朝の登校時間。結城家へ朝から行っていた真白は彩南高への道中でまず美柑と別れ、後にヤミと別れてからリトとララと共にその道のりを歩き続けていた。
1年生の頃ならば真っ直ぐに2人を置いて学校に向かっていた真白。だが2年生になって以降、真白はララと共に歩くことが当たり前と化していた。何故なら美柑とヤミの2人と別れた後、先に行ってしまう真白の手をララが握る様になったからである。真白本人に逃げる意思が例え無くても、逃げられないと言う事である。
「あら? おはよう」
「あ、御門先生! おはよう!」
ララに手を引かれて歩いていると、普段は合わない人物と真白は遭遇する。それは御門であり、御門は2人の姿とその後ろを歩くリトの姿を見つけた後に声を掛けた。すぐに御門に気付いたララは笑顔で、真白も静かに頷いて返す。と、歩きを止めた事でリトも合流して御門に気付くと朝の挨拶を行う。平和であり、ララと真白が並んで歩く光景は微笑ましいものであったが、御門はふとララと真白が手を繋いでいるのに気付いた。特に何かの反応を示すことは無いが、それでも少しだけその繋がる手を見つめる御門。
「……何か……あった?」
「いいえ。何も無いわ。……にしてもほんと、お姫様達が来てから賑やかになったわね」
「ははっ、少し賑やか過ぎる時もありますけどね……」
御門が何かを気にしているのに気付いた真白。だが聞かれた質問に御門は首を横に振って有耶無耶にすると、ララを見て過去の静かだった学校を思いだしながら呟く。その言葉に反応したのはリトであり、彼は何処か疲れた様に。だが微かに優しい笑みを浮かべながら答える。
「そう言えば御門はどうして地球に来たの? 真白関係?」
「真白と出会ったのはこっちに来てからよ。それまではこの
「? じゃあ何で?」
「そうね……風が吹いたから、かな?」
「……風?」
「どういう意味?」
何気なくララがした質問に御門は真白の関係での事を否定すると、やがて答えた言葉に3人は同時に首を傾げてしまう。そんな姿に御門は「深い意味は無いわ、気まぐれよ」とだけ言うと歩きを再開してしまい、結局3人はその言葉の意味を分かる事は無いのであった。
授業が終わり、昼休みを迎えた教室にて、唯が自分の机の上に以前作り上げた資料も含めた書類を積み上げ初めていた。数日分であろうその量はかなりのものであり、唯1人で運ぶのは明らかに大変だろう。それに気付いた真白は積み上げた書類を纏めて持とうとしている唯に近づくと、何も言わずにその半分を手に持つ。突然出て来た手に驚く唯。別に手伝わなくてもいいと伝えようとするが、それを聞くよりも先に廊下への扉へ向かう真白に唯は笑みを浮かべながらも溜息を付く。真白は唯が来るまで廊下の目の前で待っており、教室から出ると2人は並んで廊下を歩き始めた。
「……何の……資料?」
「今度風紀委員で提出する資料よ。この学校がどうすればより良く出来るか、考えないと……」
「……」
「勿論、やり過ぎない程度だから安心しなさい」
「……なら……いい」
抱えていた資料に付いて質問する真白。そんな彼女に唯は答えながらも考え始めるが、不意に視線を感じて隣を見る。そこには無表情ながらも心配そうに見つめる真白の姿があり、唯はすぐに薄く笑みを浮かべながらも安心させる為に伝える。真白は唯の言葉に目を少しだけ閉じた後、静かに返すと歩きを再開しようとして……持っていた資料が空に舞い上がった。
「え……?」
「なっ!」
それは突然の事であった。真白が自らの体で唯の体にぶつかったのだ。それも転んだや躓いたと言う事では無く、故意に。訳も分からず呆気に取られる唯。だがすぐに真白がそれをした理由が理解出来る。自分が立っていたそのすぐ背後に、見知らぬ男が立っていたのだ。明らかに地球人では無いその相手もまた突然の事に驚いており、資料が舞い上がる中で、真白が唯を押した体の体勢を反転させるようにして蹴りを放つ。対処も出来ず、それを身体に受けて大きく蹴り飛ばされる謎の男。真白はすぐに唯へ視線を向ける。
「……逃げて……!」
「な、何が……! 真白! 後ろ!」
「!」
真白の言葉に混乱する中、蹴り飛ばした男を警戒している真白の背後からもう1人の男が近づいているのに気付いた唯。大きな声でそれを伝えれば、真白は瞬時に振り返って攻撃を加えようとする。だがその為に突き出した手は水っぽい何かに包み込まれてしまう。それはゲル状の何かであり、急激にそれは真白の手を通って体へと昇り始める。
「!?」
「抵抗されるとは想定外だが、所詮は地球人。これには勝てないだろ? おい、早くその女も捕まえろ!」
「真白!?」
「逃げ、て……んっ……」
徐々に上って来るそれに驚く真白。そんな彼女を嘲笑う様に男は言うと、真白に蹴られた男に指示を出し始める。唯は目の前の光景に真白の名を呼ぶが、真白は唯に逃げる様にお願いをするだけ。やがて上って来たそれが制服の中にまで入り始めた時、真白は与えられる滑る感触に声を押し殺して男を睨みつける。そして立ち上がろうとした男と唯の間に立つと、強い目で唯を見た。
「……はや、く……!!」
「ぬぉ!?」
それが真白に出来る最後の事だったのだろう。ゲル状の中に自ら手を入れて男の胸倉を掴み、起き上がろうとしているその男へ力強くその体を放り投げる。まさかまだ抵抗されるとは思っていなかったのか、声を上げる男。左右を挟まれる様になっていた状態は片側だけが解放され、真白は横目で唯を見る。ようやく動ける様になった唯は言われた通り逃げる為に立ち上がろうとして、真白が来ない事に気付いて振り返る。そこには体の半分以上を包まれ、制服のボタンなども外れたせいで半脱ぎ状態になって座り込む真白の姿があった。
「ま、真白!?」
「……ん、ぁ……」
「くっ、すぐに助けを呼んで来るわ!」
助けたいと思っても、男たちを相手に戦える力の無い唯にはどうすることも出来ない。それを分かっているからこそ、唯は助けに入ることよりも今は逃げて助けを呼ぶ事を決めると大きな声でそれを告げて走り始める。男たちは唯が逃げた事に舌打ちするも、ゲルに包まれて座り込んでしまっている真白の姿に厭らしい笑みを浮かべると、真白を何処かへと運び始めるのであった。
必死に走る唯が一心不乱に助けを求めようと考えた時、思いついたのは3人であった。図書室で稀に本を読んでいるのが見掛けられる、真白の傍にいた金髪の少女……ヤミ。真白と仲良く、またべったりな問題児……ララ。そして真白と親し気に話している最近宇宙人だと知った女性、御門 涼子である。地球人では明らかに適わない相手なら、宇宙人に助けを求めるべきだと思ったのだろう。真白の危機なら必ず駆けつけてくれる確信のある相手としてその3人を探すため、唯は保健室へと向かい始める。ヤミは確実に図書室に居る訳では無く、ララは何処に居るか分からない。そんな中で唯一保険医である為に保健室に居る可能性が高い御門の元へ、唯は全力で走った。
「はぁ、はぁ……御門先生!」
「あら?」
「あ、唯だ! 後は真白だけだね?」
「? 古手川? 何でそんなに慌ててんだ?」
保健室の目の前にたどり着いた時、唯はノックすることも構わずにその扉を開く。中に居たのは御門とララ、そしてリトの3人であった。探すべき3人がいた事で唯は心の底から安堵すると、すぐに真白の事を話す為に口を開く。
「ま、真白が私を庇って変な男たちに捕まって……助けてください!」
≪!?≫
唯の言葉で一瞬にして笑みを消すララに目を見開くリトと御門。その時、突然4人の頭上に謎の光が発生し始める。壁に謎の機械が存在し、そこから発生する光。それはやがて映像を映し出し始め、明らかに宇宙人だと分かる男が映り始める。
『久しぶりですね、ドクター・ミカド』
「ゲイズ……何故ここが?」
「! あの恰好! 私達を襲った人とそっくりです!」
「何ですって……?」
映り始めた男は御門の知る人物の様であり、唯はその男の恰好が襲い掛かって来た男達と同じ様な服装である事に気付くと御門に告げる。眉間に皺を寄せて映像を睨む様に見る御門。そんな彼女の姿に男は余裕そうに『そう睨まないで貰いたい』と言うと歯を見せて笑い始める。
「あの子に何かしたら、唯じゃ置かないわよ」
『おや、あの生徒は貴女と何か深い関係でも?』
「何が目的?」
『分かり切った事を……我らが組織【ソルゲム】は貴女の力を必要としているのですよ』
「ソルゲムですと!?」
「ペケ、知ってるの?」
強い眼光で言い放つ御門の言葉に飄々とした様子で聞くゲイズ。だが御門がそれに答える事は無く質問すると、興味を失った様に深く聞く事無く告げる。ゲイズの言葉に誰よりも先に反応したのは、ララの髪に付いて居たペケであった。声を出して反応したことで御門とゲイズ以外の視線がペケへと向き、ペケは説明を始める。曰く殺人や武器の密輸、製造などの悪事を行う危険なマフィアであり、デビルークとは敵対関係にある組織であるとの事。その事実に何よりも3人が怖くなったのは、そんな組織に真白が捕まっていると言う事実であった。
突然映像が切り替わり始める。それは何処かも分からない部屋の中、足や手をゲル状のものに拘束されている真白の姿が映し出され始めた事で見ていた全員は各々の反応を示す。唯は口元に手を当てて、ララとリトは真白の名前を呼び、御門は拘束される真白の映像を睨みつける様に見続ける。映像の中で何も動かない真白。蠢くそれは太腿や二の腕にも巻き付き、普段は何の反応も示さない真白の頬が間違い無く赤く染まりながら呼吸を荒くしているのが誰の目にも分かった。
『あのスライムは我々が作った合成生物でね。命令1つで相手を拘束することも、窒息させることも出来る。さぁ、この生徒を見殺しにしますか? それとも……』
「……分かったわ。貴方たちの言う通りにするわ」
「!? 御門先生!」
ゲイズの言葉にやがて彼に付いて行くことを了承する御門。その事実にリトは思わずその名前を呼ぶが、もし彼女が断れば真白が死ぬかも知れないという事も分かっていた為に止める事が出来ず、必死に唇を噛み締める。ララや唯も同じ気持ちを味わう中、ゲイズはそんな事は知った事かと御門に1人でとある場所に来るように指定。映像が消えた時、御門は眉間に皺を寄せて何かを考え続けて居た。
「御門先生……」
「結城君に古手川さん。あなた達に1つ、お願いがあるわ」
不安そうに御門に話しかけるララ。そんな彼女の姿を見て御門は何かを決めると、顔を上げてリトと唯の2人を見乍ら言い始める。御門の言葉に悔しそうな顔をしていたリトはすぐに真剣な表情へと変わり、唯は突然のお願いに目を見開いて驚く。だが2人はすぐに御門の言葉を了承。その後、御門がゲイズに指定された場所へと向かう中で、2人は必死に御門のお願いを……唯一助けられるかも知れない術を求めて学校中を駆け回る事になるのであった。
各話の内容を分かり易くする為、話数の後に追加するのは何方が良いでしょうか?
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サブタイトルの追加
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主な登場人物の表記