「島村卯月、逆行します!」   作:赤猫;

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3.島村卯月はしどろもどろ。

「大きいですね〜346プロ」

「うん、さすが大手って感じ」

結構圧倒されている様子の凛ちゃんとエントランスに入った。今日は346プロで初レッスンと顔合わせ、それから宣材写真を撮る予定、のはずだ。プロデューサーからはまだ何も聞かされてないけど…報連相どうなってるんだろう。

「すごいよねー!」

とコミュ力おばけの未央ちゃんが後ろから話しかけてくる。たった今が初対面のはずだ。凛ちゃんは困惑しているのでとりあえず私が「はいっ!」と返しておく。その後初出社なので受付のお姉さんにカードを発行してもらった。

未央ちゃんと凛ちゃん、それと何故か乗っていた今西部長と一緒にエレベーターで上がっていった。新館の30階、今更だけどプロデューサーってやっぱり結構実績のある人なんだろうなぁと思う。

未来のニュージェネの3人が互いに自己紹介しているとプロデューサーとちひろさんが入ってきた。

「午前にレッスン、夕方に宣材写真の撮影、その際に顔合わせ、これが本日の予定となります」

ペラリ、とちひろさんがホワイトボードに細かく時間が書かれた予定表を貼った。わ、わかりやすい。当然のようにちひろさんの正体を未央ちゃんが質問する。そりゃ蛍光緑のスーツを着た女性を見れば誰だって気になるに決まってる。

「千川ちひろ、と申します。みなさんの活動をサポートしていくことが仕事になります、よろしくお願いしますね」

ニコッと微笑むちひろさんに私たちも「よろしくお願いします!」と返した。ちひろさんの身長は私とおんなじか低いくらいだと思うので本当に可愛い女性だと思う。優しいし。私より年下だろうか、だいたい同じ年齢な気がする。エナドリを一人一本もらった、無料で。

「ではみなさんにはまずレッスンを受けていただきます」

プロデューサーは相変わらずの鉄仮面で言った。

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レッスンルーム横の更衣室にて着替える。ピンクのジャージに袖を通しながら懐かしさでまた泣きそうになる私だった。歳をとると涙もろくなる、というほどはとってないはずだがやはりこうリアルに体験をトレースすると思うところがあるのだった。それが挫折した道であるならなおさら。

「しまむーってさ妙に芸能人慣れしてるよね」

「うぇええ!?」

そんな感じで感傷に浸っていると未央ちゃんからなかなか鋭い指摘を受けてしまう。(しかも既にしまむー呼び、やっぱすごい)

「あっそれ私も思ってた」

凛ちゃんも便乗してくる。なんてこった。未央ちゃんはうんうん、と頷いた。

「だってさっきすれ違ったのって『ブルーナポレオン』だよ?アイドルを全然知らない凛ちゃんならともかく、しまむーが会釈だけで済ませるなんて!しかも会釈!しまむーってもしかして大物だったりするのかなぁ!」

うりうり、と小突いてくる未央ちゃん。すると凛ちゃんも思うところがあったのか追撃してきた。

「卯月さ、私をアイドルに引き込む時に『私たちはそのために歌ってるんです』とか言ってくれたよね。その時はまだ私もよく知らなかったから流してたけど、養成所に通ってただけのはずの卯月がそんなこというのおかしいよね?もしかして昔アイドルやってたとか?」

「た、探偵ですか凛ちゃんは!」

はっ、しまった。あまりの鋭さに余計なリアクションをとってしまった。

「おや、しまむー?ボロを出したねー?」

「ち、違います!間違っているという点に目を瞑れば凛ちゃんの推理は正解だっていう意味で言ったんです!」

私がめちゃくちゃなことを言うと二人は首を傾げて、顔を見合わせた。

「そう、なんかそういう発言と容姿がちぐはぐなところが不思議なんだよね。卯月って」

「そういうとこになーんか惹かれちゃうよねー。やっぱり私たちより一つ上だからかなー」

「あは、えへへ…?」

とりあえず興味は収まってくれたのかな。私は二人からじりじりと距離をとってジャージのチャックを上げた。防御姿勢。

「とりあえずレッスンに行きましょうか。私がだてに養成所に通っていなかったということを見せて上げましょう!」

前回は先輩風吹かせて全然ダメだったけど、今回はそんなことにはならないよ!

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-開始10分後-

「おおっ、島村。なかなか動きがいいじゃないか!二人も見習え!」

「「はいっ!」」

-30分後-

「結構二人も掴んできてるぞ!もっと私の動きに合わせるようにしろ!」

「「はいっ!」」

-60分後-

「島村!ステップが鈍い!回転が遅い!1時間程度でへこたれてるんじゃない!それでも養成所通ってたのか!」

「ひぃぃい!すみませんん!」

-120分後-

「今日のレッスンはここまでだ!各自整理体操をしておけよ!」

「「はいっ!ありがとうございました!」」

「はっ、げほっ、はっ、ありがとうございましたぁ…」

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「体力の無さを痛感しました…」

「まあまあ」

「最初はかっこよかったよ」

私がしょげていると未央ちゃんと凛ちゃんに慰められますああ懐かしくて泣きそう。ゴクゴクとスポーツドリンクを飲み干した未央ちゃんはある看板を発見した。

「エステルーム?ねえねぇちょっと入ってみようよ」

「えぇ、いいんですかぁ?」

「いいのいいのー!」

未央ちゃんは扉を開けてずんずん進んでいきます。この行動力。私は川島瑞樹さん(28)の美貌をもう一度拝見するためについていきます。coolな凛ちゃんはついてきません。流石。

「失礼しまーす!」

という声とともにジャッ、と未央ちゃんがカーテンを開いた。「あら」とそこには私(27)よりも歳上のお目当ての人がいて。

「これは時の流れ止まってますね…」

「す、すみませんでした!」

未央ちゃんに連れられて外に出ます。へぶっ、廊下の壁に顔面からぶつかった。あれ10年前もぶつかったような。

「ねぇねぇ!中にいたの、川島瑞樹だったよね!すっごい綺麗だった!」

「いや、あれは若すぎる。あの肌を保つために一体どれだけの苦労が…」

「おおぅ」

未央ちゃんがのけぞる。歳をとった今なら実感できるけど一体早苗さんとかどういう肌のケアをしてるんだ?ひょとして妖怪か?

「ちょっと、未央。卯月が考え込んじゃってるんだけど。何見せてきたの」

「えぇっと?あはは……ねぇしまむー、冒険しない?」

「冒険…?」

確かそんなこともあったっけ。

「うん、こんなに広い建物なんだから。他にも面白いものがたくさんあるよ!ほらしぶりんも!」

「うん…え?しぶりん?」

困惑している凛ちゃんと私の腕を掴む未央ちゃん。出会って初日でこの馴れ馴れしさはほんと何度でも尊敬する。

「さあ行こう!無限の彼方へ!」

「うわぁ!引っ張らないでください〜」

 

 

 

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