「真白、あ~ん(うぅ。食べさせてるのが私なのに私じゃ無くて、何か……複雑)」
「……はむっ」
「……」
遊は目の前で恥ずかし気も無く真白へ夕食のおかずを食べさせる唯の姿を見て呆気に取られてしまう。普段から余り友達を家に呼ぶ事等しない唯が珍しく友達を連れて来た。それだけで驚きだったにも関わらず、そんな事は些細な事とばかりに広げられる目の前の光景に箸で掴んだご飯を茶碗に落とす。
「まぁまぁ、まさか唯にこんな仲の良い友達が居たなんて」
頬に手を当てて2人の姿を優しく見守る唯と遊の母親。その隣では同意する様に何度も頷く父親の姿もあった。確かに今の姿を見れば2人の仲がとても良いのは一目瞭然だろう。過去にお見舞いに来た事や不良から唯を連れて逃げる真白の姿を見ていた遊には今回の光景を見なくてもそれは分かっていた。……故に違和感しか無かった。不器用で素直になれない唯が明らかに普段隠している本心を恥ずかし気も無く晒して真白と接している姿に。そして彼は1つの可能性を考える。何時か出会った結城 リトと言う名の人物と、そこで知った宇宙人達との生活という信じがたい真実を。
唯と一切離れずに過ごした夕食を終えてお風呂を沸かす間、リビングで寛ぐ事になった真白。当然唯は彼女の隣に座り、洗い物をする母親やリビングにある別の場所で寛ぐ父親の姿を横目に部屋へ戻らなかった遊は真白と話をする事にした。
「唯の様子がおかしいのは何か理由があるんだよな?」
「……」
彼の姿を微塵も気にしない唯に髪の匂いを嗅がれながら、真白は頷いて肯定した。だが説明するのを迷っているのかそれ以上話す気が無いのか、真白は何も喋らない。何とも言えない沈黙の後、遊は頬を掻いて自分が宇宙人などについて知っている事を明かした。遊は過去に女体化したリトと出会い、男性に戻る姿を目撃したのだ。そして真白と別行動をとっていたヤミにリト共々襲われて逃げた事や、その後に彼から宇宙人の存在について説明された事も告げる。真白は話を聞いて後日ヤミへのお説教を決定しながら、頷いて途切れ途切れに説明を始めた。
「つまり、今の唯は本心を曝け出してる訳か。……なぁ、唯。俺の事、どう思ってる?」
唯の状況を理解した遊は面白半分で唯に質問をした。そこで真白の髪に顔を埋めていた唯は彼へ視線を向け、優しい笑みを浮かべる。
「普段だらだらしてるし節操も無くてどうしようも無いけど、いざとなったら頼りになるし私の事を守ってくれる優しいお兄ちゃん(何でそんな事聞くのよ!)」
「……何か、すまん。悪かった」
「謝る必要ないわ(謝らないでよ! あぁ、一体これからどんな顔して話せば良いの……?)」
ちょっとした悪戯心と好奇心だった。だが本音しか話せない唯からの回答に遊は頬を掻いて照れた様に顔を背け乍ら、同時に自分がした事へ罪悪感を感じて謝罪する。内心で顔を真っ赤にする唯の姿は誰にも見えず、すると突然リビングに響き渡るお湯が沸いた事を知らせる音楽に唯は視線を向けた。そしてすぐに真白へ振り返る。
「真白、一緒に入りましょ!」
そう言って真白の手を取り立ち上がった唯は真白を連れてリビングを後にする。短い時間乍ら疲れた様に溜息を遊が吐いた時、洗い物を終えた母親がリビングを後にする2人の姿を見て微笑んだ。
「本当に、仲が良いのね。良かったわ、唯にあんな友達が居て」
「友達……なのか? いや、相手の方はそうかも知れないけど……」
唯の現状を聞いた遊は母親の言葉で思わず1人呟いた。今まで彼は真白が唯の数少ない友達だと思っていた。そしてそれは真白から見れば何も間違ってはいないだろう。だが先程の様子を見る限り、唯はそれ以上の感情を真白へ抱いている様に遊には見えていた。仲が良い友達とお風呂に入ろうとする姿も相まって、彼は考える。
「風呂は女子なら別に可笑しく無いのか? ……まぁ、どっちでも良いか」
「何が良いんだ?」
「いや、何でも無い。……あいつの恋に俺が口出す理由も無いからな」
それで唯が幸せに思うのなら。そんな兄らしい考えで結論付けた遊はお風呂が空いたら教える様に両親へ伝え、自分の部屋へ向かうのだった。
壁に掛かる猫の絵や写真。大きなぬいぐるみ等もあり、そんな唯の部屋の中で寝間着の真白は唯のベッドに座っていた。彼女の後ろにはタオルとドライヤーを手に真白の髪を乾かす同じく寝間着の唯の姿もあり、やがてスイッチを切った唯は「良し」と言って真白の隣に移動する。
「明日は学校もあるし、早めに寝ましょう?(明日になれば戻ってるわよね?)」
「……ん」
既に眠気を感じ始めていた真白は唯の言葉に頷くと、彼女に促されてベッドへ横になる。唯の部屋にあるベッドは壁際であり、真白は唯の先導で壁を背にする形で寝る。すると唯も同じ様に横になるが、その距離は明らかに真白と近かった。唯用のシングルベッドに3分の1程空きが出来る程に。徐々に微睡む真白に微笑んでその手を掴んだ唯は真白の指と自分の指を絡め合う様に繋ぎ始める。世間一般に恋人繋ぎと言われる繋ぎ方だ。
「(な、何やってるのよ私!?)」
「ん……ゆ、ぃ」
「ふふ、大丈夫よ。おやすみなさい、真白(全然大丈夫じゃないわよ!?)」
微睡む真白を安心させる様に額を合わせて優しく声を掛けた唯。内心では焦りながらも当然それは身体に反映されず、徐々に真白の目は閉じ始める。やがて少しの間を置いて静かな寝息が聞こえ始めた頃、唯は再び微笑んで繋いだ手をそのままに額を合わせたまま目を閉じた。……が、内心では顔を真っ赤にしてドキドキしている為、寝付ける訳が無かった。手を繋いだまま近距離で眠るその体勢にようやく慣れ始めた頃、唯は思わず想像してしまう。もし自分と真白が特別な関係だったなら、これ以上の事をしていたのかも知れないと。そして、本音を隠せない唯の身体は動き始めた。
「(ま、待って! 駄目!)」
「んっ……ん、ぁ……」
更に距離を近づけて身体を密着させる唯。彼女の大きな胸と真白の一回り程小さい胸が2枚の布越しに擦れ合い、真白は微かに反応する。内心で唯は止める様に只管言い続けるも、目に映る光景に彼女の妄想は尽きなかった。そしてそれを実行する為に、容赦無く身体は動き続ける。手を繋いだまま、額合わせを止めた顔が少しだけ下へ下がり、器用にその口で真白の来ている寝間着のボタンを外し始める。内心で驚かずにはいられない唯は、やがて晒される真白の胸元に顔を真っ赤にした。
「(ま、不味いわ。これ以上は……考えちゃ駄目。考えちゃ駄目)」
意識すればする程に、唯の思考はどつぼに嵌って行く。故に唯は必死に考えて1つの方法を思い付いた。何も考えない様にしようとすれば、無意識に考えてしまう。なら出来る限り害にならない様な妄想をすれば良いと。そう決めた唯は開いた真白の胸元を前に、想像する。そう、それはまるで彼女の堪能する様に。
「すぅ……はぁ……あぁ、これ……良いわ(お願い真白、起きないで!)」
「ぅん……ぁ……」
必死に内心で願いながら、身体はその顔を真白の胸元へ近づくと、膨らみの間に顔を埋めて大きく息を吸い込み始める。途端にその顔は恍惚とした表情になり、唯は一度顔を離してから再び匂いを嗅いだ。鼻孔を伝って感じる嗅ぎ慣れたボディソープの匂いに混ざる真白の匂い。それは彼女にとって麻薬に近いものであった。頭が一気にボーっとし始め、ふわふわとした感覚の中で徐々に眠気を感じ始める身体。やがて唯は真白の胸に顔を埋めたまま、意識を失う様に眠りにつくのだった。
翌日、目を覚ました唯は無事に自分の意思で身体を動かせる様になった。だがその日、1日中彼女は学校でも家でも誰とも目を合わせる事が出来なかった。本音を漏らしてしまった為に、面と向かって話す事が恥ずかしくて堪らなかったのだ。
「唯! 今度は皆でお泊りしようね!」
「え、えぇ。そう、ね」
「……楽しみ」
だが、本音を聞いたが故に笑顔で告げるララや話を聞いて頷きながら呟く真白の姿を見て思う。
「……偶には、悪く無いかも知れないわね」
「?」
「何でも無いわ」
小さく呟いた言葉が聞き取れず、首を傾げる真白に微笑んで答えた唯。そう簡単に変われるものでは無いが、彼女はもう少しだけ素直になる努力をしようと決意するのだった。
各話の内容を分かり易くする為、話数の後に追加するのは何方が良いでしょうか?
-
サブタイトルの追加
-
主な登場人物の表記