「島村卯月、逆行します!」   作:赤猫;

4 / 35
4.島村卯月は惹きよせる。

「夏樹さんのギター最高だったねーしまむー」

「はいっ!素敵でした!」

やっぱりロックアイドルは違うなぁ!と、そんな感じで色々歩いていると、私たちの後ろを輿水幸子ちゃんが通り過ぎていくのを見つけました。他の二人は気づかなかったようなのでまあいいかと思ってそのまま素通りしようとしました。が、正面を向くと佐久間まゆちゃんがいました。ほぼ眼前。

「新人さんらしくありませんねぇ」

「うわぁあ!?」

何かを呟き、光の無い瞳が私を映します。

「うわっ!?いつの間に!?」

「佐久間まゆ!?さん!?」

凛ちゃんと未央ちゃんも気づいて驚きます。未央ちゃんは先輩なのに元々テレビで知っているから呼び捨てで呼んでしまう現象に遭ってます。

「あなた、冬のライブで物販の搬入を手伝ってくれてましたよねぇ。その時はまゆ達アイドルに会うたびに目をキラキラさせていました。それで記憶に残ってたんですけど…」

「ま、まゆさん?!」

ぐいっ、と一歩踏み出してきます。身長の差はどれくらいだったか覚えてませんが、その凄味に負けて上から覗き込まれるような体制になってしまいます。じいいっと。

「何かあの時とは別人のように思えるんですよねぇ…」

「ひぃい!?」

目が…闇が…!

「ちょっと、卯月怖がってるから」

凛ちゃんがまゆちゃんの肩に手を置きました。ひぃぃ、危険なことしないでぇ。しかしまゆちゃんはゆっくりと私から離れました。途端に申し訳なさそうな顔をになりました。ああ確かにこのまゆちゃんは庇護欲がそそられる…。智絵里ちゃんみたいだ。

「ごめんなさい…まゆちょっと気になっちゃって…」

「あぁぅ、いえいえ!私もなんかすみません!」

「何故か惹かれる…不思議な人ですね…」

「…?」

ぺこりと頭を下げるとまゆちゃんは幸子ちゃんが歩いていった方向に去っていった。私を除く二人は途端に不思議な顔になる。

「なんだったんだろ?」

「卯月、何か言われてなかった?」

「うーん、よくわかりませんでした…」

私は困った顔でそう言った。

___________________________________

その後346カフェへ移動した私たち。

「ここってメイド喫茶?」

と未央ちゃんが耳打ちしてきた。安部菜々さんじゅうななさいが現れたからだ。私たちが呆然としているとその少女は「ふっふっふー」と不敵に笑いだした。ぎょっとする二人。おそらく同い年の私はその可愛らしい童顔を尊敬の目で見つめる。彼女は二十代後半女性の希望の星なのだ。

「今日は訳あって臨時でバイトしてますが!その正体は!ウサミン星からやってきた歌って踊れる声優アイドル!ウサミンこと、安部菜々です!キャハッ!」

私はカフェの席を立ち上がり携帯を取り出した。

「菜々ちゃん先輩!新人アイドルの島村卯月、17歳です!メアド交換しましょう!」

「えぇ!?異様な食いつきに菜々もパニックです!」

言いつつメイド服から携帯を取り出す菜々ちゃん先輩。この滑らかなファンサービス!菜々ちゃん先輩は当然ガラケーなのでお預かりしてアドレスを登録させていただく。

「し、しまむーが尊敬するアイドルかぁ…」

「い、意外かも…?」

二人は困惑しているようだった。私は運動部のように勢いよく礼をしながら携帯を返した。

「ありがとうございました!」

「えぇと、その、菜々たちは同い年ですからそんなにかしこまらなくてもいいんですよ?」

「はい!ありがとうございます!菜々ちゃん!私たち同い年ですもんね!」

「ぐっ」

痛い所を突かれたように菜々ちゃんは引きつった顔をしたが、気にしなくてもいい。おそらく私たちは同い年の27歳、嘘をついてるのはどちらもなのだ。

「ところで菜々ちゃん!メイクに何十分かかってもごもご」

私の口を凛ちゃんと未央ちゃんが塞いだ。何なんですか!私は同年代の肌荒れトークで場を盛り上げようとしていたのに!

「あれ?菜々は今背筋が凍るような言葉が聞こえてきたような気がしましたが…」

「菜々さん私たちプロデューサーに呼ばれてるからさ!」

「そうそう!コーヒー美味しかったよ!ありがと菜々さん!」

「もごもごもご」

私は凛ちゃんと未央ちゃんに引きずられてプロデューサーの待つエントランスへと戻っていきました。菜々ちゃん!次は結婚式の招待状トークで盛り上がろうね!

___________________________________

 

「プロデューサー、高垣楓と知り合いなの!?」

「同じ会社ですので」

楓さんがプロデューサーに挨拶したところを目撃した未央ちゃんが興奮していた。私はさっきのカフェにいた美穂ちゃんの事を思い出していた。初めてあのカフェで彼女を見たときは既にステージの上で活躍していた彼女とあんなに仲良くなれるとは思っていなかった。小日向美穂、彼女は私がアイドルを辞めてからも一人の友人として連絡をとりあったり時々会って食事したりしてくれていたただ一人の友人だ。彼女の優しさに何度救われたか私は分からなかった。はっきり言って彼女がいなければ自殺していてもおかしくなかった。そんな感じで私の目はうるうるだった。こっちの世界でも仲良くなりたいなぁ。

「ところで皆さん、遅刻…ではありませんが次からはもっと余裕を持って集合するようにしてください。ギリギリでは相手の心象を悪くします」

「「はい、すみません…」」

「島村さん?」

「はいぃ!?すみませんでした!」

「お願いします。ではこれからスタジオに移動します、既に他のメンバーは撮影を始めています。こちらへ」

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。