『Happy Princess Live!
with NEW GENERATIONS!』
事務所に集まったみんなはそのポスターをまじまじと見つめていた。
ポスターには美嘉ちゃん、まゆちゃん、美穂ちゃん、茜ちゃん、瑞樹さんが写っている。それは変わらない。しかしその下には今回参加するシンデレラガールズの個人の写真が小さい四角に切り取られて並べられていた。携帯のアプリケーションのような感じだ。その数は11人。
プロデューサーが資料を持ち直した。
「先に言っておきます、今回参加しないメンバーは前川みくさん、多田李衣菜さん、神崎蘭子さんです」
「な、なんでにゃ…」
みくちゃんがわなわなと自分の手のひらを見つめた。ちょっと、これは流石にマズイんじゃ。私は前回のみくちゃんがカフェで立てこもり事件を起こしたのを思い出した。流石にプロデューサーも理由があるようですぐに口を開いた。
「前川さん、大丈夫です」
「なにが大丈夫にゃ!みくたちだけステージに出れないなんて…」
「大丈夫です!」
みくちゃんの様子を見てプロデューサーはさらに声を大きくした。みくちゃんは見てないからわからないだろうけどカフェで彼女を説得した時のような必死な顔だった。というか、そうなることを知っていて敢えてはっきり最初に断ったような有能さである。
「大丈夫です!前川さん、李衣菜さんそして神崎蘭子さんは私の中にデビューの明確なイメージがあるために今回は不参加という形になっただけで、これは本人の力量の問題ではありません!」
あまりの必死さにみくちゃんは一瞬呆然とした。李衣菜ちゃんと蘭子ちゃんは安心したような顔をした。
「ま、まあ。そういうことなら仕方ないにゃ」
まんざらでもなさそうな顔で腕を組んだみくちゃんを見届けて、私はライブのタイトルの意味を考える。参加アイドルがニュージェネだけじゃないということは『with NEW GENERATIONS』の意味は、私の知ってる、私だけが知っている『ニュージェネ』が参加するという意味ではないということだ。すると、みりあちゃんが質問をしてくれた。よくやってくれた。
「ねぇねぇ!タイトルの、うぃず、にゅー、なんとかってどういう意味なのー?」
プロデューサーはなぜか首の後ろに手を回した。今の問いに困る要素があったか?
「ウィズ ニュージェネレーションズと読みます。これは私がつけたわけではありませんがNew Generationsつまり私たち"新世代"のことです。withをつけて、新世代と一緒にという意味になります」
つまり『ニュージェネ』とは関係ないらしい。プロデューサーはそこで言葉を切り、千川さんに合図をする。彼女は頷くと私たちにライブの日時や日付、会場の収容人数、セットリストなどの情報が書かれた紙を配った。紙に書いてある内容にメンバーはそれぞれ小さく反応を示したが、プロデューサーが話し出すとすぐに話に集中した。
「この企画変更は佐久間さんのプロデューサー…つまりこのライブの責任者が提案し、昨晩決定されたものです。目的はシンデレラプロジェクトの受け入れをファンに円滑かつ無意識的に行ってもらうことです」
「莉嘉ちゃんやみりあちゃんがファンの皆さんの前にいきなりデビュー!をするのではなく、その前に知ってもらっておくように、アピールしておく、ということですよ」
みりあちゃんがうんうん、と頷いた。どうやら大きなイベントなので齟齬が生じないようにちひろさんと二人で説明を行っていくようだ。
「ありがとうございます、千川さん。ではセットリストをご覧ください。始めに城ヶ崎美嘉さん達5人が『お願いシンデレラ』そこから彼女達のMCでシンデレラプロジェクトの説明を行ってもらいます」
「この際会場のバックスクリーンに予め撮影する予定のみなさんの写真等が映し出されます。これにはみくちゃん達、今回参加しないメンバーも含まれます。この時にも"私たちのお手伝いに来てくれたシンデレラガールズですよー!"というようなニュアンスで紹介してもらいますので、あまりプレッシャーに感じることはありません。卯月ちゃん以外は」
ぎくり。みんながこちらに顔を向けてくるが苦笑いでごまかす。私とまゆちゃんのパフォーマンスを見たことがあるみくちゃんは意外と納得しているのかこちらを見て微笑んでくれていた。大人だなぁ…。ちなみに智絵里ちゃんは自分たちも歌って踊らなければならないのかと「ダンス…歌…」と青ざめていて、かな子ちゃんはそれを心配そうに見ている。手にはお菓子を持っている。
「城ヶ崎美嘉さん達によるCPの紹介トーク後は、最初の個人ステージである佐久間まゆさんの『エヴリデイドリーム』に島村さんが出演します」
プロデューサーは一旦言葉を切った。言うべきか、言わないべきか迷っているような感じだった。そのうちにみんなからぱちぱちと拍手をもらった。ありがとう。
結局首に手をやり、少し逡巡したが、口を開いた。
「…どうやら麻友Pは最初から島村さんにあの曲を歌わせるつもりだったようです。そもそもその話が通ったのは佐久間さんの猛プッシュがあったからのようですが……。ダンスのフォーメーションを聞いた時にもっと疑うべきでした。ともかく、申し訳ありません。予定とは違う形になってしまいましたが本当にできますか?島村さん。今ならまだ私が…」
「大丈夫です、できます」
心配してくれているプロデューサーの言葉を遮って私は断言する。その場にいるメンバー全員が驚いたように目を開いた。当たり前だ、ここでこう答えなくてどうする。不安がっている智絵里ちゃんやかな子ちゃんの前で無様なことは言えない。
そしてもっと大きな理由もあった。
「まゆちゃんはあの曲に特別な思い入れがあったようでした。プロデューサーさんに貰った初めての曲だと。それを私と歌いたいと言ってくれている。こんなに光栄なことは他にないです。私は絶対にこのステージを降りません」
私はこの上なく真剣な表情だったと思う。みんな茫然としていた。智絵里ちゃんはハッと何かに気づいたような、驚かされたような表情をしていた。何かが伝わってくれれば幸いだ。やがてプロデューサーは頷き「失礼しました」と言った。ちひろさんが後を引き継ぐ。
「改めて確認しますと、最初の個人ステージは事実上、佐久間まゆちゃんと卯月ちゃんのダブルステージとなります。ダンスを踊り、歌も歌うのはCPの中では卯月ちゃんだけですので頑張ってくださいね」
「そして二番目の個人ステージは川島瑞樹さんです。メンバーにはバックダンサーとして出ていただきます。このステージに出演するのは新田美波さんとアナスタシアさんです。曲は『Angel Breeze』」
ぱちぱちと控えめな拍手をみんなで送る。二人が小声で礼を言った。
「はい、お願いします。また、これはお二人に限った話ではありませんがLIVE当日まではダンスやパフォーマンスのレッスンが中心になります。各ステージの先輩方に指導していただく事もあるかもしれませんが、彼女たちも彼女たちでレッスンがあります。一回一回を大切にするようにしてください」
『はいっ!』
全員が大きな声で返事をした。出場しないみくちゃんたち3人も返事するあたり、いいなぁと思った。プロデューサーはしっかり頷いた。