「えぇ~! 何で真白は行かないの!?」
学校が終わった放課後の時間。その日ララやリト、真白などの彩南高校に通う学生達は一様にあるパーティーに誘われていた。学園祭の際にララへ勝負を挑んだ2年生の天条院 沙姫が主催するクリスマスパーティーである。パーティーと言う事で楽しみにしていたララだが、真白がそのパーティーに出席しないと言う事を聞いて驚いた後に質問をする。一緒に行けると楽しみにしていたのだろう。
「真白さん、私の事を気にしてるんだったら別に平気だよ?」
「……そう。……でも、行かない」
「まぁ、真白は騒がしい所が苦手だもんな。諦めろって」
3人で出席すれば当然美柑だけが家に残されてしまう。故に自分の為に行かないと考えていると思った美柑が告げれば、真白は少し黙った後に頷いて。しかし行かないと言う意思を示す。美柑の思っている事は間違いでは無く、それと同時に本当に行きたくないのだと言う事も分かったリトは真白の事を告げ乍らララに諦める様に言う。当然簡単に納得出来ていないララ。お風呂などならその場だけの為に強制的と言う行動が多いが、パーティーともなれば大きな催しだと分かっている為に無理矢理と言う行為は流石に考えなかった。しかしそれで楽しみにしていたパーティーに行かないのも嫌なララ。結局、真白は置いて行くしか無いのである。
家を出る時間も近づいて来た頃、もう一度ララは「本当に行かないの?」と真白に質問。真白はそれに首を縦に振り、少し元気をなくしながらララはリトと共にパーティー会場へと出発する。結城家には沢山喋るララが居なくなった事で静寂が訪れ、真白は美柑と共に見送った後に夕食の支度を始める。その材料は普段よりも少し豪華な物。ララ達がパーティーに出て美味しい物を食べる様に、家で美味しい物をと奮発したのだと美柑はすぐに察した。
「本当に良かったの?」
「ん……」
「……そっか」
キッチンで手を動かす真白に美柑が質問すれば、帰って来るのは肯定する真白の返事。普段と変わらず、後悔している様子も無い真白の姿に美柑はやがてそれ以上言うのを止めると共に手伝いをする為に同じ様にして並ぶ。
クリスマスケーキ……とまでは行かないものの、ミニケーキを作り上げた2人。チキンも2人分だけ用意して結城家で開かれた小さなパーティーを過ごした2人。片付けも共に行った後、普段であれば真白は帰宅しているだろう。だがその日、真白は片づけを終えると共に帰宅する為に鞄を取るのではなく、鞄を退かして座り込んだ。そんな彼女の行動に、美柑は言わずともすぐに分かる。恐らくリトとララが帰って来るまでは、こうして一緒に居るつもりだと。
真白と2人きりの時間は久しぶりな美柑。相手が相手の為に会話が毎回成立する訳では無いが、当然それを理解している美柑はその時間を苦痛などとは一切思わなかった。寧ろ最近はララにばかり話しかけられている為に隙が無く、見ているしか出来なかった事で話しかけられる事に嬉しく思えていた。だがそもそも真白と家族として付き合っている美柑には、聞く事が余り無かった。健康状態はほぼ毎日一緒に居る事で良好であると聞かずに分かり、学校で上手く行っているかと言うのならララやリトの雰囲気から可笑しな事にはなっていないと予想出来てしまう。……故に美柑は話せる時間がありながら、話すことが余り無かった。
ふと、リビングの扉の向こう側から音楽が流れ始める。それは結城家の浴槽の湯が溜まったと言う合図であり、真白はその音を聞いて美柑に視線を向けた。最近はララによって多くなっていたが、基本結城家でお風呂に入る事は無い真白。故にその視線も美柑に入る様に語っており、美柑は立ち上がると……何気無しに思いついた事を提案する。普段は余り乗り気でない真白も、美柑からの提案に少し考えた後にそれを了承した。
「真白さんって、やっぱり肌白いね?」
「……そう。……美柑も、綺麗」
「へ? そ、そうかな?」
洗面所兼脱衣所でお互いに衣服を脱ぐ美柑と真白。美柑の提案は何時もララが真白に言っている『一緒にお風呂に入る事』であった。真白が制服のボタンを取り、Yシャツをも脱いだ時。美柑の視界に映ったのは真白の染み一つ無い肌。それに思わず感想を告げた時、真白はそれを受け入れると同時に美柑の片手をゆっくりと触りながら告げる。美柑もまた染み等は一つも無く、真白よりは健康的な色をした肌は触り心地も良い物。まさか褒められるとは思わなかったのか、少し狼狽えた美柑はすぐに戻るとお風呂場の扉を開けた。
「どっちが先に洗う? 私はどっちでも良いよ?」
「……洗う」
「なら、私は浸かってるね……って真白さん?」
浴槽に溜まったお湯を見た後、先に身体や頭を洗う順番を決める為に言った美柑の言葉に答えた真白。当然それは真白が先に自分の身体や頭を洗うと受け取った美柑だが、掛け湯をしようとした美柑は真白に座らされた事で困惑する。しかしそれに答える事無く真白はシャワーを手にすると、お湯の蛇口を捻った。最初に出て来るのは冷たい水。だがそれは徐々に熱くなり、真白は水の方もそれに併せて捻りながら丁度良い湯加減へと調整する。と、美柑に視線を向けた。
「……掛ける」
「あ、うん。……」
強い水圧にしない様に優しい勢いにしてあったお湯は、美柑の身体を撫でる様に濡らし始める。身体を伝う水と触れる様な暖かさに美柑は気付けば目を細めており、真白はそんな美柑の身体全体にお湯を通した。そしてまずは了承を貰ってから、その頭にもお湯を掛け始める。水を浴び、重くなり始めた髪は重力に従って下へ。一通り濡らした後、真白はお湯を止める。と同時に傍にあったシャンプーのボトルを2回程押し込む。そして手に付いた液を広げ、美柑の頭を優しく洗い始めた。
「何か……久しぶりだね。こうして洗ってもらうの」
頭に広がる泡が目に入らない様に気を付け乍ら、目の前にある鏡越しに美柑は真白へ言う。それに真白が返答することは無かったが、鏡越しに映るその姿に美柑は思わず微笑んだ。無表情に何も変化の無い様に見えるその顔。しかし長いからこそ分かる『真白の微笑み』は今の時間を、自分の言葉を受け入れていると言う何よりの証明であった。
優しく髪の先まで洗い、やがてお湯で流される泡。同じ女性であるが故か、丁寧に洗うその姿に美柑はやはり微笑んでしまう。そして髪を洗い終えた後、今度はボディーソープに手を伸ばした真白。それをシャンプー同様に手の中で広げ、
「ま、真白さん!? んっ!」
「……手の方が……肌に良い」
その手で直に美柑の身体へ塗り始めた。余りに急な事に焦った美柑。自分の身体を動き回る真白の手によって齎されるくすぐったさに思わず声が出そうになるのを抑えると、真白が美柑が困惑している事を理解して説明する。と、普段はスポンジなどで洗っている美柑も真白の言葉で前に見たテレビの内容を思い出す。身体を洗う時、一番肌に良いのは同じ肌である手で行う事。真白はそれを知っていたが為に、美柑の肌を考えて行っているのだろう。それは嬉しい事である反面、やはり恥ずかしい事でもあった。
「そう、だね……ん……ぁ」
悪意の無い真白の手に寄って齎される感覚に、美柑は納得すると同時に必死に声を抑える。普段自分で洗う際には感じない人肌の感触。自分で洗っていないと言う事で何処をどう触れるか予測の出来ない現状。美柑は顔を真っ赤にしながら、その時間を耐え続ける。首から始まり胸、腕、手、お腹、太腿、脹脛、足首、足。髪も合わせれば、言葉通り頭の天辺から足のつま先までを現れた美柑。お湯で洗剤を流し、一段落した時。真白は美柑に先に湯船に入っている様に言う。が、美柑はそれを断った。
「今度は私が洗ってあげるよ。ほら、交代」
「ん……」
自分が洗って貰ったなら、そのお返しに今度洗ってあげる。そう決めた美柑は真白に自分が居た場所に座る様に促して全く同じ様に頭から濡らし始める。美柑とは対照的な白に近い銀髪はやはり同じ様に重さを持つと下へと向かい、それを小さな手でシャンプーを手に洗い始める美柑。髪を洗い終われば、次は身体。此方も全く同じ様に美柑は自分の手で直に真白の肌に触れ乍らボディーソープを塗って行く。身長は真白の方が僅かに大きい為、小さい美柑がするとなれば少し大変だろう。まだ小学生である美柑とは違い、胸も出ている真白では塗る面積もやはり違う。が、それでも止めずに美柑は真白の身体にそれを続けた。
「よい、しょ」
「……っ!」
「どうしたの?」
「……何でも、無い」
「?」
美柑が真白の背中に手を這わせた時、震える様にして一瞬動いた真白。何かあったのかと質問すれば、首を横に振ってそれを否定する真白に美柑は首を傾げる。そしてすぐにまだ湯船に入っていない為、寒かったのかも知れないと考えた美柑は少し急いで真白へそれを続け始めた。自分がされたように、頭の先から足の先まで。やがてお湯で全てを洗い流し、間違い無く綺麗になった2人は今まで溜まりながらも放置していた湯船へ共にその身体を沈める。
「ふぅ……」
「……」
脱力して思わず出る美柑の声。何も言わず、しかし目を細めて気持ちよさそうにする真白。お互いに反応は別々だが、お風呂を十分に満喫する。……その後身体も洗い終わった2人は逆上せる前に湯船から上がり、真白は美柑が良く食べているアイスを貰って一緒にソファで並びながらそれを食べる事に。リトやララが帰って来たのは夜のかなり遅い時間。そんな時間に真白が1人で帰るのは危ないと、リトは疲れているであろう身体を動かして真白を家まで送るのであった。
明日は投稿致しません。また来年、お会いしましょう!
各話の内容を分かり易くする為、話数の後に追加するのは何方が良いでしょうか?
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サブタイトルの追加
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主な登場人物の表記