全ての始まりが突然であった様に、その出会いも突然であった。
彩南町全体に響く轟音。彩南高校の屋上でぶつかり合った2つの力。傍に居たリトとララと春菜はその衝突から発生する衝撃波の負荷をその身に受ける事で、身動きすら出来ずに立っている事しか出来なかった。だがその間にも押し合う2つの力は、やがて強い力が弱い力を押し返し始める事で結果が見え始める。自分の身に来るであろうその運命を、自分の未来を悟った時……真白は目を閉じた。
「止め、ろ……止めろぉぉぉぉ!」
力に飲み込まれるであろうその姿を前にリトが叫ぶ。すると真白は静かにその瞳を開き、リトへと視線を向けて何かを呟いた。その声は音に書き消され、だが理解出来てしまったが為に目を見開いた時。リトの視界は強い光に包まれるのであった。
数時間前。普段の様に学校へ通い、放課後を迎えた真白は何時もなら来るであろうララが来ない事に首を傾げる。唯は先生の手伝いと言う事ですぐにその場を離れ、真白はララが来ない事を理解すると1人で帰る為に行動しようとする。下駄箱で靴を履き替えて外に出た時、そこには何故かボロボロになっているリトの姿。何を起こしたのかは分からずとも、真白はその傍に近づくとしゃがみ込む。
「……平気?」
「ま、真白か……いっ、酷い目にあったぜ。ってあの餓鬼、何処行った!」
「?」
真白の声にリトは頭にたんこぶを複数作りながらも何とか立ち上がると、周りを見渡して誰かを探し始める。言葉からするに子供の様だが、リトの周りに子供の姿は無い。リトを見つけた際には他に誰も居なかったために真白が首を傾げる中、リトは後ろ髪を掻き乍ら「まぁ、良っか」と言って鞄を手に立ち上がった。
「ララは一緒じゃないのか?」
「ん……」
「放課後になったら何処か行っちゃってさ。真白のところに居ると思ったんだけど……ほんと、何処行ったんだ?」
どうやらララと同じクラスであるリトもララの所在が分かっていない様で、真白はその事に若干気になりながらも最初の予定通り帰る為に歩き始める。リトもこの場に留まっている理由は無い様で、真白が帰ろうとしているのに気付くと「俺も行くよ」と言ってその隣を歩き始めた。普段1人で帰っている事もあって、少しだけ珍しい2人での帰宅。最近は真白の傍に基本ララかヤミが居る為に会話をしているその姿を見るぐらいで気まずくなる事は無かった。だが今回はどちらも居ない事で、リトは何を話すべきかと考え始める。
校門を出たと同時に鞄を肩に掛けなおした真白。帰る際には走っている事を知っている為、リトも走る為に鞄を掛けなおした時。テニス部が使うであろうテニスコートにラケットを持って立って居る子供の姿に気付く。思わずリトは声を上げ、真白もその声に視線を子供へ。後姿故にどんな顔かは理解出来ないが、リトが探していた子供がそこに居る子供なのだとすぐに理解する。
子供がテニスコートに立って居るのはテニスをする為であった。反対側にはテニス部の顧問である男性……佐清が立って居り、子供相手に遊んで上げるつもりなのだろう。真白は興味を失った様に走り出そうとして、次に起こった出来事でその足は急停止する。
「な……なっ!」
リトが声も出せずに驚くのも無理は無い。子供がサーブとして最初に撃ったテニスの玉は、佐清の真横を通過して地面に大きなクレータを作り上げたのだ。もしも当たれば木っ端微塵どころでは無いその威力に佐清も気絶する中、子供はラケットを捨てるとテニス部の女子生徒達の元へと駆け出し始める。そして胸を揉んだりスカートを捲ったりと、セクハラを開始した。相手が子供と言う事もあって本気で起こる事はしない女子生徒達。っと、そこでリトがテニスコートに近づく春菜の姿に気付く。
「不味いっ! 悪い真白! やっぱり先に帰っててくれ!」
「……」
春菜へ子供の魔の手が伸びるのを防ぐために走り出したリト。真白はそんなリトの言葉に反応する事無く、ジッと出来上がったクレーターを見つめ続けていた。そして徐に足を後ろに戻すと、鞄を持ったまま学校の中へと戻り始める。リトが春菜の腕を掴んで校舎の中へ逃げ込むのを確認し、真白も校舎の中へ。階段を上って行く足音を聞き、屋上へと足を向け続けた真白はやがて屋上に続く扉が開いているその向こうに並ぶ人の姿を見る。そこに居たのはリトと春菜。そしてララとザスティンに……【尻尾を生やした子供】であった。
「来やがったな、三夢音 真白」
「! 真白!?」
屋上へと出た時、子供は先程の無邪気さを微塵も見せない口調と雰囲気で振り返らずに真白の存在に気付く。真白が付いて来た事にリトが驚き、状況を飲めない春菜も困惑する中。子供はゆっくりと振り返って真白と目を合わせる。
「家族である結城 リトが宇宙人と思わしき危険な存在に追われれば、絶対に助けに来ると思ったぜ。まずは教えてやろう。俺がデビルーク王……ギド・ルシオン・デビルークだ」
「……」
「ララ。話は聞いてるな? 俺の後継者……お前の結婚相手が決まった。相手はこいつ、三夢音 真白だ」
「なっ!? 結婚って、真白もララも女で「それがどうした?」!?」
「こんな
真白がこの場所に来るのは子供の……ララの父親であるギドの計算通りであり、告げられた言葉に驚きながらも無理である事を言ったリト。だがその言葉に帰って来たのは考えていた事を上回る言葉であった。地球にも性別を変える技術は完全では無くとも存在する。もしも地球より発展している宇宙人達の世界でそれ以上の技術があるのなら、完璧な性転換も不可能では無いのだろう。言われた言葉と『後継者』と言う事に何方が男になるか等は明白。驚くリト達とは対象的に、真白は何の反応も示していなかった。
「ザスティンからお前に関する報告は受けていた。その上で判断した事だ。貧弱かと思えば地球人の割には努力し、何よりララの意思を尊重出来る。……だから三夢音 真白、お前は俺の後継者になれ」
偶にザスティンと出会う事はあれど真白に関する報告を行っていたと言う事実にやはりリト達が驚く中、最後に告げた言葉に全員の視線が真白の集中する。最初から最後まで一切の反応を見せていない真白。そこで初めて、リトは真白の雰囲気が何時もと違う事に気付く。普段は静かに佇んでいる真白だが、今この時感じる真白の雰囲気は……何かに憤りを感じている。
「ま、真白……!?」
何処か何時もと違う真白の姿にリトが口を開いた時、大きな風がリトの横を通り抜ける。そしてそれと同時にギドの立っていた場所から襲い掛かる衝撃波がこの場に居た者達を大きく吹き飛ばした。リトと春菜は一緒に、ララも飛ばされ、王を前に片膝をついて居たザスティンも少し後ろへと下がりながら目の前の光景を信じられないとばかりに見つめる。
「……何のつもりだぁ? テメェ」
「……!」
低い声を出して自分に振り下ろされた拳を片手で受け止めるギド。その声は聞いただけで震えあがりそうな物であるが、真白はそれに怯える事無くその場で回転すると回し蹴りを放ち始めるが、これもやはり軽々と受け止められてしまう。
「真白殿!? 止めるんだ!」
「どうしちゃったの真白! 何でパパに攻撃するの!?」
「真白……何がどうなって」
「み、三夢音さん……」
ギドの力を知るザスティンとララは攻撃をする真白に止める様に言い、何故か攻撃をする真白の姿に困惑するリト。その傍には目の前で起こる出来事に不安を抱えながら見守る事しか出来ない春菜。突然始まった戦いは、只管攻撃する真白とそれを軽々と受け止めるギドと言う圧倒的力の差を見せつける。が、それでも真白が止める事は無い。殴り続ける拳から例え血が流れ始めようとも。
「俺の期待を裏切って攻撃までしてくるんだ。死ぬ覚悟は出来てるよな?」
「!」
初めて行ったギドの攻撃。それは尻尾で叩くと言う簡単な物であった……にも関わらず、その威力に大きく身体を吹き飛ばされた真白。固い床を転がって地に付した時、ララが駆け寄ろうとする。しかしその時、真白に起こった現象にこの場に居た全員が息を飲んだ。
「……デビルークの王……父の……仇!」
「真……白……? 何で……まさかお前も……?」
真白の足元が光り出すと同時に現れたのは、大きな白く輝く羽。それは間違い無く真白の背中から生える様にして出現し、制服の後ろ側の一部を破った状態で大きく広がる。その身体はララと同じく地球人にそっくりでありながらも存在する羽が地球には居ない存在……宇宙人である事を物語り、今まで長い時を過ごしていたリトにとってその現実は受け入れがたい物であった。
「あの羽は……! 間違い無い! 絶滅したエンジェイドの特徴!」
「エンジェイド? ! それってパパが……じゃ、じゃあ真白は!」
宇宙人であるザスティンは真白が何の宇宙人なのかに気付いて声を上げ、その言葉にララは驚きながらもその種族がどんな物だったかを思い出し始める。すぐに思いだしたのは、自分の父親が銀河統一を果たす際に一番苦戦して最後に勝利を納めた種族であると言う事。そして長い戦い故に親交も有り、絶滅する際に最後に手を下したのが自分の父親であると言う事。故に理解してしまう。……もしも真白が本当にエンジェイドなら、ギドは言った通り【仇】になるのだと。
「そう言う事か。まさかこんな所に居たとはな……シンシア・アンジュ・エンジェイド!」
各話の内容を分かり易くする為、話数の後に追加するのは何方が良いでしょうか?
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サブタイトルの追加
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主な登場人物の表記