【完結】ToLOVEる ~守護天使~   作:ウルハーツ

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第99話 モモの真意。ナナの自覚

 1年B組の教室は現在教員による授業が行われていた。黒板とチョークを使って言葉を書き出していく教師の背中を視界に映しながら、それをノートに写していく生徒達。だがナナは授業に集中出来ていない様であり、ふと覗いた窓の向こう側に映った光景に驚いて釘づけとなった。現在グラウンドでは2年A組が体育の授業を行っており、当然ララや真白達の姿もある。何となく気になってジッとその姿を見つめて居た時、微かに反応した真白が顔を上げた。……そして、その目が合う。

 

『……』

 

「! っはは……」

 

 ナナの視線に気付いた真白は目立たない程度乍らナナが気付く様に手を振った。思わず嬉しくなってナナが手を振り返しながら笑うと、真白は春菜に声を掛けられて授業に戻る。それを見てナナも授業に戻る為に視線を前に向け、自分がクラスメイト達や担任教師に見られている事に気付いた。

 

「授業に集中しろ」

 

「……はい」

 

 注意されて萎縮するナナの姿に全てを見ていたメアが笑う中、授業は再開される。その後、時折グラウンドを気にし乍らも授業を終えたナナは同じ様に授業が終わって誰も居なくなったグラウンドを見て溜息を吐いた。そしてその姿にメアが笑みを浮かべながら話し掛ける。

 

「ナナちゃん、何か悩みでもあるの?」

 

「え? あ、いや……うん」

 

 メアの言葉にナナは戸惑いながらも思い当たる節があったのか、やがて頷いて肯定する。元々勉強が余り好きでは無いナナだが、集中力が無い訳では無い。だがメアが見た限りここ数日の間、ナナは殆どの授業等で集中出来ていない様子であった。故に気になっていたメアはナナが肯定した事で彼女の前にあった席の生徒に一言言ってその場所に座る。明らかに話を聞こうとするメアの姿にナナは少しだけ頬を掻きながらも話し始めた。

 

「最近さ……気になるんだ」

 

「気になるって、何が?」

 

「……シア姉」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結城家に帰宅したナナは最初にリビングへ向かう。そこには既に帰っているであろう美柑や真白が居る筈であり、扉を開けて中に入れば想像通りキッチンで料理をする2人の姿があった。

 

「あ、ナナさんお帰り!」

 

「……お帰り」

 

「お帰りです、プリンセス・ナナ」

 

「お、おう……」

 

 見慣れた光景であり、何時も通りの事。だがナナは何処かぎこちない様子で返した後、リビングを出て自分の部屋へ戻ってしまう。何処か様子のおかしいナナの姿に当然3人も気付き、だが理由が分からない故に首を傾げた。

 

 階段を上がって異空間にある自分とモモのスペースに入った時、最初に通る共有スペースでモモは携帯を見つめていた。その頬に手を当てて楽しそうに画面を見つめるモモの姿にナナは不思議に思い、声を掛ける。

 

「モモ、何見てんだ?」

 

「あらナナ、お帰り。ふふっ、これよ」

 

 ナナの声で帰宅したことに気付いたモモは迎えると同時にその携帯画面をナナへ見せる。そこには幸せそうな表情でララが猫耳を生やした真白の頭を撫で、撫でられた本人も少しだけ気持ち良さそうに目を細める画が映っていた。それはナナが宿題に必死でリビングに居られなかった際に起きた出来事であり、モモはその写真を待ち受けにして眺めていたのだ。

 

「な、なな、何だよこれ!」

 

 顔を真っ赤にして両手で携帯を手に叫ぶナナの姿に勝ち誇った様子でモモは笑みを浮かべる。既に終わってしまった事の為、真白の頭に猫耳が生える事はもう無い可能性が高い。モモはそれを含めて説明した上でナナの手から携帯を取り返すと、再び頬に手を当ててその写真を眺め始める。

 

「あぁ、何時までも見ていられるわ」

 

「……モモも大概、姉上達の事が好きだよなぁ」

 

「? 当然じゃない。それに、私の好きは唯の好きじゃ無いわよ」

 

「……はぁ?」

 

 自分達の姉であるララや同じ様に姉の様な存在である真白の事が大好きだと見ただけで分かるモモの姿に少しだけ呆れた様子でナナが呟いた時、モモは不思議そうな顔でさも当然の様に答える。だがその言葉の最後が理解出来ず、ナナは首を傾げた。そこでモモは持っていた携帯をしまってナナへ告げる。

 

「だって私、シア姉様の事を本気で愛してるもの」

 

「……! あ、愛し!? あ、ああ、愛!?」

 

 理解するのに少しばかり時間を有し、やがて分かったナナの顔は真っ赤に染まる。唯姉として好きと言う訳では無いと嘗て似た様な話をした事から理解出来たナナは言葉を繰り返そうとして上手く口が回らず、唯々慌てる姿を見せる事しか出来ない。モモがそんなナナの姿に「やっぱり貴女は子供ね」と呟いた時、気に入らなかったナナは怒りから少しだけ冷静になって顔を赤くしながらも口を開いた。

 

「何だよそれ! 姉上がシア姉の事を好きなのはモモも知ってるだろ!」

 

「えぇ。でも仕方ないじゃない。好きになってしまったんだもの。お姉様を裏切るつもりは無いわ。だけど引くつもりも無い」

 

「ど、どうするつもりだよ……?」

 

「貴女も王宮で習った筈よ。地球では余り馴染が無いみたいだけど、宇宙では一夫多妻やその反対も珍しく無い。そしてそれは同性の間でも無い話じゃ無い。……私はお姉様を応援してるし、シア姉様と結ばれて欲しいとも思ってる。だけどもしも叶うのなら、2番目でも3番目でも良いから私を見て欲しいとも思ってる。それだけよ」

 

「なっ……な……」

 

 開いた口が塞がらない。正にそんな状態になってしまったナナを前に言い切ったモモは何かを考える様に顎へ手を当て始める。真白を好いている者はララだけで無い事は把握しており、他の者達をどうするべきか。そして目的通りにララと真白が結ばれた場合、次期デビルーク王はどうするのか? モモの考えは難題だらけである。

 

 顔を真っ赤にしてモモの言葉を頭の中で繰り返すナナは学校でメアに話した事を思い出す。

 

 

『真白先輩の事が気になるの?』

 

『あぁ。何か気付くと目で追ってるし、一緒に居るとこの辺が暖かくなるんだ』

 

『ふ~ん。ねぇ、それって』

 

 

 ナナは思い出したメアの言葉を振り払う様に頭を振ると、「あたしは認めねぇからな!」とモモへ告げて自分の部屋へ飛び込む様に入ってしまう。何処か自分の言葉とは別に何かへ告げている様に感じたモモは閉じてしまったナナの部屋へ続く扉を見つめ乍ら微かに目を細めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夕食を終えたナナとモモは結城家のリビングで寛いでいた。最初住み始めた頃、2人は結城家に食事等で頼らないと決めていた。だが料理を作る真白と美柑は2人分増えたところで問題無いと。リトは一緒に食べた方が美味しいと。ララは一緒に食べたいと言った事で頻繁に食事を共にする様になっていた。因みに食費代に関しては父親であるギドがザスティン経由でお小遣いとしてララ達に渡している為、その一部を支払っている。

 

「お風呂湧いたけど、誰から入る?」

 

「あ! じゃあ真白! 一緒に入ろ!」

 

「……」

 

「シア姉様、少し良いですか?」

 

 リビングへ戻って来た美柑の言葉に立ち上がって真白を誘ったララ。既に片付けも終わっていた為、真白はそれに頷いて同じ様に立ち上がろうとする。だがモモに呼ばれた事で首を傾げながら近づいた時、他の誰にも聞こえない様にモモは真白へ何かを耳打ちする。それを見ていた全員が分からず首を傾げる中、モモの言葉に真白は少し間を置いて頷いて返す。と、モモが笑顔でお礼を言った後にララの元へ。真白の代わりに一緒に入りたいと告げた。

 

 モモとララが居なくなった事で何を言われたのか気になったヤミが話し掛けようとするが、それより早く動いた真白はナナの傍へ近づき始める。突然自分の元へ来た真白に驚きながらもモモが何かを言ったと察したナナは何処か緊張しながら真白と目を合わせた。

 

「……今日……一緒に、入る」

 

「へ?」

 

 ナナがその言葉に驚く中、真白はそう言ってリビングを後にしてしまう。状況が理解出来ずに固まるナナと困惑する美柑を置いて、ヤミも追い掛ける様に部屋を後にすればリビングには静寂が支配した。

 

 1時間後。ララとモモがお風呂からあがった後、美柑がそれを伝える為に真白の部屋を訪れる。ヤミと並んで本を読んでいた真白は美柑の言葉で本を片付け、ヤミを部屋に残して服を手に部屋を出るとナナの居る異空間へ向かった。ナナの部屋をノックすれば彼女の声が聞こえ、静かにお風呂が空いた事を伝える。と、中から焦った様子の声と物音が響いた。少し心配になって真白が部屋の扉を開けようとした時、額に汗を掻いて服を手にしたナナが先に扉を開けた。

 

「そ、それじゃあ入ろうぜ!」

 

「ん……」

 

 やはり普段とは違う緊張した様子で言うナナの姿に真白は頷いて歩き始め、2人は結城家に戻ると真っ直ぐに脱衣所へ向かう。互いに生まれたままの姿となり、浴室に入ってシャワーを浴びた後に湯の張った浴槽へ浸かれば……互いに見合った状態で2人は無言になってしまった。

 

「……ぁ……ぅ」

 

 恥ずかしさからか身体が暖まった故なのかは定かでないが、頬を赤く染めたナナが耐えられないとばかりに真白の目から視線を外した。向けた先は下であり、そこに映るは透明な湯で微かに歪む真白の肌色。更にその頬が赤く染まる中、突然湯が大きく動くと同時にナナは身体を掴まれる。

 

「ひゃ!」

 

「……」

 

 前後を反転させられて真白に背を向ける形となったナナはそのまま身体を引き寄せられ、背中に柔らかい感触を感じ乍ら慌て始める。だが真白は何を言うでも無くその頭に手を乗せると、優しく撫で始めた。それは幼い頃にナナがされた事のある真白なりの慰め。落ち込んでいる時に真白が元気付ける為、甘えたがりのナナが心から甘えられる様にしていた事である。それをされた事でナナは真白が現在『ナナは落ち込んでいる』と考えている事が分かり、どうしてそう思ってしまったのかも理解する。

 

「っ! モモの奴……」

 

「……」

 

「ぁ、はぅ」

 

 八重歯を見せ乍ら悔しがるナナだが、頭を撫でる真白の手にその表情が緩む。無意識に湯船から先の出る尻尾がゆらゆらと揺れ、ナナは真白の身体に背中から身を預けた。暖かい真白の肌と湯の温度、頭を撫でる感触に満たされる心。この状況を作る為に動いたであろうモモに『余計な事をしやがって』と言う思いと同時に感謝も抱き始めていた。……そして蕩けそうな頭の中、ナナは1つだけ伝えたかった事を伝える為に口を開いた。

 

「その……この前はありがと、な」

 

「?」

 

「メアとの事、2回も相談に乗ってくれただろ? お蔭であたしはアイツと本当の友達になれた。全部シア姉のお蔭だ」

 

「……違う。……ナナの、頑張り」

 

 ナナのお礼に首を横に振りながら真白が答えれば、予想していたナナは笑みを浮かべて首元に感じる柔らかさを慣れから羞恥心も薄れて堪能し始める。蕩ける思考と感覚に気付けば甘える事に抵抗も無くなり、ナナはそのままゆっくりと目を瞑り始めた。薄れ行く意識の中、小さな思いを抱きながら。

 

「ぁたしは……シァねぇが……すぅ……すぅ」

 

 何かを言おうとして言えず、やがて聞こえる寝息に真白は少しだけ困ってしまう。だが明らかにこのままでは駄目だと思い、真白はナナの身体を横抱きに抱えて湯から上がる事にした。自分の身体と一緒にナナの身体も拭き、ナナが次に目を覚ました時はベッドの上であった。

各話の内容を分かり易くする為、話数の後に追加するのは何方が良いでしょうか?

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