【完結】ToLOVEる ~守護天使~   作:ウルハーツ

131 / 139
第130話 エンジェイド【後編】

 ルンのお蔭で中に入る事が出来たリト達。そんな彼らが目の当たりにしたのは外と変わらず荒廃した城内であった。蜘蛛の巣に似た何かが至る所に張られ、脆い柱は今にも折れそうに見える。外が新しくされていただけで、中に関してはまだ何も手を付けられていない様子だった。

 

「ここが昔、真白先輩の住んでた場所なの?」

 

「私達と出会う前の真白が生まれ育った場所……?」

 

「お、おい。危ないって」

 

 メアが辺りを見渡しながら首を傾げる中、ヤミはふと気になった一室の扉に近づき始める。何もされていない様に見えても何があるか分からない為、リトがそんな彼女について行き、ヤミはその扉を開けた。……部屋の中は廊下と同じく古びていたが、そこには紛れも無いベッドやぬいぐるみ等が置かれたままであった。何となく、ヤミはその汚れてしまったぬいぐるみを手に取る。風化したそれはヤミの手に捕まれる事無く崩れ去り、ヤミとリトの後を追ってメアとザスティンも部屋の中へ入室した。

 

「確かこの部屋は……」

 

「多分、真白の部屋……だと思う」

 

 ザスティンは過去にデビルーク王のギドがエンジェイド王のジルと親友の関係だった事もあり、この城へ足を踏み入れた事があった。ララ達が同い年の友達であるシンシアと遊ぶ為に入っていた部屋。まだ平和だった頃、この部屋は時折ララ達三姉妹やまだ同じ身体で過ごしていたレンorルンが来る度に騒がしかったのだろう。想像していた笑顔溢れる部屋が再び荒廃した自分達だけが居る部屋に戻り、リトは辛そうに顔を伏せた。

 

「ここにあったのは、全部真白がシンシアだった時に失ったもの。なんだよな」

 

「あの日、力を失ったデビルーク王に代わってシンシア殿を迎えに行ったのは一般の兵士でした。セフィ様や私達は銀河統一後の後作業に追われてしまい、ララ様達もまだ幼かった為に迎えに行けたのは彼等だけ。ですがセフィ様はその事をずっと後悔なさっています。例え無理をしてでも、自分が迎えに行くべきだったと。そうすれば誤解する事も無く、今頃は……」

 

「もしもの話に興味はありません。それに不謹慎かも知れませんが、私は感謝しています。お蔭で真白と出会えましたから」

 

 リトの言葉にザスティンが思い返しながら続けるが、ヤミはその言葉をバッサリと切り捨てて歩き始める。部屋を後にするヤミの手は握り締められていた。メアはそれに気付いて彼女の後を追い、リトとザスティンは視線を合わせる。

 

「確かにララの親父さんやセフィさんには悪いけど、俺も良かったと思う。俺達が真白と家族に成れたのはそのお蔭だからさ」

 

「……王に忠誠を誓った私が言うべきではありませんが、真白殿は今の方が幸せなのかも知れませんね。王に代わってお礼を言います、リト殿」

 

 ザスティンからのお礼に後ろ頭を掻きながら照れるリト。すると扉の向こうから何時までも来ない2人を呼ぶ声が聞こえ、リトとザスティンはヤミ達の後を追って嘗て真白の部屋だったその場所を去るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 御門の洋館にて。真白の部屋には朝から居た美柑と途中から部屋に入って来たお静。そして美柑から説明を受けた唯と更にもう1人の人物がベッドに眠る真白を囲む様にして立っていた。

 

「それじゃあ、真白は力を奪われた為にこんな状態に?」

 

「御門先生が言うには力の器そのものを奪われてしまった。って事らしいです」

 

「力そのもの、か。昔の私なら世迷言だと思うだろうが、宇宙人が居ると知った今では何でも信用出来そうだ」

 

「えっと……凛さんはどうしてここに?」

 

「古手川が余りにも焦った様子で走っていたのが気になったからな。何があったかは来る途中で既に聞いている」

 

 唯は真白が力を奪われて弱ってしまっていると聞き、家を飛び出してこの場所を訪れた。お静経由で御門の住む洋館が何処にあるか知っていた唯。その際、今日は沙姫の傍から離れて外に出ていた凛が焦った様子で走る唯の姿を見た事で嫌な予感を感じ、説明を聞いた事で彼女も真白の見舞いに来たのであった。2人は前日から変わらないという呼吸の荒い苦しそうな真白の姿に辛そうな表情を見せ、だが何も出来ない事に唇を噛む。

 

「結城君やヤミちゃん達が真白の力を取り返しに向かっているのよね?」

 

「うん。今日の明け方に出たから、もう着いてる頃だと思うけど」

 

「……歯痒いな。それに何も出来ない自分が無力に感じる」

 

「そんな事無いです! 今だって、お二人が来てくれた事を真白さんはきっと喜んでます!」

 

 「ほらっ!」と続けて真白の顔に注目させるお静だが、その表情は相も変わらず苦し気なもの。すると部屋の扉が突然開き、ティアーユが姿を見せた。現在御門は自らの診療所を1人で回す事にしていた為、洋館内に居る人物が全員揃った事になる。そして入って来たティアーユの手にはお盆とその上に乗った鍋が。この場に居る全員が病人に食べさせる物として思い至ったのはお粥であった。

 

「御免なさい。真白に朝食を用意して来たのだけど」

 

「今の様子だと食べるのも大変そうだが……」

 

「それでも食べないと駄目なの。今の真白は生命力が殆ど無くなっている。でも生きてる限りそれは使い続けているから、このまま何もしなかったら最悪……消えてしまうかも知れない」

 

≪!≫

 

「最悪よ!? そうならない為にも、少しでも精の付く物を食べないと」

 

 ティアーユの言葉にその場に居た全員が絶句する中、強く強調する様に言い直したティアーユは美柑の座って居た席を譲ってもらった後に鍋の蓋を開ける。と同時に再びその場に居た全員は絶句した。お粥か何かだと思ったそれは紫色をしており、泡が膨らんでは消えるどう見ても危険な食べ物だったのだから。

 

「て、ティアーユ先生? それは一体……?」

 

「え? お粥を作ったつもりだけど」

 

 顔を引き攣らせながら唯が質問すれば、まるで見て分からないのかと不思議そうに答えたティアーユ。美柑はその光景に嘗て真白が一緒に彼女と過ごしていた際、家事は真白が1人で熟していたと聞いた事を思い出す。ティアーユの家事能力はからっきしであると御門が言っていた事もあり、美柑は溜息をつくとティアーユからお盆ごと鍋を取り上げた。

 

「私が作りますから、真白さんをお願いします」

 

「そうね、その方が良いわ。ううん、そうじゃ無きゃ駄目よ」

 

「手伝います!」

 

「私も手伝おう」

 

 オロオロするティアーユを置いてお盆を手に部屋を後にした美柑。普段から家事を行うお静や嗜む程度の自信はあった凛が手伝う為にその後を着いて行く。唯は何とかあの危険なお粥擬きを真白に食べさせ無くて済んだ事に安心し、椅子に座ったまま真白の片手を取って両手で包み込む様に握り締めた。

 

「真白、消えるんじゃないわよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 真白の部屋を後にした4人は真っ直ぐに廊下を奥へ奥へと進み続ける。何処に男性が居るのかは定かで無いが、何となく最奥に居る気がしていた4人。やがて謁見の間であろう広い場所に出た時、4人は玉座に座るその男性を見つける。彼は自らの手の平に光を生み出し、弄んでいた。

 

「見つけました」

 

「まさかこんな所まで追ってくるとはね。それに憎きデビルーク星人も一緒とは……そんなに消えたいか?」

 

「ふざけんな! 真白の力を返せよ!」

 

「これはもう私の力だよ。ジル王とセレナ王妃から継承されたエンジェイドの力。驚く程手に馴染む」

 

 鋭い目を向けるヤミに余裕綽々といった様子で答えた男性はザスティンを見て憎々し気に告げる。すると彼にヤミと同じく怒りを感じていたリトが一歩前に出て声を上げた。しかし再び余裕を見せて光を出現させ、それを握る様にして男性は使える様になった力を見せる。

 

「この力で私は復讐する。我らエンジェイドを滅ぼしたデビルークを1人残らず殺し、再びエンジェイドに力と繁栄を!」

 

「うわっ、凄い小物臭がする」

 

 玉座から立ち上がって両手を広げ乍ら告げる男性にメアが呟いた時、突然男性の目の前に複数の光の弾丸が生まれる。あの時は1つだけだったそれは形大きさ違わず生まれ、男性は笑みを浮かべて手を伸ばした。

 

「デビルーク星人と通じる者もまた、生かしては置かない。故に……死ね」

 

「! 来ます!」

 

 ヤミの言葉を合図に弾丸が急速に4人へ迫り始め、それぞれバラバラに回避する事でまずは事無きを得る。一番最初に男性へ突撃したのはザスティン。イマジンブレードを手に男性へ向かって駆け出し、大きく振り上げて攻撃を加える。だが刃は確かに何かを斬るも、それは男性の前にあった見えない光の壁であった。振り下ろしたザスティンは顔を上げるが、その目の前には男性の手の平が。一瞬の間を置き、謁見の間の玉座から離れた壁にザスティンが吹き飛ばされ、叩きつけられる。

 

「ザスティン!?」

 

「何の、これしき……地球で犬に追い掛けられ、車に轢かれ、列車に吹き飛ばされた衝撃に比べれば!」

 

 彼は色々と地球で危ない目に遭って来た。元々デビルーク星人であると共に高い戦闘力を有し、地球で乗り越えて来た事柄も含めればその攻撃で倒れる程彼の身体は柔では無かった。ゆっくりと立ち上がるザスティンの姿に男性が舌打ちした時、今度は別の方向からビーム砲が彼へ向かって発射される。光の壁に塞がれるも、その壁は黒焦げとなった後に消え去った。と、消え去った壁目掛けて今度は金色の刃が振り下ろされる。それはヤミの髪が変身したものであり、男性はそれを横にずれる事で避けた。

 

「どうやら貴女の壁はそこまで高い防御力を持っていない様ですね」

 

「再生能力は高いみたいだけど、何とかなりそうだね!」

 

「小娘が……!」

 

 メアとヤミの言葉に歯噛みし乍ら睨みつける男性。そんな2人と再び駆け出したザスティンの姿を前に、リトは強く拳を握った。

 

『何も出来ないのが悔しいか?』

 

「! その声、ネメシスか!?」

 

 突然響く声にリトは辺りを見回す。戦いを続ける4人にリトの姿は眼中に無く、また特に気付いていない事から聞こえたのはリトだけなのだろう。声で誰かが分かったリトがその名前を呼べば、目の前に黒い霧が集まり人の形を作り始める。

 

「お前、着いて来てたのか!?」

 

「あぁ。少し迷ったが、弱った真白を手に入れても面白く無いからな。それに……気に食わないと言うのもある」

 

「気に食わない?」

 

「あの男が使っている力は真白の物だ。それを盗んでおき乍ら自分の物の様に扱うあの男は気に食わん」

 

「お前……」

 

 ネメシスが居る事に驚いたリトだが、会話の末に彼女もまた自分達と同じ目的でここに居る事を理解した。そして何故自分の目の前に現れたのか分からなかったリトにネメシスは更に混乱してしまう一言を言い放つ。

 

「結城 リト。私と協力しろ」

 

「はぁ!?」

 

「私は金色の闇やメアと違い、ヒーリングカプセルに入った訳では無い。ダークネスを使った際の疲労は今も残ったままだ。だから私の力をお前に貸してやろう」

 

「……そうすれば、戦えるのか?」

 

「奴ら程では無いだろうが、な。どうする? あの男をぶっ飛ばすのだろう?」

 

 リトはネメシスがどんな存在なのかを既にヤミの口から聞いていた。嘗てはヤミに自分を殺させようとしていた事も、真白を連れ去ろうとしていた事も。……今尚真白を狙っている事も。だが彼はネメシスの姿を前に色々な感情はあれど、完全に悪い人物には思えなかった。それは彼が優しいからなのか、そう見える様にしているのか。それは定かでは無い。だが今この時思う事は同じであり、弱ったネメシスがこのままでは今の自分と同じ様に戦えないと分かったリト。彼は考えた末、ネメシスの前に立った。

 

「やってやる!」

 

「ふっ、それで良い。さぁ、奴に思い知らせてやろうでは無いか! 誰の獲物を横取りしたのかをな!」

 

 別に俺は狙ってねぇ。そんな事を思いながらもリトは駆け出した。今も尚戦いが激化する4人の元へ。そんな彼の背中に黒い霧が入り込み始め、ヤミが近づいて来るリトに気付いて目を見開いた。

 

「離れてください結城 リト。貴方では!」

 

「唯の地球人が私の邪魔をするな!」

 

「っ! うおぉぉぉ!」

 

 ヤミの声と同時に近づいて来るリトに気付いた男性が手を鉄砲の形にして人差し指から小さな光の弾丸を放った。今までと違って威力は小さいものの、地球人である彼の身体に当たれば消滅は免れないだろう。だがリトはそれに若干の恐怖を抱きながらも強く手を伸ばした。途端に手から出た僅かな黒い霧がその光の飲み込み、かき消してしまう。

 

「嘘っ、今のネメちゃんの……!?」

 

「まさか、ネメシスを憑依させたのですか?」

 

『そう言う事だ。金色の闇。私が憑いたからにはこいつも唯の人間では無いと思え』

 

「どんなトリックか知らないが、まぐれで良い気になるなよ! はぁ!」

 

「消えろ!」

 

 メアやヤミが驚く中、リトの背後に僅か乍ら姿を見せたネメシス。だが男性は地球人に消された事実を認められなかったのか、再び光の弾丸を放った。しかしリトは全く同じ方法でそれを消し、一気に駆け出す。……男性は困惑し、恐れ始める。手にした力が何でも無い唯の地球人に消された事実に。故にリトが消せない程の大きな弾丸を放てば良いものを、溜める事も忘れて只管小さな弾丸を放ち続けた。

 

『結城 リト。もう手を翳さなくても良い』

 

 ネメシスの声が聞こえ、それと同時にリトの右上に外れた光の弾丸すら黒い霧に飲み込まれ始める。やがて男性の放つ全ての攻撃が何処へ放たれようと飲まれる様になり、その間もリトは男性の元へ顔を俯かせながら一歩ずつ近づき続けた。攻撃が通用しない事実に先程の余裕が嘘の様に怯える男性の前へ立ち、リトは顔を上げる。その怒りに満ちた目を前に、男性は心臓を掴まれた様な錯覚をした。そしてゆっくりと腕を振り被ったリトを前に最後の足掻きとばかりに攻撃を放ち……それも飲み込まれた。

 

「家族を苦しめたテメェを、俺は絶対に許さねぇ!」

 

「ひっ!」

 

「ぶっ飛べぇぇぇ!!!」

 

 容赦無く振り抜いたリトの黒い拳は男性の頬に突き刺さり、無様にその顔を変形させた後に玉座の後ろにあった壁へ叩きつけられる。男性の形を作って壁がへこみ、ゆっくりとずり落ちた後に地面へ伏した男性。明らかな戦闘の終わりにリトは握り締めた拳から力を抜き、安堵の溜息を吐いた。

 

「ふぅ……」

 

『中々の一撃だったぞ、結城 リト』

 

 ネメシスの賛辞を受けると同時に感じる脱力感。それは彼女が自分の身体から抜けた証拠であり、実体となって現れたネメシスの姿にメアが喜び、ヤミが目を細める。ザスティンも話しには聞いていた様で警戒するが、今の出来事から彼女が協力していた事は理解出来ていた。無事に戦いが終わったと思っていた5人。だが謁見の間に再び聞こえた男性の笑い声に全員が視線を向ける。そこには鼻血を流しながら両手を大きく上へ掲げる男性の姿。そんな彼の元には恐ろしい程に大きな光の玉が出来始めていた。

 

「ははははは! こうなったらこの城ごとお前らを消し飛ばしてやる!」

 

「お、おい! あれ、やばくないか?」

 

「……流石にあれは不味いかも」

 

「ネメシス、ダークネスを使います」

 

「無駄だ。今の私では憑依しても扱えない。何しろ変身する時間も無さそうだ」

 

「くっ! このままでは……!」

 

 勝利の雰囲気から一転、絶体絶命となり始めたこの状況に5人が出来上がって行く巨大な光の玉を見つめる事しか出来ない中。男性は大声で叫ぶ。

 

「我らが王よ! 我らが王妃よ! 私に力をぉぉぉ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『テメェみたいな三下が軽々しくその力を使ってんじゃねぇよ』

 

≪!≫

 

 男性の言葉に帰って来たのは静かな男の声だった。リト達がそれを聞いて驚いた時、何処からともなく天井を破壊して真っ黒な光が飛来する。そしてそれは男性が作り上げた巨大な光の玉に触れ、一瞬にして弾け飛ぶ様に消えてしまう。目の前の光景に訳が分からなかったのか、呆気に取られる男性の前に。その男はゆっくりと降り立った。

 

「ほう、あれはまさか……」

 

「だ、誰だ?」

 

「私達のパパだよ! リト!」

 

「! ララ!?」

 

 その後ろ姿にネメシスが面白そうなものを見つけた様子で眺める中、誰か分からなかったリトは怯えながらも誰にでも無く問う。だがそれに答えたのは何時の間にか後ろに居たララであった。突然の登場に再び驚いたリトは彼女の後ろにナナとモモも居る事に気付く。

 

「王に姫様達も、何故ここへ!?」

 

「出来る限り早めにパーティーは切り上げて来ただけだ」

 

「本当は抜け出して来たんだけどな!」

 

「お母様には申し訳ありませんが、今回ばかりはパーティーなんかに現を抜かしている場合ではありませんからね」

 

 ザスティンの質問に振り返らず答えたデビルーク王、ギド。だがそれに続いたナナとモモの言葉で今頃色々と大変な目に遭っているであろうセフィの姿を各々が想像した。するとザスティンはハッとなって思い出した様にギドへ片膝を着いた。

 

「パーティーへの同行並びに護衛を怠ってしまい、申し訳ありませんでした」

 

「本当なら軽くぶっ飛ばしてるところだが……今回は良くやった」

 

「! ありがたきお言葉」

 

 主従関係を改めて見る中でリトは目の前に立つギドの姿に困惑する。嘗て真白と対峙した際のギドは幼い子供の姿だった。だが今現在目の前に立つのは凛々しい青年。どうしてそんな差が生まれたのかを悩んでいた時、ララがそれに気付いた様子で口を開いた。

 

「この前のパパは銀河対戦の後で力を使っちゃってたから、小さくなってたんだよ。だからあれが本来のパパの姿」

 

「そう言えばそんな事、言ってた様な」

 

 ララの言葉を聞いてリトが思い出しながら納得する中、呆然とする男性の前にギドは仁王立ちした。……既に男性は絶望していた。真白から奪った力があればデビルーク星人を全て根絶やしに出来ると思っていた。だが実際は地球人に攻撃を消され、消滅する寸前まで力を溜めた光を軽々と消されてしまった故に。彼は嫌でも理解する事になったのだ。目の前の男には天地が翻っても勝てない、と。

 

「エンジェイドの生き残りか。……名前は?」

 

「……わ、私は……」

 

 逆らう事すら許されない威圧感。男性は死よりも恐ろしい恐怖を感じ乍ら、ギドの質問に答える。彼はその名前を聞いて振り返らずに一瞬だけ後ろに立つモモへ意識を向け、そして再び男性を見た。

 

「テメェのその力を使って良いのはあいつらの娘だけだ。今すぐ返せば殺さないでやる」

 

「! ふざけるな! 我らエンジェイドを滅ぼしたお前が私を生かすつもりか!?」

 

「……」

 

「私はそんな屈辱を味わってまで生きるつもりは無い! それならば我らが王達が、妻と息子が待つあの世に逝った方が何倍もましだ!」

 

「……そうか」

 

 ギドの言葉を受けて身体を震わせながらも言い放った男性。その震えが怒りか恐怖かは定かでは無いが、本心なのは間違い無いだろう。それを聞いたギドが再びモモへ僅かに意識を向ければ、それを感じ取った彼女がゆっくりとギドの隣に向かって歩き始める。腕に大きなディスプレイを掲げ乍ら。訳が分からず近づいて来たモモを見ていた男性はそのディスプレイに映る存在に目を見開いた。

 

『アナタ……アナタなの?』

 

「なっ!? ど、どう言う事だ……何で、どうして……」

 

『あぁ、生きていてくれたのね!』

 

「どうして()が」

 

 男性の呟きに驚いたのはリトだけであった。今までの話からエンジェイドは既に絶滅しており、残っていたのは真白だけ。今回男性が現れた事すら驚きだったのに、そんな彼の奥さんが現れたとなればきっとその人もまたエンジェイドなのだろう。エンジェイドが当たり前の様に増えて行く事に驚く中、モモは静かに真実(・・)を告げた。

 

「お父様とジル王が戦った末、エンジェイドは敗北しました。ですが王が居なくなっただけで民が全員死ぬ訳ではありません」

 

「だ、だがエンジェイドは滅んだ!」

 

「いいえ、この旧エンジェイド星に住んでいた人々は1人残らず移住したのです。デビルーク星へ」

 

「なんだと……!?」

 

 リトもモモの言葉に驚愕し、それと同時に以前デビルークの王妃であるセフィが帰り際に真白へ告げた事を思い出す。

 

『真白。何時か、心が許す時が来るのなら。デビルーク星へ遊びにいらっしゃい。皆、喜ぶわ』

 

「皆って、真白と同じエンジェイドの人達の事だったのか!?」

 

「そ、そんな馬鹿な話が……」

 

「戦争と言うのは終わった後も様々な事象が待ち構えています。中には……敗北した種族が虐げられる事や搾取される場合もあります」

 

ジル(あいつ)とは国同士で前々から約束してたんだよ。お互い自分に何かあった時、相手の国の民を守り続けるってな」

 

「当然気に食わないと拒んだ者も居ました。ですがエンジェイドである事は徹底して言わない様に私達は言い含めたのです。それがデビルーク星に移住したエンジェイド達を守る事であると」

 

「……そんな、話が……」

 

『父さん?』

 

「!?」

 

 話を聞いて信じられないと言った表情を浮かべる男性は再びディスプレイから聞こえる青年の声に顔を上げた。そこに映るのはララ達と同じ年頃に見える青年。それが誰なのか、男性は言われずとも全てを理解し始めた。

 

 そして彼は語る。とある事情で星を離れていた彼がエンジェイドの絶滅を聞いてこの星へ来れば、そこにはもう誰も居なかった事を。家にも町にも人の姿は無く、全てを失った彼はデビルークへの復讐を誓った。そして力を手に入れる為に修業するも、目に見えた成果は得られず。ふと流れて来た僅かな噂を頼りに地球へ赴き、そこでデビルーク星人と仲良さげに話す真白の姿を見つけたと。復讐するべき相手と王達の娘が仲良くする姿に怒りが湧き、その力を奪う事に決めた事を。

 

「もう1度言う、その力をあいつの娘に返せ」

 

「貴方を待っている方がデビルーク星には居るのです」

 

「……あぁ。そうみたいだな」

 

 再び告げられた言葉に男性は頷いて胸の前に手を当て始める。そこから生まれる光は徐々に形となり、やがて手を離せばそれにくっ付く様にして光の塊が彼の手の上に残る。モモはディスプレイを渡すと同時にそれを両手で大事そうに抱え、何処かへ消えてしまわない様に大きな瓶を取り出して中へ入れる。そして強く蓋を閉めればリト達の目的は果たされた。

 

「これで一件落着だな!」

 

「まだよ。これをシア姉様にお返ししないと」

 

「ザスティン、帰るぞ」

 

「? パパは一緒に行かないの?」

 

 ナナの言葉にモモが答える中、その場を去ろうとするギドの姿に気付いたララが声を掛ける。すると1度その足を止め、僅かに半身だけ振り返って彼は告げた。

 

「俺はもう真白(あいつ)の父親には成れねぇ。もう家族が居るらしいからな」

 

「!」

 

 一瞬だけギドに見られたリトは驚くも、怯える事無く強い目で見返す。ギドにはそれが気に入った様で、軽く右手を上げ乍ら今度こそその場を去って行った。ザスティンは全員へお辞儀をしてエンジェイドの男性と共にギドの後を追って退散。残ったのはザスティンを除いた救出組3人とララ達3姉妹だけだった。

 

「ララ達はこのまま地球に帰って大丈夫なのか?」

 

「うん! ママが上手くやってくれるって言ってたから大丈夫だと思う!」

 

「早くそれをシア姉に返そうぜ!」

 

「城の前にルナティーク号を呼びます。まずは出ましょう」

 

 ヤミの言葉に聞いた5人は頷き、城を後にする。そしてルンも居なくなった城門の前で6人が乗り込んだルナティーク号は地球へ向かって全速力で発進するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 真白が横になるベッドには10人を超える人が集まっていた。そしてナナから光の入った瓶を受け取った美柑がそれを真白の上で開けて胸元へ落とせば、ゆっくりと真白の中へ沈む様にして入って行く。真白の様子を確認すれば、眠っている様子を見せるもののその息遣いはとても穏やかであった。

 

 念の為、身体を動かさない様に気を付け乍ら真白を診察した御門はやがて息を吐いて心配そうに見つめる全員へ告げる。

 

「もう大丈夫よ。でも念の為1日2日は安静にして様子を見ましょう」

 

 その言葉にそろぞれが隣に立っていた者と喜びを分かち合う。リトと美柑が互いを見合って微笑み合い、唯が胸を撫で下ろすのを背中を叩いて凛が激励する。メアが実体化したネメシスの両手を取って回転し続け、お静とティアーユが涙を流して抱き合う。ララとナナとモモも安心した表情で微笑み、真白の眠るベッドの傍に立って居たヤミは静かに近づいた。

 

「ドクター・御門。お世話になります」

 

「あぁ、やっぱり泊まるのね。そうだと思ったわ」

 

「え? 何々! ヤミちゃんはここに泊まるの? じゃあ私も泊まりたい!」

 

「ふふっ、なら私もご一緒したいです」

 

「あ、あたしも泊まるぞ!」

 

「ちょっとララさん達、明日は学校があるのよ?」

 

「でもこの前、唯さんは真白さんを平日に自分の家へ招待してましたよ?」

 

「私もヤミお姉ちゃんが泊まるなら泊まろっかな」

 

「元々私は真白の周りに漂っているからな、許可されなくてもここに居続けるぞ」

 

 ヤミの言葉を切っ掛けに始まる話。御門の許可も得ずにもう決定事項とばかりに話す皆の姿にリトは頬を掻きながら笑い、美柑も同じ様に笑う。だがそんな彼女は突然凛に背中を押された。振り返ればその目が語る。『お前は良いのか?』と。美柑は少し悩んだ後、話の中へ飛び込んだ。

 

「わ、私も今日は真白さんと一緒に居るから」

 

「んじゃ、リトは留守番な! セリーヌは任せた!」

 

「うぇ!? ……まぁ、良っか」

 

 ナナの言葉に驚きながらも楽しそうな光景に彼はそれを受け入れる。その後御門に部屋の中で騒いで居た事を怒られた面々はリビングへ向かい、真白の看病について時間割を組む事にするのだった。……そしてそんな彼女達の声を微かに聞きながら、洋館の屋根に座ったクロは頬を赤く腫らしたまま彩南町の景色を眺める。

 

『ニャ~』

 

「この町は……平和だな」

 

 足元に擦り寄る黒猫。クロはその黒猫を撫でながら、ヤミに素手で(・・・)殴られた頬を撫でて空を見上げる。

 

『以前真白に手を出した件に関してはこれで手内にしてあげます』

 

「本当に……変わったな、ヤミ」

 

 看病の順番に関して話し合いをする中で余裕そうなネメシスと睨むその姿は1人の少女との時間を取り合う女の子だった。




ストック終了。また【5話】or【10話】完成をお待ちください。

※本日0時にアンケートは締め切らせて頂きます。ご協力、ありがとうございました。

各話の内容を分かり易くする為、話数の後に追加するのは何方が良いでしょうか?

  • サブタイトルの追加
  • 主な登場人物の表記
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。