学園都市一位に転生したらアクセラさんの人格も残っていた件 作:メソテース
まずは自己紹介から始めましょう
ここは一体どこだろう。
辺り一帯を深い霧が覆いつくし、行く手が全く見えない。辛うじて見える足下は、舗装されていない河川敷のように凹凸が激しく、大きさの不規則な石が散らばっていた。
ふと真下を見てみると、自分が靴を何も履いていないことに気がついた。何やってるんだ俺。いつのまに自然に生きるタフガイになってしまったのだ。都会生まれ都会育ちの温室ボーイの俺がそんなことするわけない。第一、こんな獣道を裸足で歩いていたら怪我するし痛いはず…って、痛くない。足にも傷一つない。
そうか、こいつは夢ってやつか。しかしこんな夢見るなんて、俺も相当ストレス溜まってるんだなあ。都会暮らしも楽じゃあないもんだ。とにかく。俺よ、早う目覚めるのだ。特に害があるわけでもないが、すごく不気味だからここにいるのは勘弁だ。早くマイスウィートホームに戻ってくれ。
唸っても踏ん張っても、景色は見知った天井へとは変わらない。しばらく騒いでみても、返ってくるのは静寂ばかり。虚しくなった俺は、とりあえずこの道を進んでみることにした。
どれくらい進んだだろうか。景色は変わらないし疲労も感じないから距離感が掴めない。いい加減飽きてきた。そうだ、夢の中の俺もここで眠ればいいんじゃないか。することもないし、それでいいだろう。そう思って横になった途端に、目の前の一本道が三つに分かれてそれぞれに扉が現れた。本当にユニークな夢だな。この中から一つ選べってことか。…うーむ、迷う。夢とはわかっているけれども、何かとても重大な選択のような気がして簡単には選べない。
うーん、うーん…右のやつがいい気もするし、左のほうが良さげでもあるような。とりあえず真ん中のはダメだ。俺の直感がそう言っている。
…よし、決めた。右のにしよう。ドアノブに手を掛け、右に回す。この先には一体何が。夢であることを忘れて、緊張が身体を支配した。戸を引くと、その先に広がるのは…って、開かねえ。ああ、なるほどね。押して開けるタイプだったのね。それなら「押す」ってちゃんと書いてくれないと俺みたいな温室ボーイにはわからないのよね。さっきと同じようにノブを回し、戸を押…せない。ならば、と左のドアを開けようとするが、押しても引いても全く動かない。ヴェェ…この夢なんなの…。俺の脳内おかしいだろ…。
もうヤケクソだ。気は乗らないが真ん中の扉を開ける。扉を押すと、それはすんなりと開いた。そうそう、こんな具合にね、扉はガチャっと開かなきゃ。…は?
…開いた。なんぞこれ。三つのうちから選ばせといて結局開くのは一つかよ。意地悪すぎるだろ俺の夢。都会の波に揉まれるうちにこんな捻くれた性格になってしまったのか俺よ。項垂れる俺を尻目に、真ん中の開いた扉から白い光が漏れだす。それを見て俺は、花に誘い込まれる虫のように、「カイリュー出た!!」というデマに引っかかるポケモンG○のプレイヤーたちのように、そこに吸い込まれるかのごとく無意識で向かっていった。
瞬間、暗転する視界。ああ、ようやっと夢が覚めるのか。長かったがなかなか個性的な夢だった。しかし、大抵は起きるとさっきまで見ていた夢の内容とは忘れてしまうものだ。そう考えると、忘れているだけで俺は毎日この夢を見ているのかもしれないな。うん。
…いや、流石にないだろ。あんな夢毎日見るなんてどんだけ追い込まれてるんだよ俺。くだらない事を考えていないでさっさと起きて支度をしよう。
目を覚ますと、そこは俺のよく知るマイスウィートホームが…あ、あれ、なんか違くね? こんな天井だったっけ? マイスウィートホームはフローリングは白かった気がするんだけど。こんな金属の黒い天井じゃないんだけど。ていうかここ階段だよね!? あれ天井じゃなくて上の階の階段だよね!?
…俺はいつのまに階段で寝ていたのだ。そんな記憶は全くない。ま、まあいいか。とにかく家に帰ろう。最悪一限くらいならサボってもバレないだろ。って、もう夜じゃないか。仕方ない、真面目な温室ボーイの俺なら、一日くらい無断欠席しても平気だろう。とりあえず家だ。
マイスウィートホームを目指して、俺は立ち上がる。が、なにか違和感を感じる。そもそも目線の高さがおかしい。180オーバーのモデル体型のはずなのに、この高さは170もいいところである。周りの風景も全くと言っていいほど見覚えがない。不安になって近くのガラス張りのビルに反射した自分の姿を確認する。するとそこに映ったのは、身長約170センチ、髪は白髪で肌も白く、来ている服はかなりハイセンスな、はっきり言えばダサいTシャツを着た高校生くらいの男子だった。なんぞこれ。本当になんぞこれ。
そして混乱する俺に追い打ちをかけるように、それは語りかけてきた。
(テメェ…オレの体で何やってる…。スクラップにされたくなけりゃ今すぐこの変な能力解きやがれ…)
「ぎゃあああああ!!!ゆ、ゆ、幽霊だああああ!!!!」
(あっ、オイ!!走り回るンじゃねェ!)
「ま、まだ付いてくる!!誰か助けてええええ!!」
☆
「こっ、ここまで来れば大丈夫だろ…。それにしても一体何が起こってるんだ?」
(そりゃこっちのセリフだ。今までの様子を見た感じ術者はお前じゃねェみたいだし、一体誰が何の目的でやってンだ)
「うわあああ!!!幽霊まだいた!!!!」
(うるせェ!! そもそもオレは幽霊じゃねェ!)
「うっ、嘘だ!俺を食べる気なんだろ!!」
(ンな訳ねェだろ!大体、幽霊とか言ってるけどなァ、お前はその幽霊の姿が見えンのか? ア?)
そう幽霊に言われて辺りを見回してみるが、それらしきものはいない。なんだ、幽霊なんていなかったのか。少し安心した。
が、安心したところで次の問題が浮上する。さっきから俺に問いかけてくる幽霊(偽)は一体何者なんだ。実害はなさそうではあるが怖いことは変わりないので、恐る恐る幽霊(偽)に問いかけた。
「あのー、じゃあ貴方は一体…?」
(それもこっちのセリフだ。オレの体乗っ取ってンのはお前のほうだからな)
そういえば、大事なことを忘れていた。なぜ俺はもとのモデル体型からこんな厨二病拗らせすぎた奴みたいな体になってしまったんだ。
こいつの言い草からして、この体は幽霊(偽)のものなのだろう。…なのだろうなんて言ってみたけど、全然納得していない。流石に非現実的すぎる。これも夢なのか? その問いも正確な答えは導き出せない。夢から覚めてはじめて、それが夢だったという証明になるからだ。
いや、待てよ。だったら何で俺はあの霧のかかった獣道での一件は夢だと確信していたんだ? なにか、そこに重大な秘密がありそうな気がする。…とにかく、俺はもとのスレンダーボディに戻ってマイスウィートホームでダラダラしたいのだ。幽霊(偽)と協力してもとの世界に戻らなくてはならない。
「なあ、幽霊(偽)さんよ。この体は君のもので、俺がなぜか君の体を動かしているってことでOK?」
(幽霊(偽)でもねェ!! ……だがまァ、その通りだ。さっきと違ってやけに物分かりいいじゃねェか)
「何がなんだかわからないが、俺は早くもとの体に戻りたいんだ。こんな貧相な厨二ボディなんてごめんだからな」
(テメエ、おちょくってンのか…。戻ったらまずお前を消してやるからな…)
プ、「消す」ですって。厨二病も服と髪だけにしてくださいよ旦那。大体、人殺しは犯罪だからな。俺は殺したらおまわりさんが黙ってないぞ。
なーんてことを思ったりしたけど、不本意とはいえ体を借りているのは俺の方だから口には出さずに胸にしまっておいた。
(オイ、聞こえてるからな…。学園都市一位をナメたツケはしっかり払ってもらうぞ。覚悟しとけよ)
学園都市一位(笑)。そもそも学園都市ってなんだよ。札沼線か何かかな?
(お前、頭沸いてんじゃねェのか? 今いる場所が群馬か何かだと思ってンのか?)
唐突な群馬へのディスりは置いておいて、聞き捨てならないことを一位(笑)が言った気がする。
「…あの、本当に学園都市なんて聞いたことないんですけど、もしかしてここって…?」
(もしかしなくても学園都市だ。お前が外部の人間だったとしても、学園都市知らないなんてヤバいンじゃねェの? 義務教育受けてますかァ? モデル体型(笑)さんよォ)
クソ、ここぞとばかりに煽ってきやがる。
だが、煽られても知らないものは知らない。さっきから学生しか見かけないし、なんか風車っぽいのいっぱいあるし、こんな特徴的なところなら俺でも知っているはずなんだけど。ほら、あそこなんか掃除ロボットいるし。ルンバ進化しすぎだろ。そのうちルンバに人間支配されるんじゃねえの?
くだらないことに気を取られていて、正面から近づいてくる女性がいたことに気がつかなかった。
いや、普通の人ならば特に問題はないのだが、その女性は明らかにおかしい。中学生?くらいの見た目に、ベージュのカーディガン、ミニスカートの制服。ここまではいい。いたって普通の、可愛い女子学生だ。だが、明らかにその見た目に反している部分がある。額には軍用ゴーグル。両腕には、マシンガン。おかしい。おかしすぎる。セーラー服と機関銃の撮影だと言われても納得できない。だってセーラー服じゃないもん。セーラー服舐めてたら痛い目見るぞ。
「一方通行、第九九八二回の実験まで残り僅かです。指定座標まで案内しますとミサカは懇切丁寧に誘導します」
「ごめん、語尾が強烈すぎて内容が全く頭に入ってこなかった」
中身もやばかった。一位(笑)もそうだが話し方がヘンテコすぎる。揃いも揃って厨二病真っ盛りですか。
「ですから、第九九八二回の実験の指定座標まで案内しますとミサカは内心イライラしているのを隠して言います」
隠れてねえじゃねえか。そのポーカーフェイス全く意味ねえよ。
女子学生に言われるがまま、俺はその指定座標とやらへ向かう彼女の後についていった。道中、何度も一位(笑)に話しかけたが全く答えてくれなかった。側から見ると馬鹿でかい独り言を言っているように見えたのだろう、女子学生に蔑みの視線をもらった。
蔑む目で見られるわ、銃器を持った女子学生に連行されるわで周囲の目が痛かったが、指定座標とやらに到着したらしい。女子学生はカウントダウンを始めた。何が起こるのだろう。花火でもぶっ放してくれるのだろうか。そう考えているうちにカウントはゼロになった。
「それでは、これより第九八八二回の実験を開始しますとミサカはマシンガンを構えつつ実験開始を告げます」
うむ、実験開始ですか。して、一体全体なぜ女子学生はマシンガンを俺に向けているのでしょうか。
………もしかして、俺の生命危うい?