日曜日。結城家へと向かわずに御門の家へと向かった真白は、そこで普段通り掃除などを始める。だがその傍には普段は居ない筈の少女、ヤミが立って居り、音で目を覚ました御門は真白の姿を。そしてヤミの姿を見て驚いてしまう。自分の家に知らない少女が存在し、それは有名な暗殺者。驚くなと言う方が無理な話である。
「なるほど……それでここに来たと言う訳ね」
「はい。久しぶりですね、ドクター御門」
真白が掃除を行っている間、ヤミと話をして居た御門。どうして地球に来たのかを聞いた御門は、すぐに納得した様に呟き。そこで改めて挨拶を行ったヤミに「そうね」とだけ返して真白に視線を向ける。無表情なのは変わらず、だが御門はそれを見て何処か安心した様に溜息を吐いた。
「貴女の事、あの子は随分心配していたわ。『助けられなかった』とね。彼女もきっと、同じ思いの筈よ」
「……」
「彼女の所在は今も探しているわ。今はあの子との再会を喜んでいなさい」
「言われなくてもそのつもりです。もう、私は離れません」
御門の言葉に静かに虚空を見つめていたヤミ。だがその後に続けられた言葉には返事を返し、真白の場所に向かったのかその場を去るヤミ。部屋から居なくなった後、聞こえていた掃除機の音が一度止まった事で会話をしているのかも知れないと思った御門は何処か疲れた様に溜息を吐くと、座っていたソファに体重を掛けて少しだけ脱力する。
「後は貴女だけよ、ティア」
普段であれば御門の家での掃除や昼食を終えた後、家へと帰宅して居る真白。だがこの日、真白は自分の家へと一度帰宅はした物の再び外出をしていた。向かった先は『SAINAN SKATE』と書かれた看板が存在する大きな建物。名前の通り、彩南町に存在するスケート場である。実は真白、午後からリト達に誘われてスケート場に行く予定をしていた。真白が行くならばそれに当然一緒に着いて行くヤミ。スケート用のシューズはレンタル出来る為、2人はそこへ入ると同時に受付等で入場を済ませる。
明らかに普通の靴とは違う刃の付いた靴にヤミが首を傾げる中、真白はヤミに見せる様にそれを履く。真似る様にして自分もそれを履いたヤミ。真白は少しだけ前に出てヤミに手を伸ばし、それを掴んだヤミは立ち上がると共に真白に連れられて氷の上へ。
「あ、真白!」
2人が入って来たことに最初に気付いたのはララであった。真白達が入った位置とは違う場所から氷の上へと入場したララ。傍には美柑とリトも居り、美柑は問題無く氷の上で立っている物の、リトは不慣れなせいで上手く立てずに壁際に寄りかかって生まれたての小鹿の様に足を振るわせていた。
初心者とは思えない程に上手く滑りながら真白達の元へと急接近するララ。だがそのスピードはかなり速く、止まる方法を考えていなかったララは真白の近くになってから焦り始める。が、真白に激突するよりも早く金色の壁がララと真白の間を割って入る事で2人の激突は防がれる。……ララはその壁に激突してしまうが、それを作り上げた当の本人は何食わぬ顔で「気を付けてください、プリンセス」とララに注意した。
「えへへ、嬉しくってつい。ねぇねぇ、一緒に滑ろうよ!」
「ん……滑れる?」
「問題ありません」
ヤミの言葉に笑みを浮かべながら立ち上がると、真白を誘ったララ。その言葉に真白は頷いた後、ヤミに振り返って質問すれば帰って来るのは自信有り気な返事。その言葉通り、氷の上で既に真白の手を握らずにバランスを取って立って居るヤミに真白は納得すると滑り始めた。まず最初に向かう場所は美柑とリトの場所。ララもそれに着いて行き、ヤミもその後ろを着いて行く。
「……平気?」
「お、おぅ。これぐらい余裕余裕。あだぁ!」
「こりゃ、滑れる様になるには少し掛かるかもね」
リトと美柑の元へたどり着いた真白。足を震えさせる姿を見て聞いて来る真白の姿に、リトは見栄を張りながら動き出そうとする。だが一度転んだぐらいで滑れる訳が無く、結果は2度目の転倒。その姿を見てやれやれと言った様に美柑が言い放ち、真白を見て少し笑う。その時、真白の傍に居たヤミがジト目でリトを見ている事に気付いた美柑は昨日の出来事を少しだけ思い出した。
『私とシ……真白は家族です。貴女達が家族になるその前から、ずっと』
ヤミと真白の関係を聞いたリトの言葉に帰って来た返事。それは少なからず美柑に衝撃を与えていた。自分達が家族になるその前から家族であると告げたヤミ。その時、美柑は真白が居なくなってしまうのかと一瞬考えてしまう。結果は今の様に居なくならず、普段通りに過ごしているが……一瞬とは言え間違い無く真白が居なくなる事に怖くなってしまったのは事実である。
「そう言えば、ヤミさん。真白さんの事を何て呼ぼうとしてたんだろう?」
「美柑……み~か~ん!」
「ふぇ? ど、どうしたのララさん?」
美柑にふと思い浮かんだ疑問。それはヤミが答えた時、明らかに真白の事を言おうとして言い直していた事であった。間違い無く別の名前か何かで呼ぼうとして、まるで『自分達に合わせた』様に言い直した。それに気付いていた美柑はヤミが言おうとしていた言葉について気になり始める。美柑自身、何故かはわからない。だがヤミが知っていて自分達が知らない真白。未だに一緒に住まない事や何処かで壁を感じるその向こう側をヤミが知っていると言う事に少し、モヤモヤとしていた。だが考えている途中、ララに呼ばれた事に気付いて顔を上げた美柑。見れば心配そうにこの場に居るほぼ全員が自分を見ている事に気付く。
「大丈夫か? ボーっとしてたみたいだけど」
「あ~、うん。平気平気」
リトが全員の意思を代表する様に質問すれば、考えに耽って上の空になってしまっていた事が分かった美柑。大丈夫であると全員に伝え、滑ろうとした時。この場に居た5人に声が掛かる。呼んだのは違う場所から入場したであろう春菜・里紗・未央の3人であり、リトが春菜の登場に驚く中でララが3人を呼んだのだと教える。すると春菜に反応しているリトに気付いた美柑。それは真白も同じであり、2人はお互いに目を合わせると行動を開始する。
「……滑る」
「私も行きます」
「あぁ~! 私も!」
「ねぇ里紗。例の作戦、やってみない?」
「にしし。やってみますか!」
真白は滑る為に移動し始めれば、それに付き従うヤミと着いて行くララ。ララが行ったことで里紗と未央も何かを企みながら着いて行き、残ったのはリトと美柑。そして春菜だけであった。春菜もリトと同じ様に足を振るわせており、美柑はそれを見て「練習に付き合ってあげたら?」とだけ言ってその場を去って行く。結果、残ったのはリトと春菜の2人だけ。上手くその空間を作れた事に、遠くに居ながらも美柑は真白へ親指を立てる。真白はそれに視線だけ向けて返し、各々が遊び始める。
鮮やかに滑る真白を見てララも同じ様に滑り、2人の姿に驚きながら褒め称える里紗と未央。
「スケート。滑るだけとは、随分地球の娯楽は原始的ですが……綺麗です」
ヤミはそんな光景を見て、周りを見渡しながら難しそうに首を傾げる。だがそれもすぐに滑り続けている真白を見て考えるのを止め、感想を呟いた。っと、見て居た里紗と未央が突然動き始めると並行して滑る真白とララの間に入り込む。
「競争しようよ! 魅せる動きは無理でも、スピードなら負けないよ!」
「ここから向こうの端まで行って、最初に帰って来た人の勝ち。良いよね?」
「面白そう! 真白もやろうよ!」
「……」
未央の提案にルールを説明する里紗。ララはその説明を聞いてワクワクしながら、真白は他にも人が居るのを確認して邪魔にならない様に気を付ける事を心がけ乍ら頷いて返す。スタートを切るのはヤミと言う事になり、4人は並んでヤミの声を待った。
「行きます……位置に着いて」
≪……≫
「あ、負けたら罰ゲームね?」
「スタート」
ヤミの声に沈黙していた中、何気なしに告げられた里紗の言葉と共に不慣れなスタートが切られる。『よーい』等が来ると思っていた未央と里紗は突然のスタートに少し遅れる中、一番最初に前に出たのは真白であった。ヤミがどの様にスタートを切るのか予想していたのだろう。ララはその後ろに続き、里紗と未央は少し焦り始める。罰ゲームと言った本人が負ける訳には行かないと。
滑るのにはそれなりの技術が必要である。真っ直ぐに早く進むだけならば滑れる様になっただけで行えるが、生憎スケート場内は他にも人が居る。人の波を避ける様に進むのは難しい物であり、スイスイと進んで行く真白とは対象的にララはそのスピードを落とさざる負えなかった。里紗と未央は上手い具合に人の波を掻い潜り、あっという間にララは一番後ろに。このままじゃ不味いと思ったのだろう。ララが取り出したのは、発明品を作るための道具であった。
「良い感じ!」
「三夢音さんにワシワシする為にも、勝たなくちゃね!」
背後を追い掛けて来る里紗と未央。何を言っているのかは理解出来ずとも、何処か寒気を感じた真白はそのスピードを上げ始める。そして端に到着し、戻るために振り返った時。迫る里紗と未央の向こう側にその場で回転し始めているララが存在していた。どうやら履いていたスケート靴を改造したものの、失敗したのだろう。言う事を聞かずにその場で回り続けていたララ。すると突然、その場所から小さなバッジの様な物が飛んで行く。……ペケであった。
ペケはララの服を作り上げている存在。故にそれが離れた時、ララの服装は一瞬で裸になってしまう。公衆の面前で裸になってしまうのは流石に不味く、故に急いで駆け寄った真白は回転が収まって目を回すララに上着を被せる。だが真白の上着では小さい事もあってミニスカ―トの様になってしまい、裸では無くともかなり官能的な恰好になってしまう。
空を飛ぶペケもララ同様に目を回していた。そしてその力は暴走してしまい、落ちた先……ヤミがそれを受け取ると同時にその恰好は一瞬で別の物に。寒い季節には絶対に着ないであろうスクール水着へと変わってしまい、一時の静寂。後に自分の恰好に気付き、怒りながらペケを放り投げた先に居たのは未央であった。当然それに触れた未央は一瞬でコスプレの様な姿に。変化した未央に里紗が驚いてその身体に触れた時、連鎖的に今度は下着の様な姿になってしまう。そして再びペケは空へ。
「……」
「あ……」
落ちて来たそれを両手でお皿を作って受け止めた真白だが、今までの連鎖からすれば結果は言わずもがな。着て居た衣服は一瞬で変化し、真っ白な甘ロリへと姿を変える。官能的とは言わない物の、幼げなその容姿にあった可愛らしいその服装にヤミが小さく声を上げる。と、翼を生やしながらペケはまた何処かへと羽ばたき……ララの元へ向かう為に動きだす。が、真っ直ぐに進めないその小さな身体はララの傍に居た春菜へくっ付いてしまう。すると春菜の恰好は普段ララが着て居るコスプレの様な姿に。ララ本人は普段平然としているが、普通の女子高生である春菜には恥ずかしい事この上ない物であった。
その後、焦る春菜を助けるためにペケを取り外したリトがあられもない恰好を晒すことになるが、それは本人の為にも割愛する。
各話の内容を分かり易くする為、話数の後に追加するのは何方が良いでしょうか?
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サブタイトルの追加
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主な登場人物の表記