GATE ―自衛隊特殊部隊『嵐』隊長、彼の地にて斯く戦えり―   作:ならや

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また放置してしまって申し訳ない!
それではどうぞ!


リヒャルダと詩織と

新人研修を見終わった佐藤はその足で艦内の部屋へと向かう

ドアの前の乗組員は海上自衛隊と同じ青のデジタル迷彩の服を着ており、パッと見は一般的な護衛艦の乗組員だ

その乗組員が手に自衛隊では採用していないベネリM4を所有している事を除けばの話だが

佐藤を見つけた乗組員は敬礼し、ドアの前から退く

軽く返した佐藤が中へ入るとリヒャルダが窓の外を見ていた

「調子はどうです?」

「おお、佐藤殿。いや、全く凄いものだな。この小島の様な船を作れる貴国は我々の常識を遥かに超えた技術を持っているのだろう。この部屋とて船の中とは思えない快適さだ」

「まぁ、本艦は特別ですからね」

一応捕虜として扱われるリヒャルダはこの部屋を与えられている

この部屋は本来捕虜の収容部屋等ではなく群司令を始めとする高級将校が使う部屋を少し変えただけである

この部屋を使うと決断したのは佐藤本人でリヒャルダ相手に敬意を持って接している事の表れである

「この部屋は見た目が優れているだけではありませんよ」

「と、言われると?」

「こう言う事です」

佐藤はポケットからオイルライターを取り出し火を付けて床へ落とした

当然床のカーペットへ燃え広がる........事も無くすぐにライターの火が消えた

「これは......火災対策か?」

「ええ。本艦は艦内の装飾品も全て防火仕様となっています。発生した火種はすぐに消えます。船という物は1度火災が発生すると簡単に沈んでしまいますので」

佐藤の言葉通りで、戦闘艦で発生した火災は適切なダメージコントロールがあっても消火は困難を極める

日米は太平洋戦争で熾烈極まりない海戦を体験しており、共に艦が火災で容易に失われる事を知っていた

だからこそ両国海軍艦艇は他国に例を見ない程徹底した火災対策を取っているのだ

歴史ある英国海軍ですらここまでの対策はしていないし、なんならフォークランド紛争までは火災を軽く見ていた

しかしこの紛争で英国海軍は火災に苦汁を舐めさせられたのだ

命中したエグゾセが不発だったにも関わらず英海軍のシェフィールドが沈んたのはエグゾセの残燃料が引き起こした火災と高速突入による被害が原因だった

また撃沈こそしなかったもののグラモーガンにも大火災を発生させ大破させたがこの時もエグゾセ自体は不発であった

第二次世界大戦、大戦後を見てわかる通り火災は船の天敵である

リヒャルダについてもそれは共通認識であるようだった

「それは痛い程分かる。我々の船は木で出来ている。佐藤殿達の船以上に火には弱い」

「その通りだと思います。リヒャルダ将軍、共に外に出ては見ませんか?」

「良いのか?ご好意に甘えさせて頂こう」

2人で部屋を出る

艦橋上にある艦橋上部監視所に詩織の許可を取って立ち入る

巨大なきいの最上部からの眺めは壮観であった

「良い眺めだ....我々はこの国を破壊しようと考えれば後悔しかないな...」

「将軍、あなたを国に返す事もできますが.....」

「私は死んだ事にされているさ。今更帰っても歓迎はされないなら、ここに残りたい」

「将軍がそう仰るのなら我々は構いません」

佐藤の隣に佇むリヒャルダの表情は非常に穏やかだった

「佐藤殿」

「どうされました?」

「将軍とは、難しいものだな」

「........ええ。常に2つの立場の者達に挟まれますから」

(うえ)部下(した)か。一方を疎かにする事は出来ない」

「そのバランスの取り方が時代とマッチしていれば名将と呼ばれるのだと思います」

「我々は名将と呼ばれるかな?」

「それは我々が決める事ではありませんよ。後の時代を創る者達が決めるのでしょう」

艦内に戻った2人は別れ、佐藤は艦橋に向かった

艦橋に居る詩織に会いに行くのが目的である

「詩織」

「ん?」

「UAVは持ってきてるか?」

「あるよ。使う?」

「今はいい。が、その内使う事になるかもな」

「目標は帝国軍かな?」

「いや、どっちかって言うと内地のクーデター軍だな」

詩織が少し反応を見せる

「.....なるほどね。私達を受け入れている事に納得してない内地軍の連中が女王相手にクーデターを起こす可能性はある」

「そうだ。その時に備えなきゃいけないからな」

佐藤が見つめる先には城があった




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