「島村卯月、逆行します!」   作:赤猫;

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私だってほんとは大晦日にガキ使パロ書きたかったけどまだ書き始めたばっかりだったし…。ということでバレンタイン編ぱぱっと書いてみました。
つまり未来の話ですが、あくまでおまけということで。

(※投稿日:2016年2月14日)


26.島村卯月はチョコレート。

「プロデューサーさん。まゆは貴女を愛してます」

「知ってるよ、私も愛してる。これからもよろしくね」

「はい!」

2人が持ってきたチョコレートであろう包み紙が交換される。2月14日。早朝、346プロの屋上庭園にてそんなやりとりが行われていた。私と飛鳥ちゃんはそれを物陰から見守っている。噴水前のベンチに座った二人は手を繋いで、時々笑い声を上げながら、しばらくの間話していた。きっと将来どんな家に住むかとかそういうことだろう。とにかく、まゆちゃんの幸せそうな顔が見れて私も嬉しかった。去年は危ういこともあったが、まああの二人は来年もチョコを交換してくれるだろう。

「全く…今日は格好付けじゃなくブラックを飲みたい気分だよ」

飛鳥ちゃんは苦笑いをした。私も似たような表情だったろう。

「完全同意。でも私たちだってもらえると思うよ?」

私と飛鳥ちゃんは缶コーヒーで苦味を補給すると事務所に戻った。するとバレンタインだからか、早朝だというのに何人かアイドルがいた。そのうちの一人がだだだっ、とこちらに駆けてきて、バッ!とポーズを取った。が、顔の方は真っ赤である。緊張しているらしかった。

「わ、我が友よ!煩わしい太陽ね!」

「ああ蘭子、煩わしい太陽だね」

シュチュエーション的に見てどう考えても私に用のわけが無いので挨拶はせずに飛鳥ちゃんの後ろで成り行きを見守る。が、蘭子ちゃんは何やら紅色の小箱を抱えているがそこから動け出せないらしい。「チョ…チョコ…バレ…バレ…」と言っている。なんか10年前にプロデューサーにPV案のノートを渡そうとしていた時のようだった。いや、もう11年前になりかけてるのか。

飛鳥ちゃんは鋭い瞳を優しく緩めた。出会った頃からの相変わらずの刃物のような冷たさは外見上変わらないが、絶対蘭子可愛いって思ってる、だって可愛いもん。

「ボクの自惚れでなければ…今日という特別な日に、蘭子はボクに対して何か用事があるのかな?」

「ある…」

「なら聞くとしよう」

「…幾日の恩、紅葉の舞台の恩、それに我の降臨せし始まりの場所の恩。……私は貴女にとっても感謝しているわ」

蘭子ちゃんは見ている余裕などないだろうが、飛鳥ちゃんがぴくっと表情を変えた。微妙に崩れた言葉遣いを聞いて、真剣に答えるスイッチが入ったのだろう。

「君のデビューライブがボクと同じステージだったことはボクの采配じゃないさ。それに秋のライブも…あれはみんなで勝ち取った結果だ」

「そんなことは…」

蘭子ちゃんが反論しようとするが、手を挙げて制した。飛鳥ちゃんはそのついでに蘭子ちゃんの左手をそっと取った。私はもう何をするか大体分かった。

「もちろん感謝は受け取っておくよ。そして、こちらこそだ。君の存在がボクを勇気付けてくれることがあったのを君は知らないだろうが。感謝している、だからよかったら受け取ってくれ」

そう言って飛鳥ちゃんは蘭子ちゃんの小指に指輪をはめた。キザだなぁ。蘭子ちゃんは何だろう?と指を確認して、ぴしりと固まった。そしてぱぁっ!と明るい表情になった。

「わわ、わわぁ!!あ、あり、ありがとう!私、嬉しい…!、飛鳥ちゃん!!」

チョコが入っているであろう箱をガッと飛鳥ちゃんの胸元に押しつけると、蘭子ちゃんはそのまま抱きしめた。

急な事にも驚くことなく、やれやれという顔で背中に手を回す飛鳥ちゃん。その小指には蘭子ちゃんとお揃いのリングが付けられていた。早速指輪の模様ついて語り始めた二人の仲睦まじい様子を見ているとくいくいっと袖を引かれた。

「卯月、ちょっと」

凛ちゃんだった。少し頬を染めている。凛ちゃんの方が身長が高いはずだけど、若干顔を隠すように下を向いているからか、上目遣いのようになっていた。目が合うとすぐ逸らされた。それ以上観察する間もないまま「んっ」と紙袋を渡される。トウモロコシかと思ったが、GODIVAのロゴがプリントされているので流石にチョコレートだろう。なんか高校生だからもうブランド物くらい普通だろうけど、大人の私からすると背伸びしているように見えてますます可愛かった。

「うふふ、ありがとう凛ちゃん。嬉しいよ」

「べ、別に…気にしなくていいけど…」

私が笑うとそっぽを向く凛ちゃん。ああもう、友達に義理チョコ渡すくらいで、照れ屋さんなんだから。私もカバンからチョコレートの箱を取り出す。せっかくなので手作りしたやつだ。袋に入っているので手作りだとわからないだろうけど、家に帰って驚いてくれたらいいな。

「はい、凛ちゃん。私からも」

「わ、ええと。ありがと」

「ふふっ、どういたしまして」

そろそろと私の紙袋を受け取る凛ちゃん、そのまま紙袋を胸に抱いた。にやけが止まらないように口元がふにゃふにゃしていた。どうやら喜んでくれているようである。そしてその凛ちゃんのスカートをついついっと引っ張る腕があった。机の下から伸びている。

凛ちゃんは一瞬ビクッとしたものの、すぐに慈愛に満ちた聖母のような表情になった。頬の赤みは消えているが表情に宿る優しさが半端じゃなかった。机の下にいたのは、そう、森久保乃々ちゃんである。

「乃々、どうしたの?」

「森久保も…チョコ持ってきたんですけど…」

「えっ?!卯月に!?」

何でだよ、鈍感か。

「何でですか…あの…凛さんにですけど。いらなかったらいいんですけど…ほんと…深い意味は無くて…この前のラジオのお礼で…」

とか乃々ちゃんがぶつぶついっていたが凛ちゃんは全然聞いてなさそうだった。私があげた時よりももっとわかりやすい笑顔にじわじわと表情が変わっていった。むむむー。まあでも乃々ちゃんは可愛いし仕方ないか。

「乃々、私のために買ってきてくれたの?」

凛ちゃんは嬉しくてたまらないという様子でしゃがみこんで聞く。机の下で体操座りをしている乃々ちゃんは頬を赤くして目を逸らした。顔を少し膝で隠す。

「…買ったんじゃなくて…一応手作りなんですけど…」

「ええ!凄いじゃん、嬉しいよ乃々。見せてくれる?」

「いいですけど…」

何か二人の世界に入り込んでいたのでそのままにしておく。全く、私のチョコ忘れてないかなぁ…。事務所のテーブルに置いてあるかな子ちゃんの差し入れチョコクッキーを口の中に放り込む。

……私が座ったソファの向かい側にはじっと口を噤んで前を向いているカップルがいた。いや、カップルではないけどさ。未央ちゃんと藍子ちゃんである。彼女らが前を向いているということは私の方を見ているということなのだけど、その耳まで真っ赤な顔とぐるぐるになった2人の目を見る限り私がいることに気づいていないようだった。藍子ちゃんは恥ずかしそうに若干顔を伏せ、未央ちゃんは口をきゅっと結んでいる。もう…私ここに居たくないなぁ…。

「あ、あーちゃん!」

「!、はぃっ!」

ぼんやりと見ていると未央ちゃんがようやく動いた。藍子ちゃんは飛び上がるように返事をした。

「あ、あのさ、今日って、な、何の日だっけ?」

そこからかよ。目を回している彼女がさすがに面白かったのか、藍子ちゃんは顔の赤いまま、くすっと笑った。相手が緊張しまくってるのを見て少しは落ち着いたらしい。

「ふふっ。未央ちゃん、今日はバレンタインデーですよ?」

「うんそそそうだった!い、いやぁ〜私何言ってんだろうなぁ!」

藍子ちゃんはふふふ、と微笑む。自分の膝を掴んでいる未央ちゃんの手を、ついーっとなぞった。

「……未央ちゃんは、チョコ。作ってきてくれましたか?」

「あ、えと、わ、わ」

目が白黒している。藍子ちゃんの細い指が乗せられたままの手がわなわなと震えていた。これはちょっと気持ちわかる。そんなパンク寸前の未央ちゃんに更に追い討ちをかける藍子ちゃん。添えてない方の手で未央ちゃんの頬を触れてくいっと自分の方を向かせる。眉を下げた上目遣いの、真っ赤な顔で目を合わせ、小さな声が聞こえた。

「……私は未央ちゃんのためだけに…作ってきましたよ…?」

未央ちゃんの頭がカーッと真っ赤になって爆発した。

「み、未央ちゃん!?」

藍子ちゃんがすぐに肩を揺するが未央ちゃんは「あーちゃん…」とつぶやくだけでまともな反応ができていなかった。まあその顔は幸せそうだった。よかったな。

流石にこんなところにいられるか!と思ってソファを立ち上がる。すると肩をちょんちょんと叩かれた。振り向くと頬に人差し指がささる。可愛いいたずらをしてきたのは天使、小日向美穂ちゃんだった。その後ろには五十嵐響子ちゃんもいる。

「ハッピーバレンタイン、かな?」

「手作りチョコ交換しましょうー!」

まあ、そんな感じで、私は特別な1日を楽しんだ。

 

___________________________________

 

私がみりあちゃんと莉嘉ちゃんにいたずらでわさびチョコを食べさせられてる頃。

レガシィB4、車内にて。

 

「プロデューサー、今日が何の日か知っていますか?」

「もちろんです。バレンタインデーですね」

「ふふっ流石のプロデューサーでも、芸能関係者ですもんね。では私からプレゼントが…」

「…楓さん、これを」

「……もしかして、プロデューサー。逆チョコですか?」

「ちょこっとですが」

「………ふっふふっ!うふふっ!プロデューサーそれ私のセリフです〜!ふふっ。それに私もチョコレート持ってきたんですよ〜!」

「では交換ということで」

「ふふっ、そうしましょう。仕事終わったらチョコとお猪口(おちょこ)、付き合ってもらえませんか?」

「日本酒には合わないと思いますが…付き合いましょう」

「ふふっ、楽しみです」

「そうですね」

 

 

 

 

 

 

 

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