その場から消える様にして姿を消した真白が次に現れたのはギドの目の前。足の振りかぶりも終わり、後は当てるだけと言う体勢で現れた真白の姿にギドは寸前で受け止める為に手を出せば先程と違って明らかに威力の増した攻撃にその身体を少しだけ下げる。今までその場所から移動せずに余裕で受け止めて居た攻撃とは、桁違いの力。ギドが驚いて居る事と攻撃を寸前で受け止めながらも下げられた事にザスティンやララは驚きを隠しきれなかった。
「あいつの子供なだけはある……だけどな、場数が違うんだよ!」
「!?」
追撃を掛ける為にギドの後ろに真白が現れた時、それを先に予想して居たギドの尻尾が真白の身体を再び吹き飛ばす。だが真白は空中に飛ばされる、空の上で回転しながら体勢を立て直す。そして再びギドへと急接近を始めた。
「止めて……止めてよ……もう、止めて!」
ララが目の前の光景に悲痛な声で叫ぶも、真白はそれを聞く事無くギドに攻撃を加える。今度は拳を振りかぶり、ギドが一歩下がればその立って居た場所に真白の拳が触れる……と同時に地面が大きく砕ける。その振動は今現在校舎内で先生の手伝いをして居る唯の天井にまで響き渡り、上から響く音に唯が首を傾げて居る間にも真白はギドを追う様に動いて居た。
「仕方ねぇ。一度……沈めるか」
「!」
真白が止まらない事を理解したギドは突然真白から距離を取るのを止めると、攻撃に移る。
子供の姿で放たれた小さなパンチ。だがそれは尻尾以上の威力を誇り、真白が自らの羽を身体に包んで防ごうとするも、その羽がまるで破壊される様にして攻撃を通してしまう。巨大な羽は輝く小さな羽根を残しながら消え去り、空を飛べなくなった真白は再び床へ。それでも立ち上がり、真白は再び背中から羽を出し始める。と同時に羽が光り始め、その光はやがて右手へ。その光景は嘗て、ギドが真白の父親であるエンジェイドの長……ジルと戦った際にも見せた物。そしてその末路は【消滅】。
「恨むなら好きにしろ。だが、約束なんでな……そんな事には絶対にさせねぇ!」
このままでは同じ運命を辿ると理解した時、ギドはそう言い放つと一瞬関係の無い方へと視線を向ける。そしてすぐに黒い尻尾の先に力を溜め始める。やがて真白が右手に溜めた白い光を放った時、それに対抗する様にギドも黒い光を放ち始めた。最大にまで溜めた真白の攻撃と、それに気付いて途中までしか溜めて居ないギドの攻撃。だがそれでもギドの方が遥かに威力が高く、周りに壮大な負荷を掛けながらも徐々に真白は押され始める。……やがてギドの力が自分に近づいて来た時、真白は目を閉じた。
「止め、ろ……止めろぉぉぉぉ!」
ぶつかり合いによって発生する衝撃波に動く事も出来ずに、だが真白がギドの攻撃に飲まれる事が分かった時。叫んだリトに真白は静かに目を開ける。そしてリトに視線を向けた時、静かに口を動かした。轟音が声を掻き消す中、それでも分かった真白の言葉。
『ありがとう、ごめんね』
「!」
真白のその言葉にリトが口を開くよりも早く、屋上は大きな光に包まれた。
徐々に視界が戻って行く中、見えるのはギドによって放たれたビームが真白の居る場所を越して地面を削った跡。そこに真白の姿は無く、その攻撃によって消滅してしまったのだとすぐに誰もが分かってしまう。宇宙人であった衝撃よりも真白が居なくなってしまった衝撃にリトが膝から崩れ落ち、春菜が目を見開いて見続け、ララが涙を溢れさせながら飛び出す。
「何で! 何で真白を……! 何で!」
「……」
「パパなら出来たでしょ! 真白を殺さずに止める事が!」
「あぁ、出来たな」
「! だったら何で……!?」
真白を消してしまったギドに怒りをぶつけるララ。最初はそれに黙り続けていたギドだが、やがてララに言われた言葉に肯定した時。それに更に怒ろうとして、ララはギドの表情に気付く。それは後悔でも無表情でも無い、笑み。そこでララはようやく先程の言葉が『それも出来た』では無く、『それが出来た』である事に気付く。そしてすぐに周りを見渡した時、ララは階段に続く扉の上側に立っているその姿に気付く。鎧を着て1人の少女を横抱きにしているその人物に。
「真白……ザスティン!」
ララが気付くと同時にそこから飛び降りたザスティンは真白を横抱きにしたまま歩き始める。ギドはその姿に再び笑みを浮かべ、ララは真白が生きて居る事に涙を流しながら。リトもララの声にすぐにザスティンとその腕に抱えられる真白に気付くと駆け寄り始める。
「中々の荒業だったが、成功だな。良くやった」
「恐縮です、デビルーク王」
「……ねぇザスティン。どうやって助けたの?」
「真白殿……いえ、シンシア殿は己の全存在を賭けて攻撃を行いました。つまりそれは消滅してしまうと言う事」
「だからまず俺が力を押し返して本人に自分の力を強制的に浴びせ、俺のが当たる前にザスティンに回収させた訳だ」
ギドの言葉に頭を下げて敬意を示すザスティンに、ララは涙を拭いながら質問する。確かにララ達の目の前では光に飲まれたように見えた真白。だがザスティンとギドの説明から飲まれたのは自らが放った光にであり、ギドの攻撃はその寸前でザスティンが回収したことで逃れたのだと説明されれば、安心した様にザスティンの腕に横抱きにされて居る真白の身体に抱き着くララ。っと、ギドはその姿を見て立ち去ろうとする。そしてそれに気付いたリトが少し怯えながらも声を掛ける。
「ど、何処に行くんだよ?」
「事情が変わったからな。ララ、お前の結婚の件は無しだ。三夢音 真白がシンシアであると分かった以上。認める訳には行かねぇ」
「! 真白がエンジェイドだから!? パパを殺そうとしたから!?」
「そいつがお前と同じ……【俺の娘だからだ】」
ギドの言葉にララが真白を守る様に立って質問した時、ギドの答えは予想すらして居ない物であった。リトとララがその言葉に思わず呆ける中、ギドは屋上から飛び降りる様にして姿を消してしまう。そうして静寂が支配し始めた時、今まで見る事しか出来て居なかった春菜が真白の状態を見て焦った様に声を上げる。
「結城君! ララさん! 三夢音さんが!」
春菜の声に我に返り、真白を見た2人。ザスティンに横抱きにされて居る真白は今現在、眠って居る状況にも関わらず汗を額から噴き出させて苦しんでいた。どう見てもそれは普通では無く、焦るリトとララ。ザスティンも苦しんでいるその姿に揺らさない様にそっとしながらもどうするべきか考える中、同じ様に焦りながらも「お医者さん……かな?」と言った春菜の言葉に3人は一斉にある人物を思い出すのであった。
「俺が脱がす必要あったのか……? !?」
「殺します!」
「ちょ、ま! うわぁぁぁぁ!」
御門の家に眠ったままの真白を見て貰うために駆けこんだリト達。その道中でザスティンからリトの背に場所を変更して運ばれる真白の姿に何時までも待って居たヤミも合流した後、御門の家にたどり着くと同時に行ったのは診やすくする為に服を脱がせると言う行為であった。女性はララとヤミも居る中で何故か御門はリトにお願いし、真白の服を脱がすことになったリト。制服のボタンを外した後に脱がせて見えた下着やその下着すらも脱がして見てしまった胸の天辺等を思いだして顔を赤くした時、それに気付いたヤミがリトに襲い掛かる。
ヤミが襲い掛かり、リトが逃げ続ける中。ララは普段の元気を無くした状態で俯き続けて居た。っと、真白が居るであろう部屋から姿を見せた御門。普段通りに白衣を掛けた状態でポケットに手を入れて出て来た御門の姿にララはすぐに駆け寄る。
「真白は大丈夫なの!?」
「えぇ、とりあえずは問題無いわ。かなり弱って居る様だから、しばらくは安静にするべきね」
「そっか……良かった……」
御門の言葉を聞いて全ての力が抜けたかの様に座り込んだララ。そんな姿を横目に見ながら、御門は追いかけっこが終わっていたリトとヤミに視線を向けると声を掛ける。
「しばらくはここで預かるから安心して良いわ。少なくとも春休みの間は殆ど安静ね」
「分かりました。じゃあ私は生活用品を取ってきます」
「ここに住む気なのね……さて、一体何があったのかしら?」
真白の居る場所にヤミは居る。なら、真白がここで過ごして居る間ヤミもここで過ごすのだろう。御門はそれを理解して少し頭を悩ませる様に言った後、元気を無くして居るララを一度見た後にリトへと質問する。走ったせいで息を荒くしながらも、御門の言葉で真剣な表情になったリトは起きた出来事を説明。ララが元気を無くして居る理由なども聞いた時、御門は椅子に座り込む。
「なるほどね。通りであそこまで弱って居るのね。デビルーク王のお蔭で消滅は免れた物の、殆ど生きる力は空に近いもの」
「真白は……ううん、シンシアはやっぱり私を恨んでるのかな。パパがシンシアのパパを殺したから」
「ララ……」
「はぁ……そうかも知れないわね」
弱りきって居る真白がどうしてそうなったのか、その理由を聞いて納得した御門の言葉に続ける様に言ったララ。リトはララが酷く落ち込んでいるその姿にどうにかしたいと思い、だが何も出来ない事と真白に関しての思いに拳を握りしめる。が、そんな2人の姿を見て御門は溜息を吐くと当然の様に告げた。その言葉に肩を揺らしたララと、驚いた様に顔を上げたリト。御門はそんな2人の反応を見ながらもう1度溜息を付く。
「まずは話しなさい。何も話さないで相手の気持ちを決めつける事程、すれ違う原因は無いわ。彼女があなた達をどう思って居るのか、これからどうしたいと思って居るのか。よく話して、それから決めなさい。……話せる様になったら、連絡するわ」
御門はそう言いきると立ち上がり、「もう今日は帰りなさい」と2人に言う。既に外は暗くなり始めており、リトは美柑にメールで遅れる事等を伝えてはある物の何と言っていいのか分からずに考え始める。そしてその横で、ララは先程まで失っていた元気を再び見せると「お話しなくちゃ!」と言ってその日を迎える為に心を入れ替えていた。ララが元気を出した事でリトも笑みを浮かべ、2人はそうして帰宅する。美柑にも起きた出来事を掻い摘んで説明し、それからしばらくの間。結城家に三夢音 真白が居ない日々が始まるのだった。
各話の内容を分かり易くする為、話数の後に追加するのは何方が良いでしょうか?
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サブタイトルの追加
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主な登場人物の表記