御門の元へと到着した真白たちはすぐに事情を説明し、御門に診て貰う事になった。ベッドのあるカーテン越しに春菜の身体を調べ、やがて出て来た御門は首を横に振りながら告げる。
「正直お手上げよ。医療関係なら私の技術でどうにでもなるのだけれど、霊の様な不可解な現象は流石に宇宙でもまだそんなに明らかになって無いわ」
「どうしましょう、このままでは春菜さんに迷惑を掛け続けてしまいます」
春菜の身体に入っているお静が御門の言葉を聞いて俯き始め、真白はそれを慰める様にその背中を優しく触る。その間、リトはどうにかして春菜からお静を引きだす方法が無いかと御門に質問する。と、御門は唯一の手掛かりとして分かった事があると小さな機械を取り出した。それには小さな画面が付いており、横線が波を立てる等して何かを現している。
「幽霊の持つ特殊な波長ね。でもこれだけでは解決出来そうに無いわ」
「どうすれば……」
「う~ん。? あれ、真白とお静ちゃんは?」
御門から説明されるそれを見ても詳しく理解出来る訳では無い。故に御門の最後の言葉で大体を判断し、再び考え始めたリト。するとふとララが振り返り、先程まで居た筈のお静。そしてそのお静を慰めていた真白が居なくなっている事に気付く。保健室の扉は開いており、リトとララは一度目を合わせると何処かへ行ってしまったのだとすぐに理解した。
「……不味いわね。早く連れ戻して彼女を引き出す方法を探さないと」
「なっ! ど、どう言う事だよ御門先生!」
「西連寺さんの意識が少しずつ弱まっているの。彼女にその気が無くても、今のまま憑依していれば……西連寺さんの精神は消えてしまうかも知れないわ」
「!?」
その言葉は何よりもリトに衝撃を与えた。春菜の意識が消えてしまう……それはつまり春菜が死んでしまうも同じ事。故にそれを聞いた時、リトは「急いで探そう!」と言って保健室を飛び出していく。ララも話を聞いていた故に、友達である春菜を助けるため外へ。御門は保健室に残り、先程調べた結果を見てお静を春菜の身体から引きだす方法を探し始める。
一方その頃、春菜の身体を借りたお静は春菜の身体を奪い続けている罪悪感に保健室を飛び出してしまい、そのまま無意識に学校の外へと出て来てしまっていた。気付いた頃には商店街の真ん中を歩いており、見た事も無い光景に驚くお静。しかし彼女は自分が歩いていた場所が車道だと気付いていなかった。故に背後から迫るトラックに気付いておらず、すぐ傍にそれが近づいて来た時。ようやくお静はその存在を認識する。が、もう逃げる猶予は残っていなかった。
「きゃ!」
お静は身体に衝撃を感じ、小さな悲鳴を上げる。だがそれは迫って来ていたトラックがぶつかるにしては小さく、何かがすぐ傍を横切って行くのを感じてゆっくりと目を開いた時。自分の身体が自分よりも小さい何かに寄りかかっていた事に気付く。
「……危ない」
「ま、真白さん……今のは、一体?」
掛けられた声でその相手が真白だと分かったお静は体勢を整えてドンドン離れて行くトラックを見つめる。400年前に死んで以降、旧校舎の外に出た事の無い彼女は車の存在も何も知らないのだ。真白はそれが分かると、唯一言「車」とだけ答えてその手を引っ張りながらお店の近く。車の通らない安全な場所に移動する。
「……戻る」
「あ……すいません。勝手に出てしまって」
「ん……」
お静の謝罪に真白は小さく頷き、微かに出して居た羽を消滅させる。近くで無ければ認識出来ない程の小ささ故に、周りに気付かれる事は無い。……そもそもお静が無意識に外へと飛び出した時、真白はその後を追っていた。が、校舎を出た辺りで一度見失ってしまったのだ。しかし放って置く訳には行かず、最低限の配慮を行った上で空から探していたのである。その結果先程の危険に気付き、辛うじて回避することに成功した。
真白はお静の手を握って学校へと戻るために歩き始める。一方連れられていたお静は見た事も無い物に度々目を奪われており、電気屋のガラス窓の向こうに並べられたテレビの映像を見ると更に目を輝かせ始める。
「真白さん真白さん! あの薄い女の子はあの中で働いているんですか?」
「……違う」
テレビには【爆熱少女マジカルキョーコ
「よーし! 行くよ、リト!」
「おう! って飛べるかぁ!」
「……」
「どうしたんですか? リトさん」
「へ?」
そこに居たのはララが黒い翼を広げて空へと飛んでいってしまう姿に、リトがついていけない事から思わず叫んでいる光景があった。真白はそんな光景を何事も無い様に見つめ、お静はリトに話しかける。と、リトは掛けられた声に振り返って探していたお静が居た事に驚いた。
「よ、良かった! ……良く聞いてくれ」
安堵の表情を浮かべた後、突然真剣な表情になったリトにお静が首を傾げる中、リトは御門から言われた事をお静に伝え始める。今のままでは春菜が危険な事を。そしてそれを聞いた時、お静はショックを受け乍ら慌て始める。すると握っていたその手が微かに強く握られ、更にその手を包む様に上から真白の手が添えられる。
「……焦っちゃ……駄目」
「は、はい! ……そ、そうだ! 春菜さんの意識を目覚めさせれば、私は春菜さんの身体から追い出されるかも知れません!」
「本当か!?」
「分かりませんが、やってみます!」
暖かい手の温度と言葉で何とか冷静になる事の出来たお静は考え始め、やがて1つの可能性を見出す。藁にも縋る思いのリトは驚きながらも聞き、お静は挑戦する様に言うと静かに目を閉じ始めた。……静かな静寂が続き、ゆっくりと目を開けた時。お静はリトを見る。
「リトさん! わ、私と……接吻してください!」
「せ、接吻!?」
「……キス」
「いや、別の言い方しなくても分かるから! で、でも何で!」
「わ、私も恥ずかしいですが……今はこれしかありません!」
突然のお願いに動揺を隠せなかったリト。そんな彼に真白が何を誤解したのか違う言い方で伝えようとすれば、必死に言いながら理由を聞こうとする。だがお静は説明する暇も惜しいと思ったのか、リトの両頬に手を添えると顔を近づけ始める。中身はお静とは言え、身体は春菜。好きな相手である春菜からキスされると言う事に、近づいて来る顔にリトの顔が急激に赤くなっていく中、不意打ち気味に聞こえた犬の吠える声で悲鳴を上げ乍ら春菜の身体から白い身体が飛び出す。
「ゆ、結城……くん? わ、私……何で!?」
『い、犬怖いです~!』
「……」
お静が身体から出ていった事で元に戻った春菜は唇が触れる寸前の距離にリトの姿があった事に困惑し、顔を真っ赤にする。そして謝りながらリトから距離を取り、リトは嬉しい様な残念な様な、複雑な感情を抱きながらも一先ず安心する。そんな傍では2匹の犬が喧嘩しており、その声を聞いてお静が真白の身体に怯え乍ら縋り付いていた。
何はともあれ春菜の身体から無事に出る事の出来たお静は迷惑を掛けた春菜やリトに謝罪をした後、旧校舎に帰る事を伝える。身体を貸す約束をしていた真白はそれに首を傾げるが、お静はそれに気付くと微笑みながら真白の頭に手を置いた。
「真白さんの提案、嬉しかったです。でもこれ以上は望み過ぎですから……」
振り回してしまった罪悪感もあったのだろう。そう言って優しい笑みを浮かべたお静はそのまま旧校舎へ向けて飛んで行ってしまう。リトはお静が帰って問題も解決したことで大きく声を出しながら脱力し、春菜はまだ顔を赤くしたまま。そして真白は去って行くお静の姿を見ながら何かを考え始めるのであった。
各話の内容を分かり易くする為、話数の後に追加するのは何方が良いでしょうか?
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サブタイトルの追加
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主な登場人物の表記