「島村卯月、逆行します!」   作:赤猫;

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8.島村卯月は集約させる。②

「次のステージは城ヶ崎美嘉さんの『TOKIMEKIエスカレート』です。先週通達した通り、出場するメンバーは島村卯月さん、渋谷凛さん、本田未央さんです。よろしくお願いします」

「「「はいっ!」」」

みんなが手を叩いた。莉嘉ちゃんはどうせ出るならお姉ちゃんのステージに出たかったようですこしむくれている。プロデューサーはそれに気づいたようで、首に手を回した。

「実は城ヶ崎…美嘉さんも莉嘉さんと赤城さんをステージに立たせたかったとぼやいていましたが、既に決まってしまった事なので」

莉嘉ちゃんは苦笑いした。

「そっかー、じゃあしょうがないよね!」

みりあちゃんは「なんでわたしもなんだろー?」となかなか当然の疑問を口にしたが、プロデューサーは目を逸らしてスルーした。

控えめに言って英断だった。

それはそうと、美嘉ちゃんが実は自分たち以外とステージに立ちたかったということを聞いて地味に複雑な心境になってるのは凛ちゃんと未央ちゃんである。二人とも感情を隠せる方なのでクールなもしくは明るいいつも通りの表情を装っているが、ほんの少し表情が曇っている。これは一年間苦楽を共にした私にしかわからないだろう。なんと声をかけようかと思っていたのだけれど。プロデューサーもチラリとそちらの方を見た。そして気づいたらしかった。

「…ちなみに…ですが。城ヶ崎さんは『まあ、でも私たちのステージは絶対に良いものになるからもう手放したくないけどね★』とおっしゃっていました」

凛ちゃんと未央ちゃんはすこし安心したように口元を緩めた。莉嘉ちゃんは挑戦的に唇を釣り上げた。

あちらを立てればこちらが立たず、という状況でこれはナイスファイト、パーフェクトコミュニケーションである。

他のみんなはプロデューサーの似せようとしてるのかしてないのかわからない口調に笑った。ちひろさんはすごく意外そうな顔をしていた。

どうやら前回は私が気づかなかっただけでプロデューサーはプロデューサーで私たちに歩み寄ろうとしてくれていたのかもしれないと思った。まあ私の一週目とは違う行動のどこかが遠因になり巡り巡ってここまでき来たのかもしれないが。私はすこし嬉しくなった。プロデューサーは照れ臭そうにした。本当にかなり一週目より表情が豊かに見える。相手を警戒する必要がなく、相手の考え方を知っているとこんなにも人の顔がよく見えるのかと私は新鮮な気持ちになった。

「では次に移ります。4人目の個人ステージは小日向美穂さんの『Naked Romance』です。こちらはバックダンサーというよりもパフォーマーといったほうが正しいかもしれません。少なくとも我々にとっては激しい動きはあまりないステージになります。出演アイドルは双葉杏さん、三村かな子さん、緒方智絵里さんです」

「「はいっ!」」

二人が真剣な表情で頷いた。みんなが拍手をしようとして、一人返事をしてないことに気づく、そちらを見た。『働いたら負け』Tシャツをきた杏ちゃんは目を閉じて腕を組んで何やら悩んでいた。「うーん」と言うと目を開いた。最初に私を見て、次に智絵里ちゃんを見た。そしてため息をついた。

「本当はもうちょっとごねる予定だったんだけどね。まあ卯月ちゃんが取ってきてくれた仕事なんだし、やらせてもらうよ」

その言葉はみんなに謎の喜びをもたらし、盛大に拍手をした。杏ちゃんは「……智絵里ちゃんの覚悟もあるしね」と小さい声で呟くと部屋の奥のソファに戻って行った。

「それでは次ですが…」

「はいっ!はいはーい!質問です!」

「どうしたのみりあちゃん、何かわからないところがあった?」

ちひろさんがすこし前かがみになってみりあちゃんと話す。みんなが微笑ましく見つめるような感じになった。

「あの、あの、杏ちゃんが言ってた『卯月ちゃんが取ってきてくれたお仕事』ってどーいうこと?お仕事はプロデューサーが取ってきてくれるんじゃないのー?」

「なかなか鋭いにゃ…」

他のみんなもすこし苦笑いだ。ちひろさんは困ったような顔をして「えっと…プロデューサーさん、経緯の説明お願いできます?」と言った。プロデューサーは頷いた。

「先程から少し触れていますが、今回の件は佐久間さんが島村さんの資質を見抜き、抜擢を試みたところから始まります」

みりあちゃん以外も突然ステージデビューが決まった経緯を知りたいのか真剣に聞いていた。

「そこで佐久間さんは麻友Pを引き連れ宣材写真の撮影現場へ、麻友P…彼女は彼女で鋭い人ですので佐久間さんと同じ感想を持ったようです。彼女が言うには佐久間さんと同質の何かを島村さんから感じ取ったようです」

「まゆと卯月が似てる?」

「しまむーとはちょっと違う気がするけどなぁ…」

凛ちゃんと未央ちゃんが口を挟む。他のみんなも微妙な顔をしていた。まあそれはそうかもしれない。自分で言うのもあれだけどピンクっぽいところだけな気がする。しかしプロデューサーは違ったようで私の方をじっと見つめた。

「今の島村さんは確かに似ていると私個人は思っています。それはともかく、そこで何かを見抜いた麻友Pはこのライブの関係者を集めて、"島村さんに実力さえあれば歌わせる"旨の確認を取りました。その後、私がそうとは知らずに承諾し、佐久間さんと島村さんの初レッスンがありました。そこでのパフォーマンスが評価され島村さんは歌うことになります。また『ここまでできる新人がいるのなら』と言うことでCP全体の客観的な評価が上がり、話が進み、バックダンサーとしてみなさんが出ることになりました。以上が今回の経緯になります」

みんなが私の方を見た。そして、わっ!となった。

「卯月ちゃんありがとー!アタシー、ずっと待ってたんだよねー!☆」「にょわー!卯月ちゃんすごいにぃー!」「此度の歯車ということか…」「なかなかロックじゃん!」「ウヅキ…スゴイ…です」

そういえば私達ニュージェネは欠員補充で遅れてレッスンを始めたのだ。元からいた彼女たちは実力的には問題ないはずである。そもそも三人を補充するために待たされていたのだ。

「それなら…よかった、のかな?」

私は困ったように笑った。プロデューサーは首の後ろを掻いた。今日何回目だ。

「では次に進めます。最後の個人ステージは日野茜さんの『熱血少女A』出演アイドルは城ヶ崎莉嘉さん、赤城みりあさん、諸星きらりさんの三人です」

「「「はいっ!!」」」

「こちらは茜さんのダンスに合わせますので他より多少激しくなりますが三人ともダンスレッスンの講評は良い方なので問題ないと思われます」

三人とも嬉しそうに頷いた。これで全員分の説明が終わった。ちひろさんがスッと前に出る。

「さて、では私の方から今回のイベントの影響で変更になった細かいレッスンのお話をしますが……その前に、みんなで掛け声をかけましょうか。今回出る子も出ない子達も一致団結して前に進めるように。どうです?」

にっこりと笑う。全く凄い人だ。

「みりあやるやるー!」

「それがいいにゃ!」

「まあ、悪くないかな」

「円陣組もう!きらりん杏ちゃん運んできて!」

「わかったにぃ!」

みんなで輪になって手を繋いだ。ちひろさんとプロデューサーも流されて入っているので16人の大きい円だ。ソファをまたいでみんなで綺麗に広がった。

「では、プロデューサーさん。掛け声をお願いします!」

「じ、自分がですか?」

「他に誰がいるんですかほら、ほら」

「しかし……」

ちひろさんが握った手をくいくいと引く。プロデューサーは困ったように手を首にまわ…そうとしたがもう一方の手は私が繋いでいるのでくにゃんと持ち上がるだけだった。なんかおかしくってみんな笑った。私も笑った、ところをじろりと見られる。

「……では今回の立役者でもある島村さんも一緒に」

「うぇえ!?私ですかぁ?!」

「それがいいよしまむー!」

「うむ、影の功労者よ」

「蘭子チャンが言うとなんか厨二っぽく聞こえるにゃ」

「わ、わかりましたぁ!」

みんなが賛成してくれたので腹をくくって「では、プロデューサーさん行きますよ」と言う。「はい」と隣で低い声がした。全く。

「「シンデレラプロジェクト!ファイト〜!」」

『おおーー!!!』

 

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家に帰ってから私は適当にノートを引っ張り出して懐かしいシャーペンで今日決まったことを書いてみた。

私だけが知っていることも。

懐かしむようにそっと書き足しておいた。

 

夜はぐっすりと眠って、運命に感謝した。

 

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個人ステージ

 

①佐久間まゆ

『エヴリデイドリーム』

・島村卯月

 

②川島瑞樹

『Angel Breeze』

・アナスタシア

・新田美波

(LOVE LAIKA)

 

③城ヶ崎美嘉

『TOKIMEKIエスカレート』

・島村卯月

・渋谷凛

・本田未央

(new generations)

 

④小日向美穂

『Naked Romance』

・双葉杏

・三村かな子

・緒方智絵里

(CANDY ISLAND)

 

⑤日野茜

『熱血少女A』

・城ヶ崎莉嘉

・赤城みりあ

・諸星きらり

(凸レーション)

 

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