て騒いだりしているともう夜も更けていた。
「お風呂はどうするんですか?」
二人は顔を見合わせた。
「一人でずっといるなら入らなくてもいいが…」
「隣に飛鳥ちゃんがいると匂いとか気になります」
「うん…そう…。じゃあ入ってきたら?大浴場」
頭の中で想像したのか二人の顔の赤みが増す。いや…それこそ女同士だから気にしなくてもいいんじゃないかな…。
「そろそろ12時だからもう人もいないと思いますよ。清掃の人が来る前に行かないと」
「で、でも服が脱げませんし…」
「いや、奇跡的にボクら二人とも薄い生地の服しか着てない、しかも手錠は大人用で片腕だからね……服を相当痛めるが、脱げなくはない…」
「…向こうでモタモタするのもあれだしここで脱いで見たら?」
二人はまたお互いの顔を見る。耳まで赤い。
「ちょっと…ボクがやってみる」
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みんなもやってみよう、人と手錠で繋がれた時の服の脱ぎ方講座。
Tシャツ編、右腕に手錠がかけられているとするよ。準備はいいかな。
まず左腕、頭からシャツを脱ぎ、右腕に服を寄せるよ。その後、手錠の内側からくぐらせる様にシャツの生地を少しずつ押し込んで、地道に反対側へ出していくよ。
以上で終わりっ。
「ぬ、脱げた…」
黒いブラジャー姿になった飛鳥ちゃんが疲れた様に言った。隣で見てるだけでも達成感がやばい。
「おお〜!すごーい!」
「飛鳥ちゃんすごいですー!!」
「何言ってるんだいまゆ。ボクが脱げたってことはまゆも脱ぐんだよ」
「あ」
「じゃあ私ドンキで切っちゃってもいい激安Tシャツ何枚か買ってきますね」
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女子寮に戻って来ると下着姿の女子中学生がベットの中に入って抱き合っていた。
「普通に寒いんだよ。そんな目で見ないでくれ」
「うーんいいけどさぁ…」
真顔で言われてしまった。まゆちゃんも全然照れていない。なんか感覚麻痺してるなぁ。
「じゃあパパッと切っちゃいますねー」
ついでに買ってきたハサミでシャツの裾から、脇、袖の先までまっすぐ切る。まあまずは二枚でいいでしょ。
「迷いないですねぇ…」
「はい、これで普通に着れるでしょ」
二人に渡す。それぞれ右腕左腕を通して着て、頭を入れ、手錠の側の袖はそのまま。
「今はお風呂でまた脱ぐからそのまま行くけど、お風呂上がったら適当に縫ってあげるから」
「なんか…すまない。この件は本当にボクのミスだよ」
「発端が私、理由がまゆちゃん、原因が飛鳥ちゃんでしょ。そんなことよりペアルック、似合ってるよ」
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「あのさぁ…私が一緒に入る必要性あった?」
「風呂場で手錠つけてる奴がいたらそいつの言うことを信じるか?第三者が一人必要なんだ」
まあ普通に考えて変なプレイだと思うよね。
「でも意外と広いんだねー久しぶりに大浴場って名前のお風呂に入ったかも」
「このくらいの時間になると誰も人がいないんですねぇ…」
「ボクらはいつも夕食前に入ってるから妙な感じだ」
「いつも一緒にお風呂に入ってるんだ?」
「…仕事が終わる時間が大体同じだからだ」
「仲いーなぁ」
「卯月さんはCPで仲良い子いないんですか?」
「そういう聞き方はあれだけど…うーん。いや仲良いのは凛ちゃんとか、未央ちゃんとか…。でもなんかみんなが私を好きなのより、私の方がみんなの事を好きだからさ」
飛鳥ちゃんやまゆちゃんとここまで仲良くなれたのは前の記憶によるズレがないってことなのかな。
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「あー疲れた」
電気を消して、みんなでまゆちゃんのベットに寝転がっているが狭いので自然と真ん中のまゆちゃんに抱きつく様になる。
「まゆ、プロデューサーいなくなっちゃったけど。大丈夫なのか?」
「大丈夫じゃないですけど、成長したところを見てもらえるように頑張ります」
偉いなぁ、と月並みな感想しかでてこなかったのでまゆちゃんの髪を撫でておいた。すると飛鳥ちゃんも対抗するように撫でてきて、くすぐったそうにまゆちゃんは笑った。
ベットランプの下にはまゆちゃん、飛鳥ちゃん、そして彼女たちのプロデューサーと撮った笑顔の写真が飾ってあった。
私たちはゆっくり眠った。